■押井守監督 『天使のたまご』
1986年制作のOVA。
NHKアニメギガの「とことん!押井守」の録画で二十年ぶりに観た。
1986年当時に期待して見た僕の感想は、はっきり言って思わせぶり過ぎて抽象的で受け入れ難いものだった。天野喜孝のイメージ画が素晴らしかったし、『ビューティフル・ドリーマー』の直後の作品で、さらに先を行ってくれるのではないか、という期待があったわけだけど、抽象過ぎてそのようなものには昇華できてない、というのが正直な感想だった。
で、今回観るのは二度目。そして今回それほどわかりにくい話とは思わなかった。だけどその抽象性はやはり狙い通りのもので、イメージ先行の作品という感想は変わらない。
で、やはり幻想と現実とか、そういった『ビューティフル・ドリーマー』的観点からみても、そこを超えるものを提示しようとしたわけでないことはよくわかった。
押井守の中に熟成されている聖書とかヨーロッパ(特に東欧か?)とかロシア(タルコフスキー?)のイメージを、陰鬱な光と影と水の映像として描くことが映画の主テーマとして設定されている。現実にその試みは石畳のゴシックな街の映像に、魚の影の映像であるとか、化石のイメージが見事に構成されていて、一種のイメージ画映画として観てもなかなか素晴らしい。
後年、『イノセンス』や『めざめの方舟』でそれをさらに先鋭化したイメージ映像の世界は進化して描かれているが、この『天使のたまご』もそうしたところを楽しむのが監督にとっても観客にとっても幸福なあり方なのだろう。僕はこの映像に川井憲次の音楽をかぶせたものを一度観てみたいと夢想してみた。随分と印象は変わるだろうと思う。
DVD『天使のたまご』(amazon)
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コメント
>>天使のたまごは音楽も素晴らしく、私もほとんどBGVみたいな感覚で見てました。ここにも書いてありますが、もうこんな作品できないでしょうね(商業的にも)。
リンク先の解説、菅野由弘氏の音楽について詳細が書かれており、興味深く拝読しました。
『スカイクロラ』が大ヒットして、押井守が宮崎駿並みの巨匠になったら、いずれ『天たま』を超える好き放題の作品が現れるかも。
観たいようで観たくない、というか、、、(^^;)でもまずはどんなものができるか、楽しみなので押井守がそんな境遇になるようファン皆で大ヒットを願いましょう。
投稿: BP | 2008.06.02 06:05
こんにちは。
天使のたまごは音楽も素晴らしく、私もほとんどBGVみたいな感覚で見てました。ここにも書いてありますが、もうこんな作品できないでしょうね(商業的にも)。
http://www14.ocn.ne.jp/~music001/animation.html
投稿: | 2008.05.31 14:08
あんまりようさん、まいど。
>>女の子のたまごが少年によって
割られて、女の子の絶叫から、もうひとりの自分(少女では
ないおとなの女性)への入れ替わり、そして産まれる無数の
たまご…と、結構露骨な描写(恥)ですよねー。
そういう読みになりますよねー。
>>少年と出会う前の、女の子が‥‥をするシーンというのは
全然気付かなくって…つい最近まで(泣)。
実はまだ気がついてない私。もっかい観ないと(汗)
>>押井はラース・フォン・トリアーの「エレメント・オブ・
クライム」を挙げ、水の描写を「タルコフスキー以上」と推し
ております。
トリアーの映画は84年、時期的には天たまよりぎりぎり
前ではありますが…この作品に実際影響を与えたのかどう
かは…どうなんでしょう?
エレメント・オブ・クライムの禍々しさ、冒涜的な描写は
天たまでは余り見られないとも思えますが…さて。
以前からあんまりようさんお薦めの「エレメント・オブ・クライム」、いまだ未見なのです、申し訳ない。なかなかDVD近所にレンタルなくって、、、と言い訳(^^;)。
>>嗚呼この作品も86年…(私事ですみません、なんかここ
数日(笑)21年前のこの年がフラッシュバックしてるよ
です)。
ちゃいるどふーず・ねばー・えんどでのサルベージ品の件ですね(^^)。
この時期、実家の押入れから発掘って、僕も同じだったので共感しごく。僕は田中光二の『エイリアン・メモ』発掘が最大の成果でした。
ではでは、また!
投稿: BP | 2007.08.21 23:17
こんばんは。
天たまは結構好き(笑)な作品で、数年振りに見返すのを
繰り返してます。初見以降は、割と判り易い話だなーと
いった印象を持ってました。女の子のたまごが少年によって
割られて、女の子の絶叫から、もうひとりの自分(少女では
ないおとなの女性)への入れ替わり、そして産まれる無数の
たまご…と、結構露骨な描写(恥)ですよねー。
少年と出会う前の、女の子が‥‥をするシーンというのは
全然気付かなくって…つい最近まで(泣)。
水の描写、言わずもがなタルコフスキーなんですが、後年
雑誌ブルータスの「あなたが選ぶ映画」みたいな特集で、
押井はラース・フォン・トリアーの「エレメント・オブ・
クライム」を挙げ、水の描写を「タルコフスキー以上」と推し
ております。
トリアーの映画は84年、時期的には天たまよりぎりぎり
前ではありますが…この作品に実際影響を与えたのかどう
かは…どうなんでしょう?
エレメント・オブ・クライムの禍々しさ、冒涜的な描写は
天たまでは余り見られないとも思えますが…さて。
嗚呼この作品も86年…(私事ですみません、なんかここ
数日(笑)21年前のこの年がフラッシュバックしてるよ
です)。
投稿: あんまりよう | 2007.08.21 03:59