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2008年5月

2008.05.30

■Massive搭載ロボット Zeno:ジーノ

Zeno_by_massiveMassive搭載ロボット Zeno:ジーノ 
 MASSIVE(公式HP)  Massive Robotics
 Robot Driven by Massive Software Brain
   Debuts at Wired Nextfest

The vision and decision making components in Massive Software give Zeno the ability to navigate, make facial expressions, and move his body based on what he sees in his physical environment. The video coming in from Zeno's eye camera is fed into the Massive part of his brain so that he can move appropriately and respond emotionally to what is going on around him.

 MASSIVEの本国サイトを見ていたら、びっくり。
 なんとこのAIソフトを搭載したロボットがあるらしい。

 調べて行くと、例のアインシュタインやPKディックロボットを作ったHanson Robotics :: Conversational Character Robots ::製の二足歩行ロボット・ジーノ。

 このロボット、体のデザインと歩行は、ロボ・ガレージの高橋智隆氏氏が担当しているらしい(Robot Watch)。しかし顔はHanson Roboticsらしいデザインで、表情が生々しい。
 日本のロボットよりも人間っぽいヒューマノイド。これに人らしい動きをまわりの状況を判断しながら生成するMASSIVEを入れたらかなりのものでしょう。

 今後、これがMASSIVEで群衆として数十体同時に動きだしたら、かなり気持ち悪いだろう。確実に人間とロボットとの間の不気味の谷おち。(でもどうせそんなソフトを実装してるなら、早くそんなビデオが観たい)。CGの仮想空間ではぐくまれたAIが、リアルな世界にロボットの体をまとって出現する。まさに飛 浩隆『ラギッド・ガール』の現実化である。

◆関連リンク
ZENO Blogもある。もちろんBlogはAIが書いている(わけはない(^^;))

フィリップ・K・ディック アンドロイド・プロジェクト

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2008.05.29

■Massive:マッシブ 自律型群衆シミュレーション

Massive マッシブ 自律型群衆シミュレーション 群衆生成
 Massive > デモムービー MASSIVE - Wikipedia

Stephen Regelous がVFX業界のために開発した。数千から数万の個別に動くエージェントを容易かつ迅速に生成できる。ファジィ論理を使って、各エージェントが周囲の状況にそれぞれ独立した反応を見せるようにできる。

 『父親たちの星条旗』をBlu-Rayで観た。戦闘シーンのCG作りこみがリアル。実際の硫黄島の戦場写真が最後に映されるが、かなり忠実に映像化されていたようだ。

 で、ディスクに入っていた特撮メイキング映像でMassiveのことを知った。MassiveとはMultiple Agent Simulation System in Virtual Environmentの略。
 『ロード・オブ・ザ・リング』の特典映像のどこかで、ピーター・ジャクスンが人工知能を持ったCGソフトで群集を生成した、というコメントをしていたが、その時はどんなソフトかわからなかったが、やっと『父親たちの星条旗』で判明。

 たぶんCGに少し詳しい人達には、周知の事実なんでしょうね、このソフト。(遅くてすみません)
 『キングコング』『ナルニア』『300』『I, ROBOT』『ハッピーフィート』『アント』と名だたる群集映画がこのソフトの恩恵を受けているとのこと。

Massive > 製品概要

自 然な知覚
人口生命技術ベース。Massive のキャラクタは、聴覚や触覚を持ち、環境に対して自然自律的に振舞います。

微妙な動きに対するファジー理論
ファジー理論を用いてキャラクタのリアクションをデザイン。
キャラクタはより自然に、ロボットのバイナリ原理的なぎこち無さ無くリアクションします。

 リンク先のベンダーのページで見るとソフトが350万円。
 エキストラを一日1万円で雇ったとしたら、約100人を3日間拘束したのと同じ金額で(^^;)、いつでも数千人の人間を動かせるわけだ。

 リンク先のデモムービーにピーター・ジャクソン他、各SFXスーパーバイザー他のコメントが入っている。このソフト、いろんな状況を再現するエージェントがあるらしい。

 音にも反応できるAIとか、剣同士の戦い等々。当然、衝突などの物理的なシミュレーションも実現している。

 モブシーンと言えばアニメでは宮崎駿だが、彼の描くモブシーンは個々の人間がかなりひょうきんな動きをして観ていて飽きない。MASSIVEもオプションで「宮崎」というそんな動きを作りだすAIを作ったらいいのに。

 日本のアニメータは、これらソフトが目標とするリアリティとは異なる方向へ舵をとっていくことが必要なのかも。

 明日は引き続き、Massiveネタ。このソフトを搭載したロボット、Zeno:ジーノについて。 

◆関連リンク
Massive > 動作推奨環境.

オペレーティングシステム: Red Hat 7.3, 9.0, Fedora Core 2
PC推奨環境: 2 - 3 Ghz Pentiumプロセッサ
1 - 2 GB のRAM
Nvidia Quadro グラフィックカード(FX3000以上推奨)

最低機能環境: 1 GHz Pentiumプロセッサ
512 MB のRAM
Nvidia GeForce グラフィックカード

 OSはLINUXらしいけど、これならうちのノートPCでも動く。



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2008.05.28

■ラース・フォン・トリアーの新作2本
  『The Boss of It All』『Antichrist:アンチキリスト』

The_boss_of_it_allThe Boss of It All(英国) 米サイト

 これはIT企業の社長に俳優がなるというコメディ。06年の作品だけれど、日本ではまだ未公開。もしかして『ドッグヴィル』『マンダレイ』があんなだったので(いや、僕は傑作だと思うけど)、配給会社が二の足を踏んでいるのか?

 ラース・フォン・トリアー監督でコメディというのは僕は観たことがないのだけれど、どんな作品になっているんだろ。

Apple - Trailers - The Boss of It All - Trailer
Direktøren for det hele(原題)

Antichrist (2008) (IMDb)

ホラー映画の主張: フォン・トリアー監督、次回作はホラー作品か

この世界は“神”ではなく“サタン”によって創られたという設定の作品

ラース・フォン・トリアー、新作『アンチキリスト』撮影を鳥に邪魔される!?(eiga.com)

ドイツで始まった新作「アンチキリスト(Antichrist)」のプリプロダクションが一時中断の憂き目にあったことをドイツ側の出資者が明らかにしたが、その理由というのが、メインのロケ地として考えていた場所にコウノトリが巣を作ってしまったことにあるらしい。

 トリアーでこのコンセプトの映画は相当期待してしまう。鳥の邪魔が入らないのを願うばかりである。

 三部作の最後になるはずの『ワシントン』はまだ先のようだけれど、これらの作品が(たぶん)ハードな『ワシントン』への助走になっていることを祈りたい。

◆関連リンク
<2006年コペンハーゲン国際映画祭>オープニングにラース・フォン・トリアー監督の新作上映 - デンマーク 写真2枚 国際ニュース : AFPBB News

当Blog記事
『ドッグヴィル』   LARS VON TRIER "DOGVILLE"  
『マンダレイ』   LARS VON TRIER's "MANDERLAY"

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2008.05.27

■チェコ ラテルナ・マギカ:Laterna magika
   『ワンダフル・サーカス:Kouzelny Cirkus』映像

air artlog: #4 映像舞台芸術の粋、ラテルナ・マギカ。

知る人ぞ知る映像を使った舞台パフォーマンス、ラテルナ・マギカ。これはメディア・アートのルーツとも言われているそうです。今も、プラハの町にはラテルナ・マギカ専用のシアターがあるのです。

 昨日の『ラギッドガール』に関係して、ラテルナ・マギカの映像がネットにあったのでご紹介。
 ここに動画と解説があり、シュヴァンクマイエル制作の映像も後半に入っている。これはたぶん日本で初めて観られる映像。

◆関連リンク
当Blog記事
チェコプラハ ラテルナマギカ
ヤン・シュヴァンクマイエル他『ワンダフル・サーカス』予告編@ラテルナマギカ  Kouzelny Cirkus (Wonderful Circus) @ Laterna magika

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2008.05.26

■飛 浩隆『ラギッド・ガール―廃園の天使Ⅱ』

飛 浩隆『ラギッド・ガール―廃園の天使Ⅱ』

人間の情報的似姿を官能素空間に送りこむという画期的な技術によって開設された仮想リゾート“数値海岸”。その技術的/精神的基盤には、直感像的全身感覚をもつ一人の醜い女の存在があった―“数値海岸”の開発秘話たる表題作、人間の訪問が途絶えた“大途絶”の真相を描く書き下ろし「魔述師」、“夏の区界”を蹂躙したランゴーニの誕生篇「蜘蛛の王」など全5篇を収録。

 硬質な文体で綴られる幻想的でシュールで、そして痛い傑作。
 飛 浩隆氏、きっとジェームス・ティプトリーJr.「接続された女」とかジョン・ヴァーリー「ブルーシャンペン」とか好きなんだろうなー。阿形渓というキャラクターの造形とかサイバーな感覚とか、直接的ではないにしても同様のイメージを感じた。

 ということで調べてみたら、下記のような記事が。

2006年度第6回Sense of Gender賞 大賞
飛浩隆『ラギッド・ガール―廃園の天使2』)

短編「ラギッド・ガール」は、露骨に「接続された女」の影を匂わせているにもかかわらず、実は執筆にあたり(その後も)一度も読み返さないままでした。
というのも「ラギッド・ガール」に専念した七ヶ月のあいだ、私の視野をおおっていたのは阿形渓嬢の圧倒的印象であり、それと格闘するだけでいっぱいいっぱいだったからです。
格闘の相手は印象であり質感であって、つまりは言語化以前の領域でした。そして、阿形渓の質感とこすれ合うことによって、さらなる怪物、安奈・カスキがしだいしだいに飛の中から研ぎ出され形を得ていった、という記憶があります。(略)

 AIの描写とか意識について深く考察した記述が多く、「質感との格闘」というのが的確に物語の雰囲気を表現している。作家の頭の中の「質感」として立ち現れた登場人物や物語を文章として紡いでいく「格闘」。このような意識的な「質感」の表現が丁寧にひとつひとつ硬質な言葉づかいをされた物語に結実している。

 官能素空間について、「感覚器官のふるまいを律儀に計算し、その延長上に人間の意識を描きだそうとすれば、少なくとも体内で生起するあらゆる電気的、化学的反応を逐一計算しなければならない。とうてい実現不能なその難事を正面から解決せず、間に合わせの便法で済まそうとするのが、情報的似姿の本質だった」(P166)と記述されている。

 感覚器官と意識の間に横たわる人間の世界認識のメカニズムが、人それぞれ固有の世界像を形作っていて、それが個性の大部分を占めるような気もしている。少し違和感を持ったのは、そこを官能素として統一してしまうと、各個人がそれぞれに把握する世界像の差がなくなってしまうのではないか、ってこと。そこのところの違和感について、次作『空の園丁』で描きこまれていたら面白い、と個人的に思った。

◆「夏の硝視体(グラスアイ)」
 漁師ジョゼと少女ジュリー、グラスアイの発見『グラン・ヴァカンス』の前日譚的物語。
 『グラン・ヴァカンス』と同じ<夏の区画>が舞台。

◆「ラギッド・ガール」
  官能と残虐の描写が冴えている。ヴラスタ・ドラホーシュ教授のキャラクターが秀逸。「人間の意識と感覚は、秒40回の差分の上に起こる」。小説の読者と登場人物の関係の本質と、そこを伏線としたラスト。特に終盤の6ページの変転は素晴らしい。

◆「クローゼット」 
 死んだ恋人の残された似姿の再生。多重現実と“数値海岸”の組合せで現れる新たなイメージ、ここからまだまだ多くのワンダーを生みだせそうだ。

◆「魔述師」 
 〈数値海岸〉の〈大途絶〉の真相を東欧(チェコ?)を舞台にして描いた一編。
 このタイトルの原題はLATERNA MAGIKA:ラテルナ・マギカ。本書では〈数値海岸〉を運営する会社がラテルナ・マギカ社。そして飛氏のHPのタイトルがラテルナ・マギカ。あれ、HPは確認したら題材不新鮮というタイトルに急に変わってる。
 僕の知っているラテルナ・マギカはチェコの劇場とそこで上演される映像と演劇を融合したパフォーマンスの名前(日本の大阪万博にも来てたらしい)。(当Blog記事 チェコプラハ ラテルナマギカ)。
 映像とリアルが混在するチェコの舞台に刺激されてこのネーミングを付けたのだろうか。
 似姿が体験してきた仮想世界を再生して体感する<数値海岸>とチェコの映像を再生して演じられる舞台。どこか近いものがある??

 この短編、鯨の映像的なイメージとAIの人権問題というネタが効いている。

◆「蜘蛛の王」 
 『グラン・ヴァカンス』の〈夏の区界〉に登場したランゴーニのエピソード。〈汎用樹〉区界という世界設定も素晴らしい。

 『空の園丁』の刊行が待ち遠しい。

◆関連リンク
ラテルナ・マギカ Laterna magika Národní 4, Prague 1(CSA-jp.com)

ラテルナ・マギカの歴史は、1958年ベルギーはブリュッセルで開催された万国博覧会までさかのぼります。当時のチェコ・パヴィリオンにおいてのプログラムがラテルナ・マギカと呼ばれ、後にこの劇場の名前として与えられました。プログラムは言葉を使わず、フィルム・プロジェクターに、ライヴの動きであるダンス、音と光、パントマイム、ブラックライトシアターの要素をからめたパフォーマンスで、劇場は世界中を巡りました。

 「ラテルナマギカ」は、言葉の意味としては、元々「幻灯機」のことのようですね。

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2008.05.24

■なんで??鴻上尚史脚本・演出
  舞台版『ドラえもん のび太とアニマル惑星』

 うぉー、吃驚したぁー。今年の最大級ビックリ。
 今朝、新聞を開くと、舞台版『ドラえもん のび太とアニマル惑星』の広告が眼に留まる。

 「ドラえもんの芝居? どうせ子供だましのいい加減な舞台じゃないの?」と思いつつ、のび太役の俳優の写真なぞ見ようとしたら、、、、何か違和感のある文字が眼に飛び込んでくる、、、あれ、なんだこれ?? 脚本・演出 鴻上尚史、、、えぇっつーー!!」

 この驚きは、第三舞台のファンの方なら、きっとわかってもらえると思う。
 SFで例えるなら神林長平が『忍たま乱太郎』のノヴェライズをするくらい、映画ならデヴィッド・リンチが『おばけのQ太郎』をTVシリーズでリメイクをするくらい、そしてアニメなら押井守が『空手バカ一代』をCG使いまくりで映画化するくらいの吃驚。(貴方も是非この驚きを自分の好きな作家で例えてみて下さい(^^;)) (でもリンチの『おばけのQ太郎』はちょっと観たい。凄まじくシュール)

Koukami_draemonthirdstage.com :

「イギリスに1年間滞在している時、どんなものでも演劇化するイギリスの演劇人の志に感動しました。

そして、それを受け入れ、楽しんでいるイギリスの子どもたちの姿にも感動しました。

国際児童・青少年演劇フェスティバルおきなわ」から子どもも大人も楽しむことのできる演劇をと、求められた時、真っ先に『ドラえもん』が浮かびました。日本の演劇人の一人として、舞台ならではの魅力のある『ドラえもん』が創れたら、これほどの幸せはないと思っています。」(鴻上尚史) 

 古来、アニメの舞台化というのは仰け反るようなものが多かった。娘が小さい頃に連れて行って観たそれらのおぞましさを僕は忘れない。『セーラムーン』の着ぐるみのあの金髪の巨大な頭。そして蕪のような足。その他にも幾つか観たはずだが、あまりに辛い記憶で既に消去されている。これでも小劇団ファンだったのに、なんでこんな酷いものを観ているんだ、俺はって(^^;)。

 良い記憶としては大隈正秋氏の劇団「飛行船」のマスクプレイミュージカル。これは子供も喜んだし、大人も丁寧なつくりを楽しめた。

 、、、、しかしそれにしても、鴻上が、、、。

 あとはドラえもんの着ぐるみがどんなもので、誰が中に入るか(鴻上本人が昔、第三舞台で何かの着ぐるみを着てたので、もしかして、演出家本人!?)。今のところ、新聞広告には役者の名前はない。

◆関連リンク
『ドラえもん』初舞台化が決定! しずかちゃん役にすほうれいこ(オリコン) - Yahoo!ニュース 役者の名前はこちらに。

舞台『ドラえもん のび太とアニマル惑星』は7月の沖縄公演から始まり、熊本、北九州、富山など全国各地で行われ、東京公演は9月に行われる。

◆丸秘情報
 この芝居、ファミリー向けは19:00の回が最終だが、実はレイトショーで第三舞台ファンのための大人版がこっそりとあるらしい。

 今だベールに包まれているが、噂ではファミリー版と同じ展開で進んだ後、ラスト15分でトーンが一変。ドラえもんが舞台で着ぐるみを脱ぐと、そこから現れるのは大高洋夫。そして語られるドラえもんの隠された真実とは、、、、!乞うご期待! (というのはフィクションです。信じないでね。でもこんな嘘でも書かないとやってらんないほど、実はショックだったのさ)

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2008.05.22

■オスカール大岩展 夢見る世界

オスカール大岩展 夢見る世界 ー MOT 東京都現代美術館
  (ひねもすのたりの日々経由)

Ooiwa_oscarl shamonさんが紹介されたこの展示会、幻想的でハートウォームなオスカール大岩氏の絵が素晴らしい。

オスカール大岩(公式HP)

 公式サイトでたくさんの絵を観ることができます。一時間ほどで全点、しっかり楽しませていただきました。その中からいくつかリンクと紹介です。

 shamonさんも述べられているように『電脳コイル』との親和性も高い!

"Light Rabbit meet Shadow Cat 2" まさしくイリーガル どれか一匹がデンスケかも。

"Sleeping Man"(上の引用画) この素朴なタッチと題材の幻想性が好き。

"Rainbow" これ、天沢退二郎『光車よ、まわれ!』のイメージ。

"Whale 1 & 2" こんな巨大なクジラが街に、、、。

"Peace & War (War)" 素晴らしく幻想的な夜。

"Global Warming" この色が好き。

"Bean" (Summer/Winter) 彫像作品も複数ありますね。

"Green River" 緑の幻想的AKIRAの廃墟

"Urban Fossil" どこかの街にこんな生物がいるんですね。

"Ophelio" ロボットのオフェーリオ

◆関連リンク
Fuji-tv ART NET:大岩オスカール幸男展

メディアも映画のように、つまらない事件や出来事を特別なものにする、又は別のものにする力を持っています。メディアが何を報道したいかによって、別の現実を作ることができます。 肉眼で見た現実ではなく、カメラが見たドラマティックな現実を。

情報も商品化される資本主義のこの世の中では、世界の出来事を撮影された視線から見るしかありませんが、私達は現実と信じて一生ずれた“本当の現実”の反射を見続けているのではないでしょうか?

大岩オスカール幸男『はじめてアート』 (amazon)
『Art & ist―大岩オスカール幸男特集』 (amazon)

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2008.05.21

■スイスのフライングマン Yves Rossy "Fusion Man"

Reuters Quickcut: Flying man | Video | Reuters.com 

May 14 - Known as 'Fusion Man', a former pilot has stunned crowds by flying a jet-propelled wing for nearly ten minutes at a peak speed of 300 km/h (186 mph).

Yves Rossy, a Swiss former military pilot and Airbus commander for Swiss airlines completed an official demonstration on Wednesday (May 14, 2008) in the Swiss Chablais region, where he was released from a plane at 2438 metres (8000 feet) with his wing folded.

Yves Rossy - Fusion Man Part 1 of 2

 この飛行は凄い。映画じゃなくって生身の人間。
 姿勢制御とか、コンピュータの進化でこういうのが実現したんですかね。

 元軍人のYves Rossyさんの勇気に拍手。

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2008.05.20

■プレステ3:PS3 高機能ネットワークAV PC その2
  ARMORED CORE for Answer PV 3D-CGロボットの最高峰

Acfa PS3に関して続きです。

◆H.264/AVC再生

 Blu-rayに使われているH.264/AVCという映像圧縮フォーマットは、高圧縮でデコードに大きな負荷がかかる。

 試しに同フォーマットで圧縮された『アーマード・コア フォーアンサー』のPV(右引用画像)をPS3でプレイステーションストアへアクセスしてダウンロード、自分のPCで再生してみた。

 もちろんPS3ではスムーズに再生される映像が、自分のPCでは映像と音の飛びがすさまじくとても観られたものではない。(PCは東芝 QOSMIO F40/85C。いちおうIntel Core2 Duoプロセッサの1.8GHzマシンなのだけれど、全く歯が立たない。

・アーマード・コア フォーアンサー - Wikipedia 
YouTube - ARMORED CORE for Answer
 アーマード・コア フォーアンサー PV1
PV2

 このPVの出来が素晴らしい。僕が観た巨大ロボットもののCG映像としては最高峰。
 機体表面のリアルっぽさ、ディテイルの描きこみと演出。どれをとってもハイレベルでこの映像には奮えます。
 残念ながらPCでダウンロードできないみたいで、ネットではYoutubeに荒い画像があるだけ。 coldcupさんのコメントで下記に高解像度のPVがあります。これはお薦め。

Gametrailers.com - Armored Core: for Answer - Japanese Trailer 2 HD.

◆ゲームマシン

 長文になってしまったけれど、最後にゲームマシンとして。
 上で書いた『アーマード・コア フォーアンサー』PVに興奮して、すぐさま体験版をプレイステーションストアからPS3へダウンロードして試してみた。

 元々ゲームは飽きっぽくて僕はだめなのだけれど、あのPVを観た後のゲーム画面のチープさにガックリして、楽しめなかった。CELLの恩恵がどのあたりにあるのかが、よくわからない。

 他にもダウンロードして試してはみるが、いまひとつ乗り切れない。
 ただ『ラチェット&クランク FUTURE』の体験版はなかなか。まだCELLのパワーでも3DCGのリアルタイム計算としてはこうしたコミカルなものがむいていて、リアル路線のはきついのかも。

 PS6くらいで、『アーマード・コア フォーアンサー』PVくらいのリアルロボットゲームが登場するのかも。

 やはりPS3は僕にとってはAV PC。今までもゲームは、たいがい買ってきても最初の方をやってお蔵入りしてるので、PS3の体験版ダウンロードがちょうど適当で嬉しかったり、、、。

◆関連リンク 
x264(wiki)
・過去記事 プレステ3は映像処理スーパーコンピューターになれるか?  PLAY BEYOND SuperComputer PS3 
ダウンロード | x264 Codec rev.839 - H.264/AVC のビデオエンコーダ.
ise2 AVC Team - video - x264 (H.264/AVC) decoding. 
AVWatch PS3リンク 
本田雅一の「週刊モバイル通信」 Another Story of PS3 #2 成長するビデオプレーヤーを目指すPS3 
同 PS3をメディアプレーヤーとして使う人のためのTips.
同 Another Story of PS3 #1 “忘れ去られたプロジェクト”が生み出した大いなる成果

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2008.05.19

■プレステ3:PS3 高機能ネットワークAV PC その1

PS3 Blu-rayプレイヤーとして、プレステ3を買ったのだけれど、いろいろ遊べる。ゲームマシンというより無線LANを持った高性能AV機能PCといった感じ。
 既に語りつくされた感はあるが、このBlogの視点でいくつか書いてみる。

◆Blu-ray & DVD再生

 もちろんBlu-rayはハイビジョンの高精細な映像をしっかり再生してくれて、気持ちいい。
 ただしデジタル放送のハイビジョンカメラの臨場感のある画像に慣れていると、映画フィルムから取り込まれたBlu-rayのハイビジョンがなんだか鮮明さを一ランク落としたように感じるのは僕だけだろうか。
 フィルムのその質感がいい、というのもわかる。だけれど、もっとここは高解像度でリアルに観たいよな、と思うシーンがいくつかあるのも確か。
 今後、ハイビジョンデジタル放送に慣れた観客に対して、デジタル撮影された映画を、フィルム調に加工してディスク化するか、そのままハイビジョンのクオリティとするかは、映画業界が直面する課題なのだろう。(ハイビジョンとフィルムの解像度についてはこちらを参照)

 あとDVDのアップコンバート機能を期待していた。
 これもなかなか素晴らしい。今まで観ていた同じDVDがワンランク上の映像になった感じ。どう表現すると伝わるかよくわからないのだけれど、僕の感覚としてはプロジェクタで80インチくらいの大きさでDVDを観ていたものを、120インチの大きさに拡大して解像度が変わらない感じ。今までDVDは投影する大きさを小さくして観ていたのだけれど、PS3ではそれが必要なくなったというイメージ。さすがにハイビジョンにはかなわないが、、、(うちのプロジェクタについてはこちらを参照)。CELLの計算能力に感謝。

◆デジタル写真スライドショー

Ps3_slide_show  PCからメモリかDVDにディジタル写真を入れて、PS3で簡単に再生できる。プレステのコントローラで素早い操作感。

 特に素晴らしいのが、スライドショー再生。右の写真を見てほしい(直接PCでキャプチャーできず、テレビ画面を撮影したので、画質はご勘弁)。

 デジタル写真が、プリントされた写真として上から落ちてきて、左から右へ流れて行く。落ちてくる写真は紙の質感を持っていて、他の写真と衝突する様子や影がリアルタイムに再生される。そして時々アクセントとして、ネガフィルムやポラロイド写真の形態で表示される。

 これらの映像はリアルタイムでPS3のCELLにより計算(レンダリング)されていて、しかもコントローラでスピードや拡大率を自由に帰られる。これがなかなか驚異的、そしてすこぶる気持ちいい。僕がPS3で最も感動したのが、実はこの機能。

 家族のここ7年ほどの写真がこのように映像として表示されると、エモーショナルに訴えてくるものがある。マシンのパワーが人の感性に訴えるところが凄い。このソフトはひとつの有力アプリかと思う。(音楽を同時再生できるともっといいのだけれど、、、)

 PCのないお年寄り世帯へ孫のディジタル写真をDVDに焼いて渡すとか、インターネットをPCなしで簡易にやりたいそうした世帯へもPS3って結構手ごろにアピールできるのではないだろうか。

 この記事、明日へ続く。

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2008.05.18

■チェコのアーティストグループ:ZTOHOVEN
  核爆発フェイクビデオとそのドキュメンタリー

Ztohoven_art02horz_2
YouTube - Fiktivní výbuch atomové bomby v Krkonoších (Zprávy ČT24)
                         (放映された映像)
Exclusive trailer: How to stage a mock nuke blast on live TV (Aktuálně.cz)
         (ハッキングを記録したドキュメンタリービデオ)

 チェコのアーティストグループZTOHOVENが、チェコの公共放送局:Czech Televisionのウェブ天気カメラにハッキングして放映された核爆発のフェイク映像。

 07年6/17(日)の事件。ZTOHOVENによる声明文は下記に要約されている。

お天気カメラが核爆発の瞬間を捉えて生放送 - GIGAZINE

 発表された声明によると、(略)社会を脅迫したり操作したりするためではなく、毎日の生活の根本が「メディア」によって成り立っていることを証明するためだったそうです。

 今回の活動によって、実際の我々が現実と思っている世界は単純にメディアが作った世界を見ているだけであり、我々がテレビで毎日見ているものが「現実」であるかどうかはわからない、としています。

 これを読んだ時は、凄いアートだ、と思ったわけです。
 チェコと言えばヤン・シュヴァンクマイエルを思い出すのだけれど、彼のコンセプトに「マニピュレート(不正操作)」というものがある。それを思い出して、まさにマスコミによる操作へのアンチテーゼとしてのハッキングアートだ、凄いと。

 しかし、ZTOHOVENが自作した上記リンクのドキュメントビデオを観て、その感想は脆くも崩れ去った。

 ドキュメントには、放映の瞬間の「大喜びする姿」が歓声とともに映っている。その歓声の音声が彼らの真の意図をしっかり示しているように思う。この卑しい感じの笑いを聴いたほとんどの人は、こいつらは面白半分にやっている、と思うだろう。作品と作者は切り離して考えるという考えもあるけれど、、、。

 テレビを使うことにより生々しいアートをある意味見事に表現したつもりでも、このドキュメントを映像として公開したことで、これも生々しくリアルに彼らの卑しい本質(たぶん)をさらけ出してしまった。

 映像の持つ怖さがここにある、と思う。そして顛末としては以下。

テレビで「キノコ雲」放送の6人を起訴、チェコ 国際ニュース : AFPBB News.

【08年1月4日 AFP】
チェコ・プラハ(Prague)在住の6人が2日、2007年6月、チェコ・テレビ(Czech Television)の番組放送中に、映し出されていた田園風景の映像を核爆発によるキノコ雲の映像にすり替え、虚偽の情報を流したとして起訴された。
 起訴された6人は、チェコ国内の美しい風景をウェブカメラで中継する早朝番組の電波に、何らかの方法で侵入。核爆発に続き、キノコ雲の映像を放送した。  チェコ・テレビによると、虚偽の情報を放送した6人には3年以下の禁固刑か高額の罰金が科せられるという。(略)

Ztohoven_art◆関連リンク
・彼らの過去のアート(右)。
 あまり大したことないなーと。
CzechTek WebLog: Statement made by art group ZTOHOVEN regarding their attack at the public service broadcaster in the Czech Republic. (English) 
CzechTek WebLog: Ztohoven vs. Czech Television (English). 受賞に対するTV局の批判

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2008.05.15

■岩井俊雄 「TENORI-ON:テノリオン」 ヤマハ 国内販売

Tenorion_01 ヤマハ、直感的に作曲/演奏できる
     「TENORI-ON」を国内販売

TENORI-ON | ヤマハ株式会社
TENORI-ON開発日誌

 イギリスで先行発売されていた岩井俊雄氏の新感覚の楽器テノリオンがいよいよ日本でも発売。

YouTube - Toshio Iwai (TENORI-ON) @ Artfutura05

 ここに演奏のビデオがあるけれど、いい味が出てます。
 これなら音楽が苦手の人(>>自分)にも何か作曲ができそう。

 映像的にもLEDが面白い。

◆関連リンク
TENORI-ON (amazon検索) 5/11現在 取り扱いなし。
・当Blog記事 第6回 織部賞 授賞式  岩井俊雄「メディアとアート」

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2008.05.14

■ドミニク・セナ監督『ソード・フィッシュ』

ドミニク・セナ監督『ソード・フィッシュ』 (amazon)

『マトリックス』のジョエル・シルバーが放つVFXサイバー・アクション!
さらなる進化を遂げたド迫力の最新VFX“30秒マシンガン撮影”誕生!!

 うちの近所のレンタル屋にはまだ二十数枚だけどBlu-Rayディスクが置いてあるのだけれど、何故かメジャータイトルに紛れてこの一枚が、、、。で、観たことなかったので、レンタル。

 冒頭のテンポは最高。
 『パルプ・フィクション』を連想させるトラボルタのマシンガントーク(映画論!)、そしてそのあとに続く30秒マシンガン撮影の迫力。

 ここを観るだけでもお薦め。

 、、、、実はその後は派手なパスシーンとかヒロイン ハル・ベリーのカッコよさはあるが、割りとハリウッドエンタテインメントの定石。クラッカーの描写も今一つだし、、、。

 それにしても別エンディングが二本も入っているのだけれど、どちらも凡庸。
 これなら収録しない方が後味いいと思うけどいかがなものか。しかも何故かその別エンディングは、ハイビジョンじゃないし。

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2008.05.13

■サン・ホセ アート ミュージアム : San Jose Museum of Art
  ロボット : エボリューション オブ ア カルチャー イコン
  ROBOTS: EVOLUTION OF A CULTURAL ICON

Robots_evolution_of_a_cultural_icon
ROBOTS: EVOLUTION OF A CULTURAL ICON
  San Jose Museum of Art
  (Hi-Fructose Magazine経由)

 2008.4/12-10/19の期間、開催されているロボットの展示会。

TitleカタログPDF (各作家ページへのリンク有)

 トイ・ロボットのコレクションからアーティスト作品まで展示されている。写真にあるように発砲スチロールの巨大なロボットがいるようだけれど、巨大ロボットでアートといえば、何故、ヤノベケンジのジャイアント・トらやんがいないのか、と日本からの届かぬ不満の声を上げておこう(^^;)。

YouTube - sanjosemuseumofart's Channel
 Clayton Bailey Nemo Gould David Paceという作家ごとの14のビデオが紹介されている。

Curator_2 で、主演は、キュレータのJoAnne Northrupさん。展示作品について語ってくれてます。
 日本からサンホセへはとても行けないけれど、鮮明なビデオでこんな美人に案内してもらえるなら、全然行かなくてもOK(^^)。

 日本のロボットトイをサイバー侍と評していたり、なかなかいい味。

シェンケル、海を渡る 横山作品の展示レポート
世界のアート:マシーネンクリーガー米美術展出撃!
 (Blog ましーねんおじさんのいろいろさん)

 そしてロボット先進国 日本からは横山宏氏作品が数体、展示されているとのこと。
 この精巧な作りによるリアリティ、素晴らしい。

Automaton Blog: Kinetic Sculptor Nemo Gould's Giant Robot Artwork
 この動くスカルプチャーもいい。

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2008.05.12

■幻想植物 栽培日記12 ロマネスコの花とさや
  ROMANESCO FLOWER & SHELL/POD

Romanescoflower_horz_2

 しばらく前になりますが、ロマネスコが開花しました。
 思いの外、かわいい花。宇宙植物の本性を隠して、このように菜の花のような可憐な開花とは。この外観でどんな虫を騙そうというのか!?

Romanescoshell_horz

 そしてそれから3週間ほどたった現在の様子。
 花が落ちた後の茎に見事に莢ができつつあります。

 このままでいくと、膨大な数(5~600個?)の種がとれそう。今年はいくつのロマネスコを収穫できるのだろう。

◆関連リンク 当Blog記事

続きを読む "■幻想植物 栽培日記12 ロマネスコの花とさや
  ROMANESCO FLOWER & SHELL/POD"

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2008.05.10

■SFセミナー2008
  磯光雄インタビュー・電脳コイルの世界

Coil_battle SF SEMINAR Top Page 2008.5/3(土)

15:00-16:00
磯光雄インタビュー・電脳コイルの世界
出演:磯光雄 聞き手:向井淳

20:00-20:45
磯光雄インタビュー番外編

 あのSFセミナーで磯光雄監督を招聘した『電脳コイル』の企画が催されたとのこと。全く知りませんでした。不覚じゃー。
 というわけでネットでレポートを探してみました。興味深いポイントを少し長文ですが、引用させていただきます。レポータの方に大感謝。

磯光雄インタビュー レポート
  (ヒゲ抜き隊ブログ)
(Blog きなこ餅コミック経由)

アニメの表現力
 私にとっては現実の人間を描くのも仮想のロボットを描くのも同じ。
 どちらも「脳内映像を表現する」という意味で同じ。アニメはある意味で実写を超える、とか言うと危ない人扱いされそうだがw。
 現実の女の子より脳内の理想の女の子のほうが可愛いように脳内映像は現実の映像を超えるものだ。

 アニメは一時、現実を完全再現しようという方向に流れたが 実写より優れた脳内映像の再現を目指すべき 。
 あるとき作画していて監督に「それはどんなレンズで撮ってるの?広角?望遠?」 みたいなことを聞かれたが、あえて言うなら「水晶体」。
 実際はそれに脳内補正がかかった脳内映像だが。

 さらに、脚本を書く行為も脳内映像をどう表現するか という意味で私にとっては同じこと、脳の同じところを使ってると思う。
 コイルで押山くんに 「アニメーターに戻って新しいエフェクト描いてくださいよ」 と言われたが、
 「これ(脚本)が僕の新しいエフェクトです」 と答えたw

SFについて
 SFは「サイエンスフィクション」とか「すこしふしぎ」とか「サイエンスファンタジー」とか いろいろ解釈があるが、一番本質に近いのは「サイエンスフェチ」じゃないかと思うw。

これからのSF
 最近、SFは全盛期を過ぎたのでは?みたいな感じもあるが 前の話のSF=サイエンスフェチ理論で言えば、SFが盛り上がったころは 「全盛期」ではなく「発情期」w。
 今は倦怠期だけど、また発情期が来ると思う。

そろそろ時間なので、最後に次回作についてなど…
 それは時間がないのでやめときましょうw。

SFセミナー2008本会レポート (lainの極私的独白inはてな) (5/11追加)

アニメーターとしての磯の 感覚には、人間とロボットの動きに境界はなく、人間の動きでもすごい瞬間があるとのこと。アニメは現実よりスペックが高く、脳内映像を現実よりも引き上げ た位相で映像化する。アニメを実写に近づける人もいるが、磯のアプローチは異なるようだ。脳内に面白い動き・形・色などと感じた部分があり、それは人間も メカも同じ。面白いものを集めて動きを攻勢するのに人もメカもない。これは磯いわくクオリアだそうで、脚本を書いているときも同じ感覚とのこと。

yama-gat site:2008年5月前半 (5/11追加)

あとは元々、カリスマアニメーターである磯さんのアニメへの意識の話などもあり、「アニメは現実よりスペックが高い」、「木の枝が伸びているのを描くのと、ミサイルの軌道を描くのは同じ脳内部位を使ってる」などの発言が印象に残る。

 映像とドラマを「脳内映像」として定義している。そして「これ(脚本)が僕の新しいエフェクトです」!この言葉はかっこいい。アニメーターから脚本家/演出家への仕事の拡張は「脳内映像」として自分の世界をより表現したいため、ということを的確に語っている。磯アニメートについても「脳内映像」の観点で本人がどう考えているのか、インタビュアーには突っ込んで欲しかったところ。(関連記事 アニメーター磯光雄と金田伊功と脳の構造の関係。)

 5/11追記 脳内の動き・形・色などについてクオリアを持ち出して表現されていたようだ。『新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 Air』で描かれた弐号機VS量産型EVAのアスカのアニメートを思い出す。まさに現実よりも引き上げた位相の映像化。

 激闘の振動とアスカの心情がミックスして(磯の)脳内に作りだされた観たことのないアクション(クオリア)が、磯の手と作画用紙を介して、我々観客の脳内に展開される。
 そしてこれはミームとなって次世代の究極映像として、また別の映像クリエータによって拡大再生産されていくのだろう。(関連記事 アニメータ磯光雄 と 監督作『電脳コイル』)

 2026年にSFが子供たちの間で再びブームになっている設定で、「ダイチ、発毛ス」という素晴らしいバカ&奇想SF世界を描いた磯監督の述べるSFの定義「サイエンスフェチ」(笑)。
 定義論争の不毛を語った上での言葉。
 SFファンダムでも数々のSFの定義が語られてきたけれど、ある意味でこれほど的確な言葉は聞いたことがなかったかも(^^;)。
 特にアニメサイドから定義された言葉として、SFファンダムのある部分の不毛性をこれほど鋭く突いたのは凄い。しかも語られた場がコアなSFファンの集まるSFセミナーだというところも一粒で二度美味しいところ。そして「発情期」はいつ来るんでしょうか?(^^;)

電脳コイル磯光雄@SFセミナー (Blog 黒い森の祠)

 あの世界では、マイクロマシンが多用されており、塗料の中にも入って市販され、塗布すると、電子タグのような働きをし、電脳空間と現実空間の位相を結ぶ。その結果、壁を叩くと、「電脳空間がブレる」という。(略)

 実は、リスト・バンドやアンクル・バンドもあって、体の位置とかから電脳空間での活動を支援している。いわゆるスマート・グローブの簡易版である。(略)

 電脳空間化は、車の自動操縦化とともに拡大し、GPSの支援信号群として、道路沿いに発展した。ロード・ドメインという。

 やはり自動車産業とのリンクで、電脳空間が発達したという設定があったんだ(あのストーリーから考えれば当たり前だけど、、、)。現在のカーナビは、もっとも街を仮想空間として表現している媒体になっているわけで、やはり複合現実の利用はITS絡みで進化するんでしょうね。(関連記事 電脳コイル世界の電脳ナビによる自動走行)

 マイクロマシンについては、もっと番組内でも語られてもよかったかも。ますます子供にはわかりづらくなるけど。

SFセミナー2008 (Blog 異色な物語その他の物語)

(略)
③それほどSF作品を読んでいないが、自分の作品がSFに近いとするならカレル・チャペックだとか真の黎明期であるような時代のものではないかと思っている。
④表には見えないような設定を詳細に考えるのは大好き。設定を考えるとき、実現不可能となった技術や失敗した技術を使うのがやりやすい。実際には終わってるから好きなようにいじれる。だから雑誌で実現可能な未来予測をしてくれという企画は本当に困る。
(略)
⑥1996年に火星の隕石に生命がいる証拠がみつかった、という大ニュースが報道された。しかしトップニュースどころかかなり低い扱いだった。トップで報道されるに違いないと思った自分は、子供の頃科学が話題の中心にあった特殊な時代に成長したことに気づいた。

 SFセミナー全般を丁寧にレポートされている。
 磯氏の発言を6つのポイントで簡潔にまとめてあってわかりやすい。その中から三点を引用させていただきました。全文はリンクを辿ってください。
 「子供の頃科学が話題の中心にあった特殊な時代に成長」、ここで言う科学というのは、「宇宙科学技術」のことでしょう。我々の世代と現在では宇宙への関心の度合いが圧倒的に温度差がある。昔の「宇宙」への関心がマスコミによって「環境」への関心へ大きくシフトしているのもSFが「倦怠期」な理由の一つなんでしょうね。

◆関連リンク
物理空間の統治者は電脳空間の統治者であるべきか ~Nagaya1730プロジェクト管理人に聞く!~:鈴木健の天命反転生活日記 - CNET Japan

去年の冬コミケ用にインタビュー・フィクションを作った。

電脳コイルテンプレまとめ@wiki - トップページ
 まだ残念ながら関連スレッドはまとめられていません。
SFセミナー2008 - val it : α → α = fun

磯光雄インタビューで聞き手をつとめました。私は何にもできなかったが磯さんがたいへん愉快な人だったので結果的にはとても面白い話になったのではないかと思います。

 これはインタビュアーの向井淳氏のBlogのコメント(のようです)。
『季刊S (エス) 2008年 04月号』 (amazon)
 磯監督への別のインタビュー掲載
電脳コイル(Bandai Channel) ネットで第一話、無料配信中。

当Blog関連記事
アニメーター磯光雄と金田伊功と脳の構造の関係
脳のトップダウン構造と視覚
電脳コイル世界の電脳ナビによる自動走行
「ダイチ、発毛ス」ギャグ & 奇想 & バカSF & 感動作 すげぇ

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2008.05.09

■アート雑誌 『HI-FRUCTOSE:ハイ・フルクトース
         アンダー・ザ・カウンター・カルチャー』

Hi_fructosevert_2

Hi-Fructose Magazine(公式サイト)

 飛騨高山 留之助商店 本店 訪問の記事で書いた『HI-FRUCTOSE:ハイ・フルクトース』という雑誌と、そこに掲載されていたアーティストの絵について紹介します。

店主55才、玩具道(オモチャミチ)の光と影:HI-FRUCTOSE

ハイ・フルクトース=高果糖という意味のこの雑誌のサブタイトルは、アンダー・ザ・カウンター・カルチャー=反体制文化の内側で。
ひとことでいうなら“最新ロウブロウアート情報誌”、というよりは“アートの秘境ガイド”、つまりオブジェモチャのルーツを探検するような心弾む内容なんだよ。
ギャラリーやモチャメーカーのグラフィカルなアドも多く、旬な情報はここらへんからも拾えるね。

 僕が購入したのは、留之助書店でネット通販もされているHI-FRUCTOSE Vol.7。表紙は趣味に合わず今ひとつなのだけれど、中身はとても刺激的。数々のアーティストの作品を大判のカラーで紹介してあってとにかく眼に楽しい。
 こんな刺激的な雑誌を教えていただいた留之助商店に感謝です。

 加えて、ギャラリーの広告がいくつも掲載されているのだけれど、そこで紹介されているアーティストも素晴らしい。

 このネット時代、嬉しいのは、アーティストの名前さえ情報として入手すれば、どんどん検索で探すとPCのディスプレイに美麗なイラストやオブジェの写真が高解像度で表示できること。

 もちろんそれで気に入った我執や雑誌は紙媒体としてもほしくなるのが人情で、ネットで厳選した上で購入できるのが嬉しい。留之助書店での通販もとてもありがたい。

◆こんなアーティスト、いかがですか。

 HI-FRUCTOSE Vol.7で気に入った絵から検索した結果が以下です。リンクの後ろに記載した丸付き数字が、右上の引用画像の上から順のNo.。どれも幻想的でポップでワクワクするので、しばし浮世を忘れて画像に見惚れていただければ、幸いです。
(注.引用画像はHI-FRUCTOSE Vol.7掲載作品とは別のものです。単なる僕の趣味に合ったもの)

Brian Despain(Google イメージ)
Mark Ryden
LUKE CHUEH.com
Elizabeth McGrath(Google イメージ) ③ ④
 Elizabeth McGrath 公式HP ギャラリー
Greg Simkins(Google イメージ) 
Chris Mars(Google イメージ)
Naoto Hattori (Google イメージ)
Edwin Ushiro(Google イメージ)
 WELCOME TO MRUSHIRO.COM
Brian Mccarty(Google イメージ) ⑥ ⑦
 McCarty PhotoWorks 公式HP
 Flickr: Brian McCarty's Photostream
  メイキング写真もある。ここは素晴らしい。
BEAUTIFUL MUTANTS Mark Mothersbaugh(Google イメージ)

◆関連書籍リンク
 以下、これらアーティストの書籍について、amazonと留之助書店へのリンクです。
Mark Ryden『Anima Mundi』
Elizabeth McGrath『Everything That Creeps』
Christy Kane『Tales of the Sisters Kane』 (留之助書店) 
Brian McCarty『Toys 2008 Calendar』 (留之助書店) Monte Beauchamp,Mark Mothersbaugh『New and Used Blab!』
Dot Dot Dash: Designer Toys, Action Figures And Character Art『Dot Dot Dash: Designer Toys, Action Figures And Character Art』 (留之助書店)

◆関連リンク
店主55才、玩具道(オモチャミチ)の光と影:SWINDLE.

SWINDLEと書いて、スウィンドルと読みます。意味は、ペテンとか、詐欺とか、ボッタクリといったところでしょうか。ロサンゼルスの先頭をいく超人気ポップカルチャー誌の名前です。

 もう一冊、留之助書店で扱われているアート誌。
Dot Dot Dash: Designer Toys, Action Figures And Character Art『Dot Dot Dash: Designer Toys, Action Figures And Character Art』 (留之助書店)

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2008.05.08

■黒沢清 『トウキョウソナタ』カンヌ出品
 新刊『恐怖の対談』

Variety Japan | 黒沢清『トウキョウソナタ』で5年ぶりカンヌへ.

黒沢監督は、「うそと疑心暗鬼と徹底した無視が、家族たち全員をどっぷりと浸しているところから出発させてみようと思った。最後にはどうにかしてある種の希望にたどり着きたい。(略)」

 イーストウッド、ソダーバーグ、ベンダース監督最新作がカンヌへ!
 Variety Japan | 2008年 第61回 カンヌ映画祭 関連ニュース一覧

 5/14に開幕するカンヌ映画祭<ある視点>部門に黒沢清の新作が選出されたとのこと。
 映画は今秋公開ということで今しばらくお待たせなのだけれど、カンヌでの結果が期待されます。黒沢清って賞をとってしっかりヒットしてほしい監督だと思うのだけれど、、、。

黒沢 清『恐怖の対談―映画のもっとこわい話』 (青土社)

Ⅰ 恐怖論
 高橋洋×鶴田法男 斎藤環 手塚眞

Ⅱ 作品論
 中原昌也 柳下毅一郎 青山真治

Ⅲ 作家論
 テオ・アンゲロプロス  サエキけんぞう  蓮實重彦

 伊藤潤二

 対談の相手がなかなか面白い取り合わせ。特にⅠの恐怖論が読んでみたい。

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2008.05.07

■ターセム・シン監督 『ザ・セル』

The_cell ターセム・シン監督『ザ・セル』

危険人物の精神世界へ入り込んでいくヒロインの冒険をスタイリッシュな映像で描いたサイコ・サスペンス・ホラー。

 『ザ・フォール』の予告編でその映像美に惹かれ、ターセム・シン監督の前作である『ザ・セル』を観た。

 あちこちで言われているように、映像センスは眼を惹くものがある。サイコな犯人の精神世界として、夢幻的悪夢的な映像が炸裂。

 いきなりの馬の断面シーンとか、石岡瑛子デザインによる悪魔的な装飾とか、枚挙に暇のない鮮烈な映像。

 特に僕が面白かったのは、巨大な空間の階段シーンと砂漠の三人の女のシーン。あのレイアウトや色合いは、まさに悪夢の映像化。
 つまり自分が観る悪夢に近い。これはそれこそ個人差があるだろうけれど、僕はこれらシーンにシンクロ。他の人もそうだとしたら、何か共通の精神的悪夢映像というのが人間の脳にはプリセットされているのだろうか。(もっともいろんな映像作品に影響されて形作られた後天的イメージとも考えられるわけですが、、、)

 ストーリーは、想像したよりずっと普通。
 かなり律儀にエンターテインメントとして筋の通った物語が導入されている。たぶんもともとは精神的世界の映像化をやってみたい、というモチーフが先にあって、ストーリーは後付で作られたものなのだろう。

 だけれど、ストーリーが整合されすぎていて、映像美との乖離が目立つ。映像が悪夢的なわりに物語が整然としすぎていて、悪夢のイメージを相殺しているという感じ。たぶんただ悪夢のみを描くと言うことでは前衛過ぎてハリウッドから不安視されたのではないか。で、ストーリーは雇われシナリオライターが、当時はやりのサイコものとしてきっちりエンターテインメントへ着地したというところでないか。

 もっとストーリーも幻想的にした方がバランスがとれたと思う。そんな映像も物語も幻惑に満ちた世界が次作『THE FALL』で展開されるかどうかが期待。

◆関連リンク
ターセム・シン監督『ザ・セル』(amazon)
・当Blog記事 ターセム・シン『ザ・フォール:The Fall』 予告編
『KINGS OF ADS 001』(amazon)
 ティム・バートン,リュック・ベッソン,デヴィッド・クローネンバーグ,ヴィム・ヴェンダース,スパイク・リー,デヴィッド・リンチ,エミール・クストリッツァ,ロマン・ポランスキー,王家衛,フランシス・フォード・コッポラといった名だたる監督によるCMフィルム集。これらの監督に加えて、もともとMPV畑のターセム・シン監督のCF作品も収録。

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2008.05.06

■独SPELCO社 装着型操縦桿付きグライダー『Gryphon』

Gryphon_2装着型の、操縦桿付きグライダー
『Gryphon』:時速240キロで正確に降下
独SPELCO社 (WIRED VISION経由)

Dimensions: Span: 1.800 mm
Length: 1.500 mm Heights: 430 mm
Maximum jump weight: 225 kg (with TW9 340)
Empty weight: 15 kg
Payload: 50 kg

Attack Wing: Glider Makes Waves With Stealth and Speed (FOXNews.com)
 (動画は、Click here to see video of the Gryphon glider in actionをクリック)

 パラシュートと組み合わせて使用するグライダー。ビジュアルがなかなかいいので載せてみました。
 飛行機から発進するしかないけれど、飛んでいる姿は、まるで『ロケッティア』みたいです。

 軍用だけれど、いずれ観光旅行で一般人も飛べるようになるかも。その前にお笑い芸人の誰かが犠牲になるか??

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2008.05.03

■押井守監督『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』
  完成試写会 レビュウ記事小特集

「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」公式サイト 予告編
MORI LOG ACADEMY: 2008年04月19日 (森博嗣氏Blog)
 (shamonさんのコメント情報より)

 落ち着いてから、一言感想をいうならば、やはり、監督の力というか、制御というか、極めてクールに仕上がっている。その世界観は、驚くほど原作に近い、と感じた。そうか、そういえば、これは自分の作品が原作だったんだな、としばらくしてから思い出した。そうじゃなかったら、もっともっと褒めたいところだが……、これくらいにしておこう。

 8/2の公開まで、まだ4ヵ月もあるのに、既に完成試写会が開かれているようです。
 プロダクションI・G渾身のキャンペーンが着々と進んでいます。これで押井守が名実ともに宮崎に次ぐブランドになるのか。I・Gの正念場。

 というわけで、原作者の森博嗣氏以外にもネットでいくつかコメントが見つかったので、リンク小特集で、ここでも微力ながらキャンペーン(^^;)。

週刊 大極宮 第346号 京極夏彦氏

 しっかり森作品で、どこまでも押井テイスト。押井さんの「やってきたこと、やりたかったこと、やりたいこと」が、森さんの用意したフレームの中にぴったりとはまっていて、しかもあふれるほど満載という感じで、たいへん感心いたしました。
 特に(特にってどうかと思いますが)SEマニアの僕としては、完璧な「音づけ」にやたら感心。アニメが出す音じゃないです。いや、つけるならここまでつけてくれなくちゃねえ。優れた音響設備が調っていたこともあって、SE的には満点でしした。

 京極氏が押井守ファンというのは、知りませんでした(森氏の記事によると、京極氏が観たのは四回目の試写らしい)。
 それにしても、やはりポイントは音響か。
 今回もスカイ・ウォーカーサウンドのSEは冴えわたっているようです。これは、しっかりした音の聴ける劇場で観なきゃ。空中戦のサラウンドが期待。

編集長メモ: 『スカイ・クロラ』試写会 小黒祐一郎氏

 作画に関しては、西尾鉄也さんの仕事が素晴らしい。質も高いし、それだけでなく、西尾さんが1人で長編の作監をやりきっている点にも注目。最近の長編で は作監を複数立てるのが当たり前だけど、今回は彼が1人でやっている。

 アニメ様のレビュウ。
 映画全般についてと作画について語られていて、いちばん興味深く読ませていただきました。

 われわれ、一般人はまだ4ヵ月近く待たなければならないのだけれど、Blog制作者向け試写とかのキャンペーンは予定されていないのかなー。

 「なかのひと」のアクセス解析によると、うちのページへもプロダクションI・Gから訪問いただいているようなので、もしこの記事が眼にとまりましたら、名古屋での試写に呼んでいただきたくここでアピール。映像と音の解析、やらせて下さいっ!(^^;) (声は届くのか!?) 。

◆関連リンク
押井守監督『イノセンス アブソリュート・エディション』(Blu-ray Disc)
『カウントダウン・オブ・「スカイ・クロラ」 count.2』(amazon)

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2008.05.02

■現代陶芸アート カルロ・ザウリ:Carlo Zauli展
  アンディ・ナアシィス:Andy Nasisse

Carlo_zauliカルロ・ザウリ展
  -イタリアの現代陶芸の巨匠-

 (岐阜県現代陶芸美術館)

土の造形素材としての可能性を徹底的に追求しダイナッミックな陶による造形作品から、繊細で緻密な建築壁面の仕事まで多様なもので驚かされます。

 カルロ・ザウリ美術館
 carlo zauli - Google イメージ検索

 うちの地方は陶芸が盛ん。素晴らしく立派な美術館も整備されている。
 ここに住んでたら陶芸の鑑賞を楽しまない手はないのだけれど、あまり実は食指が動かなかった。

 この作家の展示はポスターを見ると、心躍るものがあったので今週初めに行ってみた。
 平日とはいえGWなのでそれなりに混んでいるかと思えば、なんと我々の貸し切り。京都、東京と巡回される大型の展示にしてこの惨状。陶芸って現代的な美術としては、アピールするものが弱いのだろう。

 展示は写真を引用した巨大な球体の陶彫がなかなかインパクトがあった。大きさは直径約1m。波打つ様がダイナミックに迫ってくる。球体のモチーフだけで10点近く展示されていた。この奇妙な球体を360°で眺めることが出来て、眼は幸せでした。

Sandro_lorenzini_the_other_the_sameイタリアの現代陶芸

 併設の常設展。
 こちらでよかったのは、展示の最後に飾られていたサンドロ・ロレンツィーニ氏の作品「他者、同一者」(1994)(右の引用写真)。
 高さ1.2mくらいの迫力のある陶芸で、ご覧のように赤い仮面のマペットのような作品。

 解説によると、ロレンツィーニ氏は舞台芸術にたずさわり、マペット制作や操り師も経験されているとのこと。その経験と陶芸の融合からこのような作品が生み出されているようだ。「物語性のある作品が多く作られているイタリア陶芸界の中でも、独特の世界を持つ陶芸家」と説明されている。

 Sandro Lorenzini :: Saatchi Online - Show your art to the world 
 ネットでもっと作品が観たいと思って調べたのだけれど、モール風の作品20点が見つかったくらい。もっと人形風の作品が観てみたい。

 Artist in Residence 2003-2004 Part3

 この作家、レジデントで瀬戸市へ訪日もされていたみたい。

 、、、ということで、現代陶芸美術館のネタはここまで。
 これだけでは寂しいので、もっと現代的な陶芸アーティストはいないかと、ネットで探索しました。そしたら、こんな作家が、、、。この写真、なかなか心躍ります。

---★ここからは現代陶芸美術館展示品ではないので要注意★---

◆アンディ・ナシィス:Andy Nasisse
Andy_nasissetile
 Andy Nasisse Pottery Covered Jars
 Andy Nasisse Ceramics Workshop at MudFire Clayworks in Atlanta-Decatur, Georgia
 Andy Nasisse - Google イメージ検索
 Sherrie Gallerie: Andy Nasisse

 愛嬌のある顔の陶器と奇妙な抽象的彫像。これ、実物を是非観たいものです。
 どこか怪獣みたいな造形、この奇想な感じがたまりません。 (僕の美術的感覚が幼児期に怪獣によって刷り込みされていることがわかるだけだったりして、、、(^^;))。

◆関連リンク
Sherrie Gallerie: Janis Mars Wunderlich Sherrie Gallerie: Andi Moran
 Sherrie Gallerie: Thomas Bartel
 ここのギャラリーでいろんな作家の作品が観られる。
 この3人の作品もなかなか。
熊倉順吉《ジャズの城》 1977年、岐阜県現代陶芸美術館蔵
 ミュージアムショップで過去の展示のパンフをめくっていたら、こういう面白い作品もありました。

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2008.05.01

■押井守原作・総監修 『真・女立喰師列伝』

『真・女立喰師列伝』(amazon)
真・女立喰師列伝オフィシャルサイト Wikipedia

 遅ればせながらDVDで観ました。
 あちこちで述べられているように、前作『立喰師列伝』とは随分と雰囲気を変えた観やすいエンターテインメントな連作短編集。各監督の個性を楽しんで観られるのがうれしい。
 映像としては『立喰師列伝』のような2次元と3次元を複合したような面白さとかはなかった。あと一本戦後史として縦糸がしっかりとあったのが、今回はそうしたものはなく、一作ごと楽しめる作り。

 個人的に好きな順に短い感想です。

■「草間のささやき 氷苺の玖実」 主演:藤田陽子
 監督・脚本・撮影・編集:湯浅弘章

 唐黍畑の中、妖しい美しさで通りすがりの男たちを惑わせる女。エロティシズム溢れる美的映像詩。

 一番映画らしい作品。
 緊張感のある映像。夏の唐黍畑の雰囲気と、語られる物語の親和。

 畑の生き物たちのクローズアップをインサートする手法とか、風に揺れる葉とそれをカメラの移動でとらえた動的な画面作りもうまい。

 本編の湯浅監督は、別のいくつかの作品の撮影も担当している。『真・女立喰師列伝』にひとつのトーンがあるとすると、撮影の湯浅弘章氏の個性なのかもしれない。各作品のタイトルのところに撮影スタッフは記したが、4篇プラスOP,中CMが湯浅弘章氏撮影。

 この監督、今後も要注目ですね。アニメも撮ったら面白いかも。

■「歌謡の天使 クレープのマミ」 主演:小倉優子
 監督・脚本・撮影・VFX:神谷誠/撮影:村川聡

 1985年の原宿を舞台に、ブラックユーモアたっぷりに描く、虚実入り交じった「もう一つの昭和アイドル史」。

 前作の昭和史の側面を引き続き描いた作品。最初はタイトルに引いていたのだけれど、アイドルをアメリカの策略として描いて、ひとつの昭和史を浮かび上がらせた手腕がなかなか。

 B29二機と日本中にTV放映網を整備する予算が同じくらい、というトリビアにも感心。この作品は前作同様の写真の切り絵のようなアニメーションでみせてもらってもよかったかも。

■「金魚姫 鼈甲飴の有理」 主演:ひし美ゆり子
 監督・脚本:押井守/撮影:坂崎恵一、撮影/編集:湯浅弘章

 “伝説の女立喰師”をめぐるエロティックな幻想譚。アンヌ隊員ことひし美ゆり子・32年ぶりの主演映画が、押井監督の熱望で実現。

 映像と雰囲気の作品。
 短い中で緊張感のある画作りがされている。それにしてもひし美ゆり子に一言もしゃべらせないとは。

■「ASSAULT GIRL ケンタッキーの日菜子」 主演:佐伯日菜子
 監督・脚本:押井守/撮影:湯浅弘章

 AD 2052。巨大降下猟兵に乗って地球に降り立つ女大佐(カーネル)。戦艦やメカへの押井監督のフェティシズムが炸裂する異色SF編。

 なかなか迫力のCG。
 だけど予算が余りかかっていないのはよくわかる。

 この作品観ると、押井守が『GARUM戦記』を撮りたいのだろうな、というのがよくわかる。
 本作のオチはあんまりでしょう。

■「荒野の弐挺拳銃 バーボンのミキ」 主演:水野美紀
 監督・脚本・撮影・編集:辻本貴則/編集:湯浅弘章

 “幻のバーボン”を求めてさすらう美貌の女立呑師が壮烈なガンアクションに挑む痛快ウエスタン。

 ひさびさに西部劇を楽しめた。
 アクションシーンがなかなか。

■「Dandelion 学食のマブ」 主演:安藤麻吹
 監督・脚本:神山健治/脚本:檜垣亮、撮影:村川聡

 神山店長のファミレスに深夜現れた謎の美女。本作品中随一のスリリングでリリカルなラブストーリー。

 これ、神山監督ファンとしては悲しすぎるのだけれど、心を鬼にして言えば、出来が恐ろしく悪い。自主映画でももっとしっかりした作品はいくらでもある。脚本も月並み、撮影もあまりにもだるい絵が多く、なんでこれがあの『SAC』と同じ監督の作品かと我が眼を疑った。

 「映画は撮ったことがない」というのはSTUDIOVOICEに連載中の神山監督のエッセイのタイトルだけれど、この作品はファンとしては、神山監督第一回実写映画作品とは呼びたくない(^^;)。
 画面のレイアウト、実景の切り取り方 そうしたもので映画の空気感が出てくるはず。それは撮影機材がたとえディジタルビデオカメラであったとしても。
 ファミレスと街という極日常の風景を選んでしまったのがまず敗因かもしれない。しかしそれでもうまい監督とカメラなら、その切り取り方で映画になる可能性は充分あったはず。
 緊張感のない、まるでファミリービデオのようなカメラアングルがつらい作品。

 クランクインと映画公開の時期を誤解していたらしい神山監督、今回の作品は日程の問題とファンとしては思いたいものです。次回、期待します。

◆関連リンク
湯浅弘章監督

1978年、鳥取県生まれ。大学在学中よりミュージック・クリップを監督し、卒業後、林海象監督や押井守監督など数々の作品で助監督を務める。映像制作プロダクションのデイズにて押井監督作品ほかの演出や制作助手等を務める傍ら、自らの監督作品の企画・脚本執筆を続け、06年、第28回ぴあフィルムフェスティバルで入賞、函館港イルミナシオン映画祭の第10回シナリオ大賞でグランプリ受賞。本作『真・女立喰師列伝/草間のささやき 氷苺の玖実』(07年)で商業映画デビューを飾った期待の新鋭。また、本作品収録の多くのエピソードで撮影を担当し、美しい映像を紡いでいることも特筆に値する。

 押井守の実写映画での弟子?

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