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2014年11月

2014.11.26

■感想 ラース・フォン・トリアー監督『ニンフォマニアック Vol.2』

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 ラース・フォン・トリアー監督『ニンフォマニアック Vol.2』、名古屋伏見のミリオン座で観てきた。

 真に鬼畜な暗黒映画でした。
 Vol.1がコメディーだったので安心したのが間違いw。このvol.2は、トリアー作の中でも後味の悪さは随一。ここまで救いのない暗黒は初めてでは。

 ラスト、観ながら幾つかの終わり方が想定してたのだけど、その中の最悪を選んでる。この監督の心の暗黒は底知れず、物語の結構を過剰な負のエネルギーで破壊してまで、無理無理に最悪を選び取ってる。それともそこがトリアーのブラックユーモアなのだろうか。

 ラスト近くで、ステラン・スカルスガルド演ずるセリグマンから、この物語がもし男性が主人公で語られたら、それはさほど衝撃的ではないだろう、というセリフが登場する。
 まさにトリアーがずっと描き続けている女性迫害(へのアンチテーゼ)の映画視点。
 僕はこの映画の主人公が男だったら、さらに過酷な映画になっていたような気がして、この視点にはうなづくことはできない。

 ここまでの迫害と女性の怨嗟の声を描いた上で、今後、トリアーはどこへ行くのだろうか。
 次回作は、『ドッグヴィル』(2003年)、『マンダレイ』(2005年)により構成される「機会の土地アメリカ三部作」の最終作となるはずの『ワシントン』であろうか。次の過激がどこへ向かうのか、刮目して待ちたい。

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2014.11.24

■感想 叶 精二『『アナと雪の女王』の光と影』(そして「宮崎駿とジョン・ラセター」)

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叶 精二『『アナと雪の女王』の光と影』
 七つ森書館 公式HP

" 世界アニメーション映画史上最高の興行収入を記録したディズニー作品『アナと雪の女王』。 映像研究家の著者が、ここまで支持された根拠とスタッフワークを多角的に検証する。
 第1部は、『アナと雪の女王』を技術・歴史・スタッフワーク・テーマ・背景・興行などの多角的な視点で分析。第2部は、ディズニーとピクサーの代表を兼務するジョン・ラセターとスタジオジブリの宮崎駿の出会いと交流が、日米のアニメーションに何をもたらしたかをラセター側を中心に展開する。2部構成でディズニー・ピクサー・スタジオジブリの諸作品が大衆的支持を集めた根拠の立体的解析を試みる。

第1部 『アナと雪の女王』の光と影
  序  世界記録を塗り替えたエポックメーキング的作品
 第1章 ディズニー・ミュージカルの新時代を告げる快作
 第2章 ヒロインのデザインと作画の斬新さを検証する
 第3章 ディズニー・プリンセス復活までの道程
 第4章 『雪の女王』映画化計画の推移
 第5章 アンデルセンから遠く離れて
 第6章 「ディズニー化」現象
 第7章 ソ連版『雪の女王』と宮崎駿をめぐる因縁
 第8章 『メリダとおそろしの森』との比較
 第9章 定型を崩した「考えさせない」急展開
 第10章 魔法と権力の行方
 第11章 心象で綴られた主観的な世界
 第12章 国境を越える日本型主観主義

第2部 宮崎駿とジョン・ラセター その友情と功績
  序  日本一の宮崎駿、世界一のジョン・ラセター
 第1章 米アカデミー賞・長編アニメーション賞の統計分析
 第2章 日本アカデミー賞・アニメーション映画賞の統計分析
 第3章 宮崎駿の功績
 第4章 ジョン・ラセターの功績
 第5章 ピクサーとディズニーの展望
 第6章 二人の時代"

■全体
 うちに家族が買ったディズニーの日めくりがある。これは毎日一枚づつの映画作品の映像、原画スチルと作品エピソードを掲載した日めくりで、今年一年、日々ディズニー作品について楽しんできた。
 そしてこの本の読後、日めくりを見る視点が少し変わった。
 一枚一枚の絵を見る時(特にCGアニメ)、その絵から作品の奥行きを今までより広く感じられるような気がしたのだ。

 僕は当ブログで触れている様にアニメ作品も好きで、特にスタッフと技術に興味を持って観ているのだけれど、それはほとんど日本作品についてで、ディズニー及びアメリカのCG作品については、そのスタッフ名も数名しか思い浮かばない様な薄いファンであるw(ピクサーのCGは『トイ・ストーリー』以来、大ファンであるが、なぜかほとんどアニメーター他、スタッフの名前を気にしていなかった)。

 それが本書によって、その作品を作ったスタッフたちの過去と現在、そして日本(宮崎駿ほかのアニメーター)との関係を知ることができて、奥行きを持った実存として頭の中にイメージできるようになったのである。
 それにより、冒頭に書いたように、ディズニー作品の絵に感じるイメージがとても奥行きの深いものとして観ることができるようになったのだと思う。

 そういう意味で最良のディズニー紹介本でもある。作っている人たちの熱い息遣いが伝わってくる。この本は、ディズニーが自社のアピールのために協賛しても良いくらいの一冊ではないか。「光と影」というタイトル通り『アナと雪の女王』の批判的な言説も含まれているが、それ以上にクリエイティブな評価として、最良のディズニー紹介本になっていると思う。そして広く映画ファンに読まれるべき本である。

 よくよく本の検索とかしてみてもピクサーとかディズニーの最近作に関する映画のノンフィクション本は日本人の手になるものは皆無。

 これも日本がいかに島国か、ということの証左なのかもしれない。
 特に日本のアニメ評論で抜け落ちているピクサーと新生ディズニー(ネオクラシックとラセター総指揮による近年のCG作品)について、その来歴と日本アニメとの関係について分析した貴重な一冊となっている。
 ともすれば2DセルアニメとCGによるセルルックアニメーションという限定的なアニメ作品で、閉じてその世界を捉えている日本のアニメファン(自分も含めて)にとって、明らかに世界の潮流となっているピクサーと新生ディズニーによるCGアニメーションの起源と現在に触れることができるため、新たなパースペクティブを獲得するための一助となる一冊。

 特に重要な視座は、ピクサーと新生ディズニーに日本の(そしてとりわけ宮崎駿の)アニメ作品の血が強く流れている、というものである。

■第1部 『アナと雪の女王』の光と影
 ここで著者の叶精二氏によって分析される『アナと雪の女王』。
 特に僕が興味深く読んだのは以下のような記述である。

 『塔の上のラプンツェル』でベテラン2Dアニメーターであるグレン・キーンが作画指導したことで、ついに人間を真正面から描くことを可能にした3D-CG作品が登場、その成果の次にスーパーバイジングアニメーター マーク・ヘンによる『アナと雪の女王』という一般観客に広く認められる作品が完成する。
 そしてその作品の、(世界よりもむしろそれ以上の)日本での大ヒットの要因の一つとして挙げられる、日本的キャラクター造形である「卵型輪郭に巨眼、極小の鼻、歯の見えない口」の取り込みと画面の「主観的な世界観の設計」(日本アニメの特徴の吸収)の指摘。
 叶氏のこの指摘は興味深い。CG作品の人間描写として、今までの日本アニメの文法がより人に(日本人に?)受け入れられやすい表現を実現しているというのは、今後のアニメ映像の将来について重要な指摘であろう。

 CGが「不気味の谷」を超える時、従来のアニメ手法(グレン・キーンの2D技巧であったり、日本アニメのキャラクター描写だったり)が効果的に 働く。それは人の人間認識のDNAが成せる技なのか、はたまた文化的な慣れの問題なのかはわからないが、映像文化の進化と、ロボットの「不気味の谷」超え のための重要な示唆があるように思う。

"『アナと雪の女王』は<思い入れ>の比重を増大させながらも、<思いやり>の要素も残すことで、アニメーション慣れした日本の観客にも新鮮に映ったのではないか。"(P85)

 続いて<思い入れ>と<思いやり>という言葉で、さらに深い精神的な部分での日本アニメとの関係が解説されている。

"アンデルセンを起点として、アタマーノフ版『雪の女王』のモチーフが宮崎作品となり、それらがディズニースタッフに影響を及ぼし、『アナと雪の女王』に結実したと言えるのかもしれない"(P84)

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 そして描かれた作品の文脈。アンデルセンの物語の分析に始まり、それを映画化したソ連のアニメ『雪の女王』、その宮崎駿への影響。
 アンデルセンの原作の複雑に織り込まれた物語の魅力と、冒頭のスピーディな展開に代表される『アナと雪の女王』の"終始「考えさせない」加速度的かつ他動的な急展開"の対比の指摘(他作品と比べた時間分析が興味深い)。
 宮崎駿経由でラセター他へその影響が間接的に流れ込んでいるという指摘。
 このくだりで、はるか昔に観たきりの『雪の女王』を観たくなるのは僕だけではないはず。


レフ・アタマーノフ監督『雪の女王 ≪新訳版≫ 』

 『アナと雪の女王』にもうかがえる無菌化されたディズニーの世界。
 これについては、赤貧でアメリカの自然に徹底的に苦しんだウォルトの幼少期に起因するという説(能登路雅子『ディズニーランドという聖地』(1990))が紹介されているが、ディズニーアニメが今ひとつ大人の観客に魅力を発揮できていない理由としてこの無菌な感覚があるため、本書からディズニーへの何らかのフィードバックがあればいいなぁ、と思ったり。
 良書なので、アメリカでの翻訳出版というのも可能性があれば面白いと思うのだけれど...。

 その他、CGアニメ技術の丁寧な分析。 日本2Dアニメでの「考えさせる」客観的傑作への期待等、映像作品への言及がとても刺激的で興味が尽きない。

"光を拝み讃えるのであれば、影も存分に讃えられて然るべきだと考える"

 第一部の最後の一文。表紙カバー内側に潜む『SNOW QUEEN』のアメリカ版ポスターがそれをひっそりと主張していて装丁としても素晴らしい構成である。

■第2部 宮崎駿とジョン・ラセター その友情と功績

"世界アニメーション史上、宮崎駿のような演出法で11本もの長編を単独で監督した人物は存在しない"

 宮崎駿が世界的にも稀有なアニメ監督であることの表現である。
 長編アニメーションが過酷な労働と莫大な資金を要するため、ポール・グリモーが『王と鳥』1本のみ、フライシャースタジオが『ガリバー旅行記』『バッタ君町に行く』の2本だけ。ディズニーで史上最も多く監督したのはウォルフガング・ライザーマンの8本(単独は4本))という指摘は不明にして知らなかったため、対比して描かれると宮崎駿という才能の凄さが響いてくる。

 『ホルスの大冒険』から『アルプスの少女ハイジ』『未来少年コナン』の頃からの、その超人的な作品への宮崎の特異な関与の仕方が詳細に描かれる。

 そしてそんな制作の現場から生み出された宮崎作品によって、ラセターが受けた影響と、逆にラセター作品から宮崎が受けた影響。
 作品を思い出しながら読む、ふたりのクリエータの共鳴の記述がとてもエキサイティング。

 またそのふたりの仕事の仕方の違いも興味深い。
 ピクサーの「ブレーン・トラスト」と呼ばれる制作支援集団の存在(P200)。そしてラセターの現在、ビクサーと二つのディズニースタジオをコントロールする、前人未到の二十四時間指揮体制(P218)も凄い。

 宮崎駿とラセターという、現在のアニメ映画を牽引してきたふたりの関係と、カルアーツ含むアメリカのCG映像作家たちの最新のアニメ映画での胎動に触れられることは、映画ファンにとって、とてもエキサイティングな読書体験である。

◆関連リンク
「宮崎駿とジョン・ラセター」連載裏話・叶精二氏 Hayao MIYAZAKI and John Lasseter - Togetterまとめ
 さらに叶さんが書かれた裏話がこちらで読めます。
『アナと雪の女王』の光と影★裏話・叶精二氏(「宮崎駿とジョン・ラセター」収録) - Togetterまとめ
ジョン・カース監督「Paperman」 & カルアーツ ラセターとアニメ作家たち - Togetterまとめ
『アナと雪の女王』の光と影(1)――ディズニー・ミュージカルの新時代を告げる快作 - WEBRONZA 本書の元になった連載記事。
【宮崎駿とジョン・ラセター(1)】 日本一のスタジオジブリ、世界一のピクサー - WEBRONZA 同連載記事。
叶 精二『『アナと雪の女王』の光と影』
・マーク・ヘン
 Mark Henn - Wikipedia

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2014.11.19

■情報 高野文子『ドミトリーともきんす』 と ラジオインタビュー

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ドミトリーともきんす|全集・その他|中央公論新社  公式Blog

"不思議な学生寮「ともきんす」に暮らす"科学する人たち"朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹......彼らが遺した文章を、一組の母娘が読み解いていく物語。待望のコミックス最新刊!
初版発行日2014/9/25 判型B5判vページ数128ページ"

 高野文子、12年ぶりの新作。
 僕は熱心な高野文子ファンではないのだけれど、『絶対安全剃刀』(1982年)『おともだち』(1983年)『ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事』(1987年)という初期の衝撃はダイレクトに受けていて、この実態がベールにつつまれた天才漫画家のことはずっと気になっていた。

 で、この新刊のことを実は知らなかったのだけれどw、何と最近定番でPodcastを聴いているTBS RADIO 「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」でその高野文子のインタビューが流れてきて、初期の3作を思い出しつつ、感慨深く聴いたのです。そのインタビューの、放送されなかった分も含む64分完全版が以下。

Podcast 高野文子インタビュー MP3 64分(タマフル) 直接リンク
※公開は一ヶ月後なので、早めのダウンロードをお薦めします。

TBS RADIO 漫画家・高野文子さんスペシャルインタビュー (ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル)

"11月8日のサタデーナイトラボ『秋の推薦図書特集』の中で一部をお送りした、 漫画家・高野文子さんインタビューのほぼ完全版。 今年の9月にマンガとしては12年ぶりの新作『ドミトリーともきんす』を発売した高野文子さん。 30年以上のキャリアの中で初めてのラジオ出演となった貴重なインタビューの模様をを余すところなくお送りします! インタビュアーは、漫画家、エッセイストのしまおまほさんと番組構成作家の古川耕です。"

 まさに貴重な、高野文子の初放送インタビュー(テレビ・ラジオで初とのこと)!
 新作の話題から、執筆方法、お薦めの本まで(この週のタマフルは「秋の推薦本特集」)、じっくり言葉を選ぶ高野氏の様子から、彼女の思考が垣間見れる、「間」が多くを物語るインタビューだった。
 ファンは心して聴きましょう(^^;)。

 僕が特に興味深かったのは、『ドミトリーともきんす』(まだ恥かしながら未読)の、主人公たちの絵を中心に語られた、線を減らしていくとキャラクターという意味を持った存在がただの線に変わっていく。その意味を持つ/持たないの瞬間についての高野氏が向ける熱い視点。
 これは彼女の推薦本として語られた『美の幾何学―天のたくらみ、人のたくみ』という数学の本について語る中での話題なのだけれど、高野作品の秘密の一端に触れたような気になったのは僕だけでしょうか。

 そしてその後、高野氏が語ったのが、3D映画に強い興味を持っているという一節。
 残念ながら、インタビュアーの古川耕氏としまおまほ氏はここにフォローを入れない、線が意味を持つ瞬間とつながる興味深い話が聴けたのに残念でならない(以前に番組でしまお氏は「今までの(2D)映画だって、観客には立体的に観えていたからね」と3D映画に全く興味を持っていない旨、発言していたことがあるので致し方ないのかも)。

 僕の想像はこうだ。
 高野文子は線画が意味を持つ瞬間の淡いに興味を持つように、2Dの平面が二つ交互に眼前に映し出される3D映画を観るに当たって、平面の映像が活き活きと立体感を持つ瞬間に惹かれているのではないか。
 いずれも画像が人間の脳に、実在感を生み出す瞬間。
 高野漫画の意味の淡いをたゆたうような、その作風の秘密の一端を、さらに深掘りできそうな話題だっただけに、そこから話が広がっていかなかったのは残念で仕方がない。

 Podcastの最後では、再度の番組登場もあり得るような語りになっていた。
 是非とも次回、こうした点も追求してほしいものです。

 さあ、『ドミトリーともきんす』、ポチらなきゃ。あれ、番組の影響か、現在、Amazonでは入庫待ちになってます。残念!

◆関連リンク
高野文子ラジオ出演、タマフルでインタビュー - コミックナタリー
 ニュース記事。
・インタビュアーのタマフル 放送作家 古川耕氏の編集(放送)後記
高野 文子『ドミトリーともきんす』
高野文子 - Wikipedia
 初期の作品は、看護婦を務めながら描かれたのですね。
『ユリイカ2002年7月号 特集=高野文子』

"  小説家の川上弘美や編集者の竹熊健太郎など、豪華な執筆陣による高野文子作品批評や、詳細な全著作解題など、魅力的なコンテンツが並ぶ。
  また、ほとんどメディアに露出しない漫画家であった高野文子が、2人の同業者と語らう対談はファンにとって待望の企画だろう。大友克洋との対談での『黄色い本』に ついての討議では、創作における高野文子の視点や姿勢が明らかとなってきわめて興味深いし、魚難キリコとの女性漫画家同士の気さくな対談は楽しい。"

 この本も知らなかった! 大友克洋との対談とか、無茶面白そうです!
伏見康治, 安野 光雅, 中村 義作『美の幾何学―天のたくらみ、人のたくみ』

"もっと幾何学的精神を!
日本の寄せ木文様や紋からアラベスクまで、シンメトリーの美と数理を論じながら創造の種をふんだんに蒔く圧巻 の文様論をはじめ、200点余りの絵や図版をも駆使して、数学的に考えることの愉しみを問わず語りに示す名著、待望の復刊。"

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2014.11.17

■感想 舞城王太郎 脚本・監督、鶴巻和哉 アニメーション監督『龍の歯医者』@アニメ(ーター)見本市

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龍の歯医者(公式HP)

" 少女は、龍の歯医者になるためにそこにやってきた。他の新人志願者とともに集められたのだが、案内役の先輩からは何の説明もない。困惑したまま引き連れられて、暗く怪しい新人専用の通路を進んでいく他ない。今の自分の居場所も判らない。これから何をすべきなのかも知らないまま、少女は龍の秘密へと近づいていくが、そのことにも気付いていない。冒険は既に始まっているのに。

原案・脚本 舞城王太郎
キャラクターデザイン 小坂泰之
アニメーションキャラクターデザイン 亀田祥倫
画コンテ 舞城王太郎 鶴巻和哉
作画監督 亀田祥倫
アニメーション監督 鶴巻和哉
監督 舞城王太郎"

 空を飛ぶ朽ちた戦艦の壁面を行く人々。龍の歯の中の世界。不可思議な世界の交錯により、その幻想の奥深い現実が広大な世界を想像させる映像になっている。

 何とあの奇想w推理作家 舞城王太郎が脚本・絵コンテ・監督を担当したアニメーション短篇が登場!
 エネルギッシュで何だかわからないこの奇想イメージ、舞城小説を鶴巻和哉のアニメーションでさらに濃厚にしたタッチで実に素晴らしい。

 先に書いた世界の広がりとともに、これは長篇版を是非とも作って欲しい。
 この幻想世界の深みは何なのだろう。

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 この11月から始まった庵野秀明のスタジオカラーと川上量生のドワンゴによる「日本アニメ(ーター)見本市」、第二作も公開されていますが、どちらもハイクォリティ。
 毎週公開ということで、僕はてっきり1-2分の線画か何かの手頃な小品、と思っていたのですが、素晴らしく本格的。

 このペース、このレベルで毎週更新は凄い。
 毎回、違うスタッフ編成で新作を観られるという贅沢。かつて「まんが日本昔話」等でアニメータ主体で各話作られて毎週放映されていたイメージに近いのかもしれないが、それにしても毎週主要スタッフ編成が異なる、オリジナル作品を登場させるというのはかつてなかった試みで凄い。

 それにしてもこの「龍の歯医者」のクオリティがあれば、この延長上(?)で酉島伝法『皆勤の徒』の映像化も可能だったりして。もちろん監督は酉島伝法さんでお願いしたいものですw。

◆関連リンク
『龍の歯医者』はこうしてつくられた! 濃厚すぎるアニメ(ーター)見本市の裏側.

"今回参加させていただいた『龍の歯医者』は是非ともアニメにしたかった物語です。その気持ちの詳細をここで語るのは、そもそも皆さんの前に出てこない理由を台無しにするのでやめますが、ご覧になっていただければご理解いただけるんじゃないかと思います。"

 各作品について、月曜日には毎週解説番組「日本アニメ(ーター)見本市-同トレス-「HILL CLIMB GIRL」」がニコニコ動画で放映される。
 平日で仕事中、生で観ることができない人は、タイムシフト予約がこちらから!

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2014.11.12

■感想 レオス・カラックス監督『汚れた血 : Mauvais Sang』

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 初見となるレオス・カラックス監督作を最近続けて観ているのだけれど、『ホーリー・モーターズ』『ボーイ・ミーツ・ガール』と来て、今日はいよいよ『汚れた血』。素晴らしいショットに溢れた映画だった。

 これだけいろんなな作品に引用され、既に語り尽くされているだろう映画について、今頃観て何か書くのも今更なのだけれど、印象深い映画なので、簡単に僕の感想です。

 素晴らしいショットと書いたのは、多くの人がきっと挙げているだろうラストのジュリエット・ビノシュの駆けるシーン、デイヴィッド・ボウイ『Modern Love』をバックに走るドニ・ラヴァン、この二つが白眉だろう。
 特に前者、ラストのぶれた走るビノシュの映像は、映画全体の印象を強烈に我々観客に刻印していく、映像の力強さに満ちている。


Mauvais Sang (Leos Carax, 1986) - Modern Love - YouTube

 特にアレックスの表情等が、今観るとかなり痛い部分もあるんだけど(一番近いイメージは『アオイホノオ』のホノオくんの演技と言ってしまったら怒られるだろうかw)。
 その痛みもこの映画そのものであったりするわけで、カラックス監督、才気走ってます。

 にしても、ジュリエット・ビノシュが素敵過ぎ(^^)。
 Wikipediaのフイルモグラフィを確認したら、僕は『GODZILLA』(14)しか観ていないので、これから『汚れた血』の22歳の彼女が50歳となり円熟していく様を、今から順に見て行く楽しみが増えました。

 

ただ、さっきまで若々しい表情で画面を輝かせていたビノシュが、Wikiで見ると既に50歳ということで、まるでタイムスリップした様なショックを味わっていたり....w。

◆当Blog関連記事
 ■感想 レオス・カラックス監督『ホーリー・モーターズ:Holymotors』

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2014.11.10

■情報 エヴァンゲリオン・ザ・リアル 4D @ USJ

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エヴァンゲリオン・ザ・リアル 4D @ USJ ニュース(公式HP)

" シアター型アトラクション「ユニバーサル・スタジオ・シネマ4-D」に、パークでしか見られない完全オリジナルストーリーを期間限定で搭載、エヴァンゲリオン史上初の4Dアトラクションが実現します。
 使徒襲来に遭遇したゲストは、これまでの作品では見たことのない斬新なアングルから、ハリウッド技術を駆使した3D映像で目の前に迫るエヴァと使徒の戦闘を目撃。さらに爆風や閃光、水しぶき、座席を揺るがす振動など4D特殊演出がゲストの五感を刺激し、戦闘の中心にいる究極の臨場感で、ゲストはエヴァの世界に巻き込まれます。"

 エヴァの初の3D映像! 完全オリジナルストーリー、15.1/23(金)から5/10(日) 限定公開。
 元々『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』は、巨大人造人間ヱヴァンゲリヲンが電脳空間上の3Dデータとして制作されているわけで、その空間に3Dカメラを持ち込めば、立体映画を撮ることは容易w。いよいよ電脳データ上の存在が、我々の現実に立体映像として出現してくるわけである。

 しかも4D !
 つまり映像以外の座席の動き、水しぶき等がリアリティを盛り上げる。
 まずは関連リンクに、常設されている4DXと呼ばれる同様のアトラクションについて掲載したので、ここからユニバーサル・スタジオ・ジャパンで繰り広げられるエヴァ世界を想像して待ってみたい。公式HPの記載から、たぶん観客の視点は限りなくエヴァと使徒の戦いの現場に近づくはずで、その巨大感、存在感を疑似体験できるものになっていることを期待したい。
 『シュレック』と『ターミネータ』3D(4D?)に興奮した記憶はあるが、しばらく行っていないUFJに来年は行かないとな〜(^^)。

進撃の巨人・ザ・リアル|USJ

" 15m級の『エレン巨人』と14m級の『女型の巨人』がゲストの目の前に立ちはだかり、ゲストは調査兵団と同じ視点から、自分の約10倍近くもあり、今にも動き出すかのような迫力の二体の巨人の激闘を肉眼で目の当たりにし、想像を凌駕するほどの衝撃を体験できます。このほかにも、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの誇る映画技術を駆使した、いまだかつてないウォークスルー・アトラクションも登場予定。今後の発表をご期待ください。

 15m級等身大「エレン巨人」と14m級等身大「女型の巨人」!
 表面が肉で出来ていたら凄いでしょうねww。

◆関連リンク
4DX映画館とは?【4DX映画館.com】

"4DXは、いわゆる「体感(4D)」するためのシステムのことです。 今までは3Dで立体を演出していましたが、4Dはその1つ先の「体感する」という演出を実現します。 4DXシステムで上映される作品は五感を刺激し、観客はまるで映画に入り込んでいるような経験ができます。 4Dの映画は、映画というよりは、むしろディズニーランドやUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のようなアトラクションをイメージして頂く方が適切です。 4DX映画館の具体的な演出としては、以下のものがあります。 ①シートが前後、上下左右に可動。可動域も広く、背中とお尻が振動する。 ②座席の背中、前列シートの背面、劇場の壁面に複数のファンがあり送風される。 ③送風以外にも、ミスト(水)、匂い、フラッシュ、シャボン玉など、様々な演出を体感できる。 もちろん、4Dに加え、3Dも合わせて鑑賞することもできます。"

・当Blog関連記事
 ■サイモン・スミス監督 『シュレック 4-D アドベンチャー』
 ■『セサミストリート 4-D ムービーマジック』
 もともとUFJは、4Dという言い方をしてたのですね。

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2014.11.05

■情報 『爆発した切符 : ザ・アート・オブ・ウィリアム・S・バロウズ 展』"The Tickets That Exploded: The Art of William S. Burroughs"


▶ Exhibition View of 'The Art of William S. Burroughs: The Tickets That Exploded' - YouTube
William S Burroughs 100 - Burroughs 100 (生誕100年 公式HP)

"Video montage of: 'The Tickets That Exploded: The Art of William S. Burroughs' http://www.burroughs100.com/events/bu... Oct 30 - Nov 9, 2014 Curated by Yuri Zupancic Sonnenshein Gallery/Albright Gallery Lake Forest College Illinois, USA"

 ウィリアム・バロウズ生誕100年のイベント、シカゴで彼のアート作品展「爆発した切符 : ザ・アート・オブ・ウィリアム・S・バロウズ」が14.10/30〜11/9まで開催されている。その会場の様子を伝える動画が興味深い!

 会場を浮遊するビデオカメラが写した映像には、バロウズがショットガンで打ち抜いたと思われる板の穴から、絵画作品を眺めるシーンもあり、まさにバロウズな展示会になっている模様。

Burroughs 100 Hits Chicago  - William S Burroughs 100
Google 機械翻訳

"Several events are celebrating the WSB Centenary in the WIndy City, including a 'Burroughs Birthday Bash' at the Chicago Humanities Festival, featuring Eileen Myles, Tony Trujillio, Jon Langford, and others. On Thurs, Oct 30, Anne Waldman and Ambrose Bye delivered a riveting poetry and music performance in a chapel building on campus, then joined event organizer Davis Schneiderman and curator Yuri Zupancic in opening a new exhibition of Burroughs' paintings, sculptures, and film has opened at Durand Art Institute of Lake Forest College.  The show runs from Oct 30 - Nov 9, 2014 and occupies two galleries."

The Tickets That Exploded: The Art of William S. Burroughs (Burroughs@100, 2) | Access Chicago | Lake Forest College.

"As part of the William S. Burroughs centennial celebration, Lake Forest College hosts a bold collection of Burroughs’ art. The show closes November 9."

 ということで、動画以外の詳細はネットでなかなか捕まらないため、記事はここまで。
 あとは『爆発した切符』関連ネタのリンク集。

◆関連リンク
ウィリアム・S・バロウズ,『爆発した切符』(Amazon)
 あれ、まだサンリオ版しかないのですね。どっかから復刊されていると思ってました。
Ticket that Exploded (山形浩生訳)
 というわけで、山形氏の翻訳がネットに上がっています。
The Ticket That Exploded: an Ongoing Opera NYC Premiere on Vimeo.
 October 29, 2011年にニューヨークブルックリンで開催されたオペラ『爆発した切符』の動画(15分)。オーケストラと映像とボーカルの共演で、前衛的な世界が音楽化されています。

爆発した切符という日本のバンドがあるのですね。たぶんバロウズ作からの命名ではないかと。
 爆発した切符  10/6 難波屋  詩人は言葉を用いてはならない(賢いユリシーズcover)YouTubeにライブの動画がいくつかアップされているが、音程が少し...。

William S Burroughs - Animals in the Wall - Guerrilla Zoo
 ギャラリーズー「壁の中の動物」展。
 Category: Animals In The Wall - William S Burroughs 100
 そのフォトギャラリー。

William S. Burroughs - Animals in the Wall from Tom Cottey on Vimeo
 そしてウィリアム・バロウズ「壁の中の動物」展@ギャラリー・ズー PV動画。
先日紹介したシカゴの展示よりクールな雰囲気。

・当Blog関連記事
 ■動画と情報 ウィリアム・バロウズ生誕100年祭「インターゾーン」 Interzone - Celebrating 100 Years of William S Burroughs@Guerrilla Zoo

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2014.11.03

■予告篇 ジャン=リュック・ゴダール 初3D映画『さらば、言語 3D』(本当の邦題は『さらば、愛の言葉よ』) Jean Luc Godard "Adieu au Langage | Goodbye to Language 3D"


▶ Jean Luc Godard | Adieu au Langage | Goodbye to Language 3D trailer - YouTube.

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 ジャン=リュック・ゴダールの初3D映画『Goodbye to Language 3D : さらば、言語 3D』予告篇がカッコイイ(^^;)!

 予告編映像、いきなりの裸体には驚くけれど、その後に続く自然描写、ハイキーに飛ばした花の映像とか、鮮烈な色が立体で迫ってくるとしたら、、、ワクワクです。

 原題がラディカルな感じで素晴らしいのに、これに『さらば、愛の言葉よ』なんて陳腐な邦題を付けたのはいただけません(映画観ていないので、言い切るのは早計ですが、、、)。

ジャン=リュック・ゴダール初の3D長編作「さらば、愛の言葉よ」1月公開決定! : 映画ニュース - 映画.com.

"ジャン=リュック・ゴダール監督初の3D長編作で、第67回カンヌ映画祭審査員特別賞を受賞した最新作「Adieu au Langage 3D(英題:Goodbye to Language 3D)」が邦題「さらば、愛の言葉よ」として、2015年1月の公開が決定。
目くるめく映像と音の世界が展開され、ゴダールならではの革新的な “映画芸術”として3D技術を用いている。"

 待ち遠しいが日本公開は1月。まずはネットで情報を拾って、脳内立体視を楽しむしかありませんw。

佐々木敦さん Twitter

"ジャン=リュック・ゴダール監督『さらば、愛の言葉よ』内覧試写。無論、一度観ただけで何事か語れるようなものではない。まずとにかく3Dが凄い。他の人は絶対にやらない、絶対やってはならない使い方をしていて、マジで目がおかしくなるかと思った。さすがJLG、映画のテクノイズマテリアリスト。"

 日本でも既に試写は開催されているようです。
 佐々木敦さんの言葉から、ゴダールによる超越した3Dが期待されます。

Godard, ce vieil inventeur | Fovéa
 "ゴダール、古い発明者"(Google 翻訳)

Godard1

 この記事の中で3Dカメラを構えるゴダールの姿と(コンパクトデジカメタイプ? EVO 3Dに似ているがちょっと違う)、撮影風景のスナップが紹介されている。
 そしてGo Pro 3Dを使用したという記述がありますね。
 ゴダールは『軽蔑』で使用したショットリバースという撮影技法の3D版を発明した、というようなことが書かれている。『軽蔑』を観ていないので何とも想像できませんが、3Dは2Dの映像を超えたリアリティの獲得がある中で、ゴダールの感性がどうそれを使いこなし、世界で誰にも観られたことのない映像が撮られていることを期待してしまいます。

Observations on film art : Directors: Godard.

"There are also some 3D shots made specifically for the film, most consisting of handheld shots that shift around a park, a medical complex, and, of course, a media studio. The very title of Godard’s film, punning on 3D as a technical disaster, as well as a throw of the dice (dés), suggests his ambivalence toward the technology. “The digital,” his voice declares, “will be a dictatorship,” but perhaps it will never abolish chance. As usual, Godard has fun with simple equipment. He frankly shows us his camera rig, two Canon DSLRs lashed together side by side, one upside down. By shooting them in a mirror and shifting focus, he manages to make each lens pop and recede disconcertingly, as if Escher had gone 3D. This shot alone should inspire DIY filmmakers everywhere. So too should the one-slate credits. Whereas Greenaway’s segment lists scores of names in its credit roll, Godard’s lists only four, alphabetically. I can’t wait for the feature, Farewell to Language. (Trailer here.) Brian Clark has an informative review of The Three Disasters at twitchfilm."

 こちらにはキャノンのデジタル一眼を上下逆さまにして3D用リグに取り付けた写真が。

Goodbye to Language 3D - Rotten Tomatoes
 映画全体としては、ロッテン・トマトで89%と高評価。

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