マーティン・スコセッシ監督 『ヒューゴ』(吹替REAL
D)観てきた。
北米版の予告篇を観た以外、他の情報なしで観に行ったのが良かった。
スティームパンクなファンタジー映画と思ってたら…まさかの本Blogど真ん中、映像がテーマの映画だった(^^;)!
映画ファン、とりわけSFフィルムの好きな方は必見。映画という夢の発明についての映画になっていて、目頭が熱くなるw。
もし未見なら今すぐこの記事を読むのを止めて、情報を全てシャットアウトして劇場へ。そしてこれは、ネタばれになるので書けないが、3Dで観ないといけない映画です!
映画全体についてあえて書くと、題材は素晴らしかったのだけれど、演出の緻密さは今ひとつ。もしスコセッシでなくジャン=ピエール・ジュネが監督だったら、きっと私は号泣したでしょう(^^;)。そして今回、吹き替えで観たけれども本当はフランス語で観たかった(原版はイギリス英語らしい)。
(ネタばれ前にあと追加で)パンフは良くなかったので購入されるのはよくよくご配慮を。原作者ブライアン・セルズニック本人が取材・執筆という公式ガイドブックを買えばよかったと実は後悔している。
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ブライアン セルズニック『ヒューゴの不思議な発明 公式ガイドブック』
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『キネマ旬報 2012年 3/15号 No.1606号』
"驚異のライト&マジック スコセッシ、はじまりの映画へ
「ヒューゴの不思議な発明」
対談・宇田川幸洋×滝本誠、ほか"
滝本誠さんによるクロエ・モレッツの評をパンフで読むのを期待したのだけど、今回書かれていない。で、滝本さんのキネ旬対談があるとのことで、こちらを期待。
★★ 予告篇等を観る時に御注意を!! ★★
皆さん、御注意下さい!
日本語公式サイトの予告篇と紹介文は、映画前には観ない/読まないこと!
twitterを読んでいると『ヒューゴ』のネタばれが、かなり流れてくる。
例えば、ある映画批評家は書いてはいけないキーワードをガンガン書いている。
そして映画を観終わった後にみた日本語予告篇も大事なネタがバレバレ状態。
僕が観たアメリカの予告篇はきれいに隠蔽しているのに何故こんなことを!!。
★★★★★★★★ここからは、ネタばれします。 注意! ★★★★★★★★
僕が映画を観る前に知らなかったのは、この映画に、SFファンタジー映画の始祖にあたる関係者が出てくるところ。機械人形のあの書き物に現れたイメージとサインに驚愕して、あ、この映画はそういうテーマの映画なんだ、と気がついた時、映画館で吃驚して小さく声を上げてしまった!! 映画を観ていて、このように声を出してしまったことはきっとはじめてではないだろうか。
それくらい吃驚する題材の秘密を、前半隠してあるのに、日本語サイトでは、予告と紹介文でバラしてしまっている。
一般の観客にとってはそのキーワードは全く問題ないだろう。
だけれども、この映画を本当に喜ぶSF/ファンタシー映画のファンは、このキーワードを知らないで観たら、この機械人形の書くシーンで、驚嘆するはず。
なので、あのキーワードは絶対に観る前にネタばれしてはいけない。
「どこで夢が生まれるか知ってるかい?ここで生まれるんだよ」
あの人物が、自身のスタジオである「スター・フィルム」で、ファンの少年に語る言葉。
このスタジオで強烈に新しい映画の息吹を刺激的に感じて、後年映画研究家となったルネ・タバールは、『夢の発明』という映画の歴史を綴った本を出版する。
本作は、その映画の秘密を描いた本が重要なアイテムとして登場する、映画研究についての物語なのである(^^)。
そして、3Dの使われ方も、そんな映像による夢と幻想の装置としての映画というものを意識した描き方で、他にない見事な効果を出している。
なので可能ならば映画館の立体視で観ることを是非に御薦めしたい。
あの人物が深く傷つき、夢の発明を断念するきっかけになる戦争のドキュメント、第一次大戦のシーン。兵士達が足をひきずりながら戦場から去る当時の(?)記録映像のシーンが3D化されている。
そして「スター・フィルム」で作られ回顧上映される作品/あの人物によって手描き彩色されたものの3D化。
これはスコセッシによる、幻想映画を3Dでさらに新しい領域へ導くための宣言のような映画なのである。
その3D映像について、僕は、冒頭の流れるような一連の駅とパリの街を描写したカメラワークと時計塔のギア群の立体映像、それから蒸気,雪といった浮遊物を見事に使った3D映像に強い印象を持った。
少しくすんでボケていたように観えたのは残念だったが、これらシーンと、過去のサイレント映画の3D化の、幻想的なシーンに眼を奪われた。
特にキーとなるあの映画の3D映像。
主人公ヒューゴが、父から語られた幻の映像。それが立体映画として、現代の観客にも、新しいフィルムとして届けられる奇跡w。
最近の映画のように綺麗にまとまったリアリズムとは別の、どこかにあるかもしれない幻想のような特異な映像にため息が出る。
リアリズムでない、ある幻想がデフォルメされたあの独特の映像に心躍る何かがある。
◆蛇足 個人的記憶の誘発
後は、僕の個人的な思い出話……w。
あれは『スターウォーズ』の第一作がアメリカで封切られ、日本公開前に大いに盛り上がっていた頃。
スターログの読者欄の縁で、高校の文化祭にて、その『スターウォーズ』予告篇の8mmフィルムをある方に借りて、当時毎年有志の友人たちと開催していたSF展で上映することになった。
その時におまけで貸していただいたのが、『ヒューゴ』でキーとなるあの映画(^^;)。
そのフィルムはモノクロだったけれど、当時ビデオもない時代のそれが映写機に映し出された時は、幻のように美しく、そして機械的な動きがポップで、シャープな『スターウォーズ』のSFXとは別の、大きな印象をもたらした。
雑誌の記事とわずかな写真で見知っていたその原初のSF映像が、8mmのカタカタ鳴るぎこちない映写環境で映し出された時の気持ちを、今回久々にこの映画を観ながら思い出していた。
まさかあれから数十年、21世紀に、あの映画を大画面で、しかもカラーライズされ、そして立体映画として観ることになるとは、今回まるで予想していなかったので、大きな驚きだった。
映画フィルムの持つ、魔術的な幻惑は、闇と光と人間の視覚による、自分と世界の境界に立ち現れる魅惑的なものである。そんな原初的な感覚を呼び覚まさせてくれた21世紀の映画『ヒューゴ』に乾杯www!
◆関連リンク
・映画『ヒューゴの不思議な発明』公式サイト
日本語サイトの予告篇は、観劇前に観たらいけません。
・Videos: Die Spezialeffekte von Hugo - COMPUTER BILD(ドイツのサイト)
こちらはさらに完全ネタばれなので、観終わった方のみ。
・Hugo - Movie Trailers - iTunes
・あの人物のwiki(Google翻訳)
生年1861から晩年1921年。
対して、第一次世界大戦1914年から1918年。第二次世界大戦は1939年から1945年。
・あの人物の生涯を描いた本 魔術師―映画の世紀を開いたわが祖父の生涯
・映画の先駆者たち 1897‐1902 (世界映画全史): ジョルジュ サドゥール, Georges Sadoul
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