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2009.11.30

■感想 神山健治監督『東のエデン 劇場版 I The King of Eden』

The_king_of_eden 東のエデン(公式HP)

 「映画を撮ったことがない」神山健治監督の初長編映画が公開された(SSSとかあったけれど、映画オリジナルは今回が初)。『攻殻機動隊S.A.C.』からの神山ファンサイトの当Blogとしては、この初監督作をどれだけ待ち続けたことか。
 右のリンクにあるtwitterで既に感想をつぶやいていますが、改めてざっとまとめてみます。

 全国でもわずか8館しか公開されていない劇場版。twitterの全国のつぶやきによると各地で大入りの勢いだとか。二週間だけの公開予定のはずだけれど、ファンはみんな観られるのだろうか。もっと多くの劇場で公開すれば良かったのに。

 僕が観たのは、名古屋伏見ミリオン座。ひさびさに映画公開の初日に30分だけど並んでみました。
 行列約150人。20代男性が7割くらいと多く、もっといるかと思った女性は1割。劇場に入るとほぼ満席の盛況。

◆まとめ

 映画二篇の前編としてとても面白い。前編とわざわざ書いたのは、まさに「つづく」というラストだったから。でもTV版のある部分を謎解きし、そして後篇にさらに新たな謎を生成。セレソンによる権謀術数が矢継ぎ早、急テンポに繰り出される。エデンシステムもうまく絡んで、まさに高密度映画になってた。、、、

 と言いつつ、この一本だけを取り出すと、残念ながら映画としての結構は崩れていて、あくまでもTVと劇場版Ⅱの中間をつなぐ作品。これを初長編監督作としてクレジットするのは酷かもしれない。今のところ、「映画を撮ったことがない」神山健治監督というフレーズはそのまま??(^^;) いや映画にはなっているのだけれど、中間をつなぐというこれが「初長編」というイメージにあわないという意味ですが、、、。

 これだけ楽しめる作品、3月の『東のエデン 劇場版 Ⅱ Paradise Lost』が待ちきれなくなるというデメリット(^^;)を我慢できる方は、TV版同様にワクワクして楽しめるこの劇場版、お薦めです。

★★★★★★★ネタばれ注意 ネタばれ注意★★★★★★★

◆電脳ポリティカル・フィクション

 王様って、もしかして「天○」かなって思ってたけれど、さすがに社会派神山監督でもそれを娯楽映画のテーマにするのは無理でしたね。ジュイスNo.9は滝沢君記憶喪失後も、着々と「王への道」を構築するのですが、それは日本人の民族性に切り込むものではなくって、極々政治的なもの。これと咲の滝沢探索行が映画の背骨を構築しています(あ、構造か(^^))。

 そして特筆すべきは、この劇場版も、エンターテインメントではあるが神山監督の本気で世の中を変えたい意志に満ちた物語。ストーリーの背骨もまさにそうだけれど、映画としての定番の結構を破ってもそれを描くのは確信犯。(というかこの物語の設定がまさにそのもの、、、。これはあまり指摘されていないけれど、ある意味、現在の日本のTV・映画のエンターテインメントプログラムとして、画期的な出来事ではないのか。)

 劇場長篇デビューでエンターテインメント性の獲得と、こうしたポリティカルな目的を確信犯で実現してしまった監督の力量は凄い。しかし、こう描くんだとあと90分でも足りないのでは?と心配にもなる。
 
 この現代日本におけるドンキホーテ的愚考(最大褒め言葉です(^^;))に、リアルタイムでつきあうには劇場へ是非(^^)。

◆メモ メモ
 
 半年間でのジュイスの変化が楽しい。僕にはジュイスがつき合いの長い彼女、もしくは部下というように見えました(^^;)。自身の鏡ですね。黒羽のジュイスは上司にビビる秘書の雰囲気が出ていて、とてもリアル。そして最後がかっこいい。究極のキャリアウーマンですね。
 そしてジュイスはSF(^^)。詳しくは、青の零号さんの鋭い指摘をご覧ください→Biting Angle

 ストーリー構築は捻ってて相変わらず凝ってる。
 ブルックリンのシーンの意味は上手いなー。記憶が隠れテーマ。そして最終作のⅡではこの部分のクライマックスも描かれるのでしょう。

 映像的にはほとんどTV版と同等かと。それだけTVのレベルが良かったってことだけど、さらなるアップグレード期待してたんだけど、、、。これだけ堪能させてもらって、そこまで期待したら酷ですか。

◆関連リンク
YouTube - School Food Punishment: Light Prayer
Eden of the East Movie Trailer
アニメ!アニメ! 舞台あいさつレポート

「テレビで一度終わっている作品。映画では、もう2回最終回を作るようなプレッシャーを感じる。監督には酷なシリーズ」と監督は表現する。  そして、第2部以降の展開については、「キャストにもまだ話していない」、「皆が納得するかたちで、かつ驚くようなラストにしたい」とする。早くも来年3月の『Paradise Lost』の公開が、待ち遠しくなる言葉だ。

・Biting Angle 青の零号さん 舞台あいさつレポート

構想がふくらんで、劇場版Ⅱの尺が30分延びた理由について。 「多くの疑問を残して進んできたストーリーなので、それをひとつひとつ畳みつつ、 劇場版ⅠとⅡでも新たな驚きをお客さんに与えたいという思いから、膨らんでしまいました。」

ふぉーんなハナシ:「東のエデン」劇場版に、ノブレス携帯ならぬ「ノブレスフォン」が出るらしい - ITmedia +D モバイル.

公開が延期された劇場版第2部にドコモの新モデル「N-02B」が登場することが、11月25日に開催されたNECの端末発表会で明らかになりました。N-02Bは劇中で、ノブレス携帯とは別モノの“ノブレスフォン”として物語に食い込んでいくようです。誰が持っているのかは“極秘”とのことで、真相は劇場で確認するしかなさそう。

・アニメワン|東のエデン.

「ノブレス携帯」の生みの親である神山健治監督と東のエデンの製作会社のプロダクションI.Gが全面監修をいたしました。 いずれも神山監督がご自身が企画・検討を行い、「東のエデン」のデザイナー陣が制作したインターフェースを使用しています。

 もちろん着信音はあの音ですよね。
『 東のエデン オフィシャルナビゲートBOOK』

物語の舞台である場所を美術ボードと写真でめぐる誌上ツアーや、 滝沢朗の足取り追跡など特別企画も盛りだくさん!
◎2大インタビュー掲載! ●羽海野チカ:キャラクター原案ができるまで ●神山健治:100の質問 ◎特別付録:羽海野チカイラストのオリジナルポスター

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コメント

 patchさん、青の零号さん、亀レスですみません。

>>Yahooのユーザーレビューで恐ろしいほどに酷評が多かったので一ファンとして狼狽していましたが、安心しました。

 テレビ版を観ていれば楽しめることは間違いないです。次回に続く、の我慢さえできれば(^^)。


>>まさに高密度映画でした。TV編を見倒した自分にとっては非常に見応えありましたね。

 高密度でどれだけ認識できたか、、、本当はもう一回観たいのですが、、、。

>>神山さんの仕事を辿ってみると、むしろ俎上に挙がりそうなのは
>>国家と国民の基本原理となる日本国憲法のほうでしょう。

 いずれいつか別の作品で触れるかも。

>>>ブルックリンのシーンの意味は上手いなー。
>>あのひねり方と叙情性は絶妙でしたね。
感じる側の視点の持ち方が、世界に意味を付加するという実例を
>>実にロマンチックに見せてくれました。
>>ああいうのがエレガントって言うんですかね(笑)。

 黒羽があのシーンもウォッチしていたら、きっとエレガントとつぶやくでしょうね。

>>あー、それにしても黒羽社長ってステキー!!

 今回、ある意味、彼女が主役だったかも。

投稿: BP(patchさん、青の零号さんへ) | 2009.12.06 10:25

BPさまへ

まさに高密度映画でした。TV編を見倒した自分にとっては
非常に見応えありましたね。
〇〇さんの運命も予想どおりで、気分よかったです(ちょっと自慢)。

>王様って、もしかして
神山さんの仕事を辿ってみると、むしろ俎上に挙がりそうなのは
国家と国民の基本原理となる日本国憲法のほうでしょう。
その点では、あの選択肢もアリだとは思います。
(このへんはもっと突っ込んで検討する余地アリですが)

でも平澤も劇中でジュイスの選択を批判してましたから、
いま見せてる「王への道」は、単なる見せ札なのかもしれませんよ。

>ブルックリンのシーンの意味は上手いなー。
あのひねり方と叙情性は絶妙でしたね。
感じる側の視点の持ち方が、世界に意味を付加するという実例を
実にロマンチックに見せてくれました。
ああいうのがエレガントって言うんですかね(笑)。

あー、それにしても黒羽社長ってステキー!!

patchさまへ

うー、確かにYahooでは相当な扱いですね。
まあ確かに、TV編をある程度消化してないと読み取れない部分は
結構あったかもしれません。(逆にTV編のファンなら楽勝かと)
自分はすんなり物語に入ってたっぷり楽しんできましたが・・・。
やはり映画ファンの人とは視点が違ってるのかも。

劇場版はやはり映画館で見たほうがいいと思います。
バストアップが減って俯瞰のシーンが増えてるので、
大画面で見たほうが臨場感あると思いますよ。

投稿: 青の零号 | 2009.11.30 22:11

Yahooのユーザーレビューで恐ろしいほどに酷評が多かったので一ファンとして狼狽していましたが、安心しました。
上映館が遠いですが何とか劇場で観たいです。
Ⅰを見逃したらⅡまで確実にDVD待ちになりますし・・・。

投稿: patch | 2009.11.30 02:40

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