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2014.02.02

■情報 マンタム個展「 記憶の残骸物とそれを照らす為の月」@名古屋大須 sipka(シプカ)

Mantamexhibitionkiokunozangaibutsu

マンタム個展「記憶の残骸物とそれを照らす為の月」 | 名古屋・大須のアクセサリー・セレクトショップ・sipka-シプカ-
sipka official weblog

"2014年2月5日(水)〜3月16日(日)
(略)
 死より生まれる新たな文化をコンセプトに有機物(動物の死骸)と無機物(骨董)を生み出されるマンタムの作品群はグロテスクな中にもプリミティヴな力強さと奇妙な美しさを感じさせます。

 名古屋では約2年振りとなる今展示「記憶の残骸物とそれを照らす為の月」ではアーティスト・マンタムの原点であるシュルレアリスムに立ち返り、新たに作り起こされた作品の数々と、作家自身による骨董や廃材を組み合わせた独創的な空間を体験して頂けます。

「マンタムとシュルレアリスム」シュルレアリスムとは何か。
                   文・画家 磯貝剛氏

超現実(シュルレエル)とは、私達が何となく現実と思っている感覚では捉え損ねる現実である。

境界があって、その境界のどこかにある入り口をくぐってたどり着く異界ではなく現実と地続きに存在する。

つまりシュルレアリスムは幻想の世界を紡ぐことではない。

マンタムのシュルレアリスムを見てみよう。

例えばまず現在Sipkaに常設されている「永久機械」

水桶の中に水が滴り落ちはすれど、一向に桶の中の水嵩は増す気配がない。
この機械は、我々に「現実を推し測るときの物差し」自体を疑わせる。
シュルレエルを直截的に現すのではなく「何となくの現実」(レエル)を疑わせることで、超現実(シュルレエル)を示唆している作品とは言える。

文学から始まったシュルレアリスムは、アンドレ・ブルトンの自動記述の実験によって超現実を発現させる事を目指した。
美術のシュルレアリスムは「デペイズマン」と呼ばれる手法を使った。

デペイズマンとは「国を追放すること」。
つまり事物を本来あるべき場所ではない別のところに配置することである。「本来ある場所」と言う主観的価値から切り離し、オブジェ(客体)化させるという試みである。

しかし、マンタムの作品は、関連性のない二項が思いがけない結びつきをしているように見えて、そこには物語により必然性がもたらされている。よってオブジェでなければ、気まぐれな偶発事故でもない。

同じくSipkaに常設されている「オリンピア」に眼を向けてみれば、伽藍堂で中に鳥が詰め込まれていることの必然性に気付かされるだろう。

更にマンタムの書く物語だが、これはただの空想(ファンタジー)だろうか。

書籍化された「鳥の王」は、2011年の東日本大震災の津波の被害や原発事故による放射性物質の拡散を受けて、マンタムが書き上げた。
現実との関わりから生まれた、現実に対する確信とも呼べる「予感」に立脚して書かれている。浮き草のような空想ならば、レエル(現実)との関わりを持たず、悲痛な現実からの「逃げ場」としてのみ機能するが、そうではない。

物語においてもレエルとの連続性は失われない。
むしろマンタムのシュルレアリスムは、オブジェとしてだけあるシュルレアリスムより、よりレエルとシュルレエルの紐帯を顕著に示すものであるように思われる。

参考書籍「シュルレアリスムとは何か」巖谷國士"

 とても長い引用ですみません。ただ素晴らしい紹介文であったため、一部引用だけではその本質の魅力を伝えられないと考え、大部分を引用させて頂きました。これを書かれたのは、sipkaのことり隊長 (kotoritaichou)さんによれば、画家 磯貝剛氏

 2年ぶりに名古屋でマンタムさんの個展がいよいよ今週、開催される。
 今回のテーマは、「シュルレアリスム」ということで、ますます期待が高まる。前回の個展「錬金術師の遠望」は、僕も訪問しハイビジョンハンディカムで動画も撮らせて頂いた(過去記事 レポート動画)。
 その際にマンタムさんと御話もさせて頂き、シュルレアリスムとの関係も少しだけ御伺いした。以下の記事でこんな風に書いたこともある。

感想 マンタム『鳥の王 ー Král o ptácích』

" 本書(マンタム著『鳥の王 ー Král o ptácích』)に付属するカードに、マンタム氏のファンでもある、チェコのシュルレアリスト ヤン・シュヴァンクマイエルの言葉が記載されている。

"マンタム氏のオブジェを見ていると、「ミシンとコウモリ傘との、解剖台の上での邂逅のように美しい!」という、ロートレアモン伯爵が遺した名句から飛び出したような気がしてならない。 "

 名古屋のSipkaの個展の際に、マンタム氏と一度だけ話をさせて頂いたことがある。
 その際に印象的だったのは、シュヴァンクマイエルの作品について、マンタムさんの作品とは異なり物語は付随していないですね、と尋ねた僕に対して、シュルレアリスムと物語は相容れないものだ、という言葉。まさにシュルレアリスムの根幹に関わる言葉で、、、。(その時の記事へのリンク 感想 マンタム個展 「錬金術師の遠望」)"

デペイズマン - Wikipedia

" デペイズマン (dépaysement) とは、シュルレアリスムの手法の1つ。この言葉は、もともとは「異郷の地に送ること」というような意味であるが、意外な組み合わせをおこなうことによって、受け手を驚かせ、途方にくれさせるというものである。文学や絵画で用いられる。
 19世紀の詩人ロートレアモン伯爵の次の詩句(「マルドロールの詩;Chants de Maldoror」より)を原点にしているといわれる。

「解剖台の上でのミシンとこうもりがさの不意の出会いのように美しい。」(日本語訳)"

 上のsipkaさんの引用文に出てくる「デペイズマン」は、シュヴァンクマイエルが、正にマンタム氏の作品を評して引用したロートレアモンの言葉を原点にしている、ということである。
 物語を背景に紡いだ上で制作されるマンタム氏のオブジェ。シュヴァンクマイエルの自動書記的なシュルレアリスムとの違いを念頭に置きながら、今回の展覧会を楽しみに待ちたいと思う。
 今度は、前回からアップグレードしたw、3Dハンディカムによって、名古屋大須のレアルな魔空間に現出した超現実を捉えてきたいと思う。立体物への没入を可能にする立体映画装置は果たしてシュルレアルな空間を封じ込めることが可能なのだろうか。(^^;)

マンタムさん公式ブログ、sipkaのことり隊長 (kotoritaichou)twitterより作品紹介
 作品の写真と、それにまつわる物語が語られています。
「 Lebka konjugát 」
「処刑機械」

◆関連リンク
マンタム(田村秋彦)(mantamu)さんTwitter
 こちらで今回の個展制作中の様子が少し語られています。

 マンタム個展「感情の為の機械」A STORY TOKYO - YouTube
 2013年10-11月 A STORY TOKYOでの個展動画。

"http://heavenscafe.net/?mode=grp&...
「感情の為の機械」 Mantam Exhibition
18 fri. Oct. - 12 Tue. Nov. 2013
A STORY TOKYO SHINJUKU
会場音楽 Közi(ZIZ / XA-VAT / EVE OF DESTINY / ex.MALICE MIZER)

・感情の為の機械 REM
・溶けた月
・水晶灯
・MANT V2
・6T 麗子 #3

2010年10月 パラボリカ・ビスで最初の個展 「錬金術師の憂鬱」を開催
2011年9月 名古屋Sipka「錬金術師の遠望」
2012年6月 パラボリカ・ビス『夜 歩く犬―崩れた塔に向かう郷愁 』
2012年9月 大阪月眠ギャラリー「畜骸曲舞団」
2013年5月 パラボリカ・ビス 「 残骸に在るべき怪物 」"

磯貝剛-ISOGAI TSUYOSHI- 名古屋 作家(公式HP)
磯貝 剛 (Tsuyoshi_Isogai)さんTwitter

当Blog関連記事 名古屋での前回個展のレポート
感想 マンタム個展 「錬金術師の遠望」@アクセサリーセレクトショップ Sipka Mantam Exhibition Distant View of an Alchemist
動画 マンタム個展「錬金術師の遠望」@Sipka

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