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2010.08.06

■感想 チャーリー・カウフマン監督『脳内ニューヨーク:Synecdoche, New York』

Horz_2

チャーリー・カウフマン監督『脳内ニューヨーク』
脳内ニューヨーク - Wikipedia
提喩 - Wikipedia

提喩(ていゆ)は、修辞技法のひとつで、シネクドキ(synecdoche)ともいう。隠喩の一種で、上位概念を下位概念で、または逆に下位概念を上位概念で言い換えることをいう。

具体的には

    * あるカテゴリと、それに含まれる個別要素
    * 全体と、その一部分
    * 物体と、その材料

などの関係に基づいて言い換えを行う。

 チャーリー・カウフマン『脳内ニューヨーク』薄氷を進んで誰も辿り着いたことのない映画の極北のどこかに着地した奇跡の作品。
 原題の"Synecdoche, New York"は『提喩ニューヨーク』提喩は修辞学の隠喩の一種、上位概念を下位概念で、又は下位概念を上位概念で言い換えることらしいが、まさに現実に入れ子構造を作り出し、上と下からリアルをあぶり出している本作にふさわしいタイトルだ。(にしても日本のタイトルは最低に映画のトーンとミスマッチだ!)

 映画は数十年に渡って悩み続ける演劇の演出家が自らの小心な人生を大きな劇場の中にリアルに再現しつつ進んでいく。ニューヨークの街に存在する劇場としての入れ子構造の彼の人生。演出家が年老いていくリアルな生活と、その芝居が俳優達に演じられる舞台の街。虚構と現実が実際に混濁して辿り着く場所、、、。

 この最後に辿り着く場所の見事さは類型がない(と思う)。突然新たな登場人物が主要な役で出てきても全く違和感のない世界。そこで演出家ははじめて自分以外の他者の人生に触れることになる。脚本と演出の絶妙がここにある(途中何回か薄氷を踏み抜いているような気もするが、、、ww)。

 とにかく僕は凄い味わい深い傑作である、と思った。
 トップにこの映画の海外版ポスターを掲載したが、これらの方がコメディタッチでなんだか茶化した日本版ポスターよりも映画の陰鬱なイメージを見事に表現している。これらダーク系のポスターで興味を持った方は観て下さい。かなり観客を選ぶ映画であることは間違いないので、心して鑑賞下さい。

◆関連リンク
映画『脳内ニューヨーク』公式サイト コメント
 神山健治監督,池谷裕二氏,大森望氏,川勝正幸氏他『脳内ニューヨーク』へのコメント 。川勝氏の"辻褄への配慮なし"はちょっと違うのでは、と突っ込みたくなるくらい、考えられた精緻な脚本と思ったけれど、、、(要2回目鑑賞)。
 一方で、本谷有希子氏が "この世に「考えすぎて死ぬ」=「考え死」という死に方がなくて、本当によかったですね、と監督にすごく言いたい..!" と書いている。
真紅のthinkingdays 迷宮劇場〜『脳内ニューヨーク』

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