■感想 石井岳龍監督『ネオ・ウルトラQ』第一話「クオ・ヴァディス」
"第1話 「クオ・ヴァディス」
監督:石井岳龍 脚本:いながききよたか
出演:田辺誠一(南風原仁) 高梨臨(渡良瀬絵美子) 尾上寛之(白山正平) / 島田雅彦(屋島教授)"
冒頭、不思議な老人と森の木々、太陽黒点とプロミネンスの映像。無駄のないワクワクする見事な異界の開幕である。
心理カウンセラーの主人公 南風原仁が劇中で語る言葉。
"「怪獣は宇宙の謎の力そのものです。ただ、人間の心の怪獣は…。人間の心がわからないのに、怪獣の研究をするなんて、おこがましい」"
この言葉に象徴される様に、物語はただ街中をある目的で歩き続ける怪獣を巡り、人間の凶暴化した姿を描いていく。怪獣の当たり前に存在する世界での、暴れない怪獣と、カルト/怨恨によるヒトの狂気の描写。怪獣の志向は不明のまま、物語は閉じていく。
怪獣を異質なものとして描いた静かな怪獣映画のスタートである。
石井岳龍監督は怪獣 爾流王仁恵(ニルワニエ)の眼を着ぐるみをくり貫いた穴から、ほぼヒトの眼の様に見せていた。これは明らかに『ウルトラQ』と異なるアプローチ。体は異形なのに脳に直結した眼はヒト。
そして上で引用した南風原の言葉が余韻を残す。
全13話のシナリオにいながききよたか氏がクレジットされている。各話単発のストーリーのようだけれど、全体としても骨格になる物語がある様に感じられ、今後の展開が楽しみである。
Facebookで感想を書いたら、石井監督ご自身から以下のコメントをいただいた。
"私の担当は四話や八話の方がより楽しめると思います。引き続きどうぞ宜しくお願い致します。"
第四話「パンドラの穴」 第八話「思い出は惑星(ほし)を越えて」
"南風原のかつての研究者仲間、黒木が落ちた穴の中で見つけた蓋。どうやら人の心の中に潜む悪意や欲望を閉じ込めているらしい。黒木はマーラーと名乗る異形の怪物に蓋を開けるように迫られ……。"
まだ第四話のストーリーしか公式HPに紹介されていないが、テーマは第一話からストレートに繋がる予感。
◆関連リンク
・Twitter / ishii_gakuryu: 石井岳龍監督
"ワシは円谷英二師を深く尊敬している。匠の技術はもちろんだが、師の映像には霊感と魔力があった。ジミ・ヘンドリクスのフィードバックやセロニアス・モンクのリズムにも似て?「失われた永遠」へ入れる陶酔があった。ワシは特撮は素人だが優秀なプロに補ってもらい今回は総力戦に懸けた。恥じぬように"
・cogitoworks.blog 201209(制作プロダクションの)
"今年のキーワード、「子供にトラウマを」は着々とカタチになっております。さあ、今日も始まります‼"
・!!!!!!! ISHII SOGO-GAKURYU.COM !!!!!!!(石井岳龍監督公式)
・「ネオ・ウルトラQ」の情報解禁 : 「金城哲夫研究会」公式ブログ
・映画『生きてるものはいないのか』公式サイト|石井岳龍監督約10年ぶりの待望の劇場用長編新作
12年に公開された石井監督の作品。公式サイトの予告篇が物凄く興味深い!
・石井岳龍監督『生きてるものはいないのか [DVD]』
"病院に併設された大学キャンパスを舞台に、いつもと変わらない日常を送っていた三角関係に悩む学生と喫茶店員、 再会を果たした兄妹、アイドル大学生ら18人の登場人物が、ある女子大生が倒れたことをきっかけに次々と原因不明の“最期"に伝染していく様子を描く不条理劇。"
"『生きてるものはいないのか』は、前田司郎の戯曲。2007年、京都芸術センターにて前田自身の演出で初演。翌年第52回岸田國 士戯曲賞を受賞している。2012年に石井岳龍監督で映画化された。 (略)
岸田賞の選評では「『死』ではなく『死に方』に関する見事な不条理演劇」(鴻上尚史)「ベケットの言語からも、別役実の言語からも逃れえた不条理劇」(宮 沢章夫)と評された。"
・そして最新作『シャニダールの花』(公式Blog)
" 極めて少数の女性の皮膚に、謎の植物の芽が現れ、見たこともない美しい花が咲く。物語の舞台は、その花の成分をもとに新薬開発を進める製薬会社の研究室 で、主人公は研究員・大瀧(綾野)と、新人スタッフの響子(黒木)。研究を続けるうちに見えた真実、そして花の提供者が次々に身体に異常をきたすも、ひた隠しにする所長の真意が描かれる。"
ここにも異界が…。
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