「話の話 ロシア・アニメーションの巨匠 ノルシュテイン&ヤールブソワ」@神奈川県立近代美術館<葉山館>
寡聞にして知らなかったのですが、この展示会、美術担当のノルシュテイン夫人ヤールブソワさんの作品がかなりのボリュウムを占める。ノルシュテインの映画は、彼女の絵の世界がとても色濃く出ているのですね。不勉強を恥じるばかりです。
フランチェスカ・ヤールブソワのユーリ・ノルシュテイン作品に占める作品全体への影響度は、同じ葉山で夫妻展の開かれたエヴァ・シュヴァンクマイエ
ロバーとヤン・シュヴァンクマイエルでのエヴァの影響より、随分大きいように思う。(参照:シュヴァンクマイエル展 記事)
この展示会はフランチェスカ・ヤールブソワさんの絵画作品がアニメーションより前面に出ている。「ノルシュテイン展」と呼ぶのは実は失礼で、むしろヤールブソワ展(+ノルシュテイン展)だ、と感じた。
◆「話の話」と「霧の中のハリネズミ」
作品では、やはり「話の話」と「霧の中のハリネズミ」が圧巻。素朴で、そしてとろけるような「話の話」の世界に浸りました。
特にこれらの作品を展示品としてまとめた、マケットと呼ばれるガラスによるマルチプレーンの立体画が素晴らしい。4〜5枚のガラスに映画撮影当時のセルを貼付けて箱に収め、上から蛍光灯の光で照らし出した作品。霧にかすむあの映像世界が眼前に。
ヤールブソワさんの描かれた絵とともに、正に会場はあの独特の空間に転移している。
◆「外套」
今だ完成せざる大作「外套」の絵画とスケッチも膨大な量の展示があった。30年の堆積。1982年に一時、ヤールブソワさんが制作から抜けられたとの記述があった。再度合作になっているようだけど、お二人にも夫婦で仕事というと、いろいろあるのかな、と邪推してしまうw。
「外套」の20分ver.を会場で上映会をやっているのだけど、これは既に上映時間を過ぎていて、閉館1時間前に滑り込んだ僕は観られなかった。
ただ、会場の液晶モニタでもその映像が流れている。これで観るアニメーションのシーンが超絶。あの絵画が連続した映像として流れた時に、コマ間で脳内に補完されて立ち上がるあのイメージの、どこにもない溶け込むような感覚は何なのだろう。
映像はわずか十数インチの液晶モニタであっても、ヤールブソワさんの描かれた絵以上のイメージをそこに創出している。コマ間を繋ぐ脳内映像の成果であろう。ノルシュテインも撮った映像がどんな補完をされたか映像で確認して、それの修正をかけるんだろうか。それともそこが天才の一度撮りなのか?知りたい。
◆神奈川県立近代美術館 図録『Tale of Tales』
「話の話 ロシア・アニメーションの巨匠」 展の図録。P183カラー2/3。出展作品がスケッチ、絵コンテ含めかなり(全部?)掲載されて圧巻。でもディテールは実物に比べようがない。これも脳内補完して眺める(^^;)。
中でもマケットは立体作品。これは図録の平面写真では再現できない。あの本当に素晴らしい立体は実物でなくては味わえない作品だ。欲しくてたまらない。まねして自分で作るしか手はないですね(^^;)。
◆その他
・神奈川県立近代美術館 葉山、海沿いで、素晴らしい環境の美術館。一日中、近所をぷらぷらしてたい(^^;) が、今回も本業出張の帰りに寄ったので、閉館ギリギリ。前のシュヴァンクマイエル展の時もそうだった。時間の流れが他と異なるようなあの環境の美術館に、二度も閉館間際で短い時間でバタバタと鑑賞した自分が悲しい。
・「話の話 ロシア・アニメーションの巨匠 ノルシュテイン&ヤールブソワ」展の図録から各地の開催時期。2010.4/10-6/27
神奈川県立近代美術館。7/18-9/26 高知県立美術館。10/16-11/28 福岡三菱地所アルティアム。12/11-11.1/23
足利市立美術館
◆関連リンク
・"Good Night,
Children"
「話の話」展で触れられていなかった近作。「外套」の暗くて重いトーンも好きだが、子供たちがウキウキするようなこの絵柄もいい。
・CM "Russian Sugar:ロシア砂糖" 動画
「話の話」展で触れられていなかったもうひとつ、角砂糖の30秒CM3本。
・当Blog記事
GAUDIA
EVAŠVANKMAJERJAN ― 造形と映像の魔術師シュヴァンクマイエル展 幻想の古都プラハから
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