■ラース・フォン・トリアー監督『マンダレイ』
LARS VON TRIER's "MANDERLAY"
『マンダレイ』 (日本公式サイト)
"MANDERLAY" (デンマーク公式サイト)
『ドッグヴィル』に続くラース・フォン・トリアーのアメリカ3部作の2作目。(『ドッグヴィル』の僕の記事はこちら。)
今回は前作でニコール・キッドマンが演じた主人公グレースをプライス・ダラス・ハワードが演じている。
そして描かれるのは、力を背景にした理想主義による村の改革。
前作のラストからそのまま物語が続いている続編であるが、正直、僕はグレースについて人格的に引き続いているような気がしなかった。上のオフィシャルサイトでトリアーが、役者が変わると同じグレースでも変わってくる、と言っているが、前作のラストから始まる物語を期待していた僕は、かなり残念。
監督はインタビューでグレースについて、「ただ愚かで理想主義的」で「彼女に欠けているのは政治的現実性」と言っている。本来あの過酷な『ドッグヴィル』を経ていたら、「ただ愚かで理想主義的」でいられるはずはない。
第三作『WASHINGTON』では、「再度ニコール・キッドマンが演じる可能性もあるが、最も道理にかなっているのは、3人の異なる女優が演じること」とトリアーは言ってる。この二作を経た後の変化したグレースを観たいと思うのは僕だけではないはず。来年、そんな主人公によって、三度アメリカという国のコアが暴かれることを期待したい。
◆関連リンク
・続編「マンダレイ」についてラース・フォン・トリアー監督&ブライス・ダラス・ハワードが語る!
・当Blog記事 ラース・フォン・トリアー 『ドッグヴィル』
・IDEの「マスター/スレーブ」という呼び方は? - CNET Japan
「マスターとスレーブ」がこの映画のテーマです。
・『ドッグヴィル』(日本公式サイト)
・『ドッグヴィル』・
『ドッグヴィル・コンプリートボックス』(Amazon)
『ドッグヴィル』×『マンダレイ』
『マンダレイ』
・映画/『マンダレイ』オフィシャルブログ - cinemacafe.net
★★以下、ネタばれ、注意★★ (ちょっとだけコメント)
・ギャングや白人の描写が少ない。そこがもの足りない。もっとテーマにそって、しっかりそこまで含んで丸ごと描いていたら、ラストの凄みは増していただろう。でもあと1.5時間くらい尺が必要かも。
・映像的には前作と同様舞台のような白線と家具だけで構成された村、という仕掛け。ただし前作で効果的に神の目線からの映像という感覚を獲得していた演出が今回は希薄。二番煎じになるからあえて避けたのかもしれないが、前作を超える新たな工夫もなく、残念。
・自由を与えることのある種の傲慢さが見事に描かれている、しかも善意にしか見えないグレースによって。世の不幸はすべからくこのようなところから発しているのかもしれない。そこが絶望的なのだけれど、前作でグレースは充分気づいていたはずではないか。
「おまえが(おまえたちが(?))われわれを作った」、アメリカ人のせいだと言われて鞭を激しく打つグレース。
アメリカ民主主義の持つ欺瞞を、今、改めてここまでとことん問い詰める意味は言わずもがなだろう。ブッシュにこの映画を観た感想を聞いてみたいものである。アメリカでは現在、こんな恥ずかしい名前の空母が建造されているらしいが、この空母のこけら落としでラース・フォン・トリアーの『WASHINGTON』ワールド・プレミアをやるというのはいかが>>ジョージ・ブッシュ殿。
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