« ■レポート 「ビートたけし×ヤノベケンジ展」@ゼント・アート・ミュージアム:ZENT ART MUSEUM | トップページ | ■感想 ジョシュア・オッペンハイマー監督『アクト・オブ・キリング』 »

2014.05.05

■感想 ラース・フォン・トリアー監督『奇跡の海:Breaking the Waves』 レオス・カラックス監督『ホーリー・モーターズ:Holymotors』

◆ラース・フォン・トリアー監督『奇跡の海』
映画「奇跡の海」予告編 日本版 trailer [Breaking the Waves] - YouTube
 ラース・フォン・トリアー監督『奇跡の海』(1996)DVD初見。
 トリアーの鮮烈な映画、本作も過酷な試練が主人公に襲いかかる。

 エミリー・ワトソンが演じる無垢な女性の愛くるしさがまず素晴らしい。そして描かれる精神の煉獄。

 描かれるのは、70年代スコットランドの海辺の寒村と、その地域の精神的拘束を作っている教会である。

 人の尊厳を蹂躙していくムラの信仰と、無垢な女性の悲恋なのだけど、つくづくトリアーは繊細すぎる感性を持て余してしまっている演出家であることが、この主人公の心情を委細漏らさず構築した画面から痛いくらい伝わってくる。

 映像的に凄いのが、各章冒頭の奇妙な色彩の風景に60-70年代のポップスが被さるところ。
 まさにここは天上の視点なのだけれど、ラストのあの映像にもつながり、煉獄の作品を引き締めるキーイメージになっている。

◆レオス・カラックス監督『ホーリー・モーターズ』

映画『ホーリー・モーターズ』予告編 - YouTube
 恥ずかしながら、レオス・カラックス監督の映画初見w、いきなり予告篇に惹かれて最新作の『ホーリー・モーターズ』(2012)のDVDを観ました。

 こちらも話は何が何だかわかりませんw。
 しかし白いリムジンから繰り出されるフィクションの強度が各シーケンスとも素晴らしく全篇ワクワクして見終わった。

 一番の刺激的なエピソードは、地下道を走る、何でも喰ってしまう狂人のエピソードであろう。そして特撮ファンも必見かと思われるのが、彼が地上に姿を現す際のBGM。まさか伊福部サウンドをカラックスの映画で聴こうとは!!(^^)

 この映画に出てくる白いリムジン、クローネンバーグ『コズモポリス』(2012)とはどんな関係なのでしょう。どちらも主要な舞台が白いリムジン、その二作がカンヌでパルム・ドールを争ったという因縁…。

 やはり文明の行き着く先の象徴としてのリムジンって気もしないでもないが…、どちらも車というプライベートな空間/幻想が、様々な場所に移動して、社会のリアルへ接続する。カラックスの映画は、さらにそこに入れ子的に社会自体の虚構性がかぶさっていくわけだけれど、、、。

 この二本、未見の方は、連続してみて観るのも面白いかも(僕は約2ヶ月置いて観ました)。

『ホーリー・モーターズ』公式HP
『コズモポリス』予告篇

|

« ■レポート 「ビートたけし×ヤノベケンジ展」@ゼント・アート・ミュージアム:ZENT ART MUSEUM | トップページ | ■感想 ジョシュア・オッペンハイマー監督『アクト・オブ・キリング』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ■感想 ラース・フォン・トリアー監督『奇跡の海:Breaking the Waves』 レオス・カラックス監督『ホーリー・モーターズ:Holymotors』:

« ■レポート 「ビートたけし×ヤノベケンジ展」@ゼント・アート・ミュージアム:ZENT ART MUSEUM | トップページ | ■感想 ジョシュア・オッペンハイマー監督『アクト・オブ・キリング』 »