« ■独SPELCO社 装着型操縦桿付きグライダー『Gryphon』 | トップページ | ■黒沢清 『トウキョウソナタ』カンヌ出品
 新刊『恐怖の対談』 »

2008.05.07

■ターセム・シン監督 『ザ・セル』

The_cell ターセム・シン監督『ザ・セル』

危険人物の精神世界へ入り込んでいくヒロインの冒険をスタイリッシュな映像で描いたサイコ・サスペンス・ホラー。

 『ザ・フォール』の予告編でその映像美に惹かれ、ターセム・シン監督の前作である『ザ・セル』を観た。

 あちこちで言われているように、映像センスは眼を惹くものがある。サイコな犯人の精神世界として、夢幻的悪夢的な映像が炸裂。

 いきなりの馬の断面シーンとか、石岡瑛子デザインによる悪魔的な装飾とか、枚挙に暇のない鮮烈な映像。

 特に僕が面白かったのは、巨大な空間の階段シーンと砂漠の三人の女のシーン。あのレイアウトや色合いは、まさに悪夢の映像化。
 つまり自分が観る悪夢に近い。これはそれこそ個人差があるだろうけれど、僕はこれらシーンにシンクロ。他の人もそうだとしたら、何か共通の精神的悪夢映像というのが人間の脳にはプリセットされているのだろうか。(もっともいろんな映像作品に影響されて形作られた後天的イメージとも考えられるわけですが、、、)

 ストーリーは、想像したよりずっと普通。
 かなり律儀にエンターテインメントとして筋の通った物語が導入されている。たぶんもともとは精神的世界の映像化をやってみたい、というモチーフが先にあって、ストーリーは後付で作られたものなのだろう。

 だけれど、ストーリーが整合されすぎていて、映像美との乖離が目立つ。映像が悪夢的なわりに物語が整然としすぎていて、悪夢のイメージを相殺しているという感じ。たぶんただ悪夢のみを描くと言うことでは前衛過ぎてハリウッドから不安視されたのではないか。で、ストーリーは雇われシナリオライターが、当時はやりのサイコものとしてきっちりエンターテインメントへ着地したというところでないか。

 もっとストーリーも幻想的にした方がバランスがとれたと思う。そんな映像も物語も幻惑に満ちた世界が次作『THE FALL』で展開されるかどうかが期待。

◆関連リンク
ターセム・シン監督『ザ・セル』(amazon)
・当Blog記事 ターセム・シン『ザ・フォール:The Fall』 予告編
『KINGS OF ADS 001』(amazon)
 ティム・バートン,リュック・ベッソン,デヴィッド・クローネンバーグ,ヴィム・ヴェンダース,スパイク・リー,デヴィッド・リンチ,エミール・クストリッツァ,ロマン・ポランスキー,王家衛,フランシス・フォード・コッポラといった名だたる監督によるCMフィルム集。これらの監督に加えて、もともとMPV畑のターセム・シン監督のCF作品も収録。

|

« ■独SPELCO社 装着型操縦桿付きグライダー『Gryphon』 | トップページ | ■黒沢清 『トウキョウソナタ』カンヌ出品
 新刊『恐怖の対談』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ■ターセム・シン監督 『ザ・セル』:

« ■独SPELCO社 装着型操縦桿付きグライダー『Gryphon』 | トップページ | ■黒沢清 『トウキョウソナタ』カンヌ出品
 新刊『恐怖の対談』 »