■作品集『デヴィッド・リンチ展 ~暴力と静寂に棲むカオス』
『デヴィッド・リンチ展 ~暴力と静寂に棲むカオス』 (赤々舎)
"アートディレクション:原田祐馬(UMA/design farm)
執筆:飯田髙誉(青森県立美術館美術統括監)
2,940円 (税込)|A4変形判 | 136頁 | 並製本
2012年11月10日から12月2日までラフォーレミュージアム原宿にて開催されている同名の展覧会の公式カタログとして刊行された、巨匠デヴィッド・ リンチの最新作品集。絵画、ドローイング、写真、ショートフィルムなど、日本初公開作品を含む幅広い作品群を通してその表現の深層に迫っています。寓話的なモチーフを描いた絵画作品や、日常に不穏な影の片鱗を見出すような写真作品など、 世界的映画監督という枠を超えた現代美術作家としての彼の魅力を余すところなく伝える一冊です。創作の源泉である「ハリウッドの光と闇」を伝える写真ページも必見。I believe there are rules to follow which apply to painting and cinema.
These rules are very friendly and very abstract.
These rules make us feel there are infinite possibilities.
They make us feel that even there are no rules! Yet the rules are there.
They are not in a bool but exist inside us in the mind and heart.
They reveal themselves through intuition just before and just after each action or decision.
These rules apply to all mediums.
Following them brings happiness.
David Lynch"
昨年秋に開催された「デヴィッド・リンチ展〜暴力と静寂に棲むカオス」@ラフォーレ原宿の図録として発刊された作品集。
作品集を発行した赤々舎の公式HPに、この図録の20枚の見本が掲載されている。
基本情報・デイヴィッド・リンチ展~暴力と静寂に棲むカオス|株式会社ラップネット
"絵画29点、ドローイング9点、写真33点、計71点のアート作品(このうち68点が日本初公開)と実験的な短編映像11本(本展のためにデヴィッド・リンチがエディットした日本初公開映像)を展示・上映。"
作品集には、展示作品のうち、絵画29点、ドローイング9点、写真12点が掲載され、それとともに会場で上映されていた短篇映像から83点の写真が収録されている。(何故、写真が全点でなく、1/3ほどになっているかは不明である。)
また作品集には、その他 "「ハリウッドの光と闇」を伝える写真"(Mori Koda氏の作品)25点が掲載、このうちの4枚は「ハリウッドの闇」を代表するデイヴィッド・リンチをとらえた写真である。
巻末にはリンチのプロフィールとバイオグラフィ、そして作品リストが4ページにわたって掲載されている(何故か作品リストには会場で上映されていた短篇作品は欠落している)。
作品集冒頭は、2ページ見開きを使って、会場でも異彩を放っていた巨大な絵画作品が掲載されている。巻末の作品リストによると、最大のものでも1.8m×3m。
展覧会感想で書いたように、会場の一角で観客を取り巻く様におかれたそれらの巨大絵画は、4〜5m程度はあるのでないかと感じた(関連記事 ■感想1 個展『デヴィッド・リンチ展 ~暴力と静寂に棲むカオス』(DAVID LYNCH "CHAOS THEORY OF VIOLENCE AND SILENCE"))。
しかし実際の大きさはそれほどでもなかったわけだ。
会場の雰囲気と周りで上映されるリンチ映像の醸し出す異様な迫力で、われわれ観客の体は異次元に連れ去られ、あたかもリンチの描く赤い部屋の小人になったように、絵画作品を巨大なものに感じたのかもしれない(^^;)。
リンチのアート作品を日本語の作品集で見られる、現時点、奇跡的な書籍。
また本の装丁も素晴らしいものとなっていて、特に大胆に最新短篇映画 "Memory Film" (2012) の一コマ(リンチ自身がその眼を手で覆った映像)を引き延ばした表紙はインパクトがある。
出版された赤々舎の方々と回顧展関係者の皆さんには大きな感謝を捧げたいと思う。
これによってリンチの映画作家としてだけでない、多彩な活動に日本でも日が当たっていくことをファンとして、強く望むものである。
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