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2008.01.23

■井上晴樹『日本ロボット戦争記1939-1945』

Robot_sensou_ki 井上 晴樹『日本ロボット戦争記―1939~1945』(amazon)
NTT出版 (公式HP)

 名著『日本ロボット創世紀 1920~1938』に続く、井上晴樹氏のロボット年代記。値段が高かったので、まずは図書館で借りて読んでみた。

 もの凄い膨大な資料を調査して、1939-1945年という第二次大戦下でのロボットの動向を緻密に描き出している。写真、挿絵、書誌事項、そして登場する人物の生没年まで詳細に記載されており、資料的価値も恐ろしく高い。とにかく1939-1945年の間に、ロボットと名の付くものは人形だろうが、自販機、自動ドアだろうが、広告のロボット風のカットだろうが、全部網羅されているのではないかと思えるほどの充実ぶり。

 まさにロボットを語るには、必携かも。この資料的価値だけでも、この本の値段は納得できる。僕は自分で買うことにしました。

 戦前と戦中に、「ロボット」という用語が現在のロボット+自動戦争機械+タンク(装甲装置的意味)+制御装置+コンピュータという広範囲の技術領域を指す言葉として使用されていたことがよくわかる。

 そして見事に最終章では、「戦争記」そのものといっていい記述がある。ここはネタばれになるので書かないけれど、是非最後まで読んでみてほしい。戦争の意味と人間のロボット性についての記述が感慨をもって語られている。「戦争記」としての見事な終章だと思う。

◆関連リンク
福本和夫『カラクリ技術史話』(amazon)(1943)
 たぶん上記の本の中身の紹介として下記のような人造人間の話が大変興味深かったので、ネットで検索。(正確には『技術史話雑考』に出てくる話として紹介されている)
中国科学説話雑識 番外編 中国古小説のロボット
 中国の人造人間に関する記述。話が本当なら、既にBC1000年頃にこのようなバイオテクノロジカルなロボットが中国で作られていたことになる。恐るべし。

Image1 「偃師造人」  『列子』湯問篇

なるほど、みな革や木を材料として膠や漆で固め白黒赤青といった色を塗って組み立てたものであった。穆王が詳細に調べてみると、内は肝臓・胆嚢・心臓・肺臓・脾臓・腎臓や胃腸、外は筋肉・骨格・手足や関節・皮膚や毛髪・歯に至るまで、全て作り物であった。しかも揃っていないというものは無かった。それを組み立てると元通りになった。穆王が試みに心臓を取り外すと口がきけなくなり、肝臓を外せば目が見えなくなり、腎臓を外せば歩けなくなった。穆王は「人間の技術も極めれば造物主と同じ事が出来るのかのう」と感心して、副車(乗り換えるための予備の車)に命じて偃師を載せて都へ連れ帰った。

・『列子』湯問篇 偃師 宇田整骨院・ロボット・鉄腕アトム・人造人間 こちらにも同様の記述
福本和夫著作集 全十巻(こぶし書房)2008年刊行予定

・エニアックの前に作られた機械式のコンピュータ。
Harvard_mark_1horz_2
the IBM Automatic Sequence Controlled Calculator aka The Harvard Mk I
『海野十三傑作選〈2〉地球要塞』(amazon) 
 『ロボット戦争記』の表紙絵はこの本の伊藤幾久造氏によるイラスト。
 ちなみにテキストは青空文庫で読めます→『地球要塞』
・その他作品は、作家別作品リスト:海野 十三(青空文庫)

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