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2008.08.04

■磯光雄,井上俊之監修 『電脳コイル ビジュアルコレクション』
  原画2000点とタイムシートが圧巻!

Coil_visual_collection 『電脳コイル ビジュアルコレクション』(amazon)

 「神作画」本、ついに出ました。

 喜んで買ってすぐ中を観たかったのだけれど、この表紙の本を電車の中で開くのは結構恥ずかしい。表紙はこの本にふさわしい、もっと動きのあるシーンの原画何枚かで構成してほしかった。この表紙で家族(特に娘)から冷たい視線が飛ぶし、、、(^^;)。

 まず原画2000点の掲載が圧巻。
 各シーンのアニメータの鉛筆の筆致がじっくり見られるのが嬉しい。鉛筆が紙面を走るスピードが想像できる。この手の動きがあの画面の動きを生み出したんだという軌跡が体感できる。

 そして次に関心したのが、原画2000枚とともに掲載されたタイムシート。これを見ていると頭の中であの動きが再現される。このシートの数字だけの羅列を観て、「2,2,2,1,1,3,2,2コマ、うぉー凄い」と興奮するのは作画マニアの楽しみ(^^;)。

Img_0181

 全原画(フル3コマ,フル2コマ)というのは磯監督の技として有名だけれど、タイムチャートを見ていくと、この作品では原画マンがかなりの比率でフル3コマ(時にはフル2コマ)で描いていたことがわかる。凄い、というかもしかして今、他のアニメでもよくやられているのだろうか?(そんなことはないだろう)。なにしろ中割りの動画指示が動きのスローなシーンだけに限定されていて、極端に少ないのが印象的。

 ちなみに左の引用、あの放課後のミサイル戦もフル2コマの原画。緻密なアニメーションの動きは、このように原画による細やかな指示で実現していたわけです。

 あとサッチーは3D-CGと思ってたら、手描きの原画が何点も収録されている。3Dより手描きの方が多かったのだろうか。あとメガバァのメタタグ生成マシン(正式名称なんだっけ?)もCGと思っていたら手描き。

Img_0180_2  磯光雄監督による表情の修正の細やかさにも舌を巻く。P174-177とか重要なシーンでキャラクタの表情をひとつづつ丁寧に修正が入れられている。
 ここまでこだわったことがあの映像の完成度を支えていたわけです。

 ひとつだけこの本の残念なところを挙げると、各原画にアニメーターの名前がクレジットされていないこと。
 監督と総作画監督の修正は明記されているので、磯監督の画面に込めた想いはうかがい知れるが、各原画家の名前はない。

 何か事情があっただろうけれど、本当に残念。なんでここまで丁寧に作っているのに、アーティストを尊重するクレジットがないのか疑問。ところで印税はちゃんと各原画マンに行くのだろうか?もともとの契約上、そのようなことは無理なのかもしれないが、、、、。

◆関連リンク
YouTubeで見られる神作画@Wiki
7月31日発売決定!
     (月刊アニメージュ【公式サイト】)

「アニメージュ」8月号では、磯光雄監督と作画チーフ・井上俊之さんによる本書の作業風景を紹介しています。 あわせてそちらもチェックしてみてください。

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コメント

 ミのつく職人さん、shamonさん、遅レスすみません。大雨で電車に缶詰めになるし、今週は最低(^^;)でした。

>>星雲賞受賞に乾杯。

 磯監督、スタッフの皆さん、おめでとうございます。星雲賞は、磯監督自身の脚本・コンテ・原画、入魂の奇想 & バカSF12話「ダイチ、発毛ス」の成果でしょう。おそらく奇想 & バカSFとしては、日本アニメ史上最高作。おまけに人類について考えさせるカンドー作でもあるという、傑作人類テーマSFでもあります。
 もし『コイル』未見のSFファンがいたら、この1話だけでもお薦めですよね。
 

>>東京都現代美術館にて開催中の
「パラレルワールド」展に出品している
http://parallelworlds.mot-art-museum.jp/
ダニエル・ギヨネの映像作品が
コイルチックでした。

 これ、面白そうですね。
 ネットで探しても残念ながら映像は見つかりませんでした。

 東京都現代美術館、ポイント、高いですね。

投稿: BP(ミのつく職人さん、shamonさんへ) | 2008.08.31 08:46

まいどです。

コイルそのものではないけど
ちょっと面白いのを見つけました。

東京都現代美術館にて開催中の
「パラレルワールド」展に出品している
http://parallelworlds.mot-art-museum.jp/
ダニエル・ギヨネの映像作品が
コイルチックでした。
(たぶん)パリの街の日常風景に三叉の生物(コイルのオヤジみたいなの)が出てきたり、
ハトの頭が不思議な物体に変っていたり
銅像の目の部分が顔になっていたりと
現実にもう1つの世界が重なっているようでコイル風味満点。
この映像作品の名は「バグ」。笑っちゃいました。

投稿: shamon | 2008.08.27 20:25

星雲賞受賞に乾杯。
金沢は実は鯖江だと思いますが、そんなことはともかく。

投稿: ミのつく職人 | 2008.08.24 22:37

 shamonさん,K-muraさん,さとぴーさん、コメントありがとうございます。遅いレスですみませぬ。夏休み前の本業の追い込みで今日も先ほど帰宅です(^^;)。

>>タイムシートを読める人だとフル3コマだとかフル2コマの事もわかるわけですね。
>>フル3コマなんだろうなとは思ってながめていたのですが、フル2コマの部分もあったとは。

 僕も正式な読み方は知りませんが、A,B,C,,の枠の各々の数字が原画のNo.に相当。その間の空欄は同じ画が撮られるコマを示しています。1と2の間に空欄が2つで3コマ同一の画が続くということです。
 あと数字の間に「・」があるのが動画の中割りの画を示している、1と2の間に「・」が3つあると間を3枚の中割り動画で埋めるということになります。

 なので数字が空欄1コマ置きに並んでいるとフル2コマ原画、2コマ置きに並んでいるとフル3コマ原画ということになります。

 文章で説明しにくいですが、わかっていただけましたでしょうか。


>それは仕方ないのだけれど点線になってしまって細かいタッチや文字がわからないのが残念。
もうちょっと印刷なんとかならなかったのかな?

 原画の枚数を増やすか、1枚ごとの大きさを大きくするか、この選択の結果だったのでしょうね。動きの記録を残したかったということでしょうね。DVDで原画全データ収録とか、やってほしいものです。


>ジブリレイアウト図録も悩ましいけど、
こっちも悩ましいなぁ。

 レイアウト図録の方が楽しめるような気もします。この原画集は相当特殊なので一度本屋でページをめくられてから決められた方がいいかと思います。僕は即買いでしたが、、、(^^)。

投稿: BP(shamonさん,K-muraさん,さとぴーさんへ) | 2008.08.08 00:31

タイムシートを読める人だとフル3コマだとかフル2コマの事もわかるわけですね。
フル3コマなんだろうなとは思ってながめていたのですが、フル2コマの部分もあったとは。

投稿: さとぴー | 2008.08.05 02:41

点数が多いためにどうしても小さい絵が多いですね。
それは仕方ないのだけれど点線になってしまって細かいタッチや文字がわからないのが残念。
もうちょっと印刷なんとかならなかったのかな?

投稿: K-mura | 2008.08.04 13:26

>この表紙で家族(特に娘)から冷たい視線が飛ぶし、、、(^^;)。
お疲れ様です、おとーさん^^;。

>各シーンのアニメータの鉛筆の筆致がじっくり見られるの
>が嬉しい。
おおっ(^0^)。
ジブリレイアウト図録も悩ましいけど、
こっちも悩ましいなぁ。

という私は今日久石ジブリコンサートです・・・。

投稿: shamon | 2008.08.04 08:37

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