■感想 円城塔『道化師の蝶』そして「松ノ枝の記」
円城塔『道化師の蝶』
『道化師の蝶』読了。まずは表題作にして、SFの初芥川賞受賞作「道化師の蝶」。これは言語幻想奇想小説(^^)とでも呼ぶべき作品。
文章の齟齬によるイメージの膨らみ…節内での齟齬、章ごとの齟齬…。ともすると一義的にしか意味を意識して込められない言葉たちが奏でるコミュニケーショ
ンから齟齬し、意識でない状態の何物かを伝える言葉たちにめくるめく(^^)。
そしてもうひとつの掲載作「松ノ枝の記」。
僕は表題作よりこちらに感動。傑作w!表題作が齟齬は持っているにしても一つの物語が割と読み解きやすかったのに比べて、こちらはさらに詩的にSF。
メタフィクションの極北かも(^^)。
脳内の機能分離による二つの意識の生成と作家/翻訳家との物語の交換。重層的で本質的なメタ。そして描かれるホモサピエンスが目撃する最後のホモネアンデルターレスのイメージ…。
無意識がザワザワ騒ぎ出す、解析不能の象徴的描写に鳥肌が立つ。
キーとなる1943年のザゼツキー症例をネットで調べると、島田荘司『ネジ式ザゼツキー』しか出てこない。これも架空の、メタ要素なのか。御手洗潔の探索を読まないと(^^)…。
◆関連リンク
・ 島田荘司『ネジ式ザゼツキー』
"記憶の一部をなくした男が書いた奇妙な童話『タンジール蜜柑共和国への帰還』。
蜜柑の樹の上にある村、ネジ式の関節を持つ妖精、人工筋肉で羽ばたく飛行機――。
そして彼の肩甲骨には翼のなごりがあった!
妄想としか思えない男の話から、御手洗潔が導きだした真相とは何か――!?"
・大森望氏の"円城塔『道化師の蝶』攻略ガイド"
あらすじは同じだったので間違いないんでしょうね。僕は自信ないけどw。
・「道化師の蝶」 沼野充義、中島京子、陣野俊史氏による「ナボコフへのオマージュ? 創作合評」(「群像」2011年8月号)
これは深い読解。この読みに固定されてしまいそうで怖いけど必読かも(^^;)。
・第232回 ラジカントロプス2.0文学賞メッタ斬り!スペシャル第146回芥川賞、直木賞【結果編】
円城氏登場Podcast。
伊藤計劃『屍者の帝国』を書き継ぐことについても触れられている。
残されたA4一枚の構想に基づき伊藤計劃調で書かれるとか。後、実質1週間で書き上がるが刊行は年内にとのこと。
伊藤計劃氏の遺稿『屍者の帝国』は 作風とは違うけれど、人工知能とか意識とかテーマ的にはクロスしそうで、コラボレーションによる膨らみに期待ですね!ワクワク(^^)
。
あと『Self-Reference ENGINE』の英訳本が出る可能性があるとか(今から読んで気に入ったら訳すらしい)。アメリカでラファティの隣に書店で並んだら嬉しいっすね(^^)。
・朝日新聞の円城氏コメント「数学の定理や科学的発見は確実に増えている。同じようなことを小説でめざしたい」
この言葉は深いですね~。今は映像でも音楽でも先行作品のリミックスしかない、とのたまうクリエーターに聞かせたいw。
・『道化師の蝶』公式HP
「世界各地で繰り広げられる“追いかけっこ”と“物語”はやがて “小説と言語”の謎を浮かび上がらせてゆく」
・芥川賞・円城塔「伊藤計劃の遺した物語を継ぐ」 | ニコニコニュース
"伊藤計劃氏の未完作品『屍者の帝国』を完成させることを明言した。円城氏にとって伊藤氏は「優れた書き手」であり自身も「影響を受けた」という"。次はこの作品で伊藤氏と直木賞をダブル受賞(^^)!というのはどうでしょう。
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