■ギレルモ・デル・トロ監督『ヘルボーイ2/ゴールデン・アーミー』感想
どろどろのオタク監督(by.町山智浩)デル・トロ渾身の怪奇幻想怪獣映画を観てきた。
宮崎駿から吉田竜夫、大友克洋、円谷英二、、、といろんな作品へのリスペクトが随所に溢れていて楽しく、そして泣かせもあり、エンターテインメントとして充実。
アカデミー賞を受賞した前作『パンズ・ラビリンス』に比べると、コミカルでガチャガチャしていて奇想色は薄れているが、その分、B級のパワーが満ちている。
僕は円谷プロも吃驚のエレメンタルがビル街で暴れる怪獣シーンが一番興奮(おまえはマンモスフラワーか、と突っ込みたくなる(^^;))。そのラストもまるで上質なウルトラシリーズの一本を観るような感動がある。
Zdzilsaw Beksinski 『The Fantastic Art of Beksinski』
"In the medieval tradition, Beksinski seems to believe art to be a forewarning about the fragility of the flesh - whatever pleasures we know are doomed to perish - thus, his paintings manage to evoke at once the process of decay and the ongoing struggle for life. They hold within them a secret poetry, stained with blood and rust." director Guillermo Del Toro
「ベクシンスキーは、中世の慣わしのように芸術の目的が、肉体の脆さについて警告することであると信じているように思えま す― 我々が知っているどのような喜びも、死によって終焉を迎えるのが運命づけられます。― したがって、彼の絵はたちまちに腐敗の過程と進行中の生存競争を喚起する。それらは、秘密の詩を保持して、血液と錆びによって汚損されます」
これはベクシンスキーの画集のカバーに書かれたギレルモ・デル・トロ監督の言葉。
本作の中でもまさに死をイメージした、「死の天使」のアイルランドのシークエンスにベクシンスキー風の画面作りがなされている。まず「死の天使」の造形自体がベクシンスキー。そして特に「死の天使」の住まう宮殿の造形は右に引用したベクシンスキーの絵のイメージを宿している。
デル・テロ監督の中では、やはり「死」のイメージがベクシンスキーとダイレクトに繋がるのだろう。
★★★★以下、ネタばれ注意★★★★
クライマックスは、誰でもわかるのが、宮崎駿『カリオストロの城』と吉田竜夫『キャシャーン』からの引用。前者は歯車を使ったアクションシーン。後者はロボット群団のシーン(個々のロボットのデザインもだけれど、全体の俯瞰シーンもまるで『キャシャーン』のアンドロ軍団(^^))。
ただし、低予算ゆえか、ここはアニメに負けている。
歯車はセットがしょぼく動き回る舞台が狭すぎる。やはり本来は地下の歯車機構の中へどんどん入り込んで行って空間を3次元に使った一大アクションシーンを作ってほしかった。
アンドロ軍団との戦いも迫力はあったが、規模が寂しい。
映画では数体倒しただけだけれど、やはりここはキャシャーンを超えて、数百体全部をヘルボーイになぎ倒してほしかった。(でも観てるだけで疲れそう(^^;))
◆関連リンク
・Hellboy 2 Trailer: Hellboy 2 Poster
・あけましておめでとうございます - ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記
ポッドキャスト「町山智浩のアメリカ映画特電」、更新しました。
今回はもうすぐ日本公開の『ヘルボーイ/ゴールデンアーミー』と、 『地球の静止する日』と手塚治虫の『ワンダー・スリー』の関係、 それにリスナーのヨッシーさんの「忘れようとしても思い出せない映画」、 『人造人間クエスター』(↓)についてお話ししています。
これ、デル・トロファンは必見。『ワンダー・スリー』と『人造人間クエスター』も懐かしい。
・Guillermo Del Toro, Mike Mignola『Hellboy II: The Art of the Movie』
Book Description The anticipation is ratcheting up for one of this summer's biggest action-adventure events, Hellboy II: The Golden Army, and Dark Horse is taking you behind the scenes! As we delved into the original box-office hit, this 200-page tome likewise presents the most extensive look into the film's evolution, from early concept art and diary sketches, to photos of the final props, sets, and filming. A unique look at filmmaking and the art of graphic novels. Del Toro and Hellboy creator Mike Mignola once again bring their world-renowned talents to bear on a brand-new chapter in Hellboy's history - a visual feast only they could produce. Get your sneak peek well before the celluloid hits the screen!
当Blog記事
・エディシオン・トレヴィル 画集 『ズジスワフ・ベクシンスキー』再復刻版 出版
・ベクシンスキー関連映像ライブラリ DmochowskiGallery.net - film library
・画集 『ファンタスティック・アート・オブ・ベクシンスキー』 Zdzilsaw Beksinski "The Fantastic Art of Beksinski".
・ポーランド現代絵画孤高の巨人 ズジスワフ・ベクシンスキー:Zdzilsaw Beksinski
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