■感想 バルテュス展@京都市美術館
バルテュス展、行ってきました。
少年時代の絵から晩年の作品まで一望。京都市美術館に現れたバルテュスのアトリエと絵を眺めていくうちに、ヨーロッパの前世紀の世界が浸透してくる…。
平日の疲れから、混み合った会場のソファに座ってウトウトして眼を瞑ると、会場のきしむ床板の観客の足音が、バルテュスのテレーズや地中海の猫の気配に…w。夢を観たわけではないけれど、そんな夢想に誘われるような雰囲気のある美術展でした。
作品感想。
まず冒頭のE.ブロンテ『嵐が丘』のデッサンが特に印象的だった。
鉛筆とインクによるバルテュス25歳の線画作品。のちの作品の習作的な見方が会場で説明されていたが、独特の幻想的なタッチに痺れる。油絵作品で不思議な人の形が時々あるけれど、その原点。
この『嵐が丘』の線画、何と驚く程、諸星大二郎に似ている…と言ったら怒られるだろうか…。(逆にバルテュスの絵を諸星が模倣かw)。そしてそこに出てくる奇妙なヒトの形が後の油絵作品の、特に人の顔に遺伝している…。
「バルテュス 諸星大二郎」でググると似た様な感想を持った人が他にもいるみたい(^^;)、ズバリ似てる絵はネットから拾えないけど。
左は会場入り口。 右はショップに居た100人のバルテュスw
「20世紀最後の巨匠」に対する感想が、これだけではいけないのでw、他の作品について簡単に次の投稿で書きます(^^;)。
僕が一番良かった作品は『横顔のコレット』。
陽性の色使い、青の夢幻がとても美しい。
その後のフレデリック・ティゾンを描いた『白い部屋着の少女』は同じシャシー時代の作品なのに何故あんなに暗いんだろう…。今回フレデリックの絵が一番観たかったが、少し残念だった…。
『夢見るテレーズ』
華奢な少女の腕の立体感(絵の具の厚みにもグッとくるw)。
『ジャックリーヌ・マティスの肖像』
凛とした立ち姿と青の色、日本の良質なアニメの最良の少女の立ち姿に並ぶ…(これも怒られそうw)。
『地中海の猫』
この陽性の幻想も好きです。ボートの少女があのバタイユの娘とは!
『金魚』
香港の、まさに中華風の幻想。濃い色が映えます。
『樹のある大きな風景(シャシーの農家の中庭)』
油彩の絵の具の立体感が尋常でない凝り方。これは実物でしか体感できない。僕は造形作品を観る様に絵を右や左や上や下から凝視するのだけれどw、こうした作品は3D映像で記録すべきではないかと思いますw。
◆関連リンク
・『ユリイカ 2014年4月号 特集=バルテュス 20世紀最後の画家』
・『美術手帖 2014年 05月号』
・当Blog記事
■感想 源孝志 脚本・監督「バルテュスと彼女たちの関係」 @NHK BSプレミアム
※今週も更新記事は一本です。京都旅行で土日の体力使い切りました。また来週!
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コメント
ミのつく職人さん、おはようございます。
Vladimir Nabokov: Lolita (Penguin Classics)
お、これですね。日曜美術館は観ましたが、記憶の中で「夢見るテレーズ」そのものが『ロリータ』に使われたと勝手に混同してたので、これは面白い。
バルテュス、なかなか芽が出ず、世に出るのに焦ってたようですね。で、わざとセンセーショナルに。当時は芸術を逸脱したところまで行ってたでしょうね。で、そんな絵を描いたことによりロリコンに火が付き、その後、少女との生活を繰り返す…、元々の性分だったのか、絵によるフィクションの加速か、どちらだったかは今となっては不明ですが、そこのところを節子夫人に聞いてみたいものです。
投稿: BP(ミのつく職人さん) | 2014.09.13 08:09
バルテュスはNHK日曜美術館で見ました。美術オタクを自称するワタシですがどうにも好きになれません。白い下着を見せちゃだめでしょう、不穏な感じがするのは作者による演出であることは判っていてもそう思います。
番組ではナブコフ「ロリータ」の単行本に表紙にこの絵をモチーフにしたものがあることが紹介されてました。調べてみるとpenguin classicsにありました。ナブコフとバルテュスに共通する不穏さをわたしと同じように感じたのでしょう。
そのナブコフ本では原作と違って少女は正面を向いています。原画のように横を向いていると著者が少女を操っているような印象を、正面を向いていると少女が挑発している感じを受けます。ナブコフの本は未読ですが読み手のロリータ観が問われているような気がします。田山花袋「布団」のように冴えないおっさんが若い女性に翻弄されてよしとするか、イマドキのナマなエロの対象となるのか。
社会性を失っていない独身中年のおっさんとしては近年のあずまひでお作品に見られるように距離を置いて愛でるという立場をとりたいと思います。
投稿: ミのつく職人 | 2014.09.10 23:48
はじめまして。
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投稿: 読書ログ | 2014.09.10 12:23