■感想 石井岳龍監督『シャニダールの花』The Flower of Shanidar
映画「シャニダールの花」公式サイト
『シャニダールの花 特別版』(Blu-ray)
"脚本: じんのひろあき 石井岳龍 田中智章
撮影: 松本ヨシユキ 美術: 橋本創 衣装: 澤田石和寛
音楽: 勝本道哲 照明: 三重野聖一郎 美術協力: 林田裕至
録音: 三澤武徳
<ストーリー> ごく少数の限られた女性の胸にだけ咲く美しい花“シャニダールの花"。満開の状態で摘んだ花の成分は、画期的な新薬の開発に繋がるとされ、億単位で取引されていた。そんな謎多き花を研究するシャニダール研究所。植物学者の大瀧とセラピストの響子の役目は、提供者である女性たちの健康を管理しつつ、花を育ててきれいに咲かせること。しかし、花を摘み取る際、提供者が謎の死を遂げる事故が相次ぎ、大瀧は研究所に不信を抱く。一方、危険を感じながらもその花に惹 かれていく響子。いつしか、互いに恋に落ちる2人だったが…。"
観たかった石井監督の最新作をWOWOWで録画観。
冒頭の恐竜の滅亡と花の関係のモノローグと妖しい花のアップ映像に引き込まれて、密度の濃い映画体験が出来た。
冒頭は映像だけでなく音楽も素晴らしく、エレクトリックギターの立体的な音は、まるでディヴィッド・リンチ作品の様な厚みのあるイメージをもたらしている。
音楽の勝本道哲氏は、以下の関連リンクによると、まさに立体音響の研究者の方のようで、通常の映画音楽の枠を超えた、たいへん素晴らしいイメージを構築している。
物語は、スタイリッシュな『ウルトラQ』。
奇想映画ファンには、その幻想的な物語も強くお薦め。特に冒頭語られた恐竜の滅亡から、「シャニダール」の語源となったネアンデルタール人と花の関係、そして描かれるその滅亡のイメージ。史実とフィクションの見事なブレンドが、幻想として作られた新種の花の妖しい魅力と相まって、クライマックスに不思議な佇まいを付与している。
恋愛部分とカタストロフイメージの乖離を批判的に書いている評をネットで観たけれど、僕はこの欠点は、女性の胸に咲く花という映像イメージ優先の設定から生まれた派生的な部分にみえて、それほど気にならなかった。
ネアンデルタールの遺跡から、このようなイマジネーションを形作ったじんのひろあき氏と石井岳龍監督の手腕に拍手。
◆関連リンク
・『シャニダールの花 特別版』(Blu-ray)
・「超臨場感をもたらす立体音響の研究」勝本道哲 NICT NEWS
"勝本 道哲(かつもと みちあき)
ユニバーサルメディア研究センター 超臨場感基盤グループ 主任研究員 大学院修了後、1996年通信総合研究所(現NICT)に入所。次世代プラットフォーム実現に向け、インターネットプロトコルの高度化、次世代アプリケーションに関する研究の後、現在は空間再生型立体情報提示システムの研究開発に従事。博士(工学)"
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