■感想 天願大介監督 絵師スズキコージ 『世界で一番美しい夜』
ずっと観たかった映画をDVDで観た。
傑作『暗いところで待ち合わせ』に続く、天願大介監督の最新作。
まず冒頭の絵師スズキコージによる極彩色のアニメーションが素晴らしい。文明を捨てて、幸福でも不幸でもない状態を手に入れた男。そして彼が火を発見する。
ここのアニメーションと本篇で実写と合成されたスズキコージの映像がテーマとあいまったコミカルでシュールな独特の雰囲気を映画にもたらしている。
この映画から今村昌平監督の『神々の深き欲望』を想起する。ただしこちらはポップな今村昌平。土俗的に描かれた今村に対して、スズキコージを持ち込んだ時点で、あきらかに狙いのイメージは異なる。このシュールさ、今村昌平にはなかったものである。
このシーン、シュールさでは、かのシュヴァンクマイエルに迫る出来ではないだろうか。チェコ・シュールレアリスムファンにもお薦め。
戦争と争いにあふれた世界を変えるのに、この「○○による革命」の能天気さは相当なもの。特にクライマックスの海辺のシーンはさすがにどう描写しても失笑に陥る危険性が高く、残念な出来。
カメラワークをもっと濃密にして描いていたら、違うイメージが構築できたのではないかと。
だけれどもスズキコージの絵と子供たちにあふれた村の光景を観ていると、「○○による革命」はまんざら間違ったアプローチではないのではないかと思えてくるから不思議だ。
映画としては、その終盤に至るまでの輝子の能力に関するスナックの描写がとてもいい。
特に天願監督の自主映画『妹と油揚』でイヅナを演じた鴇巣直樹が演じている右の引用写真一番上の異様な憑き物の男の迫力は凄い。まさにイヅナの再来である。
『妹と油揚』は一度自主映画上映会で観たきりで、二度と観る機会に恵まれていないが、今回の鴇巣氏はまさにイヅナ進化形で、凄まじい鬼気を画面に刻み込んでいる。はっきり言って、もっとこの人物を中心に据えた異様な映画を観てみたい。凄味のある映画ができると思うが、残念ながらスポンサーを付けるのが大変そうだ。
調べてみたら、鴇巣直樹氏はライターでこんな本を書かれているという。妖怪本でなく物理本、イメージ違うなー(^^;)。
・鴇巣 直樹, 岩崎 こたろう『ホーキング―車椅子の天才物理学者』
◆関連リンク
・métro : Sarara Tsukifune * Yumiko Deguchi
演劇ユニット「métro」旗揚げ公演「陰獣 INSIDE BEAST」
神楽坂ディプラッツ 前売自由4500円
脚本・演出:天願大介
原作:江戸川乱歩
出演:metro(月船さらら、出口結美子)、丸山厚人、池下重大(劇団桟敷童子)、鴇巣直樹
・métro : Sarara Tsukifune * Yumiko Deguchi.
* 2009年1月26日(月) 19:00
終演後に、京極夏彦さん×天願大介×出演者のトークイベントがあります。
本作で輝子を演じた月船さららのユニットによる天願組の芝居があったのですね。鴇巣直樹の芝居が観てみたい!!
でも京極夏彦との関係があるとは。
次の京極堂シリーズは是非天願監督で撮ってほしいもの。
◆関連リンク
・今村昌平監督『神々の深き欲望』
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