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2009.10.06

■感想 北野武監督 『アキレスと亀』

『アキレスと亀』(amazon)

 裕福な家に生まれた少年の真知寿(まちす)は“画家になる”夢を持っていた。 しかし突然両親が亡くなり、環境が一変してしまう。(略)
 真知寿の前に、ひとりの理解者が現れる。(略)やがてふたりは結ばれ、愛と希望に満たされ、様々なアートに挑戦する。しかし作品は全く評価されない。 ふたりの創作活動は、街や警察をも巻き込むほどにエスカレートしていき、家庭崩壊の危機にまで直面してしまう・・・・・・。

::::: アキレスと亀 :::::(公式HP)北野武インタビューより

 昔、新宿歌舞伎町の裏の方は、横尾(忠則)さんや寺山修二さん、唐十郎さんとかの時代だから、怪しいのがいっぱいあってね。(略)
 “大駱駝艦”の麿赤児さんが白塗りで踊っていて、それもアートかなぁと思ったり(笑)。急におじさんが壁に激突したりね。「アクション・ペインティング」って言って、壁にペンキをバンバンぶつけっていって、今度は身体ごとぶつかっていって、前に投げたペンキで足を滑らせて顔面を壁に激突させて鼻血を出したりしてね、その顔が意外におもしろかったりして。あんなことをしてなんだかよくわからないけど、「アーティストだ!」って言い張ってた時代なんだよね。そのパロディをやってみたんだ。

 北野武『アキレスと亀』をDVDで観た。なかなかの傑作。

 予告篇やポスターを見ると、恋愛映画のようなコピー「スキ、だから。スキ、だけど」が記載されているが、まるでそんな映画ではない。芸術コメディ映画と言ったらピッタリではないか。

 前半のタッチはコメディ映画とは異なり、昭和30年代の牧歌的な風景の中で、芸術家を目指す歪んだ目標を持たされてしまう主人公真知寿(まちす)の子供時代をしっとりと見事に描いている。ここの展開や映像美は北野武の面目躍如。

 後半、柳 憂怜と監督自らが演じる青年と老年の芸術家のシーン。
 これ、赤瀬川原平原作?? って思わせるような、60年代の彼らの活動「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」や「ハイレッド・センター」を彷彿とさせるシーンがある。
 その後の夫婦での芸術への様々のアプローチ。コントのような芸術乱れ打ちがいい!赤瀬川原平ファンは必見である。>>ミのつく職人さん(^^;)。

 自転車と車による衝突アート。ボクシングと、水中で死にかける際まで行って描く絵、本当の死を前にして描かれる口紅での極限の絵画。

Photo

 この後の主人公の自殺シーンといい、芸術をパロディにしていた映画が、その究極の姿を描く時に、「死」が登場するのはまさに北野武映画である。

 最後に。映画で登場する数々の絵画は、北野武の直筆とのこと。
 この絵がとてもいい。この映像を見るだけでもこの映画は価値がある、と思う。まるで片山健を思わせるようなサイケでプリミティブなタケシの絵に注目。

◆関連リンク
赤瀬川原平 - Wikipedia

1960 年、吉村の誘いで「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」に参加。(略)赤瀬川は、ゴム・チューブを素材としたオブジェを製作した。(略)
1963年、高松次郎・中西夏之とともにハイレッド・センター(3名の頭文字により命名)を結成。「首都圏清掃整理促進運動」などのパフォーマンスを行う (詳細は『東京ミキサー計画―ハイレッド・センター直接行動の記録』 (ちくま文庫)を参照)。赤瀬川は個人としても、扇風機などの身の回りの品物を包装紙で包む「梱包作品」を制作。このコンセプトは最終的に、缶詰のラベル を缶の内側に貼って宇宙全体を梱包したと称する「宇宙の缶詰」に至る。

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コメント

 ミのつく職人さん、こんばんは。

>>98互換機のHDDの中かX68000のHDDとともにクラッシュしたか。過去の記憶が曖昧になっています。

 ディジタルな副脳とネットアーカイブがなければ私も既に高老人力。早く脳から直接ディジタルデータへアクセスしたいものです。

投稿: BP(ミのつく職人さんへ) | 2009.10.11 20:33

ああ、そういわれればそんなことがありました。送信したメールは98互換機のHDDの中かX68000のHDDとともにクラッシュしたか。過去の記憶が曖昧になっています。いい感じに老人力がついてきました。

>『3-4×10月』
見たい映画リストに加えておきましょう。

投稿: ミのつく職人 | 2009.10.10 20:35

 ミのつく職人さん、こんばんは。

>>世界の認めるキタノですが、これまでわたしの好みとマッチする作品はありませんでした

 『3-4×10月』は観ましたか?
 北野映画は当たり外れの振幅がでかいので、僕はこれが圧倒的にお薦め。これが駄目だったら、北野映画は合わないと諦めるべきかも(^^;)。

>>ところで、これまでわたし赤瀬川原平の話をしましたかね。

 あれ、話はしてなかったっけ?
 以前の週刊メール「○○の異常な愛情」でよく書いてなかった? どうも赤瀬川というと僕は、ミのつく職人くんを思い出すんだけれど、、、。

投稿: BP(ミのつく職人さんへ) | 2009.10.07 22:56

世界の認めるキタノですが、これまでわたしの好みとマッチする作品はありませんでした(「たけしのコマ大数学科」は楽しんでます)。主人公がルソーに行かないでマチスにいっちゃうところは芸術に対する照れなのか。今回は期待できそう。

ところで、これまでわたし赤瀬川源平の話をしましたかね。

投稿: ミのつく職人 | 2009.10.07 18:24

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