■アニメータ磯光雄 と 監督作『電脳コイル』
◆アニメータ磯光雄
MADビデオ(磯光雄作画集)「CIKY NO KIKI(地球の危機)」
その他磯光雄作品検索 (YouTube)
なんといっても強烈だったのは、『新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 Air』の作画。
エヴァ弐号機とアスカの鬼気迫る原画は、ここ10年のアニメで特筆ものでしょう。あの素晴らしい動きのタイミングが生成するダイナミックな映像。
フィルモグラフィによると、『エヴァンゲリオン』TV版19話「男の戦い」も磯作画。
19話の使徒喰いのシーンの凄さにも仰天しました。ロボットものが巨大生物ものに化けるあのセンス・オブ・ワンダー。もともと庵野秀明が諸星大二郎の「影の街」(『ぼくとフリオと校庭で』所収)のイメージにインスパイアされて、あのシーンが『エヴァ』企画のコアにあったらしいけれど、磯光雄によって、原典を超える奔放なイマジネーションを獲得したといっても過言ではない。
特にあの幽玄な雰囲気の獲得は、素晴らしいと思う。動きで幽玄を表現できるアニメータって、世界でも何人もいないはず、、、というか僕はあのシーン以外にアニメで幽玄って味わったことのない感覚だったりする。他に何かありましたっけ?(『風の谷のナウシカ』で腐海の蟲たちが幽玄な動きをしていたら、どんな傑作になったかと思うと、、、。)
(と書きつつ、僕はこの原画のアニメータが誰かYouTubeの上記MAD VIDEOを観るまで、知らなかったという体たらくなのですが、、、、(^^;)。作画監督の本田雄の名前しか頭になく、てっきりこの方の原画シーンなのかと適当に思っていたという次第。なんともいいかげんです。)
◆脱線して『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』四部作について
新劇場版四部作というなんだかものものしい企画があるようだけど、「企画段階の構想に近い、大団円となるエンターテイメント志向の作品」になるとのこと。
僕はうじゃうじゃしたシンジの世界系描写なんて馬鹿馬鹿しくてどうでもよく、19話「男の戦い」から先、なんで初号機他の暴走がエスカレートしていった大センス・オブ・ワンダーなSF新生物ストーリーが観れないのかと不満に思っていた。なので、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』四部作は、そんなワクワクする映画になるのなら、観てみてもいいかな、と思っている。
でも磯光雄は下の監督作があるので、新劇場版にはきっと参加しないでしょう(物理的にきっと無理)。(『エヴァンゲリオン新劇場版』前編は鶴巻和哉と摩砂雪の共同監督。中篇の絵コンテ佐藤順一という情報がありました。)
◆磯光雄 初監督作 『電脳コイル』
原作・脚本・監督 『電脳コイル』 TVアニメ化決定(徳間HP)
というわけで、こんな新作が用意されているという。
この絵のイメージは、『エヴァ』でみせた凄さの片鱗があまり感じられないけれど、ラーゼフォン15話の磯演出作の渋い絵コンテで、実力は実証済なので、この監督作、とても楽しみ。できれば自身の原画もたくさん描かれるといいけれど、そんなことしてたら死んじゃいますね。(NHKで初監督作というのが、おなじく天才アニメータ宮崎駿と同経歴になるわけで、しかも上の絵の海底に沈む都市が『未来少年コナン』と符合して、なんだかワクワク。)
・宮村優子著 小説『電脳コイル』(Amazon)
・池田綾子 , 斉藤恒芳『電脳コイル サントラ音楽集』(Amazon)
・DVD『電脳コイル (1) 限定版』 『通常版』 (Amazon)
◆関連リンク 当Blogその他記事
・『電脳コイル』探索<5> 電脳メガネの直系(?)の先祖
テレグラス[Teleglass]T4-N
・『電脳コイル』探索<4> 第6話「赤いオートマトン」
電脳コイル世界の電脳ナビによる自動走行
・『電脳コイル』探索<3> 脳-電脳インタフェース
ブレイン-コンピュータインタフェースBCI/マシンインタフェースBMI
・第2話「コイル電脳探偵局」 ポストンくんと『グラン・ヴァカンス』グラスアイ
・『電脳コイル』探索<2> 第2話「コイル電脳探偵局」
ポストンくんと『グラン・ヴァカンス』グラスアイ
・『電脳コイル』探索<1> 複合現実と強化/拡張現実
ミックスドリアリティとオーグメンテッド・リアリティ
(現実に研究されている『電脳コイル』の技術の映像)
・NHK 磯光雄監督 『電脳コイル』スタート
第1話 「メガネの子供たち」 と ミックスドリアリティ
・アニメーター磯光雄と金田伊功と脳の構造の関係
・NHK試写会記者会見リンク
・『電脳コイル』TAF2007プロモーション映像
・『電脳コイル』 スタッフ公開!
・NHK教育『電脳コイル』 はハイビジョンか?
・その他 Google検索
・『電脳コイル』 第4話「大黒市黒客クラブ」
電脳戦闘スタート 作画、本領発揮!
◆ネットで拾った磯光雄アニメートの評価等リンク
・アニメ様の七転八倒 小黒祐一郎氏 第46回 エヴァ雑記「第拾参話 使徒、侵入」
兎に角、磯さんの仕事は強烈だ。リアリティも、動きから生じる快楽も桁違い。そして、何よりも独自性が強い。彼も既存の様々なアニメーションの影響を受けているはずだが、そのスタイルは今までのアニメ作画と別のところから発生したかと思うくらい、オリジナリティが強い。カリスマ・井上俊之を以てして「描き方がそれまで知っていたどの描き方とも違ってた」と言わしめる程だ。
『新世紀エヴァンゲリオン』では第壱話、第拾九話、第25話、そして、第21話(第弐拾壱話のビデオフォーマット版での追加シーン)で原画、第拾伍話で設定補で参加。この第拾参話では脚本と設定補を担当した。第壱話ではサブタイトル直後の、使徒と国連軍の戦闘シーンを描いている。個々のカットも素晴らしいが、シーン全体の臨場感が素晴らしい。(略)第3の使徒サキエルがまばたきするのは、原画段階での彼のアドリブだ。「第拾九話 男の戰い」では覚醒した初号機を描き、「第25話 Air」では、今も語り草になっている弐号機VS量産型EVAの激闘を作画。特に後者は凄まじい出来で、『エヴァ』シリーズ中にとどまらず、アニメ戦闘シーン史に残る名場面だ。
・もっとアニメを観よう 第5回 井上・今石・小黒座談会(5)
井上 煙や爆発がちゃんと立体的な動きをするんだよね。友永さんもそれっぽい事をやろうとしていたけど、立体にはなりえていなかった。エフェクトが三次元的に動くんだって事を上手く表現し始めたのも、磯君だろうね。抽象的で捉えどころのないものでも、三次元的に描けるんだっていう事を、アニメの原画で発明したのは、多分日本では磯君が最初だろう。
井上 19話は、エヴァの拘束具が外れて、目パチ2回するやつだよね。
今石 ええ、目パチ2回(笑)。
井上 あの「動物感」は凄いよね。あれほどの生命感を描き出せる人は今のところ磯君だけだろうなあ。……という事で、ちょっと長くなったけど、存在の大きさからいっても、もっと語っていいぐらいかなあ。
・もっとアニメを観よう 第5回 井上・今石・小黒座談会(3)
井上 どうやって描いているのかと思って、ちょうどその回の作監だった沖浦(啓之)君に訊いたんだけど、「なんか全部、原画で描いていたよ」と言うんだ(笑)(注28)。それを聞いて、「そんな描き方があったのか!?」と思ったね。と同時に「そんなやり方で動きをコントロールできるのか? 本当に描けるのか?」とも思った。
小黒 それについては当時、磯さんに直接伺った事がありますよ。それを磯さんは「自分が発明した『フル3コマ』だ」って言っておられたと記憶しています。『おもひでぽろぽろ』のドン・ガバチョも、同じ手法じゃないですか。
この後、フル3コマの手法について詳細が語られていて、たいへん興味深い。
・「ぼくらは少年演出家」 演出志望のアニメータ平川哲生さんの日記
2006 7/6 youtubeと作画マニアの視点 「磯光雄 担当カット集」他について
作画マニアの方々がどういう嗜好を持っているかよくわからないのだけれども、ど派手な動きを集めて編集したショー的な楽しさ一辺倒では、さすがに飽きてくるんじゃないかと思う。アニメーターの担当カットをトータルで眺めれば、その人のこだわる場所とか、動きやレイアウトのくせ、手の早さ、たまにその作品のスケジュールのこともわかったりするし、なにより、なんてことのない止めのカットですら意味を持ってきて楽しめるようになる。
この方の各種映像演出の分析が、素晴らしいです。『人狼』とか『ゲド戦記』の演出分析が興味深い。
・磯光雄(YouTube)2ch 磯光雄原作脚本監督『電脳コイル』 磯光雄 ここの#101,103で伝説が読めます。
・電源を入れてください~都市ノォト~さんの 磯光雄さんのフィルモグラフィー
・幻視球さんの『Newtype』11月号:磯光雄インタビュー
・まるのうらがわ♪さんの記事によると、「『電脳コイル』は磯光雄監督みずからAfter EffectsやPhoto shopを使って制作しているとのこと」。凄い、それならかなり作家性が発揮できるのかも。でもくれぐれもご自愛を。
・imago-image 磯 光雄のホームページ
・磯光雄 - Wikipedia フィルモグラフィはここが詳しい。
・劇場版エヴァンゲリオン AIR 予告 磯光雄のラフ原画 ISOMITSUOで検索 (YouTube)
・(mad anime) evangelion by zero system studio (この最後の『エヴァ』のはすでに削除)
・諸星大二郎『ぼくとフリオと校庭で』(Amazon)
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コメント
shamonさん、コメントありがとうございます。
さっそく『電脳コイル』、記事にさせていただきました。
磯監督vs神山監督という今シーズンのNHKは目が離せませんね。
投稿: BP | 2007.03.25 22:30
こんちは^^。
TAF2007でプロモ見てきました。
素晴らしかったです^^。
TB送っておきますね。
投稿: shamon | 2007.03.25 18:42
通りすがりさん、こんばんは。コメント、ありがとうございます。
言われて思い出しました(^^;)。そういえばどこかで読んだことがありました(^^;)。ぬるいエヴァファンですみません。またいろいろと教えてやってください。
投稿: BP | 2006.11.14 00:25
もちろん知っているかとおもうのですが、文面的に気になったので。
佐藤順一は甚目喜一名義でエヴァの4話、5話、15話、21話のコンテを
きってますよ。なので参加はそんなに意外なことでもないかと。
投稿: 通りすがり | 2006.11.13 06:19