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2011.08.15

■感想 ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展 『the works for Japan』@京都文化博物館

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Jan and Eva - Activities of Jan Švankmajer In Japan Website

"「ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展 the works for Japan」
会場 京都文化博物館
期間 2011年7月22日〜8月14日

「ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展  〜映画とその周辺〜」
会場 ラフォーレミュージアム原宿(ラフォーレ原宿6F)
期間 2011年8月20日〜9月19日

「ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展  〜映画とその周辺〜」
会場 京都文化博物館
期間 2011年10月7日〜10月23日"

■前置き と まとめ

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 8/11盆休みに入るとともに、ヤン&エヴァ・シュヴァンクマイエル&シュヴァンクマイエロヴァー展@京都文化博物館に行ってきた。その後、加藤泉 『はるかなる視線』@コムデギャルソンギャラリースペースSixもまわる(後日レポート予定)。電車往復7時間あまりの青春18切符デヴューの旅(^^;)。

 まず、今回の展示会のネーミング「ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展」は、本来「ヤン・シュヴァンクマイエル&エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー展」と名付けるべきではないか、と思うので、ここではこのように記しておきます。エヴァさんファンのこだわりですw。

 会場はレンガ造りで高い天井の洋館、京都文化博物館の佇まいに、シュヴァンクマイエル作品が見事に融合して和める空間が創り出されている。
 作品は、小説の挿絵のコラージュ中心で、壮観に並んでいる。
 中でも、やはり妖怪浮世絵と人間椅子の触覚感が圧巻。

 会場の雰囲気、レイアウトは良かったのだけれど、作品の額を照らす照明に工夫が必要かと思った。
 作品をじっくり見たいのに、一部の照明が観客の顔を向いている。これにより作品を見る時に、手で影を作る等の処置を取らないといけなくなっている。
 この部分は、是非、後期展では改善していただきたいものである。

■『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』コラージュ

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 まず入っていきなりは、映画『アリス』のエヴァによるポスター(原画ではない)。これはエヴァ作品もいくつか観られるかと期待したが、今回は残念ながら、ポスターが3枚と細江英公氏撮影のポートレートで使用されているだけであった。
 図録を観ると、ラフォーレと京都 後期にしっかり展示されるようだったので、そちらを待つしかない。

 会場の入り口から、『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』の挿絵コラージュが数十点並んでいる。いずれも本で見ていたのだけれど、原画の大きさは本の約二倍の面積で圧巻。コラージュ独特の写真の切り方、貼付けた時の浮きといったところが生々しく、じっくり観ているとシュヴァンクマイエルが辿った工程と思考をどこかで触れられたような気分になってくる。ペイズリー柄のようなグリグリは手描きになっていた。

■『人間椅子』 触覚のコラージュ

 ここはアリスの平面のコラージュとは異なり、立体的な造形物がイラストと組み合わされている。特に毛や布や石といった触覚を刺激する造形。
 もちろん触覚芸術である江戸川乱歩の『人間椅子』に敬意を評しているのと、もともとこの題材に、触覚のシュルレアリストであるシュヴァンクマイエルを惹き付ける必然。
 残念ながら当たり前だが、作品に触れることはできない。
 触れてこその作品であると思うのだけれど致し方ない。コラージュを眺めながら、その触覚を想像する。これがシュヴァンクマイエルの触覚のシュールレアリスムの楽しみ方であろう。
 目玉と手で表現された人間椅子くんの感覚をシミュレートして、そのゾクゾクする感覚を、展示作品の視覚刺激から得てみて下さいw。

■『サヴァイヴィング ライフ』 コラージュ、絵コンテ他

 新作映画の制作に使用された膨大な写真コラージュの一部と絵コンテ、イメージボード等が展示されている。残念ながら絵コンテは手描き原稿でなく、コピー。

Dommunehorz02 以下の写真は、DOMMUNE「ヤン・シュヴァンクマイエル、エルンスト、上原木呂展」放映時のスクリーンショットから。終了した展覧会の様子を知りたい方のために、会場の雰囲気を伝えるのに引用させていただきました。問題あれば削除します。
 興味深かったのは、クリップで留められて紐に吊るされていたコンテというか、制作のメモのようなもの。それぞれのシーンでPCとか書いてあって、制作の形態が想像できるようになっていた。かなりPCと描かれたものが多く、チェコの作家の工房にもディジタルは進出しているようだw。

 惜しむらくは、このコーナー、資料的価値があるのに、図録に掲載されたものは極僅か。『ヤン・シュヴァンクマイエル 創作術』にもしかしたら掲載されているのかもしれない。

■細江英公氏撮影のシュヴァンクマイエルポートレート

 雑誌「prints21」に掲載されたポートレートの大判の写真が休憩ソファのコーナーに置かれていた。このコーナーが実はとても落着く。高い天井の洋館の空間に置かれたソファで、細江氏のポートレートに囲まれて、図録をめくる贅沢は格別だった。

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 ひとつ欲を言えば、撮影に使用したようなプロジェクタを用意して、実際にシュヴァンクマイエルが裸の体にまとった白い布をそこにおいて、エヴァさんの作品他を投影しておいてほしかった。
 あ、そうだ、ソファの布が白だったのだか、そこにプロジェクタで映像を投影しておけば良かったのに。観客自身が作品の一部になれるw。
 ポートレートの成り立ちを立体的に表現できる構成だと思うのだけれど、、、。

■妖怪 木版画

 このコーナーが今回の展示の目玉だと思う。
 シュヴァンクマイエルの原画(下絵として展示されていた)を、江戸の浮世絵から伝統の木版画で表現。
 その下絵(一部)と版画の展示、そして版木の実物と一枚づつ色を付けていく過程の版画がプロセスを説明するように並べられている。

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 あわせて興味深かったのが、15分の木版画の茨城(渡部木版)と京都の工房(竹笹堂)を尋ねて、匠の職人さんと語り合う様子を撮影した興味深いビデオの上映。

 ビデオで京都の竹中木版 竹笹堂の職人さんが語られていたシュヴァンクマイエルが描いた時の筆致の想像とその再現、100枚にも及ぶ版木であの妖怪のぼんやりとした色彩を見事に写し取られているのには感心した。まさに神業。

 ただ展示されていた下絵とじっくり見比べると、わずかばかりだけれど、色の階調が荒い部分、細部の形状の違いがどうしても残されている。
 これは致し方ないところなのだろうけれど、あくまでも眼をさらのようにして(^^;)見比べないとわからない仔細なことである。なにしろ作家自身が版画を観て、自分の作品と間違えたと言っているくらいなのでw。

 シュルレアリスムと版画って実はピンと来なかったのだけれど、ビデオの中でシュヴァンクマイエルが語っていた話では、ダリが自身の油絵を日本の浮世絵の技術に惚れて、版画で再現したことがあるそうだ。これは詳細が知りたい。
 どなたか御存じないでしょうか。

■『怪談』 コラージュ

 そして最後のコーナーがラフカディオ・ハーンの小説の挿絵コラージュ。
 ここは、下にカラーの妖怪画(来日時に古本屋で購入されたという妖怪本からだろうか)を置いて、上にモノクロの印刷物をくりぬいた独特のコラージュ。明らかにカッターナイフによる切り口でこのような制作の様子が見て取れる。
 まるで表面上の人間の平凡な(モノクロの)生活の深層に、色あでやかな妖怪的世界が息づいているかのように……(^^)。

 それにしても同じコラージュでもこれだけいろいろな手法が取られていることに改めて感心。横並びに原画を一望できる展示なだけに、こうした部分が浮き彫りになっているのが、自分にとって収穫だった。

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◆関連リンク
ヤン・シュヴァンクマイエル、浮世絵木版画に妖怪画で挑戦。:上原木呂の目
 ビデオで紹介されていた版画の制作風景が写真入りでレポートされています。
ヤン・シュヴァンクマイエル監督サイン会決定! - news

"『サヴァイヴィング ライフー夢は第二の人生ー』公開記念
ヤン・シュヴァンクマイエル サイン会
日時:8月27日(土)15:00スタート(14:30開場)
場所:タワーレコード渋谷店7F TOWER BOOKS"

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