■デヴィット・リンチの美術展 カタログ感想
『The air is on fire, David Lynch』
デヴィット・リンチの美術展カタログ
『The air is on fire, David Lynch』(当Blog記事)
著者: David Lynch ハードカバー 443ページ
/Cartier Foundation for Contemporary Art
出版社: THAMES & HUDSON
付属品: CD (AUDIO) 2枚 (amazon.co.jp)
待望の美術展カタログが、米amazonへ注文して約2週間たって、やっと届きました。
思ったよりも版型が大きく、縦28cm×横23cm×厚さ3.5cmの堂々たる作品集。紙はかなり薄い部分と、厚い部分が混在。ざっくりカラー4割、モノクロと文章6割といった含有率。
◆CONTENTS紹介 本の頭から順に概略を紹介
01. マジックで描かれ紫色で印刷された文字と落書き 4枚
02. リンチのポートレート カラー1枚
03. カルティエ現代美術財団ディレクター Herve Chandes氏の言葉
04. 2006.12/15 ロサンゼルスで録音されたリンチとKristine McKennaの対談
添付CDの対談の書き起こし 18ページ
05. 鉛筆のスケッチ1枚 無題(ゴッホ?)
06. 絵画2枚 無題(森, 静物)とスケッチ2枚 無題(葉巻の男, 大鎌の男)
07. 映画スチル Six Men Getting Sick 4枚
08. 映画スチル The Amputee 2枚
09. Drawings 54枚 (マジック画,ペン画,メモ等無題。
展示会を紹介したテレビ番組で使用された右の絵等)
10. 映画スチル The Alphabet 6枚
11. 2006.11/20 リンチとBoris Groys, Andrei Ujica氏との会話 21ページ
12. Drawings 54枚 (ペン画等無題。奇妙な人間の顔等)
13. 映画スチル The Grandmother 6枚
14. Drawings 20枚 (ペン画等。奇妙な生物等(Eraserheadの胎児に似たもの))
15. 映画スチル Eraserhead 6枚
16. Drawings 19枚 (ペン画等。抽象画等(The Angriest Dog))
17. 映画スチル The Elephant Man 8枚
18. Paintings 7枚 (タイトル,年号付 2005年作品)
19. 映画スチル Dune 4枚
20. 映画スチル Blue Velvet 6枚
21. 映画スチル Wild at Heart 6枚
22. 映画スチル Premonitions Following an Evil Dead in Lumiere et Compagnie 3枚
23. Paintings 20枚 (タイトル,年号付 1988-2005年作品。黒を基調としたもの)
24. Paintings 13枚 (タイトル,年号付 1990-2005年作品。茶を基調としたもの。Bob)
25. 映画スチル Twin Peaks : Fire Walk with Me 6枚
26. 映画スチル Lost Highway 4枚
27. 映画スチル The Straight Story 3枚
28. Photographs 25枚 (モノクロ無題。廃工場等)
29. Photographs 24枚 (モノクロ無題。街等)
30. 映画スチル Mulholland Drive 8枚
31. Distorted Nudes 28枚 (モノクロ無題。右のような歪んだ裸体写真)
32. Photographs 21枚 (モノクロ無題。ヌード)
33. Photographs 14枚 (カラー無題。ヌード)
34. 映画スチル INLAND EMPIRE 8枚
35. Biographical Information 1枚 (モノクロ。1949年3才のリンチと父親@アイオワ)
36. Photographs 4枚 (モノクロ無題。スノーマン)
ざっとこんな内容になってます。
まだじっくりと眺めたわけでなく、ざっと一通り観たところ。
◆感想
特に素晴らしいのは、24.のBobを主題にした奇妙にねじくれたカラーの絵。特に2000-2005年に描かれた見開き5枚が圧巻。デヴィット・リンチの深層心理が画材の上に漏れ出したかのような映像が素晴らしい。
Drawingsに掲載されているどちらかというと落書き的シュールレアリスティックな自動筆記的な垂れ流し画像(失礼)ではなく、まさしく芸術としての昇華が感じられる。この年代、リンチはMulholland Driveに取り組んでいる。映画としても超絶な完成度を獲得した頃、絵画イメージとしてもリンチのひとつの到達があったのかもしれない。
もうひとつ、31のDistorted Nudesのモノクロ作品群も幻想的で凄く好き。
かなり気持ち悪いと思う人も多いかもしれない。しかしこのたぶんPhotoshopか何か画像処理ソフトで写真を加工したイメージ群の雰囲気は狂気迫るものがある。
と、イメージの極北を描いた後におかれた、父親とのモノクロ写真の3才のリンチくんと、雪だるまの写真。ほのぼのとした画像を眺めつつ、リンチの中に深層で育まれた狂気を想像すると、モノクロの黒い色が読者へと染み出してくる。
パリの展覧会がこの本の順に配置されていたのかは僕は知らないが、頭のページから美術館の中をめぐっているように眺めていくと、雪だるまの写真すら、奥深いものに感じてしまうだろう。擬似The air is on fire, David Lynchを楽しむことができた。
◆関連リンク
・タキヤンのよろめき日記 ちょっとラリックス リターンズ
・The air is on fire, David Lynch - カタログ , BIEF
・当Blog記事 デヴィット・リンチの絵画展@パリ ジ・エアー・イズ・オン・ファイアー
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コメント
shamonさん、まいど、ありがとうさまです。
>>連日連投失礼します。
>>7/12付け日経新聞夕刊に
>>短いですがリンチのインタビューが掲載されています。
これから7/21公開に向けて、どんどん広報されていくようです(公式HP情報)。僕は『キネ旬』の特集を今日立ち読みしてきました。しっかり滝本誠氏が原稿書かれてました。
公開されても東海地区はまだ9月まで待たないといけないようなので、ネットの感想を読めないのが寂しいです。
投稿: BP | 2007.07.13 00:25
連日連投失礼します。
7/12付け日経新聞夕刊に
短いですがリンチのインタビューが掲載されています。
投稿: shamon | 2007.07.13 00:02
とおるさん、こんにちは。
>>今日届きました。
>>まったく素晴らしい本ですね。
とにかく芸術から落書きまでリンチの絵画作品全部が入っているのではないかと思えるボリュウムが素晴らしい。
ただし落書きも喜べるリンチファンのみにお薦め(^^;)>>ALL
>>狂ってるんですよね・・・やっぱり、この人、今更ですが。
>>父親と写った子供の頃の写真、出来過ぎです。
そう、全く良識そのものといった風貌とその内部の屈折率が凄いですよね。
投稿: BP | 2007.06.16 10:50
今日届きました。
まったく素晴らしい本ですね。
狂ってるんですよね・・・やっぱり、この人、今更ですが。
父親と写った子供の頃の写真、出来過ぎです。
投稿: とおる | 2007.06.13 21:03
とおるさん、光一さん、こんばんは。
コメント、ありがとうございます。
>>二の足踏んでたんですが(リンチ・ファンの風上にも置けませんね)
>>買う決心がつきました。
あ、たしかに風上に置けない(^^;)タキヤンにどやされませんか?
>>amazonにまだあるといいなあ。
まだあるようですね。
このカタログ、うちのページからのリンクで既に8冊も売れています。うちのBlogでは同じ本が8冊も売れたのは後にも先にも今回が初です。お買い上げいただいた皆様、ありがとうございます。
>>少し前パリに行ったのでデヴィット・リンチ展見てきました。
みられたのですね。うらやましいです。
>>リンチ展カタログも見ましたが展示の印象とはかなり違う感じでしたね。
そーですか、展示はやはり音楽や会場の洗練された雰囲気とか、随分違うのでしょうね。
>>HPに外から撮った写真を上げてますのでどーぞご覧になってください。
写真拝見しました。
展覧会のタイトル文字が素晴らしくかっこいいですね。ニューロンバチバチです。
投稿: BP | 2007.06.13 00:05
少し前パリに行ったのでデヴィット・リンチ展見てきました。
火曜日の昼間でしたが結構人は入っていました。
会場は1F2面と2階と地下のフロアに分かれていました。
1Fは鉄骨に支持された大型ペイント群、地下はモノクロも含んだ
小作品群とムービーが流れてましたね。
2Fは書籍(リンチ以外)とリンチ展記念のカップセットとか売ってましたがあまり売れている様子はありませんでした。
リンチ展カタログも見ましたが展示の印象とはかなり違う感じでしたね。
重いのでコッチもパスです。
HPに外から撮った写真を上げてますのでどーぞご覧になってください。
(てきとうに変わるので期間限定ってことで)
投稿: 光一 | 2007.06.11 22:01
詳細な解説ありがとうございます。
二の足踏んでたんですが(リンチ・ファンの風上にも置けませんね)買う決心がつきました。
amazonにまだあるといいなあ。
投稿: とおる | 2007.06.10 22:58