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 『パルナッサス博士の想像力:The Imaginarium of Dr. Parnassus』 »

2008.02.13

■山本弘 『MM9』 僕たちの町であんな怪獣を暴れさせないでくれ(^^)

山本弘『MM9(エムエムナイン)』(東京創元社HP)

Mm9  地震、台風などと同じく自然災害の一種として“怪獣災害”が存在する現代。有数の怪獣大国である日本では、怪獣対策のスペシャリスト集団「気象庁特異生物対策部」、略して「気特対」が日夜を問わず日本の防衛に駆け回っていた。

 図書館で借りて読了。
 これは円谷ウルトラシリーズで育った世代には嬉しい一冊。全編円谷への愛に満ちている。

 特に素晴らしいのが、最終話「出現!黙示録大怪獣」。
 怪獣のヴィジュアルがいい。東宝怪獣のアレを思い出すのだが、体表の赤い色と背中にある○○が異様な光景をイメージさせている。ここは是非、樋口監督に映画化してほしいもの。

 いささか残念だったのは、その円谷への愛ゆえに、もう少しSFとして突っ込んで書いたら面白くなりそうなところも、日曜七時のTVシリーズの雰囲気を重視するあまりに人物描写や組織面等々で脇の甘さが目立って、物足りなさがでてしまっているところ。

 この点では先行するウルトラマンリスペクト作品である小林 泰三『ΑΩ(アルファ・オメガ)』の方が出来が良かった記憶。

 本作では「人間原理」を用いたSF設定がなかなか面白い。ここをもっとハードに拡張して怪獣を物凄い存在として描けていたら、SFとしての評価も高かったのだろうと思う。

◆某SF研OB 必読 「危険!少女逃亡中」

 ここからは昔の仲間に私信(^^;)。
 この話には、僕たちがよく知っている長良橋や金華橋や忠節橋といった地名が目白押し。たぶんTVでは放映できないとんでもない怪獣がよく知っている場所で暴れまわる。
 この異様なビジュアルをリアルに楽しめるのは、某SF研OBの特権。学生時代にこの作品が刊行されていたら、どんなにか盛り上がったろう。きっとだれかが自主映画化をたくらんだことでしょう(どうやって撮るんだ!と突っ込まないように)。
 必読です>>ミのつく職人くん、鬼頭くん、クマさん他。
 (どうでもいいが、金華橋は「きんかきょう」とルビが振られているが、「きんかばし」が正解)

◆関連リンク
山本弘のSF秘密基地 『MM9』
 各話あらすじと裏話、過去の災害として描写される怪獣の原典が説明されている。
小林 泰三『ΑΩ(アルファ・オメガ)―超空想科学怪奇譚』(amazon)
山本弘『MM9』(Amazon)
シオドア・スタージョン他, 中村 融編『千の脚を持つ男―怪物ホラー傑作選 』

 

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コメント

 ミネコさん、おはようございます。
 コメント、ありがとうございます。

>>今まで語る?友も居ない環境だったので感激です(笑)

 僕もリアル生活では既に数年「金田伊功」という音をしゃべっていません(^^;)

>>もっと早くこういうサイトを回れば良かった…良かった…良かった…(エコー

 ネットの良さは、こうしたマイナーな趣味の同好の士がすぐ見つかることですね。

>>昔銀座に勤めていた頃、かちどき橋を歩いていたとき上司に、
「僕の家…この辺だったんだけど、昔ゴジラに壊されちゃってさ…」と悲しげに指さしていたことを思い出しました(笑)

 そうなんですよね、既に一度破壊された僕たちの日常の街。これが怪獣の醍醐味。

>>それ!00万回見ました!特撮…好きなんです!
と言えなかった臆病者の私ですが(弱)

 いまだに僕も会社では猫かぶってる(本当は猫でなくゴジラの着ぐるみをかぶりたいのですが、、、(^^))
 なので飲み会の席で何度、このBlogのことをしゃべりそうになったことか、、、我慢我慢。

>>初代円谷監督の手仕事フィルム「サングラスに映る炎」など
一コマ一コマの衝撃に密かに涙ぐみ胸を熱くしていました。

 キングギドラの光線が金田に影響している、というのは池田憲章氏の分析だったと思いますが、円谷のこうした手仕事が金田に流入しているとしたら、素晴らしい日本の伝統ですね。

投稿: BP | 2008.02.17 09:51

金田ネタでレスありがとうございます☆
今まで語る?友も居ない環境だったので感激です(笑)
もっと早くこういうサイトを回れば良かった…良かった…良かった…(エコー)

調子に乗ってコメントします、
面白そうな本ですね、是非読んでみようと思います。

昔銀座に勤めていた頃、かちどき橋を歩いていたとき上司に、
「僕の家…この辺だったんだけど、昔ゴジラに壊されちゃってさ…」と悲しげに指さしていたことを思い出しました(笑)

日本食品倉庫側の団地だそうです。

それ!00万回見ました!特撮…好きなんです!
と言えなかった臆病者の私ですが(弱)
初代円谷監督の手仕事フィルム「サングラスに映る炎」など
一コマ一コマの衝撃に密かに涙ぐみ胸を熱くしていました。

これからよろしくです(笑)

投稿: ミネコ「離婚日記」 | 2008.02.14 11:16

 ミのつく職人さん、登場、ありがとうございます。

>>リンクを修正くださいませ。

 あれあれ、即修正しました。

 我々にはリアリティ倍増のおまけつき本なので、お得ですよ。って自分は図書館かよ!>>BP

投稿: BP | 2008.02.13 23:29

さっそくamazonの買い物かごにとクリックしたら「入力したURLが当サイトのページと一致しません」ですって。リンクを修正くださいませ。

投稿: ミのつく職人 | 2008.02.13 21:58

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