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2012.02.15

■『ガイキング LOD : LEGEND OF DAIKU-MARYU』金田伊功作画と大張正己監督画コンテ比較

Kanada_gk_vs_e_konte

金田伊功OP映像『ガイキング LOD』 - Togetter

"『ガイキング LOD : LEGEND OF DAIKU-MARYU』オープニング、金田伊功氏が担当されたカットについてのツィートまとめ。 画コンテを描かれた @G1_BARI (監督の大張正己)さん と 原画を描かれる金田伊功氏を横で見られていた @iko_kanada (maki)さん、@Chom2Start ダヲス(野口征恒)さんのお話を中心にまとめています。"

 12.2/9、『ガイキング LOD : LEGEND OF DAIKU-MARYU』監督の大張正己さんがツイッターで、金田伊功氏の作画について語られる中で、引用資料として御自身が担当されたオープニングの画コンテを公開された。
 そして、それについて関係された方、ファンの方とツイートで一晩語ることが出来ました(^^;)。
 貴重な証言もありますので、纏めさせていただきました。

Twitter / @G1_BARI

"ガイキング、あのカットの画コンテその弐。金田さんが、自分のコンテをご覧になって言った一言は「大張君さ、これはキーンと来てカっとなって、グヴァッ!って事でいいんだよね?」でした(^ω^) pic.twitter.com/gTtoeNo0 "

Twitter / @G1_BARI

"ガイキングOP、あのカットの画コンテその壱 pic.twitter.com/4oZWrHgo "

 そして冒頭の画は、僕がコンテと実際のOPの画面を比較できるように、作成したもの。これについても、togetterのまとめで皆さんと語らせていただきましたが、Blogでもそこからのコピペと追記で、比較して感想を掲載しておきます。

◆金田伊功作画と大張正己監督画コンテ比較

 twitWheel - iko_kanada

"「絵は記号だよ」
 記号というのは、つまりデフォルメ的な事を言っていたんだと思う。私のカラーイラストのキャラを見て「細々描くんじゃなくてもっとデザインチックな方がいい」と…。パッと見た時にそれが何かすぐ判るぐらい目に飛び込んで来る絵。極端な例えで藤城清治の影絵のような感じ…かな?と私は思ったのでした"

 これは@iko_kanadaさんが、金田伊功氏の発言として、以前につぶやかれていた言葉である。デザインチックというのが、まさにこのコンテに基づき、金田氏によって描かれたOP映像に現れていると思う。

 大張正己さんの絵は、以前の金田さんの作画に似たダイナミックなタッチの絵、対する金田さんのは凄くグラフィカルに変貌している。

 ダイナミックな重量感のある固まりとしてのロボットを描かれていた以前のタッチが、触ると切れそうな鋭利な刃物のようなシャープでグラフィカルなフォルムに変貌してきているのが良くわかる(^^;)。
 まさに見比べると、感覚的に何を狙われたかが一目瞭然。
 映像は言葉より雄弁w。固まり感よりも、シャープさを際立たせる方向に動いている。

◆金田伊功作画の進化と、何処にもない映像アートとして
 もちろん好みの問題はあると思うのだけれど、僕は上の金田氏の言葉に現れているように、ある狙いを持った、金田伊功アニメートの進化形なんだと思う。

 確かにグラフィカル過ぎて固まり感がないという印象になるかもしれない。物体がデザインになったような…。
 しかし僕の見方は、ただグラフィカルなだけでなく、そこに立体感/3D空間での物の動きが加味されていて、この映像は、単なる2Dグラフィックアートとは全く別もの、何処にもない存在感/空気感が生成されていて先進的と思うのだ。

 『999』のプロメシュームはその先行作品。
 今だにあのような映像表現は、世界でも映画、アニメ等映像として他で観たことがない。
 あれは、セルの2Dによって、立体空間を表現したいという金田伊功氏の独自な映像表現! そしてもしかするとこの世の何処にもないアート作品なのではないか。

 プロメシュームから『幻魔大戦』火炎竜を経て『ラピュタ』竜の巣へ。
 この流れに、『ガイキング』OPは位置づけられるのでしょう。
 そして以前のロボットアニメアクションのスピード感に、グラフィカルな表現を加えた、両側面の特徴を活かした素晴らしくシャープな映像表現だと思う。
 惜しむらくは、このガイキングのOPで金田氏の担当分は極わずか、そしてこの2005年の作品を最後に、ゲーム以外のアニメーション作品は以降作られていない。

 ここから次にどのような表現が現れたのか、ファンとしては、それが見られないことが残念でならない。

◆金田伊功作画の伝承について
 iko_kanada 2/10 1:30

"@G1_BARI @butfilp (略)亡くなる少し前から、自分が出来る事(残せる事、伝えられる事)って何だろう? とよく言ってましたから。。。"

 この金田氏の後継への伝授の意志は、もちろん作品が最も雄弁に、その作画技法を伝えているのでしょう。

 ただ僕が知りたいのはその映像の基にある金田伊功さんの感覚(映像の本質)がどんなものだったかという部分。金田伊功さんの作画に至る、本質的な物の見方、捉え方、表現の仕方が分かれば、その技法の伝承がさらに容易になるのではないかと…。
 映像を見た形の模倣だけでない、感覚的な熱い作画の魂(^^)の伝承。
 エンジニアリングの世界では、暗黙知をどう見える化/標準化するのか、という語られ方をするのだけれど、アニメにおいてもこうしたことは重要であると思う。
 
 『鉄腕アトム』から生まれたテレビのリミテッドアニメーションが、せっかくここまでの高みに至ったのだから、今後、さらなる進化のために暗黙知の標準化は重要なのだろうと思う。

 僕らファンにとっては、本質/DNAが伝承されてあの凄い映像の新作が新たに生まれるのを観たいということなんだけれど…w。
 やはり作画ができない一ファンには、そのような大それたことは不可能なのだろうか。絵の描けないただのドン・キホーテか…。
 それでも、今後も金田伊功アニメート解析の道は続く(^^;)。

◆関連リンク
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メモ ヨハン・ゲオルグ・ピンゼルJohann Georg PinzelとYoshinori Kanada 金田伊功の立体・激情芸術(^^)
感想 MAG・ネットスペシャル「アニメの革命児 金田伊功」
金田伊功を送る会 リンク集
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