■見学記 『-Theo Jansen- テオ・ヤンセン展』-2
テオ・ヤンセン展 見学記 1から続く
◆Animaris Ordis体験
BMW(BMW CF Defining innovation)のために制作されたというAnimaris Ordisという1.5mほどの手ごろな大きさのストランドビーストは実物に触れて動かすことができる。
会場のスタッフの方によると、本来は両サイドに羽根が付いているらしいが、1/23に本機が貸し出されるため、この日は外されていた。
この作品の中央部を持って、引っ張ると、わずかな力で10本の脚がスムーズに動く。
その力は体感的には500gくらいと非常に軽い。自分の手で引っ張って動くこのスムーズさに感動。
構造をじっくりと見ると、ほとんどが白い塩ビのパイプで構成されている。パイプを熱で曲げて伸ばして、関節部はリング形状を付けて、パイプの材質同士ですべり軸受けを構成して摺動させている。一部はタコ糸を巻きつけて関節にしてある。
てっきりボール軸受けか何かでころがり軸受けとして関節を構成してあるかと思ったが、この材料の塩ビにこだわった作りには驚く。図録によると、動物がタンパク質でその体を形作っているように、ストランドビーストはプラスティックで体を作るというこだわりがある、とか。
通常こうした軸受けでは、各部の摩擦抵抗が大きくて、動かそうとすると大きな力がいるはずだが、わずか500gでこのメカが動くのに感心。
たぶんリンクのスムーズさと関係があるのだと思う。
極力最小の力でリンク機構が動くように長さの比が決められている。そのために軽く、そしてこれだけスムーズで優雅な動きが形作られているのだと思う。
この軽さで動くから、構造材をアルミか何か金属で補強し、関節をころがり軸受に変えて、そしてモータで動かしたら人も乗れるかなり安定したロボットになるのではないか。
機構的な完成度から、たぶん走ることも出来るのではないか。
テオ・ヤンセン氏は、会場のパネルでも、生命を作ることのメタファーに執着しているようだ。体をひとつの材質で作ること、自律して動き、そして増殖させることすら夢見ているという。そのこだわりからペットボトルの圧縮空気アクチュエータ、水に触れた時のセンシング等も電子機器を使わずに、プラスチックのみで造形している。
会場には右の写真のように工房も再現されている。
まさにプラスチックのみで作り上げるように、いろんな太さの型と治具が用意されている。パイプをつなげているのもプラスチック(か木)のくい。
デザイン的にはプラスチックのみのものの質感も独特でいいけれど、僕は木材でつくられたものとか、パイプにカバーを付けたものの質感の方が、迫力があって好き。
先に書いたように、アルミで構成し、モータでこういうデザインの物を動かせば、その機構のスムーズさからきっと軽快に動くのではないか。
アートの枠からエンジニアリングの枠に移行するかもしれないけれど(テオ氏の志からは離れるかもしれないが)、どこかで乗用のものを作って見せてほしい。
もともとエンジニアリングの祖先はアートと近い。
テオ・ヤンセン氏の作りだしたDNAがエンジニアリングで世に増殖し溢れていったら素晴らしい街の情景が(ん?)、観られるかも。21世紀の新しい生物として、ストランドビーストはビーチから街へ進化して進出するだろうか。
◆関連リンク
・-Theo Jansen- テオ・ヤンセン展 公式 スタッフBlog
・YouTube - Phun tachikoma 2
・YouTube - pochi.
四国高専のミニロボ『Pochi』。これは金属の体とモータの駆動力とマイクロチップの頭脳を持ったTheo Jansenメカニズム。もう作っている若者がいるんですね。テオはそのDNAが日本の若者の手で進化しているのを知っているのか?
・YouTube - Theo Jansen - Animaris Rhinoceros.
"The Animaris Rhinoceros Transport is a type of animal with a steel skeleton and a polyester skin. It looks as if there is a thick layer of sand coating the animal. It weighes 2 tons and it stands 4.70 meters tall. Because of its height it catches enough wind to start moving."
・YouTube - Walking Machine at Burning Man '07.
これはTJマシンでないパワーにまかせた歩行マシン。
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