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2008.09.09

■池谷 裕二, 木村 俊介『ゆらぐ脳』 レビュウ・1
 脳回路の映像 fMCI:functional Multineuron Calcium Imaging

池谷 裕二, 木村 俊介『ゆらぐ脳』
 『進化しすぎた脳』がとても刺激的だった脳研究者 池谷裕二氏の新しい本。
 まずはインタビュアーと構成/文を担当した木村俊介氏の言葉から。

◆脳の先端映像  fMCI
自著を語る|脳を「分からない」から照らしだす
            木村俊介(インタビュアー)

 「世界最初の撮影範囲」を「世界最速の撮影速度」で捉えた、まだ、誰も見たことのない、どうしても発見が生まれて しまうという風景――。

 その前人未到の地に辿りついて、著者は呆然と立ちつくしてしまうのです。

(略)そして、「脳の自発活動の『揺らぎ』に柔軟で強靭な『自分で自分を書きかえる生命活動』の根本があるのでは?」という今のところの研究の到達地点は、ほどほどのフラフラしたムダや余裕がいかに生命に不可欠なのかを教えてくれるのです。

 池谷氏とその研究室メンバーで開発され、脳回路の可視化を実現した多ニューロンカルシウム画像法(fMCI:functional Multineuron Calcium Imaging)の狙いが面白い。

 今までの脳の解析が、「組織」(0.1m単位)と「細胞」(10μm)という、マクロとミクロの画像だったのに対して、fMCIが狙ったのはその間の「回路」(1mm)。そして時間分解能は、神経細胞の活動時間千分の1秒に対して2000コマ/秒。

Ca3_movieratio_2池谷氏のHPより引用
 多ニューロンCa2+画像法(functional multineuronal  calcium imaging、fMCI)

 これによって世界で初めてとらえられたメタミクロな世界。
 この映像から解析されたのは、Synfire chains and cortical songs: temporal module...[Science. 2004]という論文にまとめられた「神経細胞のネットワーク活動には何回も同じ組み合わせが見られる」という従来の常識を覆す学説。

 ここを起点にして語られる刺激的な言説が今回もとても面白い。
 途中、科学に対する池谷氏のあり方とか、学者にとってのコミュニケーションの重要性(池谷氏のあとがきでは「ボヤキ」と書かれているが、それも十分面白い)

神経細胞の活動パターン分析

神経細胞一つをピアノの鍵盤一つに割り当てて、 その活動を音に置きかえると、なんとも不思議な音楽ができあがります。 神経ネットーワークが紡ぎ出す「自然の音楽」をご鑑賞下さい。

 この先端映像の解析方法のひとつが、神経細胞一つ一つが別の音を奏でるとして、音楽として聴いて分析するという独自の手法。時間分解能に優れた聴覚を利用する手法として、本書で紹介されている。

 これ、是非聴いてみたいと思ったのだけれど、上記リンクにMP3データが置いてある。確かに繰り返しの音楽に聴こえる。この不思議な音響が脳内の誰も聴いたことがない声なのだ。論文はリンク先でも読めないけれど、この音でなんとなく、論旨の一部に触れられたような気がする。

(長文につき、次回に続く)

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