■神山健治監督『東のエデン』 第2話「憂鬱な月曜日」
演出:河野利幸 作監:永島明子
第2話★憂鬱な月曜日
脚本:神山健治/福島直浩 絵コンテ・演出:河野利幸 作画監督:永島明子
第二話も快調。
ストーリーは東京へ着いた主人公滝沢と咲の1日を追いつつ東京の状況とノブレス携帯の力を見せていく。そしてセレソンNo.04の刑事 近藤勇誠の暴挙を追う。
今回、良かったのは、主人公二人の交流をていねいに追って描かれた水上バスを待つ日の出桟橋のシーンと、ラストの近藤のシーン。
前者でよかったのは、咲が家族を語るところと、500円玉をきっかけに滝沢が母の記憶を想い出すところ。二人の関係の進展をうまくコンパクトに描いている。
そしてこのシーンから引用した右の海の描写がいい。
『崖の上のポニョ』で宮崎駿は、海の描写を革新する、といって自分でかなりのシーンを作画していたようだが、この神山監督の海も相当のレベル。背景美術に通ずる光をうまく描いた画をたぶんCGで動かした海は、現実の海の映像をデフォルメして美しくそして暗欝な映像となっている。重く淀んだ映像は、日本に流れる空気の象徴としての描写に見えてくる。こうした映像は、今までのアニメでは観たことがない。
背景美術とともに『東のエデン』の物語を援護射撃する映像的に優れた部分だと思う。
後者は、岩井俊二監督の『スワロウテイル』のリョウ・リャンキ:劉梁魁(江口洋介)の登場シーンを想い出す。あのシャープで冷酷な殺戮シーンの引用であるが、セレソンの本質的な部分をストレートに端的に描き出している。
神山監督は著書『映画は撮ったことがない』で『スワロウテイル』に言及しているので、間違いなく意識的な引用である。
この部分は、「この国を正しき方向へ導く」「救世主」の胡散臭さと、強大なパワーを見せる手段として、非常に効果的に描かれている。
セレソンのポジティブな力の行使を期待していた視聴者に、いきなり冷水を浴びせかける展開。このシーンをラストに持ってきて、次回に引っ張る手腕は凄い。
◆関連リンク
・当Blog記事 第1話「王子様を拾ったよ」感想
竹田悠介美術 HDR(High Dynamic Range)写真タッチの映像
・東のエデン(アニメ)まとめWiki - トップページ
・スワロウテイル - Wikipedia
・岩井俊二監督『スワロウテイル』
Youtubeにもこのシーンがあるけれど、画質が悪いので、初見の方は是非DVDで観て下さい。
・東のエデン 聖地巡礼 今後も日の出桟橋たらんことを…(ローリング廻し蹴り)
これはマニアックな労作(素晴らしい!)。背景美術と実景が比較して見られるので資料的価値が高い。
この写真を見ると、僕が思っていたほど背景のHDR度合いは強くないですね。
・OasisのOP曲 Falling Down のPV(MySpace Video)
Video directed by WIZ。『東のエデン』とは随分イメージが違う。
・REELVISION オープニングのビジュアルを手掛けた山口正憲氏の公式HP。
| 固定リンク
« ■感想 『ヤノベケンジ―ウルトラ』展@豊田市美術館
作品「ウルトラ-黒い太陽」起動!! |
トップページ
| ■ディヴィッド・リンチ監督 最新アニメPV
David Lynch - moby "Shot In The Back Of The Head" PV »
コメント
青の零号さん、こちらこそ、まいど、です。
>>緩急のつけ方がうまい回でしたねー。
>>甘さと苦さを交互に持ってくる加減もうますぎます。
原作に縛られていた前作に比べ、神山節(構造)炸裂ですね。
>>自称「宮崎駿の次に世界を救おうとしている男」としては
>>海の描写でも負けてはいられません(笑)。
ポニョの海もこの描写であった方が、ワルキューレの雰囲気には合っていたのに。
>>それにしても、「近藤勇誠」ってすごい名前ですね。
>>新撰組から名前を持ってくるあたりにも、思うところが
いろいろとあるのでしょうね。
新撰組 近藤勇は、確かに神山的「世界を救う男」ではないですね。
救世主にはめちゃ厳しい監督です。キリストも怒られちゃう勢い??(^^;;)
投稿: BP(青の零号さんへ) | 2009.04.30 09:14
shamonさん、こんにちは。
今晩の第三話、楽しみです。
>>ここは実にぐっと来ました(笑)。
>>別れ際言葉でなく手を差し出す滝沢、
言葉にしないところがいいですね。
あとダイレクトにメアド聞かないとか(^^;)。
でも今の20歳って、メアドはダイレクトに普通に聞くのでは、って思っちゃいますが、、違うのかな?
>>これ、東京在住の身から見ても違和感がないです。
東京湾の表現としてリアルなんですね。
最近、高城剛のBlog(凄くいいです)で、東京の利点は大都市としては珍しく海に面していることだ、ビーチの利用を、というのを読んだけれど、このアニメ、うまく使ってますね(^^)。
TSUYOSHI TAKASHIRO -BLOG- 海の街
そういえば、『東のエデン』公式HPに流れている曲、もうひとつの海に面した大都市ニューヨークを舞台にした高城の『バナナチップスラブ』のエンディングテーマに似ているんですよねー。あ、Youtubeにあった→Banana Chips Love ~ Ending、ここのムービーの後半。
たぶん何の関係もないと思うけれど、、、。
投稿: BP(shamonへ) | 2009.04.30 08:28
まいどでーす(パクリました)。
緩急のつけ方がうまい回でしたねー。
甘さと苦さを交互に持ってくる加減もうますぎます。
そして最後に、次回へと尾を引くとびきりビターな場面が。
神山組、第2話でもいい仕事してくれてます。
>そしてこのシーンから引用した右の海の描写がいい。
ワイドな画角で実際の視覚とかなり近い見せ方をしてるので
海の広がりと水平方向のフラット感がうまく出てると思います。
そこにCGで水面のゆらめきを乗っけたのがうまいところ。
自称「宮崎駿の次に世界を救おうとしている男」としては
海の描写でも負けてはいられません(笑)。
>セレソンの本質的な部分をストレートに端的に描き出している。
滝沢に対して侮蔑とも親近感ともとれる発言を繰り返す近藤も
その行動の真意がすっかり見えたわけではないので、
今後の動向から目が離せません。
それにしても、「近藤勇誠」ってすごい名前ですね。
新撰組から名前を持ってくるあたりにも、思うところが
いろいろとあるのでしょうね。
投稿: 青の零号 | 2009.04.29 20:02
まいどでーす^^。
切れ味鋭い第二話でしたねー。
>水上バスを待つ日の出桟橋のシーン
ここは実にぐっと来ました(笑)。
別れ際言葉でなく手を差し出す滝沢、
ぱっと笑顔になって船に飛び乗る咲がかわいい。
夜景をバックに写真撮影のシーンとか
実に上手く女心をくすぐってくれます。
>現実の海の映像をデフォルメして美しくそして暗欝な映像となっている。
これ、東京在住の身から見ても違和感がないです。
温暖化の影響なのかわかりませんが
こういう雰囲気の海と空を見ることがここ数年増えているので。
投稿: shamon | 2009.04.29 03:17