■『電脳コイル』 第18話「異界への扉」
電脳コイル 第18話「異界への扉」(公式HP)
ネットの噂によると、メガネの設計や開発の過程は複雑な利権と歴史にいろどられているそうです。
第19話 黒い訪問者
第20話 カンナとヤサコ
第21話 黒いオートマトン
第22話 最後のコイル
右は10/1の郵政民営化に合わせたかのような郵便マーク(サッチー)の爆裂の様子(^^;;)。というどうでもいいことはおいといて、いよいよ物語が核心へと進み始めた。このままラストまで高いテンションで突っ走りそうな雰囲気。
"鍵穴"の描写が素晴らしい。子供たちの世界の隣にある異界をこんな形で映像化して凄みを感じさせるスタッフの力量にとにかく拍手の一本。
電脳体が現実体の位置とずれるというのがどういうことを意味するのか。これを考えていて、とても怖い物語に潜む設定を想像してしまったので、書いてみる。もしかして低確率だけど、当たっている可能性もないと言えないので、ネタばれ注意とします。この設定が本当に隠されているとしたら、相当なショックがあと8話の間にセットされているかも。
★★★以下、ネタばれ(かも)、注意★★★
電脳体が現実体の位置とずれるのは、どういうことか。
電脳体というのはサーバの中にある個人データの集積。そこにいったいどんな情報が入っているか、これを考えることがカギになるのだろう。
◆僕の推定 まず結論
電脳体には、メガネで可視化できる外観データの他に、メガネと関係なく、現実体と何らかの関係を持った人工知能的なソフトウェアが含まれるのではないか。
それは例えば、4423が植物人間になるまでのその個人の意識のコピーだったり、ハラケンの狭心症(?)の心臓をいつも規則正しく動かしているペースメーカ的な制御プログラムだったり。
そしてメガネのON/OFFと関係なく、その電脳空間の人工知能的プログラムは、なんらかの手段で現実体と通信し、体へ影響を与えている。(ここでメガネと関係ないと仮定しないと、おばちゃんがハラケンからメガネを簡単に奪ったことを説明できない)。そのなんらかの手段というのが、たぶん非接触で人体と電脳空間を通信する手段、「電脳コイル」。
「電脳コイル」を持った子供たちだけは、メガネなしで実は電脳空間と通信できる。その機能が「イマーゴ」と呼ばれるのだろう。そしてその目的は、なんらかの身体/脳機能障害を持つ子供たちを、電脳の治療制御プログラムによって助けるため(これを「電脳治療」という)。治療には身体機能の補助と、欠損した脳機能の知的補助の大きくは二種類がある。つまり「電脳コイル」の子供たちは、実は身体/脳機能障害を持つ子供たちのことなのではないか。(こうして書いてて、今まで描写された幸福な夏休みの子供たちの生活を思い浮かべると、ズキズキ胸の辺りが痛む)
イサコもハラケン、そしてもしかしたらヤサコ、京子、電波ももしかしたら、、、。メガネの通信でなく電脳空間の声を聞く能力のあるものは、「電脳治療」中の患者なのでは、という邪推。(そしてさらに暴走すれば「コイル探偵局」は、その患者を身近でメガバアが見守るための仕組み)。
というように考えないと、単なる電脳体のズレは、現実体になんら悪影響を及ぼさないはず。『電脳コイル』は今まであくまでも科学的に成立する非常に論理的な世界を描いてきている。「電脳空間」と「電脳メガネ」の設定で、ここまで奇想な話を近未来で科学的に描写できる設定をしているのはさすがである。それがここへきて、ホラーへ足を踏み込む。当然そこにも科学的な設定があると考えるべきでないだろうか。
そうすると気になるのは、ただ単に位置認識が電脳体と現実体でずれたところで、現実体が身体/脳機能に障害を受けることはありえないはずではないかという疑問。上左の写真にあるようなずれた後の現実体の眼がうつろになることもないはず。
そこを考えていくと、もともと身体/脳機能的な障害を持っている子供たちが電脳体によって、健常者と同じに生活できているのではないか、というところへ帰着する。残酷だけれども、今までの物語を読み解くひとつの可能性としては、有り得るのでは。
おじじの孫だったから、ヤサコはそうした治療を先駆的に受けている。まるで草薙素子が肢体不自由者だったゆえに義体という技術を身にまとったように。
◆その成り立ち
交通事故を根絶するために電脳空間という技術が産業的にも政策的にも人々に認められたのだろう。その際に、「電脳治療」への利用も合わせて電脳空間の実現のモチベーションになったと思われる。しかし個人的な身体/脳機能障害との関係から、公には言われていないのかもしれない。
産業利用の過程でいろいろな利権がからみ、そんな中で公になっていないのかもしれない。
サーバにあるその個人の電脳体は、外観データと合わせてその個人が経験してきたもろもろのデータも持っているのかもしれない(これはメガネを通して)。つまりその個人のパーソナリティの一部である思考の仕方が記録されている。そして個人の副脳みたいなものとして構成されている。個人の思考の仕方から、その個人の脳内のプログラムを推定し、コピーしていると考えてみる。
そして現実体が、身体/脳機能障害にあった時、この電脳体が利用されるのかもしれない。その時にメガネという外部の取り外せる装置でなく、いつも確実に身体/脳と通信できる「電脳コイル」が埋め込まれる。
今後の展開は、死後の人間の電脳体(それは上述の副脳的意識コピーからなるなんらかの意識体)により、異界へ引き込まれる登場人物たちが描かれるのかもしれない。そして明らかになる彼らの現実体が持つ障害。こうして考えると、さらに物語は陰鬱な世界を描くのかも。ただ4423の復活とか、そうした明るいベクトルもみえて来る可能性はある。
今日は重い話ですみません。しかも暴走して、読みにくい文章!
はてさて残り八話がどう動きますか。乞うご期待!!
◆関連リンク
「電脳コイル」の携帯サイト「電脳コイルモバイル」が開設されました。無料コンテンツや待ち受け画像、ゲームなどが楽しめます。アクセスは携帯に「http://d-coil.mobi/」を入力するか、右の二次元コードで。
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コメント
成田ひつじさん、はじめまして。
お名前は本名?ではないですよね。とても語感の良い名前ですね。
ひつじと言えば、村上春樹は今日ノーベル賞、獲れるのでしょうか。
>>これは私の想像ですが、電脳メガネ装着者の脳自体がイマーゴを介して一種のサーバーとして機能しているのがコイル世界の電脳空間ではないかと。そして「あっち側に行った」状態とは、人間本来の感覚がイマーゴに「乗っ取られた」状態ではないかと思ったりします。
あ、面白い解釈ですね。
だから、電脳体が遊離すると、身体と意識に異常が出るということですか。
>>今後を楽しみに、そして少し震えつつ見続けたいと思っています。
今週の「黒い訪問者」も迫力ありました。
京子が眠っていたのがポイントで、熱が出た影響しかわからなかったので、電脳体の遊離が現実体にどう影響するかはまだ不明ですね。
でも電脳体京子は、あきらかに意識を持っていたので、意識の電脳化はある程度、この世界では成功しているということが明らかになりました。
あと7話、見逃せません。
投稿: BP | 2007.10.08 09:00
初めまして。
私も「電脳コイル」楽しみに見ております。
これは私の想像ですが、電脳メガネ装着者の脳自体がイマーゴを介して一種のサーバーとして機能しているのがコイル世界の電脳空間ではないかと。そして「あっち側に行った」状態とは、人間本来の感覚がイマーゴに「乗っ取られた」状態ではないかと思ったりします。
まああまり当たっている可能性は無いと思うので、今後を楽しみに、そして少し震えつつ見続けたいと思っています。
投稿: 成田ひつじ | 2007.10.01 21:19