« ■日立 立体映像ディスプレイ Transpost 
  小型で持ち運び可能な360度立体映像ディスプレイ
| トップページ | ■74年ぶり最高気温更新 40.9℃ »

2007.08.15

■ガイキングオープニング 金田伊功の作画の進化

Kanada_gauiking_bw
東映アニメーション/ガイキング

OP絵コンテ・演出・メカ作監:大張正巳
原画・キャラ作監:愛姫みかん
原画:雨宮哲 大籠之仁 田村勝之 椛島洋介 牟田口裕基 愛姫みかん
大塚健 森田岳士 山下高明 西田達三 大張正巳 まさひろ山根 戸隠三郎

 今頃、『大空魔竜ガイキング』のOPネタで遅くてすみません。
 戸隠名義で金田伊功氏がひさびさに原画に参加したと聞いて、一度DVDのコマ送りで確認しようと思いつつ、半年近く経ってやっとDVDレンタルしてきました。

 で、Photoscapeの力を借りて、下記分析を試みました。(というか実はこれをやりたくて、Photoscapeを導入(^^;))

Gaiking_op_all_cha_komasuu

 金田伊功の担当シーンは、1'51"~1'55"のわずか4秒。上記図解では右下に小さな数字で各絵のコマ数を記した(右クリックで「リンクを新しいウィンドウで開」いて下さい)。
 コマ数はDVDのコマ送りで確認した数字で、ビデオへの変換の際に2枚の絵がダブって映っているところがある。ダブリ部分は前の絵のコマとしてカウントした。(正確なタイムチャートとは数字が合っていないと思うけれど、そこはご容赦)

 未見の方は、一度試しにDVDを購入/レンタルして観るとわかってもらえると思うけれど、素晴らしくシャープでダイナミックな作画になっている。金田伊功は、『ザンボット3』や『銀河鉄道999』の頃が若さに溢れて奔放さは最高だったと思っていたけれど、このOPは、その頃よりもむしろさらに過激になっているように観える。健在、などと言うと全く失礼で、まさに進化している。

 ではどんなところが進化しているのか。
 今回コマで観て、特にグラフィックデザイン的な感覚がシャープになっているようにみえる。
 上のコマ画像を拡大して観てもらえばわかるが、まず光のエフェクトは往年の頃に比べても決して衰えていない飛躍とシャープさにあふれている。このガイキングOPでの光のエフェクトの奔放さも以前の表現より複雑で激しさを増している。

 そしてさらに特筆すべきは、A,B,Cと青字で書き込んだコマ。
Gaiking_kanada_koma_color_c  ロボットの体の一部または全体が、原型をとどめない形に変形している。というより光のエフェクトとほとんど同じような形にロボットまでもが画面デザインの一部と化している。(『ブライガー』OPでラストロボットが光に変わるシーンがあるが、あれは文字通りそうしたイメージが最初から絵コンテで意図されたシーンだが、このガイキングOPは、作画の乗りで描かれている)

 もちろんこれはわずか1コマ2コマの絵なので、通常の速度だけで観ていてもわからない。はっきり言って流してみていると何か凄くシャープなデザインの画面がダイナミックに動いているように感じられるだけで、何が起こっているのかは、通常の動体視力では感知できない。ただ脳のどこかはこれを感知して、恐ろしくシャープなデザインセンスを感じている。(そういうクオリアが湧き出している。)

 コマ送りをして、気がつくダイナミックな映像メカニズムである。

 この感覚は決してCG技術が進化しても、独自のセンスの持ち主が意識的に関与しない限り、テクノロジーだけでは成しえないものだろう。スクウェア・エニックスが金田伊功をスタッフとして擁しているわけだけれど(第7開発事業部所属)、CGのゲームで彼の感覚を使い切った作品のうわさは聞かない。 

 この進化したグラフィックデザインのような感覚の絵で、アニメーションとしてTVの全編もしくは半分の10分でもいいので見せてほしい。スクウェア・エニックスって、2Dアニメは作る予定がないのだろうか。

 以前、アニメータの感覚と脳内メカニズムについて解析した記事を書いたけれど、このOPで描かれているものは、恐らく人間がかつてアートとして表現したことがないものだろう。

 静止画でも彫刻でもインスタレーションでもなく、アニメーションのみが持つ動きの感覚の芸術。日本のアニメとディズニーの一部(『ターザン』とか『Mr.インクレディブル』とか)しかチャレンジしていないこの領域で、金田伊功がやれることはまだまだたくさんあるはずなのだけれど、、、。さらに今後の進化/領域拡大に期待したい。

 (芸術とか言い出すと大げさだけれど、とにかく感じたことのないものの動きの感覚を我々作画マニアは観たいだけなのだ!
 金田伊功を擁するスクウェア・エニックスは、そうした映像のエッジを広げる責任を担っているという認識を持ってもらいたいものだ。切に。)

当Blog記事
池谷裕二 『進化しすぎた脳』 感想 3 + α
 アニメーター磯光雄と金田伊功と脳の構造の関係


◆関連リンク
OPを担当したゲームが連続リリース! 金田伊功ミニ・インタビュー!!
 (WEBアニメスタイル TOPICS)

金田
 抱負ですか? なんですかね。一生、「一(いち)アニメーター」で行ければいいかな、と思ってますけど。昔は「タップだけなのも、嫌だな」と思ってたんだけど。結局、タップしかないのかな、と(苦笑)。
 ええ。3Dもちょっと勉強させてもらったけど、本格的にできるようになっていない、というよりは向いてないかも……。やっぱり、タップですかね。

DVD『ガイキング』(amazon) シリーズ後半(29話~)のOPで金田伊功参加。レンタルはお間違えなく。  
・『大空魔竜ガイキング』オープニング(YouTube)
 ここの映像は質が悪すぎるので、是非DVDを。
我等の金田伊功! ガイキングOPに降臨! (2ch)
・当Blog記事
 金田伊功イラスト『無敵鋼人ダイターン3』DVD&ガイキング『Oh! my god』
「ガイキング」エンディング主題歌『Oh! my god』(amazon)

|

« ■日立 立体映像ディスプレイ Transpost 
  小型で持ち運び可能な360度立体映像ディスプレイ
| トップページ | ■74年ぶり最高気温更新 40.9℃ »

コメント

 電気屋エディさん、こんばんは。
 本当に衝撃のニュースでした。

 自分の中の何かが喪失した感覚が大きく、思っていた以上に金田さんって、大きな存在だったのだと、本当に今日も一日、肩を落としていました。

 会ったことはありませんでしたが、身の回りにいる人と同等の存在感。

 清志郎の死も大きな不在感を感じましたが、さらに今回は長引きそうです。お別れの会、8/30(日)とのことですが、行ってみようかと、、、。

投稿: BP(電気屋エディさんへ) | 2009.07.23 23:31

金田伊功さんが心筋梗塞でお亡くなりになったようです。ファイナル・ファンタジーの頃から身体を悪くされていたと噂でしたけれども。

投稿: 電気屋エディ | 2009.07.22 17:23

 ミネコさん、はじめまして。
 コメント、ありがとうございます。

>>映画ではケン・ラッセルなどもそうですが
「ムービー」という芸術なんだな…と
「ムービー」だけで充分刺激的て面白いんだ!と
今更ながら気が付きました。

 絵が動く、写真が動くって、本来カンドーだったはずですよね。そんなことを思い出させてくれる映像や映画にいつも出会っていたいものです。

>>もしかして私にとって、金田伊功一が番激しく影響を受けていた「アーチスト」だったのかも…
今更動画には行けませんが(私は漫画家です)
意識して「金田スパーク(笑)」を作品に取り入れていきたいと
決意しました~

 素晴らしい!漫画の中であのシャープな動きを再現できた人は未だいないような気がするので、ぜひぜひチャレンジしてください。楽しみにBlogを拝見したいと思います。

>>大変興味深い記事でした、ありがとうございます。

 こちらこそ、金田ネタでお話しするのは大好きなので是非またお越しください。

投稿: BP | 2008.02.13 23:21

初めまして!「金田伊功」で検索してたどり着きました、
このアニメーターは大変印象深い天才だと常々感じておりましたが、
私にとって謎で(笑)ずっと解けない魅力的な謎でした。

今回一枚絵というか絵でも彫刻でもないインパクト!との看破
激しく納得致しました、

映画ではケン・ラッセルなどもそうですが
「ムービー」という芸術なんだな…と
「ムービー」だけで充分刺激的て面白いんだ!と
今更ながら気が付きました。

もしかして私にとって、金田伊功一が番激しく影響を受けていた「アーチスト」だったのかも…
今更動画には行けませんが(私は漫画家です)
意識して「金田スパーク(笑)」を作品に取り入れていきたいと
決意しました~

大変興味深い記事でした、ありがとうございます。

投稿: ミネコ「離婚日記」 | 2008.02.11 12:58

 tQyさん、はじめまして。コメント、ありがとうございます。

>>私はゲーム業界でデザインの仕事に携わる傍ら、
GUIやインターフェースデザインというものには、
視覚心理学や脳の働きなどの研究がもっと重要なのではないかと思い、
ぼつぼつと関連の書籍をあさっております。

 最近、HMI:Human Machine Interfaceって、研究が盛んな領域ですよね。視覚心理学、脳科学で面白い知見があったら、ここのコメントで教えていただけるとうれしいです。
 僕は主に映像作品が人に及ぼす影響のメカニズムに興味があるのですが、、、。

>>以前ご紹介いただいた、『進化しすぎた脳』もぜひ読もうと思っております。

 これ、本当に目からウロコで、しかも読みやすくお薦めです。
 ここで紹介したこと以外でも面白い話満載で、HMI的にも参考になる話がいろいろ記載されてました。

>>私たちの想像以上に、視覚やそれに基づく判断は、脳そのものの仕組みに依存しているようですね。

 人類は、頭に自分をある意味呪縛する情報処理装置を持って活動している、というのが『進化しすぎた脳』で感じたことです。だからこその面白さもあるのですが、、、。

 今後とも、よろしくお願いします。

投稿: BP | 2007.08.16 09:28

はじめまして。

いつも興味深く読ませていただいております。

私はゲーム業界でデザインの仕事に携わる傍ら、
GUIやインターフェースデザインというものには、
視覚心理学や脳の働きなどの研究がもっと重要なのではないかと思い、
ぼつぼつと関連の書籍をあさっております。

そういったわけで、今回の記事もとても面白く読ませていただきました。

私たちの想像以上に、視覚やそれに基づく判断は、脳そのものの仕組みに依存しているようですね。

以前ご紹介いただいた、『進化しすぎた脳』もぜひ読もうと思っております。 

では、お騒がせしました。

投稿: tQy | 2007.08.16 00:38

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ■ガイキングオープニング 金田伊功の作画の進化:

« ■日立 立体映像ディスプレイ Transpost 
  小型で持ち運び可能な360度立体映像ディスプレイ
| トップページ | ■74年ぶり最高気温更新 40.9℃ »