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2014.02.06

■感想 長澤雅彦監督『なぞの転校生』岩井俊二 企画プロデュース・脚本

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なぞの転校生(公式HP)
ドラマ24 なぞの転校生(毎週ドラマを一週間無料ネット公開)

◆『なぞの転校生』第一話

"高校2年の岩田広一(中村蒼)は、幼馴染で同級生の香川みどり(桜井美南)と不思議な流れ星を見る。 その夜、広一は隣に住む一人暮らしの江原正三(ミッキー・カーチス)から「部屋に見知らぬ誰かが何人もいる」など奇妙なことを言われ戸惑う。翌日体育倉庫で着替えをしたみどりは、盗撮していた大森健次郎(宮里駿)を発見し揉めていると、突然幽霊らしき物体が!担任の大谷先生(京野ことみ)は生徒たちと現場 検証を始める。"

 一週間限定のネット放映で毎週観ているので、まずは三話分の感想です。Facebookで毎回観て書いた感想を掲載しますので、文体はその時の気分でばらついてますが、ご容赦を(^^;)。
 岩井俊二ファン、必見。高校生の描写がまさしく岩井ワールドになっている。
 それはダイアローグのデティルや何気ない仕草の描写によって醸し出されたものでファンには溜りません(^^;)。

 あと映像ファンのために以下素晴らしいポイントをメモランダムで。
・奇想映像ファンは冒頭だけでも試しに観てください。導入部からOP映像だけでもしびれます。
・映像が映すその光とそれを観た高校生の視認識の違いも、今後の展開に興味を惹かせます。
・ミッキー・カーチスがとてもいい味。ファンキーなボケ老人演技が素晴らしい。
・そして「ムー」ファン必見な展開w。主人公がSF研究会の会長で、ニックネームが「ムーくん」というのは何だかSFファンには複雑ですw。
・金田光(ちょっと違うかw)をまさかこのドラマで観ることになるとは(^^)!

 「なぞの転校性」が登場する次回予告。転校生の週末感漂うエキセントリックな描写、次回が楽しみ!

 長澤雅彦監督の映画は初めて観たのですが、特に冒頭と終盤の映像、緊張感のあるカメラワークでみずみずしい描写が心地よいです。

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◆『なぞの転校生』第二話

"ある朝、家を出た岩田広一(中村蒼)は隣の家から出てくる青年と出会う。青年は江原正三(ミッキー・カーチス)の孫の山沢典夫(本郷奏多)と名乗り、隣に引っ越してきたという。二人はアパートの通路でいっしょになるが、奇妙な行動を見せる典夫を広一は不審がる。するとそこに光る何かが現れ…!?その後、野球の試合をしていた広一の前に再び典夫が出現。野球の意味すら知らない典夫がピンチヒッターをすることになるが…。"

 しっかりSF!
 モノリスとミッキー・カーチスが最高に格好良い。
 インストール中の奇矯な姿と草野球の異化作用、そして未来の惨禍から逆照射して、美しい花と星空。長澤監督の映像も冬の空気のように澄んでいて、近来稀にみるSF TVドラマだと思う!

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◆『なぞの転校生』第三話

"岩田広一(中村蒼)と香川みどり(桜井美南)のクラスに山沢典夫(本郷奏多)が転校生として紹介され、昨日典夫に高校の存在を教えたばかりだった広一は驚 く。早速物理の授業で専門的な発言をする典夫だったが、次第に話はなぞめき出し…。その後、授業が始まっても教室に現れない典夫はなぜか理事長室に。親しげに寺岡理事長(斉木しげる)と会話する典夫だったが、理事長から衝撃的な事実を聞かされ絶句してしまう。"

 今回は、主人公ムー君wのSF研究会会長という設定が、いかんなく発揮されたH.G.ウェルズ & A.C.クラーク回(^^)。

 転校生山沢典夫によって語られる多元世界は、物理学者A.C.クラークによって(?)、知的物質モノリスが発明され(D1)、『解放された世界』でH.G.ウェルズが予言した、連鎖反応し爆発が止まらない原子爆弾のアイディアを、ハンガリー生まれの原子物理学者レオ・シラードがマンハッタン計画で実現した世界(D8)。

 SF研の部室で撮られている特撮映画「現代版 宇宙戦争」のミニチュアセットの前で語られる、破滅した世界の物語にかぶるショパンの「雨だれ」。そして「雨だれ」のない世界(D12?)。

 「DRS:DNA書換え手術」60兆の細胞の修復は、もしかしたらSTAP細胞を見いだした小保方晴子博士の発明かもしれない(D8?)。

 レイヤー上に重なる多元世界の結束点、東西山高校。
 ワンダーな世界が金曜深夜にTVに現出しています。

◆関連リンク
 第三話のSF度が嬉しかったので、以下、関連リンク。

・ハーバート・ジョージ・ウェルズ - Wikipedia

"原子爆弾
 小説『解放された世界』は、原子核反応による強力な爆弾を用いた世界戦争と、戦後の世界政府誕生を描いた。核反応による爆弾は、原子爆弾を予見したとされる。ハンガリー出身の科学者レオ・シラードは、この小説に触発されて核連鎖反応の可能性を予期し、実際にマンハッタン計画につながるアメリカの原子爆弾開発に影響を与えた。

国際連盟
 第一次世界大戦中に論文『戦争を終わらせる戦争』を執筆。大戦後に戦争と主権国家の根絶を考え、国際連盟を樹立すべく尽力した。しかし、結果的に発足した国際連盟はウェルズの構想とは異なり国家主権を残していたため、『瓶の中の小人』という論文で国際連盟を批判している。のちに発足した国際連合も同様に批判した。

日本国憲法
 ウェルズは日本国憲法の原案作成に大きな影響を与えたとされる。特に日本国憲法9条の 平和主義と戦力の不保持は、ウェルズの人権思想が色濃く反映されている。しかし、ウェルズの原案から日本国憲法の制定までに様々な改変が行われたため、憲 法9条の改正議論の原因のひとつとなっている。またこの原案を全ての国に適用して初めて戦争放棄ができるように記されており、結果として日本のみにしか実現しなかったことで解釈に無理が生じたと言われている。"

H・G・ウェルズ「解放された世界」書評 -- 慶應義塾大学SF研究会.

"本作は旧態依然とした社会体制からの解放の物語である。 この解放は大科学者ホルステンが原子力エンジンを1953年に実用化したことに始まる。このホルステン=ロバーツ・エンジンは革命的と言えるほどに安価な 電力供給を可能にし、わずか数年で既存の動力を全て駆逐する。その一方で、この急激な変化は既存の経済や産業に大きな打撃を与え、この経済的混乱の最中の 1956年、世界は全面戦争へと突入していくのである。この戦争に決着を付けたのは他ならぬ原子爆弾である。このカロリウムを原料とする原子爆弾は全世界の200もの都市に落とされ、ほとんどの国家は壊滅状態に陥ってしまう。そしてこの地球規模の破局の閉幕として、イタリアの片田舎で各国の指導者が集まり、世界政府の樹立を宣言する。"

レオ・シラード - Wikipedia.

"生物学の道をほとんど選びかけていた1933年9月、シラードはロンドンで著名な物理学者アーネスト・ラザフォードが行った講演の新聞記事を眼にした。ラザ フォードはそこで、原子核の秘めたエネルギーを工業的規模で解放するのは絵空事 (moonshine) であると説いていた[46]。この記事は、彼にベルリンで読んだウェルズの SF『解放された世界(英語版)』(1914年)[47]を思い起こさせた。そこでウェルズは逆に原子エネルギーの開発とそれによる核戦争の勃発を予見していた。これらをきっかけにシラードは原子エネルギーについて終始考えを巡らせるようになった。ある日、ロンドン・サザンプトン通りの交差点で信号待ちをしている間に、前年発見された素粒子中性子による連鎖反応の理論的可能性に不意に思い至った。電気的に中性な中性子は容易に原子核に衝突させることがで き、もしそれによって複数の二次中性子を放出するような種類の原子が存在すれば、莫大な核のエネルギーが放出されることになる。"

前奏曲 作品28の15「雨だれ」 ショパン - YouTube
 そして私たちの世界に存在する「雨だれ」

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コメント

 ミのつく職人さん、おはようございます。

>>旧作は見ていないし、そもそも眉村卓は読んだことがないのに。

 あれ、世代的に観てないんでしたっけ?

>>現代のジュブナイルは中高生の夕食前の時間でなく中高年の深夜でこそ成立するのを見極めたのも素晴らしい。

 ノスタルジーで観はじめた中年も多いでしょうね。NHK版の主役 高野浩幸が今回お父さん役だったり…。

 でも若者にも観てもらいたい「映画」になっていますよね。

投稿: BP(ミのつく職人さんへ) | 2014.02.08 08:38

放送を録画して見てます。ジュブナイルってこうだよなあと思わされます、旧作は見ていないし、そもそも眉村卓は読んだことがないのに。東日本大震災は存在したのにショパンが存在しない世界は脚本の妙。全編ハンディカメラによる撮影は演出の妙。唸らされます。現代のジュブナイルは中高生の夕食前の時間でなく中高年の深夜でこそ成立するのを見極めたのも素晴らしい。惜しいのは本編終了後に予告編だかDVDだかを典夫がCMしてるところ。結構ぶちこわしです。

投稿: ミのつく職人 | 2014.02.07 23:14

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