■山田 正紀『イノセンス After the Long Goodbye』
山田 正紀『イノセンス After the Long Goodbye』(Amazon)
バトーの一人称で、映画『イノセンス』の前日譚を語ったハードボイルド。
主役は、バトーとその愛犬バセットハウンドのガブ。しかし主役は、僕たちが『攻殻機動隊』で知っているバトーではない。九課も出ない。トグサが一瞬出るだけ、新巻は名前だけ。
まさにバトーを山田正紀が描いたらさもありなん、と想像できる小説。よって、アンチヒーロー的バトー。
冒頭で、バトーが車の中でハッキングされ、無意識層に意識を移行させるような描写があるが、ここはなかなかエキサイティングだった。
山田正紀はこの小説を書くにあたって、電脳と意識とゴーストの関係について、SF的にかなり突っ込んで考えているのではないか。ただ書きすぎてしまっていて、士郎正宗のサイバーパンクな描写には勝てない、という感じ。
だけど意識と無意識の境界を描いているところは、面白かった。
いないはずの息子の夢を観るくだりとか、ガブへ向かって一直線のところとか、ここにも切ないもう一人のバトーがいます。
◆関連リンク
・山田正紀『襲撃のメロディ』
車の中からのネットへのアクセスを30年前に描いた小説。僕はおそらくネットでの情報検索というのを初めて読んだのがこの小説だと思う。『イノセンス After the Long Goodbye』の車の中でハッキングにあうシーンで、この本を思い出した。
・山田正紀(wikipedia)
・山田正紀 - 書評Wiki『イノセンス』
・山田 正紀『襲撃のメロディ』(Amazon)
・『イノセンス』公開記念 押井守とバセットバウンド
・押井 守, 桜 玉吉
『犬の気持ちは、わからない―熱海バセット通信』(Amazon)
・押井作品のキーワードを探る@野良犬の塒 押井守と犬についてはここが詳しい。
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