■感想 神山健治 小説『東のエデン』
●テレビで高い評価を得、劇場版も決まったスリリングなストーリーを、神山健治みずから小説化。●神山監督にとって、初の小説。●謎に満ちた物語の細部までじっくり読み込み、謎ときの魅力を存分に味わうことができる。●テレビ版では描かれなかったオリジナル・エピソードも豊富に収録。
TVシリーズを楽しみに観ていたこともあるが、神山健治監督の小説第一作として期待して読んでみた。
結果は、アニメストーリーを忠実に描いているが、小説としての膨らみは今ひとつ。簡潔で的確に物語を描写しているのだが、文字だけが奏でる芳醇な新しい世界は描写されていない。この物語だったら、少なくともあと倍の長さが欲しかった。文章のボリュームがあれば、アニメでは描けなかった登場人物たちの内面も書き込めたのではないか。このボリュームでは物語を追うのに精一杯。
人物の感情をトレースしていこうと思うと、テレビシリーズでのアニメートによる表情の変化を思い出さないといけない部分が結構あったように思う。本来小説としては、そこをテレビシリーズとズレてもいいから、書き込んで独自の物語世界を紡いでほしかった、というのが正直な感想。
物語も細部も登場人物の感情の動きもほとんどテレビシリーズと同じ。
この本には脚本家陣の名前のクレジットもなく神山監督ひとりの名前になっているが、これはストーリーを考えたシナリオライター達の合同作、ということでいいのだろうか。通常映像作品としては○cマークでそこを表記しノベライズした作家の名前を著者にする、というのはよくあるので問題はないが、ちょっとだけ違和感。
と辛口になってしまったが、この感想もラストの11章だけ取り出すと少しイメージが違う。
11章はあくまでもストーリーラインは同じだが、小説独自のふくらみがあったように感じた。おそらくそこは映画版のために神山監督が構築しつつある新しい物語の空気が混じり込んで来ているからではないだろうか。ラストはテレビシリーズの感動だけでなく、小説世界としての新しい息吹を感じ、気持ちのいい読後感が得られた。
◆関連リンク
・小説 東のエデン :: 立ち読み
こちらで冒頭13ページ分が読めます。
・
『東のエデン プロファイルブック』(ブレインナビ)
・
『ハマルアニメ 特集「東のエデン」を解く etc. 』
・
『DJCD「東のエデン 放送部」EDEN SIDE』
・
『東のエデン オリジナル・サウンドトラック』
・
『DJCD「東のエデン 放送部」SELECAO SIDE』
・当Blog記事
第11話「さらにつづく東」
第10話「誰が滝沢朗を殺したか」
第9話「ハカナ過ギタ男」
第8話「あらかじめ失われた道程をさがして」
第7話「ブラックスワン舞う」
第6話「東のエデン」
第5話「今そんなこと考えてる場合じゃないのに」
第4話「リアルな現実 虚構の現実」
第3話「レイトショーの夜に」
第2話「憂鬱な月曜日」 第1話「王子様を拾ったよ」感想
竹田悠介美術 HDR(High Dynamic Range)写真タッチの映像
神山健治 『映画は撮ったことがない』刊行予定 小説版『東のエデン』
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
神山健治 小説『東のエデン』
コメント