■感想 ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』: L'ECUME DES JOURS
当Blog記事で述べたミシェル・ゴンドリー監督『日々の泡 : L'ECUME DES JOURS』の原作、ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』を読んだ。
何とも不思議な味わいの小説。
少女漫画の様に何とも楽しく物悲しい物語。これは傑作ですね。グッときます。
パイナップルの歯磨き粉に引き寄せられ洗面の蛇口から現れるウナギとか、演奏によってカクテルを生成する"不在のピアノ"、土から生えてくる銃を作るアルバイト、ジャン・ポール・サルトルを模した哲学者ジャン・ソオル・パルトル「嘔吐」といったガジェットやエピソード。
アンニュイでワンダーな、若者6人を描く物語は、裕福で能天気な主人公のデラシネな青春に始まり、奇妙な睡蓮の病を転機に180度暗転。
睡蓮を中軸に据えた後は、前半がポップな感じだっただけに、深い感慨を呼ぶ小説でした。
ボリス・ヴィアンの傑作と、ゴンドリーとの異種化学反応が凄く楽しみ…。
ゴンドリーらしいキッチュな映像と不思議な物語の融合に期待。
あと僕が読んだのは、ハヤカワ文庫版の伊東守男訳。
訳出されたのが、1979年と30年以上前。前半の奇妙さ、不思議な印象に貢献していたのは、訳文の現代と異なる古い文体も影響している。
一例を挙げると、なんとフランスの警察の警部(?)を「奉行」と訳している! 奉行ですよ、奉行(^^;)。さすがに1979年でも圧倒的に感覚が古いと思う。それとももしかすると、原作もわざとそれに相当する古いフランス語を使っているのだろうか。
…ゴンドリーの映画に合わせて、ここは村上春樹訳とか出版されると良いのに。村山文体で是非読んでみたい小説でもある。
冒頭の引用画は、原題"L'ECUME DES JOURS"で検索した本の表紙画等。
とてもバリエーションがあって、いろんな受取り方が出来る本であることがここからもわかると思う。(下にある日本版の表紙は、硬すぎる印象ですね)
◆関連リンク
・L'ECUME DES JOURS / bande-annonce - YouTube
・曽根 元吉訳『日々の泡』(新潮文庫)
・伊東 守男訳『うたかたの日々』(ハヤカワepi文庫)
・ボリス・ヴィアン『日々の泡』 - Wikipedia
・Mood Indigo (film) - Wikipedia, the free encyclopedia
・L'Écume des jours (film, 1968) - Wikipédia
Charles Belmont監督による1968年の映画化作品があるのですね。以下がその映像。
・Marie-France Pisier & Sami Frey-L'écume des jours - YouTube
・Marie-France Pisier & Jacques Perrin-L'écume des jours - YouTube
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