■感想 ETV特集「映画にできること 園子温と大震災」:『希望の国』制作ドキュメント
情報 松江 哲明,モルモット吉田『園子温映画全研究 1985-2012』
NHK【ETV特集】映画にできること 園子温と大震災
9/30(日)夜10時
再放送:10/7(日)午前0時50分
" 原発事故を映画にするため、園は試行錯誤を重ねた。目に見えない放射能をどう映像化するのか。被災地の人たちにふりかかった不条理な出来事をどんな物語にするのか。"
NHK ETVにて、いきなり『冷たい熱帯魚』。
あのシーンまで流すとは。NHKの挑発(^^)!…という園監督作の紹介から始まった『希望の国』の製作の現場を追った番組。
2時間の映画のための5000万の資金がなかなか集まらない、と嘆くプロデューサー。みんなが見ない聞かない言わない空気。そして過ぎ去るのを待っている、というコメント。
『希望の国』は長島県という架空の舞台の原発を扱ったSFだという。
SFだけれども、みんながニュースで知っている現実を再度、映画で明確化。そして表現者として今描かなければいけない覚悟を語る園監督。
南相馬の20km圏、立ち入り禁止ゾーンのすぐ外の家。境界線で作物を作れない半分の土地。そこの取材が映画に繋がったという。
『希望の国』で描かれる、認知症による主人公の妻の過去への旅と牛と山羊の町の映像。これはインパクトがある。
誰もが見たけれど既に忘れようとしてる福島の現実の光景のリピート。
そして『ヒミズ』で描かれた壊滅した街の長回しの意味について語られる。
映画を撮った後も、何度も飯舘村他に足を運び、そこで何かを感じ取る園監督の背中の映像が印象的。
完成した映画のワールドプレミアの様子。
なんと会場は、南相馬のゾーンのすぐ外の民家、鈴木豊子さんの御宅の居間。そして観客はその家族と知り合い5人の方のみ。
こうした場所での上映にのぞむ、園監督と神楽坂恵の凄い覚悟が伝わる。居間に居られなくなる二人。
終了した居間のワールドプレミア。
最後のシーンはなかった方がいいと言う男性に誠実に答える園監督。
クランクアップ後も被曝した村に通い映像を取り続ける園監督。読みあげられる園の詩「数」。
" まずは何かを正確に数えなくてはならなかった。草が何本あったかでもいい。全部、数えろ。(略)
「膨大な数」という大雑把な死とか涙、苦しみを数値に表せないとしたら、何のための「文学」だろう。季節の中に埋もれてゆくものは数えあげることが出来ないと、政治が泣き言を言うのなら、芸術がやれ。
一つでも正確な「一つ」を数えてみろ"
このドキュメンタリーで、さらに興味がわいてきた『希望の国』。
前代未聞のワールドプレミアから、どうこの映画の衝撃が伝播するのか/しないのか。しっかりと見定めていきたい。園監督の詩「数」のように観る側もいろいろなことを問われているのだと思う。まず早く観たいものです(^^)。
◆関連リンク
・ETV特集 映画にできること 園子温と大震災 に関する反応(2012.9.30 22時から24時付近) - Togetter
・ 園 子温『希望の国』
・ 松江 哲明,モルモット吉田『園子温映画全研究1985-2012』 洋泉社
" 松江哲明 1977年、東京都生まれ。1999年、日本映画学校(現・日本映画大学)の卒業制作として『あんにょんキムチ』を制作。以後…ドキュメンタリーの枠では括り切れない刺激的な作品を発表。
モルモット吉田 1978年、兵庫県生まれ。映画評論家。『映画秘宝』『別冊映画秘宝』『キネマ旬報』『映画芸術』等に執筆。"
興味深い本が出版される。
まだ本の内容を紹介した情報はないので、まずはこれだけ。今後は著者松江哲明 (tiptop_matsue)氏のTwitter等の情報に注目。
・園 子温さんサイン会 リブロ | 池袋
"リブロ池袋本店では映画監督・園子温さんの新刊3点の刊行を記念してサイン会を開催いたします。
〈サイン会対象書籍〉=整理券発券枚数予定:各100枚 ・『希望の国』〈映画最新作『希望の国』原作小説〉(リトルモア刊 税込1,575円 発売中) ・『非道に生きる』〈アイデアインク04〉(朝日出版社刊 税込987円 10月2日発売予定) ・『カオスの神、園子温』(フィルムアート社刊 税込2415円 9月下旬発売予定)
(略)
日時:10月8日(月・祝) 午後6時~
会場:西武池袋本店 別館地下1階 リブロ児童書前特設会場
お問合せ:リブロ池袋本店 03-5949-2931(文芸書売場)"
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