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2011.04.25

■伊藤計劃氏『ハーモニー』審査員特別賞 P.K.ディック賞 授賞式ビデオ & 『伊藤計劃記録:第弐位相』刊行記念トークショーレポート

         
Video streaming by Ustream  NorwesconでのP・K・ディック賞の授賞式、伊藤計劃氏『ハーモニー』の審査員特別賞発表のビデオアーカイブ。
 各作品のプレゼンテーションからスタート。伊藤計劃氏『ハーモニー』については32:28〜38:50。
 本の紹介はまず版元ハイカソルのマスミ・ワシントンさんの日本語による朗読。ここを聞くだけで背中がゾクゾクする。そして男性による英語の朗読。
 ここで読み上げられた伊藤氏本人が書いた日本語の音が、会場でどのようにアメリカ人に響いたんだろうか?

 そして『ハーモニー』の受賞発表は46:35あたり〜50:50。受賞の言葉は英語と日本語で語られています。言葉は御父上の伊藤シンイチ氏の代読でハイカソルの女性から。会場の割れんばかりの拍手が素晴らしいです。

Photo_3

ハヤカワ・オンライン|早川書房の新着ニュース

"『伊藤計劃記録:第弐位相』刊行記念トークショー、ニコニコ生放送での独占中継が決定いたしました!

【生放送URL】
 http://live.nicovideo.jp/watch/lv46682568

[イベント詳細]
 『伊藤計劃記録:第弐位相』刊行を記念して、ジュンク堂書店池袋本店にて伊藤計劃氏をめぐるトークショーを開催いたします。「作家・伊藤計劃」を深く知る、
(株)コナミデジタルエンタテインメント 執行役員副社長、小島プロダクション監督ゲームデザイナーの小島秀夫氏、SF評論家の大森望氏、角川書店メディア局局次長で『メタルギア
ソリッドガンズ オブ ザ パトリオット』担当編集者の矢野健二氏、そして小社第二編集部長塩澤快浩の四名が登壇いたします。

[出演] 小島秀夫、大森望、矢野健二、塩澤快浩
[日時] 2011年4月23日(土) 19:00より
[場所] ジュンク堂書店池袋本店4F喫茶室"

『伊藤計劃記録:第弐位相』刊行記念トークショー - ニコニコ生放送

"オリジナル長篇『虐殺器官』『ハーモニー』の文庫版、そして世界的大ヒットゲームのノヴェライズ作品『メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット』がベストセラーとなっている伊藤計劃

二年にも満たない短い執筆期間のなかで、フィクションの枠組みそのものを変えた稀有な作家をめぐるトークショーの模様ををニコニコ生放送で独占中継いたします"

 2011.4/23にP.K.ディック賞Special Citation(次席。審査員特別賞)を受賞。
 その発表の日に企画されたトークショーをtwitterでtsudaったので、そこからまとめてリポートします。

 以下、発言者の方の名前(すみません、敬称略)と " " 部分が発言の要旨です。
 " " の外の言葉は、僕のコメントw。

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 大森 "ディック賞6作の候補から選ばれた"。
 発表会場に同席された伊藤氏のお父さんのコメントもあったとのこと。
 USTREAMで生中継されていたけれど、僕はその時間帯、観られなかったので、冒頭のビデオで後日拝見。

 大森 ハーモニーの英訳版を出版したハイカソルについて紹介"ハイカソルはディックの『高い城の男』から取られた名前。High Castleが既に別で登録されていたので、ローマ字でHaikasoru。そしてマークは日本の城になった"
 北米の日本SFレーベル「ハイカソル」 (公式HP)と@haikasoru(twitter)について。

 小島監督の語る伊藤計劃。入院中の訪問の話とか。伊藤氏のMGS2理解の深さについて。小島 "伊藤さんがわかってくれればいい"。全幅の信頼を置いていたことが軽妙な小島監督の関西弁の語りからひしひしと伝わります。

 Blogに書かれ、出版された『伊藤計劃記録:第弐位相』に収録された"制御された現実"と、MGS:Metal Gear Solid について。そして大森望氏が語る『虐殺器官』出版までの伊藤氏とのmixiでのやりとりとかの紹介。

 『虐殺器官』の原型2004年「ヘブンスケープ」と漫画「ATD」について。
 小島 "ガンの闘病の過程で小説が変わってきたのではないか。しばらく離れてて『虐殺器官』で吃驚"。

 大森 "入院中PC1台で執筆。1日80枚とか。メールのレスポンスは1週間とか遅かった。映画を観る眼、分析力高かった。そうなると小説書けなくなることがある。作家修行どうしてたかは謎"。

 塩澤 "スピルバーグ『宇宙戦争』『ミュンヘン』のBlog記事。宇宙人による虐殺、異国での死の情景を描いた映画とか影響か"。

 小島 "伊藤氏が何故書けたか。映画を撮りたかった人。ゲームは新しいメディアで先行作品を気にせず作れる。伊藤氏もBlogでガッーと書いて、そのまま小説に持っていったのでは"

 小島 "小説を書こうとして書いたのではないのではないか?"
 大森 "「僕」の一人称は小説の視点では?"
 矢野 "映画的映像記憶のディテイルの蓄積+小説の記憶で書いた"

 塩澤 "円城氏と僕たちは神を信じられないので一人称を使うと語っていた"
 小島 "(伊藤氏のMGS小説と自分のゲームの舞台として)プラハがいっしょになったのはスピルバーグ『ミュンヘン』の影響。ゲームでは、画面を荒らす「ミュンヘンフィルタ」を作って画面をスピルバーグの映画のようにしていた"

 矢野 "『虐殺器官』もう君達の世代はいいよ、と言われたように読んだ。とても新しい"
 大森 "『虐殺器官』山田正紀風設定。現代的。シェパード『戦時生活』とか近未来のリアルなタッチ。日本でしばらくなかった新鮮さがあった"

 大森 "海外の舞台の描写がリアル。やっと(このタイプが日本にも)来てくれたか。ラスト、ミステリの興奮があった。読者の広がりがある"
 小島 "SFと呼ぶのは売れないから止めろと伊藤氏に言ってたw"
 大森 "ブラッドベリも(自著の)書評が出ないので、出版社にSFと呼ぶな、と頼んでいた"。
 小島 "カズオイシグロの本もSFとは書かない。売れない"
 早川書房、立ち場なしw、会場、シーンとしました(^^;)。

(ここで家族を駅に迎えに行って、15分ほど見逃してた。『屍者の帝国』の話が出ていたようで聞き逃したのが残念。この新作は、意識の虚構性に関する物語だったはずですね。読みたかったぁー!)

 塩澤 "プログでの印象と会った時の印象の差は?"
 矢野 " プログ読んで、嫌な奴と思ってた。MGSを俺より解ってるような書き方が嫌だったw。でも会ってみると腰の低いいい人だった"
 大森 "ソフトだったが、後輩に対しては違ったのでは。初めて会った時は渡辺文樹の映画の話とかしてた"

 塩澤 "文章は最初からほとんどいじってない。語りで流れていく文章で直しようがない"
 大森 "『ハーモニー』についてはここはこうなのでは、といろいろ言った。でもそれに対するメールの返事は一週間後"
 塩澤 "カバーの内容紹介は伊藤氏自身。良く書けていたので、このままでいいかとw"

 ここでニコニコは、視聴者2万人突破。

 小島 "クリエータ35歳最高傑作説若い人へのエール。新作のアイディア等誰かに理解してほしい。今も伊藤さんならどう言うだろうと考える。自分の分身で後輩みたいだけれど師匠でもある"

 大森 "NOVAに書いてほしかった。生きてたらNOVA掲載作で星雲賞を取ってほしかった。新作でSFをもっと広く買ってもらいたかった。もちろん『屍者の帝国』読みたかった"

 大森 "伊藤計劃以後というSFの動きもある"
 塩澤 "SFマガジン5月発売号で伊藤計劃以後の特集掲載。この対談の模様も載る"
 小島 "そんな話、はじめて聞いた。掲載できんこと言ったろ。「SFは終わる!」"

 大森 "SFの新人賞なくなっている。東京創元社の短篇賞のみになった。伊藤氏の影響を受けた新人はまだ出ていないが、既存の作家には確実に影響している"

 小島 "これだけ読者いる。亡くなったのが残念。(自分は)ゲームに(無念の気持ちを)ぶつけている"

 大森 "伊藤作品の映像化の話は?"
 塩澤 "具体的に話せるものは今はない。まず次は『虐殺器官』英訳化"

----------------------------

 以上で対話の全体概要の採録は終了。この後、会場からとtwitterからの質問に対する回答が4問程度あった。
 これでだいたい8割くらい要旨は採録できたと思いますが、この模様はSFマガジン5月発売号掲載とのことなので、詳細はそちらをご覧下さい。

 最後に語られた映像化について、『虐殺器官』のアニメ化は、昔の押井守にやってほしいなぁー。

 『屍者の帝国』の話題、聞き漏らしたので、どなたか本記事のコメントで補足下さると嬉しいです(^^;

◆関連リンク
Norwescon Cometh « Haikasoru: Space Opera. Dark Fantasy. Hard Science
伊藤計劃『ハーモニー』米SF賞の特別賞を受賞 - Biting Angle
 青の零号さんの言葉。

"それにしても、遺作となる『屍者の帝国』が完成しなかったのは重ね重ね残念。 設定といいテーマといい、あれこそ世界規格として世に問う日本SFになり得たように思います。 しかし「自分のいる世界のカタチ」を常に問い続けた伊藤さんのことですから、 自ら彼岸の住人となった今も、続きを書いているに違いありません。"

伊藤計劃『ハーモニー』が海外のSF賞を受賞 - 大森望|WEB本の雑誌.

"4月23日、今年のフィリップ・K・ディック賞が発表され、伊藤計劃の長編『ハーモニー』の英訳版(アリグザンダー・O・スミス訳、Harmony by Project Itoh)が審査員特別賞(Special Citation Award)を受賞した。
Haikasoru のマスミ・ワシントンさんが著者の父親からのメッセージを代読した。"

SF作家、故伊藤計劃さんの長編に米の特別賞 - MSN産経ニュース
SF:米P・K・ディック賞 特別賞に故・伊藤計劃「ハーモニー」 - 毎日jp(毎日新聞) 伊藤氏の写真付で紹介。
伊藤計劃『ハーモニー』がフィリップ・K・ディック記念賞特別賞受賞!: Analog Game Studies(アナログ・ゲーム・スタディーズ).

"これまで、日本のSF小説が海外、とりわけ英語圏の著名な賞を受賞したケースはありませんでした。それゆえ『ハーモニー』の受賞は、ギブスンやスターリン グから始まるアメリカのサイバーパンク運動の極東における正統の「返歌」として、また、表層としての「クール・ジャパン」に留まらず、日本発のフィクショ ンがその内実において広く価値を認められたという意味において、注目に値する事件でしょう。"

ディック賞 伊藤計劃 - Google 検索
 その他マスコミにも沢山取り上げられています。
・BP@究極映像研(@butfilp)/2011年04月23日 - Twilog

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コメント

 青の零号さん、こんばんは。

 SFM、まだ見てない(^^;)

>>あ、残念ながら合宿で聞いた裏話は載ってませんでした。

 これ、知りたいですね。

投稿: BP(青の零号さんへ) | 2011.06.11 23:42

SFM7月号「伊藤計劃以後」に、トークショーの紙上再録が載りました。
小島さんの伊藤さんに対する理解がダントツに深い!
『虐殺器官』を映像化するなら、やっぱりこの人に撮って欲しいな。

他にはSFセミナーの上田早夕里先生企画の抄録も掲載。
主要な部分はほとんど押さえてるし、上田先生の補足もついてるし、
公式記録としてベストなまとめだと思いますので、ぜひご一読を。

あ、残念ながら合宿で聞いた裏話は載ってませんでした。

投稿: 青の零号 | 2011.06.06 22:02

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