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2008年8月

2008.08.31

■東京都現代美術館『スタジオジブリ・レイアウト展』カタログ図録
  宮崎駿 金田伊功 大平晋也のレイアウト画

Hauru_2 スタジオジブリ・レイアウト展(NTV)
公式ブログ

 田舎住まいゆえ、こうした首都圏のイベントは指をくわえてネットの評判を読むしかないのですが、今回shamonさんのご厚意で図録を手に入れることができました。東京のイベントのレポート等、いつもお世話になりっぱなしです。>>本当、感謝しています、shamonさん。

 で、展示で実物を見ることはかないませんが、その分図録は誰にも負けないくらい穴があくほど、この二日間、観ました(大袈裟(^^;) 穴と言えばタップ穴は元々開いてますがね(^^)) これは400ページを超えるその図録のレポートです。(レイアウト図はページあたり1~8枚掲載。平均4枚/頁として1600枚の大画集)

◆宮崎駿の重厚なレイアウト

 まずはなんと言っても、やはり宮崎駿のレイアウトである。
 たぶん体感的には全体の1/5ほどが宮崎のレイアウト画ではないかと思う(本当のところどれくらいか無性に知りたい)。

 もちろん『アルプスの少女ハイジ』や『未来少年コナン』におけるレイアウトシステム成立時のTVゆえシンプルだけれども、それが逆に構図として強い力を持っている初期の作品も素晴らしい。

 でもその本領は、より緻密さを増して画面の情報量が過激に過大になっていく『もののけ姫』以降の作品である。特に僕は引用した『ハウルの動く城』の城のレイアウトが強い印象に残った。

 各原画家の特徴は、細部のタッチとさりげなく省略している遠景の人物の表情等に表れているように思うが、まさに「動く城」は宮崎の真骨頂。ゴテゴテと積み上がった不定形のメカニズム、そしてその質感を活き活きと描きだすその鉛筆のタッチ。重量感溢れ山岳の草原をのし歩く圧巻のイメージ。ここらはCGを利用して重量感を出していたアニメの映像そのものよりもむしろ素晴らしいのではないか。作家のプリミティブな脳内イメージが鉛筆の先からほとばしるこのダイナミズム。(印刷の縮小された絵でもこれだけ力があるから、原画はさぞかし、、、。観られないのが本当に悔しい。是非各地巡業を企画してほしいものである)

 それにしても、初期の映画作品よりも、この『もののけ姫』以降でのレイアウトの宮崎率が高いような気がするのは気のせいだろうか。年齢とともに作業の効率化を狙って、原画への介入を減らし、レイアウトを自ら描くのを増やしたのかもしれないが、恐るべきパワーである。

 それにしても特に『ナウシカ』『ラピュタ』『紅の豚』等の初期・中期長編で気の抜けたような構図の甘いカットがかなりの比率で入っていたと思うけれど、それらは今回のレイアウト画を見ると、やはり宮崎の手になるものではないですね。鉛筆のタッチとかが違う。そういう部分もあぶり出してしまうわけで、資料的な価値としてもこの図録は素晴らしいと思う。編集は奥付によると、東京都現代美術館のスタッフでなく、スタジオジブリらしいけれどとにかくまずは感謝。

◆その他アーティストの作品

Totoro  まず注目したのは、『となりのトトロ』のレイアウト画。
 あの里村の光景が詩情豊かに描かれている。特に素晴らしいのは、左に引用した夕焼けの光景。省略された線と色鉛筆の色のタッチが凄くいい。
 たぶんその絵柄からこれは宮崎作ではないと思う(でも赤で描かれたサツキの絵が宮さんっぽいかも)。

 作画監督は佐藤好春氏であるが残念ながら作家不詳。

 ここで苦言を呈すると、これが美術館の作品図録で、アニメのレイアウトは絵である、と解説文で複数名が書いているのにもかかわらず、画家の名前がひとつもないこと。この不備は絵画展の図録としては致命的であると思う。
 アニメーターの不遇は世にいろいろと語られているが、それだからこそ、この図録では作家名を明記してほしかった。もちろん資料的な意味もだけれど、むしろアーティストを尊重する意味で。

 もともとそうした作品として扱う予定のなかった作品で記録も残っていないのは理解できるけれど、それにしても宮崎の作品くらいは本人のチェックで分かるだろうし、作画監督に丁寧に確認していけばかなりの量が誰の手になるものか判明したのではないか。これだけの図録なのだから、全くこの点が惜しまれる。

◆アニメの地平を切り拓くアニメーターの画

Nausika  その独特のタッチで有名な二人のアニメーターのレイアウトは、僕でも判別できる。
 ひとりはこのBlogでもよくとりあげる金田伊功氏の『風の谷のナウシカ』。有名なアステルのガンシップによる襲撃シーンである。
 そしてもうひとりは、『イノセンス』のバトーの落下戦闘シーンで有名な大平晋也氏の『千と千尋の神隠し』の釜爺のシーンのレイアウト。

 金田のそれは、既に雑誌等で紹介されていたものだけれど、いつもの独特のアングルが宮崎絵コンテの統制のもと、抑えられているが抑えきれず金田タッチがみえみえ(^^;)。そしてアニメーションの原画として見るだけでなく、絵としてもこのタッチは素晴らしい。既に画家の頭の中に生成している虚構の映像の動きが一枚の絵にほとばしっている。それは色鉛筆を走らせる手をコントロールする脳の部位にも影響して、色の塗り方にも動きがにじんでいる(と言ったら修辞しすぎだろうか(^^;))。

Kamajii01_2  これは大平晋也の絵にも言える。あの独特の輪郭がぼそぼそに分解したような動きがレイアウトの一枚の絵にもにじんでいる。アニメートも素晴らしかった釜爺のみごとなフォルムが画面の中で既に息づいている。この釜爺を主人公にした短編か何かを是非観てみたいものだ。8本脚というのがこの映画のようにひと処に留まるのではなく、外で動き回ったとしたら、アニメートとしてはすこぶる面白いものになると思うのだけれど。

 この二人の個性的なアニメータの絵でわかるのは、動きで先端を切り拓いているようなアニメーターの絵は、一枚の絵を見てもその中には芸術的で天才的なタッチがうかがい知れるということ。原画を観ていないのが全くもって残念なのだけれど、きっとこの一枚が持つ迫力は芸術と称される絵画の持つイメージよりも観る者にインパクトを与えるだろうということ。(少なくともこの土日に24時間なんとかでずっーとTVに映り続けていたカイカイだかキキだかという、絵画の危機的な状況を示しているなんのセンスも感じられない凡庸な平板なタッチの某芸術家の作品よりも数倍の作品としての強度を持っていると思うのは僕だけではないはず、、、。)

 アニメーションという、二次元のセルやディジタル画によるどうしても平板になりがちな絵の世界で、その設計図になる鉛筆による絵が魅力的なものであるということを質と量で示したこの図録は、20世紀生まれのアニメーションという映像の芸術の貴重な記録となっていると思う。この本を観て思ったのは、セルではなくこの鉛筆のタッチそのままで、アニメーターのイメージが映像化されたら、その画面の持つインパクトはどれほどのものだろう、という空想。作家の脳内イメージの原型がこの鉛筆のタッチであるとしたら、その映像はいかばかりのものになるのだろうか、、、それは今は想像するしかない。将来的に3D-CGと脳とのインターフェースがなんらか登場した時に、その映像は我々の眼前に現れるのかもしれない。

◆関連リンク

『美術手帖 2008年 09月号』(amazon)
 表紙が金田な美術誌!!これは素晴らしい事件です。
『Cut (カット) 2008年 09月号』(amazon)
 渋谷陽一氏の宮崎よいしょなインタビューはともかく、今回の展示のレイアウト画が17点掲載されています。遠方の方は是非。
YouTube - 大平晋也 : Shinya Ohira MAD 
作画@wiki - 大平晋也

■千と千尋の神隠し
 原画 千尋が釜爺のところへ行き、働かせてくれ、と頼み込むシーン

・shamonさんのレポート ひねもすのたりの日々: 「高畑・宮崎アニメの秘密がわかる。 スタジオジブリ・レイアウト展」

・当Blog記事
 ガイキングオープニング 金田伊功の作画の進化 アニメータ磯光雄と『電脳コイル』 
 池谷裕二 『進化しすぎた脳』 感想 3 + α アニメーター磯光雄と金田伊功と脳の構造 
 磯光雄,井上俊之監修 『電脳コイル ビジュアルコレクション』原画2000点とタイムシート

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2008.08.28

■科学技術館 立体フルデジタルドームシアター「シンラドーム」

Synra_doom 科学技術館|お知らせ: シンラドーム

(略)インタラクティブな全天周立体投影(略)立体フルデジタルドームシアター「シンラドーム」を 8 20(水曜日)よりオープンします。

(略)2002年夏には立体視が可能な 400インチスクリーンに更新され、今回のリニューアルで展示室全体にドームスクリーンを構築しました。「シンラドーム」と改められた展示室内いっぱいに設けられた完全目地なしドームスクリーンと立体映像投影システムにより、圧倒的な没入感と迫力をもった、まったく新しい映像体験をお楽しみいただけます。

ドーム前室には、研究用のスーパーコンピュータ MD GRAPEを動態展示しています。(略)

研究機関や大学などによる最新の科学研究の成果を可視化し、科学者が本物の道具を用いて本物の科学を語りかける、サイエンスビジュアライゼーションを行う新しいドームシアターがこの夏誕生します。

ドーム直径 : 10m (傾斜角: 18°)
立体投影方式 : 分光立体方式 (Infitec)
投影用プロジェクタ : BARCO社製 SIM 5R (Infitec搭載仕様) 12

画像生成 PC : 12

 これの画期的なところは、併設されたスーパーコンピューターによりリアルタイムで計算しながらシミュレーション映像を立体投影できるところでしょう。
 これによってどんな凄い映像を見せてもらえるか、実物を是非観てみたいものです。

 こういう映像装置の新しいものがリリースされるといつも思うのが、大伴昇司氏が生きていて、大伴氏の紹介記事で、新しい映像の冒険について読んでみたいということ。SFマガジンのトータル・スコープという連載記事で新しい映像の数々を紹介されていた大伴氏の筆致が今も忘れられない(^^;)。

 立体映像というと、僕は特殊映像博物館:Special Movie Museumの映像クリエータ大口孝之氏が作成された富士通の博覧会映像『THE UNIVERS 2』の立体ドームCGの分子が蠢く映像に強烈なインパクトを受けた。あの立体ドームに浮かびあがった無限の空間に水分子が動く究極映像が今も忘れられない。
 今回の映像では、このドームで上映されるもののうちで、3D-CGでナノの世界を描いている「セントラルドグマ ~ゲノム情報からタンパク質ができるまで~」というのが特に観てみたい。

 探してみたら、この映像がウェブにもありました。立体でというわけにはいかないけれど、こんな映像です。

OSC ムービーギャラリー (理化学研究所 オミックス基盤研究領域)

Central_doguma_2

◆関連リンク
システム開発財団法人日本科学技術振興財団 
科学技術館
株式会社オリハルコンテクノロジーズ
コンテンツ提供株式会社オリハルコンテクノロジーズ
大学共同利用機関法人自然科学研究機構国立天文台
独立行政法人理化学研究所
和光研究所基幹研究所戎崎計算宇宙物理研究室
横浜研究所オミックス基盤研究領域
STU研究所
制作協力バルコ株式会社  有限会社天窓工房

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2008.08.26

■長野県飯田市 川本喜八郎人形美術館
   企画展 糸と手と影 「平太郎化物日記」

Kawamoto_museum_2飯田市川本喜八郎人形美術館 

 高速道で1時間ほどで行けるので、一度行ってみようと思っていた川本喜八郎人形美術館へふと思い立って、盆休みの8/10に行ってきました。

 飯田市の街中の複合ビルの2F,3Fが美術館。外観は右の写真のように落ち着いた良い雰囲気。

 人形は三国史を中心にした展示で、実はNHKの同番組を観ていなかった僕はあまりそれら人形には感動できませんでした。むしろ、同じNHKでも幼少時に熱心に観ていた『 ブーフーウー』や、TV-CMのみつわせっけんの人形にノスタルジーとわぁー、本物だという感動を得たという川本ファンにはなれない私(^^;;)。

 真面目な話、でも右の写真にあるような人形は、特にその着物の丁寧な作りには感心。細部までじっくり見られるのが実物の嬉しさ。

 ビデオ上映では、人形劇『世間胸算用近頃腹之表裏』をシアターでやっていて、観劇。下世話な嫁舅話をユーモラスな人形で演じた芝居でなかなか楽しめました。

インフォメーション 企画展「糸と手と影」

平成20年4月22日(火)~8月17日(日)
ITOプロジェクト「平太郎化物日記」公演の糸操り人形

ITOプロジェクトは糸操り人形を広げようと、飯室康一氏(糸あやつり人形劇団みのむし)、山田俊彦氏(人形劇団ココン)を中心に2001年からワークショップを開始。「平太郎化物日記」は第5回プロジェクト公演で上演された。

Heitarochirashi  同美術館で企画展として開催されていたのが、「平太郎化物日記」という『稲生物怪録絵巻』をベースにした人形劇の展示。

 各種妖怪の糸操り人形が十数体展示してあり、そのいろいろと趣向を凝らした仕組みが楽しめた。この芝居、12/26~静岡で再演されるとのことで、残念ながら遠くて行けないけれど、機会があれば観てみたいもの。(もともと名古屋の七ッ寺で公演されていたらしく、知らなかったので残念なことをしました)
 この人形たちのムービーがここで観られます。糸あやつり人形芝居『平太郎化物日記』 ダイジェストムービー公開

◆「いいだ人形劇フェスタ・世界人形劇フェスティバル

 実はこの日、飯田市で毎年開かれている人形劇フェスタの最終日。ほとんど何も調べずに当日朝に行くことを決めて、日帰りで行ったため、人形劇は見ることができなかったけれど、飯田の街に世界の人形劇が来ていたようで、残念なことをしました。来年、もう少しちゃんと調べて行ってみようかな。

◆関連リンク
singular points…特異点における日常の風景: 飯田市川本喜八郎人形美術館
 いいだ人形劇フェスタ 飯田市在住のSACさんのBlog。
並木そば処 會 SACさんの紹介記事を参考に飯田市のおいしい蕎麦屋に寄ってきました。SACさんに感謝。

『妖怪の肖像―稲生武太夫冒険絵巻』(amazon)

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2008.08.24

■二つの展示会 『ヤン・シュヴァンクマイエルの世界』
  『イベントーク シュヴァンクマイエル展』

Jan_svankmajer_0808

◆『イベントーク シュヴァンクマイエル展』(公式HP)(Esquire経由)

『不思議の国のアリス』、『鏡の国のアリス』、『人間椅子』の原画を展示。
アート・アニメーション・フェスティバル2008」も同時開催。
会期:2008年8月26日(火)~31日(日)
会場:愛知芸術文化センター12F アートスペースG 名古屋市東区

■展示予定作品  
『不思議の国のアリス』原画(2006年) 21点  
『鏡の国のアリス』原画(2006年) 21点  
『人間椅子』原画(2007年) 17点

■アートインパクト「アーティスト・トーク」第3回
開催日時: 2008年8月30日(土) 15:00~
講    師: 布施英利(東京藝術大学准教授〈美術解剖学〉)
ユニークかつ特異な身体イメージを提示するヤン・シュヴァンクマイエルについて、気鋭の芸術学者・布施英利が語ります。

◆『ヤン・シュヴァンクマイエルの世界』(公式HP)
  (ヤン・シュヴァンクマイエルの贈り物|Esquire経由)

最新作の“ex-libris(蔵書票)”の原画5種類を展示。 シュヴァンクマイエル作品の上映会やリトグラフやポストカードなどの販売会も開催。

会期:2008年8月19日(火)~31日(土)
会場:The Art complex Center of Tokyo 東京都新宿区

 The Artcomplex Center of Tokyo (The Art complex Center of Tokyo)

今 回のACTでの展示会では、シュヴァンクマイエルが現在制作中で、まだ公の場で発表されていない最新作のex-libris(蔵書票)原画の展示と、それ をもとに制作されたリトグラフの受注販売を行います。

 以前紹介した『イベントーク シュヴァンクマイエル展 の開催がいよいよ今週となり、詳細が公式HPに公開になっていましたので、ご紹介。
 8/30の布施英利氏の講演、面白そうなので是非聞きに行きたい。

 あと東京では8/19~新作の“ex-libris(蔵書票)”の展示が開催されているとのこと。
 リトグラフが発売されているということで、ファンには嬉しいイベント。

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2008.08.23

■笠井 潔『青銅の悲劇 瀕死の王』

 笠井 潔『青銅の悲劇 瀕死の王』(amazon)

◆総論 メタフィクションでないアンチミステリー(この項 ネタばれはなし)

 「矢吹駆シリーズ日本篇 待望の第一作」、夏休みに読み切れず、結局、今週通勤電車に持ち込み、さらにオリンピック(野球)の韓国優勝をTVで流し観しながらさきほど読了。772ページの本を毎日持ち歩くのは疲れます。

 にしてもこの厚さは無駄ではない。厚さの理由は、謎に対する徹底的な推理論議が描きこまれているからなのだけれど、有機的に終盤のテーマに収斂していく。

 その終盤のテーマは一応の全ての謎解きの後に記述されるナディアによる20世紀本格推理小説論。しかもこれが小説としてのメタレベルで語られるのではなく、あくまでも物語世界のリアリティの中で、リアルだからこそ語られるところに本作の透徹した思考がある。笠井潔、やっぱり凄い。今年の本格ミステリーの(他を全く読んでいないけど(^^;))たぶんトップ。

◆推理徹底論議と、描かれる終焉間際の昭和の習俗

 今回、物語は笠井の『天啓の宴』等に登場する作家宗像冬樹が主人公。
 笠井自身をモデルにしたこの宗像と、「矢吹駆シリーズパリ篇」のワトソン役(?)ナディア・モガール、そして北沢響という高校生が探偵役で、旧家で起こった事件をあらゆる角度から推論/推測していく。最初、冗長かとも思われたそれらシーンは、しかしかなり緻密に整理されていて読みやすく、あきさせないで大部の小説を最後まで読ませていく。

 先の新刊メモで書いたナディアの日本アニメ・漫画研究のパートも、ある登場人物を描くのに重要な部分を形成している、そしてこの時代の日本のリアルを描くのにも成功している。
 全共闘の時代も当然このシリーズでは重要な位置づけで描かれるのであるが、今回は次回作への一つのステップとして、矢吹駆および宗像冬樹周辺の過去の描写と、そしてこれも1989年の日本のリアルを浮き彫りにするのに(先のアニメパートとの対比で大きく)貢献している。

◆アンチミステリー そして本質直感批判 

 ★ここからは、テーマに関するネタばれ有。
  でも犯人についての謎解き部分は触れません。

続きを読む "■笠井 潔『青銅の悲劇 瀕死の王』"

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2008.08.18

■クリストファー・ノーラン監督『The Prestige:プレステージ』

Prestige プレステージ (映画) Wikipedia 公式HP

 クリストファー・プリーストの世界幻想文学大賞受賞作『奇術師』の映画化。

 以前読んだプリーストの原作にかなり忠実&映画としてもなかなかの傑作。クリストファー・ノーラン監督、きっちりしていて話の運びもとてもうまい。『ダークナイト』も楽しみ。

 ディヴィッド・ボウイのニコラ・テスラは非常に常識人として描かれていた。実物から離れても、映画は絵的にもっとマッドに描いていても良かったと思う。なにしろあんなものを発明してしまうのだから。

◆関連リンク
・新戸雅章氏のHP 発明超人ニコラ・テスラ
テスラの著作特許(もしかして自筆の絵?)
 そしてテキスト "World System of Wireless Transmission of Energy"
薬試寺美津秀 日本唯一にして、最強のテスラコイル・パフォーマーとか。

 テスラコイルの研究を独学、自費で続け、2001年、人気ロックグループTUBEのツアーでは7m長の稲妻放電発生に成功。(略)
 2006年、世界クラス(東洋最大)のテスラコイルを製作。神奈川県川崎市で開催された「ニコラ・テスラ生誕150年記念イベント」で公開し、絶賛を博した。2007年には、映画「プレステージ」試写会イベントで、マジックとのコラボレーションに挑み、見事成功させた。

 テスラ・コイル実演動画  Youtube Tesla coil 音と同期する火花
 映画ではたぶんSFXだったあのテスラ・コイルの実物映像がいろいろ見えます。

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2008.08.15

■諸星 大二郎『未来歳時記・バイオの黙示録』

諸星 大二郎『未来歳時記・バイオの黙示録』
 諸星大二郎のひさびさのSFものと聞いて、さっそく読んでみました。

 タイトル通り、バイオテクノロジーによる奇怪な未来の地球の黙示録的世界が描かれている。連作短編6篇(「野菜畑」「養鶏場」「案山子」「百鬼夜行」「シンジュク埠頭」「風が吹くとき」)と、その間にはさみ込まれ、全体にひとつの物語の流れを作っている幕間劇5篇(「難民」「サトル1」「花」「サトル2」「サトル3」)で構成。

 植物と動物と昆虫と人のDNAの融合により、生物相が入り乱れて発生する奇妙な世界。

 初期の代表作「生物都市」を思わせるどろどろな生物の融合状態。発現してくる潜伏DNAとそこで生まれるさまざまなドラマがドタバタだったり悲劇だったり、どれも印象的。特に僕は、「風」が象徴的に描かれ、狂言回しとして登場したサトルが重要な役割を果たす全編の最終話「風が吹くとき」で描かれる異様なイメージが心に残った。特にエリアを深いところへ侵入して行く過程がイマジネーションを刺激する。

 21世紀、遺伝子工学が産業として拡大することは間違いない。
 今世紀末に地上に現出する黙示録的な世界は、こんな様相かもしれない、とどこか思わせる奇妙なリアリティがある。

◆関連リンク
諸星大二郎『バイオの黙示録』-夏目房之介氏の「ほぼ与太話」

この人の絵は、じつに奇妙な「現実」と「神話」のあわいを描ける不思議な絵なんだが、それがいかんなく発揮され、DNAが種を越えて混じってしまう世界を描いている。

・本Blog過去記事
 諸星 大二郎 短編小説集 『蜘蛛の糸は必ず切れる』
 諸星大二郎の「影の街」と磯光雄アニメート

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2008.08.14

■新刊メモ 笠井 潔『青銅の悲劇 瀕死の王』

 笠井 潔『青銅の悲劇 瀕死の王』(amazon) 僕の感想はここ

待望の矢吹駆シリーズ!!
1988年末、東京郊外の旧家、鷹見沢家に続発する奇妙な事件!そして冬至の日、会席の席上、当主の信輔が突然倒れる!旧家に纏わる忌まわしき因縁とは?!

 この本、すでに7月に出てたんですね。知りませんでした(^^;)。昨日、本屋で見つけて、吃驚。

 『バイバイ、エンジェル』からスタートした笠井潔の哲学本格推理、既に30年近く読み続けてきただけにこれは外せません。今回、舞台をフランスから移して「矢吹駆シリーズ日本篇 待望の第一作」とあります。772ページという大部の本なのでとても電車で毎日持ち歩けないので、この夏休みが読み切るチャンスと即買。この厚さで2310円というのは、お得な値段設定で嬉しい。

 さっそく昨日の夜から読み始めたのだけれど、何が吃驚したかというと、ナディア・モガールが日本へ留学しているのだけれど、その目的は「日本のアニメとマンガの研究」!!
 フランスにおける日本文化の受容が進んでいるのは有名だけれど、ナディア、お前もか!?って感じ。そして、出てくる『ナウシカ』、『ヤマト』、『ガンダム』という作品名。今のところ(70ページ分)、哲学者の名前はフッサールもハイデッカーもひとつも出てこずに、アニメ作品名が頻発。どうした、笠井潔!!

 究極映像研としては、なにやら楽しい展開ではあるのだけれど、この先、どうなるのか、心配。笠井潔の現象学的アニメ論が展開されるのか!?? 乞うご期待!!

 

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2008.08.11

■フランク・ミラー:FRANK MILLER監督
   『ザ・スピリット:The Spirit』予告編

The_spiritsThe Spirit - Trailer 2
The Spirit(公式HP)

It is the story of a former rookie cop who returns mysteriously from the dead as the SPIRIT (Gabriel Macht) to fight crime from the shadows of Central City. His arch-enemy, the OCTO ...

 フランク・ミラーの初単独監督作。

 デジタル合成とノワールの融合、という感じで渋くてポップな仕上がりになっている。
 コミックに続き、映画でも映像に革新をもたらすことができるのか。とかくデジタル処理は奇をてらい過ぎると、陳腐に見えるだけに期待半分、不安半分。特に右の写真の上から3番目。人物の映像に枠線が入れられている。これがどこまで成功しているか。
 2008年のクリスマスシーズンに公開。

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2008.08.06

■人形アニメーションレーベルMUKU
   ロボット Stephan ステファン

Muku_stephane YouTube - MUKUTV さんのチャンネル
MUKU 人形アニメーションレーベル
Stephan ステファン

小さなステファンの、大きな冒険。

2046年、石油が枯渇したロボットの国では飢饉と大恐慌が起こっていました。 ステファンは全財産で星を購入し、相棒のタラップと共に食糧のオイルを求めて宇宙開拓の旅に出たのでした。

 MUKUという人形アニメのレーベルが出しているDVD。
 ロボットのデザインがなかなかいい感じ。そしてムービーを見るとわけのわからない言語と日本語の字幕。微笑ましい映像をどうぞ。

 でもこのロボット、どうみてもエンジンは積んでいないのに何故オイルが食糧なのか。あきらかに電気で動いているのだろうに、電気が食糧出ないというのは不思議。こんなことが気になるのもエンジニアの職業病かも(^^;)。

 正直今のロボットは皆んな電気仕掛けだけれど、本来電池より化石燃料の方がエネルギ密度は桁が違うほどなので、もう少し内燃機関のロボットが出てきてもいい感じ。うるさいし臭いし自然に優しくないからしょうがないか。

◆関連リンク
・当Blog記事 内燃機関ロボット
 イギリス発の凄いロボット

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2008.08.05

■『超SF的 社会科見学 DVD BOX』

『超SF的 社会科見学』(amazon)

  「超SF的」な世界が、子供から大人までを惹きつけてやまない…今、社会科見学が密かなブームだ。
 まるで、古代の神殿のように地下深くに存在するインフラ設備、最先端の技術を駆使して構築された研究所、そして人が作ったとは思えないほど複雑な配管を持つ工場、英知を集めて作られたメカニックな食品工場…
 一歩足を踏み入れると、そこに広がるのは近未来、「SFの世界」だ。実はこうした施設や工場は、私たちの生活に深く関係しているものが多い。

○全編新規撮影・NHKエンタープライズ制作オリジナルDVD
 このDVD、かなり興味深い。面白い時代になったなー、これもネットで「社会科見学」やら「工場萌えな日々」やら出てきたおかげでしょうね。草の根からこうしたものが立ち上がっているのが、ネット時代の建設的効果ですね。いいなー。

 できればDVDでなく、臨場感ばっちりのハイビジョン放送でNHKにはやってほしい。

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2008.08.04

■磯光雄,井上俊之監修 『電脳コイル ビジュアルコレクション』
  原画2000点とタイムシートが圧巻!

Coil_visual_collection 『電脳コイル ビジュアルコレクション』(amazon)

 「神作画」本、ついに出ました。

 喜んで買ってすぐ中を観たかったのだけれど、この表紙の本を電車の中で開くのは結構恥ずかしい。表紙はこの本にふさわしい、もっと動きのあるシーンの原画何枚かで構成してほしかった。この表紙で家族(特に娘)から冷たい視線が飛ぶし、、、(^^;)。

 まず原画2000点の掲載が圧巻。
 各シーンのアニメータの鉛筆の筆致がじっくり見られるのが嬉しい。鉛筆が紙面を走るスピードが想像できる。この手の動きがあの画面の動きを生み出したんだという軌跡が体感できる。

 そして次に関心したのが、原画2000枚とともに掲載されたタイムシート。これを見ていると頭の中であの動きが再現される。このシートの数字だけの羅列を観て、「2,2,2,1,1,3,2,2コマ、うぉー凄い」と興奮するのは作画マニアの楽しみ(^^;)。

Img_0181

 全原画(フル3コマ,フル2コマ)というのは磯監督の技として有名だけれど、タイムチャートを見ていくと、この作品では原画マンがかなりの比率でフル3コマ(時にはフル2コマ)で描いていたことがわかる。凄い、というかもしかして今、他のアニメでもよくやられているのだろうか?(そんなことはないだろう)。なにしろ中割りの動画指示が動きのスローなシーンだけに限定されていて、極端に少ないのが印象的。

 ちなみに左の引用、あの放課後のミサイル戦もフル2コマの原画。緻密なアニメーションの動きは、このように原画による細やかな指示で実現していたわけです。

 あとサッチーは3D-CGと思ってたら、手描きの原画が何点も収録されている。3Dより手描きの方が多かったのだろうか。あとメガバァのメタタグ生成マシン(正式名称なんだっけ?)もCGと思っていたら手描き。

Img_0180_2  磯光雄監督による表情の修正の細やかさにも舌を巻く。P174-177とか重要なシーンでキャラクタの表情をひとつづつ丁寧に修正が入れられている。
 ここまでこだわったことがあの映像の完成度を支えていたわけです。

 ひとつだけこの本の残念なところを挙げると、各原画にアニメーターの名前がクレジットされていないこと。
 監督と総作画監督の修正は明記されているので、磯監督の画面に込めた想いはうかがい知れるが、各原画家の名前はない。

 何か事情があっただろうけれど、本当に残念。なんでここまで丁寧に作っているのに、アーティストを尊重するクレジットがないのか疑問。ところで印税はちゃんと各原画マンに行くのだろうか?もともとの契約上、そのようなことは無理なのかもしれないが、、、、。

◆関連リンク
YouTubeで見られる神作画@Wiki
7月31日発売決定!
     (月刊アニメージュ【公式サイト】)

「アニメージュ」8月号では、磯光雄監督と作画チーフ・井上俊之さんによる本書の作業風景を紹介しています。 あわせてそちらもチェックしてみてください。

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2008.08.03

■押井守監督『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』
  死と対峙した陰鬱な秀作

『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』公式サイト

完全な平和が実現した世界で大人たちが作った「ショーとしての戦争」
そこで戦い、生きることを定められた子供たちがいる。
思春期の姿のまま、永遠に生き続ける彼らを、
人々は《キルドレ》と呼んだ――。

空と地表の境で繰り返される、終わらない、愛と生と死の物語。

◆結論

Image4 今回、押井もついにヒットを狙ってエンターティンメントに徹するか、と思っていた僕が馬鹿でした。宣伝キャンペーンはヒットのため頑張っているけれど、作品はエンターティンメントとして描かれてはいません(断言)。
 これは気持ち悪い映画です。決して空中戦を描いた普通の恋愛映画ではないのでくれぐれもご注意を。
 いつもの押井守的不条理映画として今回は死をテーマに描いている、というのが僕の結論。

 死をもろにテーマにしたこんな重い映画はヒットはしないでしょう。だけれども押井守の映画としては、ストレートにシンプルに死をテーマにしたことで、生々しくそれが強烈に伝わってくる成功作と言えるのではないかなー、といった感想。

 終わらない生は永遠に続く死と同じ、というのが今回のテーマ。
 本当に観ていて吃驚するくらい陰鬱な映像。空戦シーンのみが活き活きとしていて、それ以外はまるで死人の日常を描いたように陰々とした映像が続く。

 業界全体の作画力の低下と3D-CGの可能性ということを押井は語っているが(ORNADO BASE / 押井インタビュー)、それを逆手にとったテーマ設定と言えるのかもしれない。基地での日常として描かれる部分、特に死んだ眼のままでいいという草薙水素のアニメートへの演出の開き直りは凄まじい。その眼はまるで『イノセンス』の人形の眼と同じ。そして声の芝居に頼り、動きを極力抑えた芝居。ある意味、2Dアニメへの決別宣言ともみえる恐ろしい監督の判断と読める。

◆死との対峙

 北欧のように見える寒々とした海の断崖の空撮映像が後半で描かれている。
 このシーンを見ながら、僕はデヴィッド・リンチが年齢を重ね、死と対峙して制作した『ストレイト・ストーリー』や『マルホランド・ドライブ』を思い出していた。

 リンチや押井守といったある種の妄想的な鋭敏な感受性が、死をその対象とすると、こんなにも独自の解釈が生まれてくるのか、といった感想。人形のような眼のキャラクターや雨に沈む空や海岸線の映像が全体として浮かび上がらせる「死」のイメージは強烈である。劇場内は無意識下に展開されたそのイメージで重い空気が充満。表面的な恋愛劇や空中戦でカモフラージュされているが、あの重い雰囲気の正体は、押井の感性がとらえている死の正体であると言い切るのは無理があるだろうか。

Image3 死が特別なものでないのは自明である。しかしある年代まではそれはフィクションとしか感じられない。しかし周りの身近な人たちの死と自身の年齢が進むことで実感されるリアルな死。

 永遠に生きるキルドレの物語で明確になっているのは、一回限りでないことで日常に充満してくる死である。

 これは函南雄一が草薙水素と見知らぬ街の酒場で二人飲むシーンに端的に表れている。そして三ツ矢碧が語る自分がキルドレでないか、子供の頃の記憶があるシーンしかないことの不安を語るシーン(まるで『ブレード・ランナー』のレプリカントそのものである)。

 リアルな戦争がないと生を実感できない人間。そのために存在するキルドレたちの戦争。永遠に生きられることでいつでも死を見せることのできる存在たちが苦悩する姿。

◆若者へのメッセージとは

NHK 夏の特集番組 アニメ監督・押井守のメッセージ~新作密着ドキュメント~(仮) 8月4日(月)総合 午後10:50~11:30.

  その押井が今夏、4年ぶりとなる新作アニメ映画「スカイ・クロラ」を発表する。押井はこの作品に「生まれて初めて『若者』へのメッセージを込めた」と語 り、周囲を驚かせた。これまでは10代後半~30代の若者たちに絶大なる支持を受けながらも、「若者たちに語ることは何もない」とひたすら自分自身に向け て作品を作り続けてきた押井。ところが55歳となり、「今なら若い人になにかを語れるのではないか」という心境になったというのだ。そのため脚本家に20 代の若手を抜擢し、これまでの難解なSF的世界ではなく「若い男女のラブストーリー」を目指すなど、新境地を開拓すべく自分よりはるかに若いスタッフと対 話を重ねながら製作作業を進めてきた。

 今回、押井守は初めて作品で若者に語りたいことがある、と公言している。それはいったい何なのか。僕は極々限られた状況にいる若者へ向けたメッセージなんだろうと思った。

 対象としている相手は、最近の無差別殺人の犯人とその予備軍なのではないか。
 自分と他人の双方に生と死の実感を持てず、自ら殺人を犯すことでその実感を手に入れようとする若者。事件を起こしてマスコミに登場することが目的だったと公言するわけのわからない認識。

Image2 たぶんその心理的なメカニズムは、この映画で水素が飲み屋で語ったことで説明できるのではないか。
 リアルな戦争をTVにより報道することでしか生を実感することができなくなっている人間の脳の問題を指摘したシーン。

 TVで殺人事件の報道を見ることでしか、生のリアリティを確保できない者たちが少なからず存在するのが、現実の平和国家 日本の実情なのかもしれない。そしてそんな存在が、自らの生を実感するために、TVでの報道を目的に自分で殺人事件を引き起こしてしまうのでないか。仮想をまとい何重にもオブラートで包まれて、死とかけ離れた現実を生きるそんな人へ向けたメッセージがこの映画なのかもしれない。

 では、その対象となる人物に、この映画はそんな認識をちゃんと付きつけられるだろうか。答えはノー。きっと彼らは、無意識で何かを感じたとしても、決して表層の意識ではこの映画からそんな本質的な指摘を何も感知できないのではないか。どだいそんな感受性があれば、事件を起こすようなことはないはずだ。ここらあたりもこの映画の限界を感じて、陰々としてしまう部分。

 この映画が広く観られて議論が進んで、この日本の実情が変わるかといったら、おそらくこれもノーだろう。実に現実分析としては面白いが、その実効力は疑問。またしても非常にマニアックな映画になっているというのがこの点でも言えるかもしれない。でも映画祭では受けるかもね。

◆その他 雑記

・冒頭の空中戦と雲の描写とそれにかぶる音楽でゾクゾクした。
 『パト2』の音楽に似た旋律がかすかに鳴っているのがいい。
・生き続けるからこそ、死を何度も経験し、いつも死を抱いているキルドレ。それを見つめて彼らが戻ってくるたびに尻尾を振るバセハンが哀れ。そして笹倉等の地上の大人たちの寂しげな瞳。ここにも死を見つめ続ける者たちがいる。
・空手やって何かが変わったようなことを言っているのは恐らくブラフ(^^;)。
 この映画、押井守が何も変わっていないことの証明。
・音響が今回も素晴らしい。古い建物の床がたてる音。音の厚みが平板な絵を助けている。そして飛行機のリアリティ。エンジンの音と風切り音、そしてアルミの軽量なボディが空気にあおられる動きの描写。空力に配慮した映像と音が特にいい。
・森作品に感じるプラモデルのような人物。
・今回、原画に沖浦氏はいない。
 本田雄,井上俊之の名前はあるが、どこを担当しているのだろうか。
 僕は作画的には、大プロジェクトの後のブリーフィングと、それに続くボーリングのシーンがやたらうまかったのが印象的だった。
・永遠の子供(まるでアニメの世界)に対して、外部としてのティーチャー。
・菊池凛子の声の存在感が凄い。「いるかいないかこのふたつしかない」とか

◆関連リンク
スカイ・クロラ - Wikipedia
『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』動画を無料放送<パソコンテレビ GyaO[ギャオ]>
 行定勲監督のが本編の本質を抽出している。
 無理だろうけど、この空戦の素材で宮崎駿にも予告を作ってもらいたいもの。

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