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2008.06.02

■原恵一監督『河童のクゥと夏休み』&『クゥの映画缶』

『河童のクゥと夏休み』(amazon)

 DVDで『河童のクゥと夏休み』を観た。原恵一監督の演出の妙を堪能。

 やはり圧巻は東京タワーのシーン。
 マスメディアによる異常な報道、人間の醜かいな様を積み上げて描写。
 そして対比して示される河童と犬の自然な反応。

 ここで河童という異界によって、人間界の異様さが逆照射される。東京タワーでクゥを呼ぶコウイチと振り向かないクゥというところもある意味、主人公家族たちをも異様な人間たちの仲間である、と一瞬描写しているところが原演出の秀逸なところだと思う。

 特に気持ち悪いのが、一般人のカメラとケータイの写真の砲列。(自分もやりそうだから、なんとも言えないのだけれど)子供の学校の運動会で、写真を撮る親たちの異様な熱意に通じる気持ち悪さ。こんな名前のBlogをやって映像に執着を持つ人間が云々できる話じゃないけれど、どうしてこうも日本人は写真を撮るようになったのか、というところを考え込まざるを得ない。

 原監督は、ケータイも持たずネットもやらない、文明の利器への懐疑心を持っていると聞く。我々は今一度、記録する映像と、思い出のみの記憶の映像との価値を問い直さないといけないのかもしれない。

 演出の妙、というところでは、特に印象に残ったのは、クゥと二人で遠野へ旅に出る主人公康一の旅立ちのシーンと、康一と紗代子の別れのシーンの対比。

 旅立ちに際して振り返らない康一と母の涙。そして紗代子に対して、振り返る康一。その後の肩を落として歩いていたのが、次に頭を前へ向けて力強く歩き出す紗代子の動きの演出。登場人物たちに込めている監督の心づかいが伝わってくるようなこうした細かい芝居が丁寧に積み上げられて原恵一監督作品が我々のところへ想いを伝えてくる。

Eiga_kanクゥの映画缶(ボイジャージャパン公式HP)
「河童のクゥと夏休み」メイキングブック配信
  新しいデジタル出版の道

 『クゥの映画缶』で圧巻なのはその資料の分量である。2時間18分の本編約1500カットから抜き出された作中画面は4865ページ(コマ)、絵コンテは全てを収録した862ページ、原監督による絵コンテに対するコメントブックは434ページにのぼる。

 このメイキングのデジタルコンテンツは凄い。
 監督が原作の本と出合った書店 童話屋の写真まで掲載。微に入り細をうがつこの圧倒的な情報量が凄い。
 しかもこのコンテンツをわずか525円で楽しめる。即登録して観てみた。
 残念ながらコンテンツは90日間しか観えない。できればダウンロードかもしくはCD-ROM(DVD-ROM)として販売してほしいもの。なかなかこの手の作品は、ムックとか出にくいので、こうしてデジタルの恩恵で詳細を知れるのはとても嬉しい。(DVDの感想と裏腹にこうした文明の使い方は「是」でしょう(^^;)。) 原ファンの浜野保樹氏が関与されてできた企画なのかも。

 あとこれをやっているボイジャージャパンって、MACでEXPAND BOOKとかやっていたところですよね?こんな形で継続してデジタル出版をされていたのを知らなかったので、なんかとても懐かしい気持がしてしまった。今後とも映像メイキングのデジタル出版を活発にやってほしいものです。

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コメント

 shamonさん、まいどです。

>後日何かの時に書いて下さいね~^^。

 日本の民意についての痛烈な批判はTVでは(そこが元凶であるため)ほとんど触れられません。
 そこを突いたのがどちらも現実とメディアから遊離できるアニメであったというのは特筆できるのかも。

>名家に生まれ医師となり放浪の果てに革命の英雄となったゲバラには、2ndGIGのクゼが重なります。

 面白そうですね。ひねもすのたりの日々でのレビュウを楽しみにしてます。クゼの物語の続き、米帝との戦いが神山監督によって描かれることはないのでしょうかね?

投稿: BP | 2008.06.03 23:54

こんばんは。

>長年映画化を温められていたとのことなので
短い予告編しか観てないですが、
原作への愛情はきっちり伝わってきました。
こういう作品がもっと増えてくれるといいのですが・・。

>神山監督の『SAC 2nd. GIG』と通底するテーマを持ってます
後日何かの時に書いて下さいね~^^。

最近は新訳「ゲバラ日記」を読み始めました。
フィデル・カストロの手による序文が素晴らしい。
名家に生まれ医師となり放浪の果てに革命の英雄となったゲバラには、2ndGIGのクゼが重なります。

投稿: shamon | 2008.06.03 19:51

 shamonさん、こんばんは。

>>文化庁メディア芸術祭で絵コンテのコピーを観ました。
>>きちんと作られている雰囲気が漂ってましたね。

 クゥの映画缶で絵コンテと完成した画面の写真を比較できるのですが、原監督の絵が抜群に雰囲気出てます。映画で伝えたかったイメージは、実は絵コンテのあの絵の方が合ってるんじゃ、と思えるような素晴らしい絵。

 長年映画化を温められていたとのことなので、熟成されたイメージが監督の頭の中にあったのでしょうね。

 この映画、そういえば、神山監督の『SAC 2nd. GIG』と通底するテーマを持ってます。あ、本文に書き逃した、shamonさんのコメントで思い出しました。ありがとうございます(^^)。

投稿: BP | 2008.06.03 00:36

こんばんは。

映画はまだ未見ですが、
文化庁メディア芸術祭で絵コンテのコピーを観ました。
きちんと作られている雰囲気が漂ってましたね。

うーん、やはり早く観なくては。

投稿: shamon | 2008.06.02 21:31

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