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2011.05.25

■感想 マイケル・マドセン監督『INTO ETERNITY:地下深く 永遠(とわ)に ~核廃棄物 10万年の危険~』

Into_eternity

2/16 NHK BS1 地下深く 永遠(とわ)に
 ~核廃棄物 10万年の危険~:kayophoto info

"NHK BSドキュメンタリー 「地下深く 永遠(とわ)に ~核廃棄物 10万年の危険~」 アップリンクが配給している、原題:INTO ETERNITYが50分バージョンでNHKで放送されるそうです。"

映画『100,000年後の安全』公式サイト
トーキョーノーザンライツフェスティバル2011 [2011年2月12日〜20日 渋谷ユーロスペース / アップリンク]

"100,000年後の安全  原題:INTO ETERNITY
■ 監督:マイケル・マドセン ■ 出演:マイケル・マドセン
■ 2009年 デンマーク/フィンランド/スウェーデン/イタリア
■ 75min ■ 言語:English ■ 提供:アップリンク                                                                                                                
【受賞】2010年 パリ国際環境映画祭グランプリ、2010年 アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭・最優秀グリーン・ドキュメンタリー賞、2010年 コペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭・有望監督賞

 フィンランドに建設が決定した、世界初の高レベル放射性廃棄物の永久地層処分場。埋設後、その巨大システムは10万年間保持されるように設計される予定だが、果たして 10万年後の人類にその危険性を伝えることはできるのだろうか?(略)
 地下400mに作られるまるで要塞都市のような巨大システムの中で、廃棄物は人工バリアに入れられ10万年は隔離されるという。(略)
 照明を反射する岩盤、施設内にひしめく数々の調査機器、なめらかに動く掘削重機、それらのフォルムを美しく捉えた、まるでSF映画と見紛う近未来的な映像美で観る者の度胆を抜きながら、映画はプロジェクトの実行を決定した専門家たちの言葉を丹念に拾い出し、未来の子孫の安全性について問いかけてゆく。人類の負の遺産をめぐる衝撃のドキュメンタリー。 (栗本)"

Twitter / @Uotuki-tsukuyo: ETV特集 地下深く永遠に Twitter / @Uotuki-tsukuyo 十万年後の人類に Twitter / @Uotuki-tsukuyo

"そしてさらに凄いのが十万年後の人類に、それが危険なものであることを伝える方法……。これはみてもらわないとわからないのだけど、ブレードランナーか指輪物語かベクシンスキかみたいなオブジェをつくることで、そこが危険な場所であることを伝えるというもの……。そのビジュアルは絶景……。"

 魚月さんのツイートで教えていただいたNHK ETV特集にて短縮版が放映されたフィンランドの放射性廃棄物 地下処分所 ONKALO(フィンランド語で「隠し場所」の意味)のドキュメント。

 もちろん僕の関心は、上で引用させていただいた危険であることを10万年後の人間にどう伝えるか、危険を示すオブジェを作る、という部分。

 10万年後の未来にも通じる普遍的な恐怖のマーカーの模索。番組中では、上に引用したいくつかのラフ画紹介とムンクの叫びが例として語られていた。もし10万年後にこれを観る者が、もしも人間なら危険とわかるはずだ、という推測。

 番組ではまだ結論が出ておらず、こうしたマーカーで積極的に施設の危険性を明示するという案と、逆に絶対に気づかないようにひっそりと隠してしまうという案の二つの間で結論がついていないと言っていた。
 これは、どういう決着をするか。そして恐怖のマーカー案を選択した時に、どんなヴィジュアルが選択/作成されるか、というのがとても興味深い。

 まさに、幻惑的な命題だ。
 10万年後の「人間」っていったいどうなってるのか。そして果たして彼らはムンクの「叫び」から恐怖を読み取れるのか。
 異星人の恐怖感覚を想像するくらい久遠の命題担っていると思う。

 僕なら、恐怖のマーカーに使用する作家として、魚月さんが書かれているベクシンスキーの他に、深井克美エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーオリビエ・デ・サガザンあたりを挙げると思う。うちのblogを継続的に読んでいただいている方には、またか、と言われそうですが、、、。

 いずれにしても、この興味深い取り組みの今後を見守りたいと思います。

■10万年の未来

 エジプトのピラミッドですら、建造は紀元前2500年頃と言われており、作られたのは今から5000年弱前。10万年というとその約20倍の気の遠くなるような時間である。おそらくこの10万年という設定は(番組でも詳細は触れられていなかったと思う)、プルトニウムの半減期2.4万年に由来していると思う。
 10万年後にはプルトニウムが崩壊して(1/2)^4=1/16になることから、設定された数字だろう。

 0.5万年前のピラミッドですらどんな意図で作られたのかが、記録として全く残されていないのに、さらにその20倍の期間先の未来に、どうやって正確なメッセージを残すのか、大変な命題である。

 10万年。人類の言語他のコミュニケーション手段や文化形態が大きく変貌を遂げているかもしれない未来。そして人類は存続しているかどうかすらも怪しい。
 人類が生み出した放射性廃棄物のとんでもなさが、ここからも気が遠くなるように想定できる。東電や原発を持つ電力会社、推進した政治家や大学研究機関が、こんな想像力を持っていたら、現在の状況はなかったのかもしれない。これは彼らの政策を許容し続けてきた我々日本人の大部分に帰ってくる言葉なのだと思うが、、、、。

◆関連リンク
論文 「フィンランドにおけるONKALO建設の近況」(日本語PDF)
"地下深く永遠に:Into Eternity"予告篇

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