■上橋菜穂子『隣のアボリジニ』感想
& 新刊メモ『ユリイカ』上橋菜穂子〈守り人〉がひらく世界
文化人類学者上橋菜穂子氏がオーストラリアでフィールドワークしたアボリジニのルポルタージュ。
上橋氏の本は『精霊の守り人』しか読んでいないのだけれど、前半の緻密な情景描写と息詰まるアクションに感動した。そして専門の文化人類学に裏打ちされたであろう新ヨゴ皇国の設定。
で、なぜか小説の続きを読むよりも、先に文化人類学のレポートを読んでみたくて手にとったのがこの本。200ページという薄い本ながら、白人社会の中でのアボリジニの歴史と今が生々しく伝わってくる本。
上橋菜穂子助教授 研究紹介(川村学園女子大学 観光文化学科)
オーストラリアの先住民について、様々な角度から研究をしています。オーストラリアという国家の主流社会(アングロ・ケルト系の白人社会の中で、長い年月暮らしてきたマイノリティが、どのような文化変容を被るのか。そして、どんな風に自分たちの文化を創造していくのか……。
「アングロ・ケルト系の白人社会の中で、長い年月暮らしてきたマイノリティ」としてのアボリジニの文化変容を、知り合った人々の語りを元に丁寧に慎重に描いてある。
アボリジニというと、どうしてもエアーズロックの近くで管楽器ディジュリドゥを持つ孤高の民族ってイメージを思い出してしまうのだけれど、この本で描かれるのは白人の街で生活している人々なので勝手に思っていたイメージと随分異なる。
誤解を恐れずに書くと、アメリカの白人社会の中で、歴史として迫害を受け文化的に変容している黒人やインディアン社会に近いものを感じた。
本ではオーストラリアに白人が入ってきた歴史から紐解かれている。こうした不幸な歴史がアボリジニもあったというのは、全く恥ずかしいことに知らなかった。そして現代の彼らの変容と戸惑い。文化人類学というと、独特の風習であるとか思想を学問的に分析するイメージがあるのだけれど、ここで触れられているのはまさしく生活者としての生身の姿。文化としては呪術的側面や各種風習についても語られてはいるが、圧倒的に人々の生活の姿が興味深い一冊になっている。
◆
『ユリイカ 第39巻第6号』(Amazon) (青土社 公式HP)
特集*上橋菜穂子 〈守り人〉がひらく世界
【書き下ろし短篇】ラフラ(賭事師)
〈守り人シリーズ〉外伝 / 上橋菜穂子【よみがえる記憶、読書の歓び】
「もう一つの世界」のにおいを求めて / 上橋菜穂子×荻原規子【更新されるファンタジー】
小谷真理 安達まみ 天沢退二郎 日和聡子【世界を読む男、変える女】
上野俊哉 管啓次郎 長山靖生 永山薫【はばたくイマージュを追って】
白井弓子 大庭賢哉 小林エリカ【ひろがりゆく上橋ワールド】
藤津亮太 米光一成 榎本秋【インタビュー】
「現実(リアル)」を問い直すためのファンタジー / 神山健治
shamonさんにこういう特集本があるのを教えてもらいました。なかなか豪華な執筆陣で楽しみな一冊。『隣のアボリジニ』についても触れられているようです。
◆関連リンク
・上橋菜穂子(Wiki)
・民族誌[上橋菜穂子]の講義情報
・アボリジニ(Wiki)
・
ピーター・ウィアー監督『ザ・ラスト・ウェーブ』(Amazon)
アボリジニを題材にしたSF映画。ずいぶん前にSF大会で英語版で観た記憶。まったく内容を理解できず、どんな映画か記憶にありません(^^;)。この期に観てみようかな。
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コメント
ayaさん、はじめまして。
>>この本が今、絶版になっているようです。
>>復刊ドットコムというサイトで復刊リクエストをしてくださる方がいたらうれしいです。
Amazonでもユーズドしか売ってないですね。しかも3千円超えでとても高い。
『精霊の守り人』がヒットすれば文庫化もありそうなのですが、どんなものでしょう。
復刊リクエストはこちらですね。皆さん、投票、よろしくお願いします。
隣のアボリジニ―小さな町に暮らす先住民 上橋 菜穂子 復刊リクエスト投票
投稿: BP | 2007.06.24 17:55
はじめまして、ayaです。
いきなりですが、この本が今、絶版になっているようです。
復刊ドットコムというサイトで復刊リクエストをしてくださる方がいたらうれしいです。
投稿: aya | 2007.06.24 11:45
とおるさん、お久しぶりです。リンチの『The air is on fire』は入手されましたか?うちのは、6/11着予定のようです。Amazon.com、遅すぎ。
>>アボリジニ映画と言えばニコラス・ローグの『美しき冒険旅行』(原題「WALKABOUT」)ですね。滝本さんがご著書で取り上げられていたので慌てて見ました。名作です。
『美しき冒険旅行』WALKABOUT←これですね。リンク先に滝本氏が好きそうな写真が複数。僕は未見、今度レンタルで探してみます(うちのような田舎にはないかも(^^;))。
>>デイヴィッド・ガンピリルというアボリジニの青年のデビュー作ですが、彼は件の『ザ・ラスト・ウェーブ』の他、『ライトスタッフ』『クロコダイル・ダンディー』にも出ています。
そーか、当然オーストラリアにはアボリジニの俳優もいるんですね。
投稿: BP | 2007.06.02 21:35
お久し振りです。
『ザ・ラスト・ウェーブ』はアボリジニの伝承にある世界の終末でオーストラリアに大津波が来て・・・みたいな話だった記憶が。昔VHS持ってたんですが。
アボリジニ映画と言えばニコラス・ローグの『美しき冒険旅行』(原題「WALKABOUT」)ですね。滝本さんがご著書で取り上げられていたので慌てて見ました。名作です。デイヴィッド・ガンピリルというアボリジニの青年のデビュー作ですが、彼は件の『ザ・ラスト・ウェーブ』の他、『ライトスタッフ』『クロコダイル・ダンディー』にも出ています。
投稿: とおる | 2007.05.31 00:17