◆レポート 円空大賞展 ユーリー・ノルシュテイン&フランチェスカ・ヤールブソワ作品
(写真はサイン会でのノルシュテイン)
岐阜県美術館|円空大賞展(公式HP)
"開催期間 : 2014.1/24(金)-3/9(日)
岐阜県ゆかりの江戸時代の修行僧・円空は、12万体もの個性あふれる神仏を彫った事で広く知られています。岐阜県では、 平成11年度より土着の伝統に根ざしながら独創的な芸術を創造している芸術家を顕彰し、表彰する「円空大賞」を制定しています。(略)
映像作家のユーリー・ノルシュテイン(以上、円空賞)。
円空の精神を具現する5人の作家たちと今なお愛され続ける円空仏、その魂が三百有余年を経て共鳴し合います。"
円空大賞展でノルシュテイン御夫妻の作品を観てきました。
以下、展示作品リストと感想です(リストは公式図録にも掲載されていなかったので、会場でiPhoneにて全部メモしましたw)。写真は会場内は撮影NGとのことで、外のショップの様子です。
◆展示作品概要と感想
全体で、絵本原画 6枚。マケット2点。絵コンテ 85枚。デッサン・イメージスケッチ・エスキースほか 40枚。
映像展示 3点(「外套」23分。「冬の日」2分。円空賞受賞インタビュービデオ 約3分)。
2010年に神奈川県立近代美術館 葉山館で開催された「話の話 ロシア・アニメーションの巨匠 ノルシュテイン&ヤールブソワ」展に比べるとノルシュテイン作品の展示面積は、たぶん1/20以下(150平方メートルくらいの会場)。
そして展示品は、かなり「話の話」展とダブっていると思う(正式に比較したわけではないです。感覚的な判断です)。
残念だったのは、「話の話」展で一番素晴らしいと思った展示品であるマケットが2点だけだったこと。マケットとはガラス板にノルシュテインの撮影素材とおぼしきキャラクタや樹木のシートを貼付け、それを積層的に並べて、LED等の照明を加えてディスプレイしたもの。まるで映像の世界が現実に現れたような幻影性にあふれた素晴らしい展示品だった。特に「話の話」のきつね君とか素晴らしいかったので、再会を期待していたが、今回のマケットは「外套」の2点のみ。
一点は「夜のネフスキー大通り」という幅1.5m程の横長、街灯の下の大勢の人々を描いた作品。こちらは「話の話」展でも展示されていた作品。
もう一点は、同じく「外套」のシーンを描いた小品。
こちらも夜景、1灯の街灯の下でダンスを踊る人々。展示スペースに暗幕で薄暗いコーナーを作り、飾られたそれら作品は、まわりの「外套」のスケッチ、絵コンテ群と合わせて作品世界をそこに現出させていた。
◆作品詳細リスト。
略号で作家名を記します。
N : ユーリ・ノルシュテイン、Y : フランチェスカ・ヤールブソワ、NY : 合作。
冒頭にノルシュテインの略歴。その後、各映像作品ごと、関連するイメージスケッチや絵本の原画が展示されています。
各映像作品ごと、全作品、各1枚のパネルで概要が書かれています。◆「25日ー最初の日」
概要パネルのみ。
◆「きつねとうさぎ」
絵本原画 NY 3枚(グレー緑の家。緑の背景。茶の背景の鶏)
◆「アオサギとツル」
絵コンテ Y 5枚。映画フィルムによる絵 Y 1枚。
◆「霧の中のハリネズミ」
絵コンテ Y 6枚。絵本原画 NY 3枚(木の中からハリネズミを見るフクロウ、白い馬、夜空を見るハリネズミと熊)。
残念ながら葉山の「話の話展」で素晴らしかったマケット(多層的なガラスに立体的に映画の原画を貼ったもの)はなかった。
◆「話の話」
オオカミの子 キャラクター組立て図 N 2枚、スケッチ 6枚。
◆「外套」
完成している23分の映像。30インチ位のモニタで多分全篇上映。まさに制作中ということで、最後は街のシーンで人の動きの途中で唐突に切れる。
ペトローヴィチと会った後で 絵コンテ N 4枚。その他 絵コンテ NY 48枚。
イメージスケッチ 23点。
こごえた耳をこするアーカーキー・アカーキエヴィチ N 1枚、外套を点検するアーカーキー・アカーキエヴィチ N
1枚、アーカーキー・アカーキエヴィチが口から糸をとる N 1枚、風に吹かれて歩むアーカーキー・アカーキエヴィチ N 2枚、出来事について語る
N、フレスタコフ役で聴衆に向かって演じる N、風吹く中を歩むアーカーキーのフェーズ N 9枚。
アーカーキーーペンとインク入れを手にした赤ん坊 Y、アーカーキー・アカーキエヴィチの頭部デッサン N、アーカーキー・アカーキエヴィチの姿 Y、古い外套を着たアーカーキー・アカーキエヴィチ Y、脱衣所 N。イメージスケッチ他 2枚。
マケット 2点。
◆「冬の日」
作品映像の液晶テレビでの上映 2分。
絵コンテ N 22枚。デッサン・スケッチ N 6枚、エスキース Y 2枚、カラースケッチ N 2枚、写真パネル 9枚。
◆ノルシュテインの道具一式 絵の具、筆等。
◆円空賞受賞インタビュービデオ 約3分。
◆円空賞受賞の言葉
ノルシュテインの受賞インタビューの様子が会場の液晶モニタで映し出されていた。以下、その一部引用。
"円空は言語に絶する強烈な個性を持つ人間であり、彼の想像は単なる個人の仕事だけではなく、全ての人に精神の旅の道程を示唆しています。その道を彼はまさに歩んだのです。自ずと私は彼を芭蕉と比較することになりました。なぜなら、見知らぬ地から地へと歩き、絶えず人々を助けた僧侶は、同じく旅をし続けて句を詠みついだ芭蕉と共通します。芭蕉も精神のストイックな聖職者だったと思えます。"
インタビュー映像でもうひとつ語られていたのは、円空の12万体にのぼる彫刻作品について。偉大な作家の偉業を讃えるノルシュテイン。我々観客は、それを語るノルシュテインの作品との共鳴を強く感じていた。こつこつと掘り続けた円空の姿は、三十年におよぶ長い期間、「外套」という作品を一枚一枚の絵を描いて作り続ける現代の芸術家ノルシュテインと重なって感じられた。
現在、23分間、全体が60分の構想と書かれていたので、残り37分の完成を楽しみに待ちたいものです。
◆サイン会
講演会後に行われたサイン会は約200人程の行列ができた。
僕は、御気に入りの2010年の「話の話 展」の図録を持参しサインしてもらった(ショップで『「話の話」の話』を購入しサイン会参加券をもらったのです)。
上の写真がそのサイン。図録の1ページの真ん中に、寂しそうに一人佇むキツネくんの横に創造主であるノルシュテインのサインが入り、キツネくんも故郷を遠く離れた日本の地で、どことなく安穏な顔になったような気がします(^^)。
そしてサイン会で握手したノルシュテインの手は、シュヴァンクマイエルの手より硬質だった。この手から超絶映像が作られてるんだという感慨。
ノルシュテインとシュヴァンクマイエルの、御二人の手の感触を、触覚の芸術でもあるコマ撮りアニメーションの貴重な記憶として、究極映像研 脳内アーカイブに格納しておきます(^^)。
◆関連リンク
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