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2014.02.19

■レポート ウィリアム・ケントリッジ《時間の抵抗》: William Kentridge The Refusal of Time

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ウィリアム・ケントリッジ《時間の抵抗》 | PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭 プレイベント

" 【日時】     2014年2月8日(土)– 3月16日(日)11:00–19:00
 *水曜休、入場は18:30まで
【会場】     元・立誠小学校 講堂     〒604-8023 京都市中京区備前島町310-2(木屋町通蛸薬師下ル)

 《時間の抵抗》は、20世紀初頭の近代物理学の誕生を研究するハーバード大学の科学史家ピーター・ギャリソンとケントリッジとの時間を巡る対話から着想され、野生動物にも似た美しく俊敏な踊りで知られる南アフリカの女性ダンサー、ダダ・マシロとのワークショップの過程で生み出された作品です。時間の意味を求める人間の飽くなき努力と人間に定義されることを拒むかのような時間の不思議さ、一方で人間が定義した時間の規則や拘束から逃れようと抗う人間、こうした両義性を内包するこの作品は、近代の普遍的で根源的な問題を執拗に検証し続けているケントリッジの、知の現在位置を明示する重要なマイルストーンと言えます。"

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 先にレポートした「吉本新喜劇×ヤノベケンジ」を観に行った際、何か美術展がないかと探して、この展示に行き当たった。不勉強でウィリアム・ケントリッジについて、全く知らなかったのであるが、素晴らしい作品だったので簡単にご紹介します。

 本作品は、アフリカのアーティスト、ウィリアム・ケントリッジのインスタレーションである。
 合わせて開催された講演「[映画技術史]森脇清隆「京都の映画——アートとエンターテインメントが交錯した時代」 」によると、この場所は日本と京都の映画史において大変重要な場所らしい。この場所で、こうした映像のアート作品が上映されたことは貴重な機会で、それを偶然に観ることができて幸運だった。

 この会場 元・立誠小学校は、日本で1897年にリュミエールのシネマトグラフが初めて上映された、日本の映画発祥の地。元土佐藩藩邸で京都電燈という電力会社の発電所だった場所。リミュエールの機械4台が日本に運び込まれ、神戸と横浜に上陸。西から入港したので関西で東京より早い上映が行われたのだとか。

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William Kentridge, The Refusal of Time, 2012
5チャンネルビデオ、サウンド、メガフォン、呼吸する機械(木製の可動式装置)のインスタレーション(音声あり、再生時間30分)
コラボレーション:フィリップ・ミラー、キャサリン・マイバーグ、     ピーター・ギャリソン
国立21世紀美術館(イタリア、2012)での展示風景 (Photos by Matteo Monti, courtesy of Fondazione MAXXI) © William Kentridge (プレスリリースより引用)

 今回の展示は、このプレスリリースの写真にある様なフラットなスクリーンではなく、講堂の構造も使用して、柱とか梁をむき出しにしたまま、そこに映像が投影されていた。これにより、荒削りでダイナミックな空間が作られていたと思う。

 廃校となった小学校の講堂までの古びた様、そして講堂全体に広がる映像空間と、木と鉄で作られたオブジェ"呼吸する機械"。これはモータでクランクを回して、産業革命的な工場の機械を想起させるオブジェで、映像と融合して骨太な空間を形作っていた。

 映像は、木炭とパステルのドローイングによるアニメーションと、パントマイム的な人物のダンス、そして影絵等が使われ、5面スクリーンで並行していろいろなシーンが描かれている。
 さらに素晴らしいのは音響効果。
 四隅(たぶん)に置かれたスピーカーと、4本立てられたアルミの板金を用いたメガフォンから時に大音響、映像と位置を合わせて会場を練り歩くように蠢く音が生々しい。

 映像と音により、ストーリーがなくどのようにも解釈できるパフォーマンスが講堂の中で観客をとりまき、視線を各スクリーンに巡らせて、まさに体感する映像空間。
 こうした複数スクリーンを用いたインスタレーションはいろいろ観たことがあるのだけれど、このオブジェと映像のダイナミックな骨太のイマジネーションは、その中でも秀逸な作品だったと思う。

◆関連リンク

▶ dOKUMENTA 13 - The Refusal Of Time (1) - YouTube
 《時間の抵抗》の一部がこちらで観られます。
William Kentridge - YouTube
 その他、ケントリッジの多数作品。
ウィリアム・ケントリッジ——歩きながら歴史を考える そしてドローイングは動き始めた…… | 京都国立近代美術館

◆蛇足
 ディビッド・リンチファンの僕は、このような作品としてリンチのアート作品が展示されたら素晴らしいだろうな、と夢想してしまう。工場の写真や自身の絵画、オブジェ作品を配して構成されるリンチ空間。まさに身震いする凄み(^^;)。

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