バーチャルリアリティ学会
技術解説・報告 学術論文
(Rits:立命館大学情報理工学メディア情報学科Reality Media Lab.)
"田村秀行,稲見昌彦,蔵田武志,酒田信親,磯光雄:アニメ『電脳コイル』にみるリアルとバーチャルの接点〜複合現実感の未来実現形態を探る,日本バーチャルリアリティ学会誌,Vol. 13, No. 4, pp. 6 - 19 (2008.12)"
上記、技術解説・報告のリンク先に、学会誌に掲載された2008年のバーチャルリアリティ学会での特別シンポジウムを論文化したものが、PDFで掲載されている。
これは『電脳コイル』ファンは、ダウンロードして必読である。
磯監督のARについての見解と『電脳コイル』での位置づけについて、およびVR研究者との突っ込んだ技術/哲学的な討論が楽しめる。そしてコイルの画像が使用された学会での報告資料といった貴重な資料も見られる。
※iPhoneまたはiPadの方は、SafariからアクセスするとiBooksに取込むかどうか聞いてくるので、そのままOKすれば本論文がダウンロードされ、iBooks上で、いつでも読むことが出来るようになる。
◆論文の中味 と 感想コメント
"ぜひDVDを。個人で全巻揃えるのは少し高いかも知れませんが,研究費で買えば大したことありません(笑)。学会のお墨付き,特別セッションでご推奨ですよ。学会員なら,堂々と研究室で数セット揃えて,バイブルにして下さい"
なんと『電脳コイル』DVDは研究の必需品。VR学会、最高ですね(^^;)!
稲見昌彦氏"自分の体と電脳体とのずれというのは,テレイグジスタンス,テレプレゼンス的な問題意識,つまり自己の位置とは何かといったところで,学ぶべきところも多かったのではないかとも思いました"
この問題意識を中心に据えて、ストーリーが構築されていたら、もっと本格的なSFになったのでしょうね!
岩田洋夫氏"「触れられる物だけが本物だ」と言われるシーンがあります...監督は電脳物質に触覚が無い方がいいとお考えなのか,仮にデバイスを通して電脳物質に触れるとなった時にストーリーはどのように変わるのか,是非お考えを伺いたいと思います"
磯光雄氏"企画書には,実はパワーグローブをはめている絵を一杯書いています.指先が無くてカッコイイ感じの手袋であったり,そこにちょっとメカニカルな物がくっついていたり"
触覚についてはギリギリ悩んで、映像化のハードルが高く止めたと発言している。語られるコイルでのヴァーチャルリアリティ設定の裏側。
磯光雄氏"自分がアニメをやっていてすごく感じるのは「見かけ優先」の技術の力が非常に大きいことです..視覚と聴覚に訴えるしかないけれど..気持ちまで伝えることができる..聴覚と視覚のみで五感以上のものを伝達することができます"
磯光雄氏"アニメーションは実写 に比べると省略の力がすごく生きてくる..だんだんリアルになって実写に近づいて行くと技術が向上したと言われました..肝心の感情表現などがしにくくなって行く.."
VR技術とリアルの関係も同じではないだろうか?
たぶん、VR・ARの研究でも、省略技術の研究少ないのではないか。ここに人間の認識論と、VR・AR実用化への一つの切り口があるように思う。
磯光雄氏"精神世界と電脳空間との関係では「仮想」という概念は数千年の歴史があるのではないか..人間の脳みそっていうのは仮想をベースに生きている.人間の脳が発達して今と同じような思考が発生した大昔から実は仮想現実が存在していた"
まさに切り口。この視点ですね。
磯光雄氏"次の作品は科学技術を中心とした話にならないかも知れない..もし『電脳コイル 2』があるとすればそれは「皆さんが作ったメガネが『電脳コイル2』だよ」と申し上げておきます.というわけで私も『電脳コイル2』を早く見たいなと(笑)"
以上、一読して思ったのは、磯監督、研究者より10年は先を行ってる(^^;)というのが率直な感想。
◆林譲治氏との会話
林譲治さん(@J_kaliy)/2010年10月16日 - Twilog
という論文紹介をtwitterでつぶやいていたら、SF作家の林譲治さんから、いくつかのコメントをいただいた。上記リンクの9:40-10:40のところ。
なかなか興味深かったので、以下、勝手ながら、一部引用させていただきます。
以下で、RT以降が林氏のコメント引用。それ以外が僕のコメント。
" 電脳コイルはシミュレーテッドリアリティが現実と重なり合ってるというオメガポイントものとしても特異な位置にありますね。RT @J_kaliy いわゆるオメガポイントものでも自己の境界とか自己の位置に関する意識問題はほとんど顧みられてませんね。"
" もともとオメガポイントものはVRで、現実とピタリと並行に存在するARとは別の物語ですね。電脳コイルって、現実には死んだ人が並行して存在するオメガポイントから、その現実に干渉してくるという点でSFとして画期的だったのかも。そこを深化させた続きが見たい気もします。"
" 確かに『グランヴァカンス』って『電脳コイル』と親和性高かったですね。メタバグ出てたし(^^;) でもARでなくやはりVRですよね。 RT @J_kaliy @butfilp そも問題意識をいま一番作品に投入しているのはやはり飛さんの「グランヴァカンス」のシリーズですかね。"
" 『空の園丁』の刊行も待たれますね。その前にtwitterで執筆の模様がつぶやかれている(^^;)『零號琴』も楽しみです。あ、飛浩隆氏インタビュー発見。
〈廃園の天使〉構想、興味深いですね。"
◆関連リンク
・ 「電脳コイル」がブラウザゲーム「電脳コイル Online(仮)」となって世界展開へ
磯光雄監督、新作の噂がないのは、これを作っているのかも(^^;)。邪推ですが…。
当Blog 過去記事
・磯光雄監督 次回作と『電脳コイル2』!?を語る
アニメ『電脳コイル』に見るリアルとバーチャルの接点
上記、学会の様子を伝える記事についてコメントしたもの。
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