■感想 ジョシュア・オッペンハイマー監督『アクト・オブ・キリング』
話題のドキュメンタリー ジョシュア・オッペンハイマー監督『アクト・オブ・キリング』を名演小劇場で観てきた。
噂にたがわぬ衝撃作。
僕は町山智浩氏とライムスター宇多丸氏のPodcastでどういう映画か知った上で観たのだけど、もし現在、貴方がこの映画の情報を知らないのであれば、これだけの衝撃度の高いドキュメンタリーはそう他にはないので、何も知らずに劇場で初見されるのを強くお薦め。
何も知らずにこの映画を観られる凄さは、きっと他では得られない体験になると思う。できれば以下の予告篇も本篇最大のネタを割っているので、観ないで劇場またはDVD視聴を!(^^)
★★★★以下、ネタバレあり。本作品の衝撃を生で得たい方は見ないこと★★★★
映画「アクト・オブ・キリング」|公式サイト
予告編 - YouTube
"ベルリン国際 映画祭観客賞受賞、アカデミー賞にもノミネートされたドキュメンタリー。
1960年代にインドネシアで繰り広げられた大量虐殺の加害者たちに、その再現をさせながら彼らの胸中や虐殺の実態に迫る。『フィツカラルド』などの鬼才ヴェルナー・ヘルツォーク、『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白』などのエロール・モリス監督が製作総指揮を担当。凶行の再演という独特なスタイルに加え、そこから浮かび上がる人間が抱える闇にドキリとさせられる。
http://www.cinematoday.jp/movie/T0018717"
この作品、現地インドネシアでは全篇がネット公開され既に350万回以上観られているとのことですが、どんな受け止め方をされているのか、とても気になります。ちなみにインドネシア語ですが、以下で全篇日本でも観ることができます。
一度観て、思い出したい方はこちらをどうぞ。
Jagal - The Act of Killing (full movie) - YouTube 全篇公開
◆以下、ネタバレ感想
本作はヒトの虐殺行為と映画との関係を描いた作品である。
映画というのは勿論、物語/幻想/フィクションであり、本作はそれらがヒトに及ぼす心的な影響を複層的に描いたものである。
複層する位相を箇条書きで列挙すると以下の通りである。
・プレマン(フリーマン)と呼ばれる殺人部隊のリーダーで主人公アンワル・コンゴの1965,66年当時の現実。
彼は政治的なフィクションで自身の行為を良きものと考え、そして映画を模する残忍な所行で、善的な行為として虐殺を遂行。
・自らは政府にとっての英雄となり、その後、家族や周囲の人間に行為を誇らしげに英雄行為というフィクションを語ってきた。
・そして本作の撮影がスタート。彼は映画でそのフィクションを再話する。再話し映像化することで自らを客観視(?)。
・さらに被害者役を演じることによる感情移入。
・そしてパンフに書かれている次の言葉。
この完成した映画を見て、ラストシーンの自分の記憶を無くしていたのに気づく。そして「自分のしたことをただ描くのではなく、そのことの意味が描かれていて安心した」と語る視点。この言葉は達観なのだろうか?? どの地平へ彼が今、立っているか、無性に知りたい。
これら映画で描かれた複層した認識と、パンフの言葉。僕の人間認識では理解できない何ものかの地平がここに潜んでいる。DVDが出たら、再度見直してみたい映画である。
こんなドキュメント映画が、北朝鮮首脳部対象にして撮られたら凄いだろう。
いや、もしかするとそれよりもアメリカで同等のことをやった方が…。日本人へのインパクトはそちらの方が強いかもしれない。人間に潜む悪を白日の下に曝すこの手法の持つ可能性は広大である、と思う。
◆関連リンク
・▶ 町山智浩が映画『アクト・オブ・キリング』を語る - YouTube
・▶ 宇多丸が映画『アクト・オブ・キリング』を語る - YouTube
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