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2015.03.11

■感想 ノンフィクションW さらば愛する日本よ~密着・押井守の世界挑戦800日~(『GARM WARS The Last Druid : ガルム・ウォーズ ザ・ラスト・ドルイド』メイキング)

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ノンフィクションW さらば愛する日本よ~密着・押井守の世界挑戦800日~|ドキュメンタリー/教養|WOWOWオンライン 公式HP

" 『GARM WARS The Last Druid』が完成するまでの道のりは決して平たんではなかった。1997年に一度企画が凍結され、再始動できたのは2012年。ハリウッド映画製作等で活用されているカナダ政府による補助金制度を利用した映画製作に取り組むが、想像を超えた制約が大きく、プロジェクトは数々のトラブルに直面する。番組では2012年10月から押井をはじめ、今回初めて海外での実写の映画に挑戦することになり、さまざまな障害に直面するプロダクション・アイジー社長・石川光久らが参加する製作委員会の奮闘にも特別に密着取材。
 なぜ押井があえて海外への進出を図るのか?海外での映画製作に取り組み、日本と異なる製作スタイルとの調整を行ないながら、自分の求める映画を追求する彼の挑戦を追う。"

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「鬼才・押井守の世界」 最新作密着取材ドキュメントと代表作4本、WOWOWが放送 | ニコニコニュース

" 監督は「ここ十数年のデジタル映画を見てきた結論として、実写でやろうと。世界にひとつという役者の顔で。フルCGでは表現できることが足りなくて、本物の役者で実景で撮る中、合成も生きてくる」と撮影意義を語る。
 「ファンタジーの世界観を作るのは過酷で、手を抜 いたらそのようにしか画が撮れない。すべてを満たして成立する世界。その環境を手に入れるためにも、海外でやるしかないと思った。ファンタジーを表すのに、日本語でいいのかとか、役者に合わせた衣装にするのか、衣装に合った役者を選ぶのか?衣装の重要性もこの十数年で学んだ」とも。"

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 WOWOWで放映された押井守監督ドキュメンタリー「ノンフィクションW さらば愛する日本よ~密着・押井守の世界挑戦800日~」(2月28日(土)午後1:00)を観た。押井ファン、垂涎の映像だった。以下、ポイントを記します。
 3/2 25:30〜、3/22 8:00〜の2回再放送がある。3/22の分は、今からでも間に合うので、この記事で興味を持たれた方は、是非WOWOWにご加入を。押井ファンにとっては十分な価値があります(^^)。

・パイロットフィルムのシーンは、現在ネットに上がっているものとは別だった。それにしても映画の検討用に作られた模型は圧巻でした。八王子の展示会で見た巨人ダーナ他、ディテイルがハイビジョンで映し出された(冒頭の引用写真。テレビを撮影したものなのでディテイルが潰れていて申し訳ないです)。

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・『G.R.M. THE RECORD OF GARM WAR(ガルム戦記)』の頃のパイロットフィルム(一部)や設定資料、フィギュア等、門外不出資料がかなり画面に映し出された。興味深かったのは、そのロケハンで押井が訪れたアイルランドで、自らが欧州映画から受けた影響のルーツを、そのアイルランドの岩場の地に起源があることを体感した経験を語るところ。
・ケルト神話については語られていなかったが、欧州の文化が荒野の開拓から始まり、それとケルト神話の深い関係が映画の根底に横たわっているということなのだろう。

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・再始動した『ガルム・ウォーズ ザ・ラスト・ドルイド』のカナダでの制作の舞台裏。カナダ政府の映画振興で、制作費4割が戻って来ることから、カナダのスタジオとの共同制作となった。

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・『ガルム・ウォーズ ザ・ラスト・ドルイド』の押井による絵コンテ制作風景。絵コンテを描くプロダクションI.Gの机の上に、ハヤカワSF文庫青背が7-8冊置かれていたが、残念ながらタイトルは読めず。
・カナダでの撮影。スタジオでの1ヶ月の準備期間、予算とロケーション日数削減のせめぎ合い。日本から参加した7人(できるだけ日本人は少人数にするべき、という『アヴァロン』から学んだ押井の方針)、佐藤敦紀副監督と押井によるカナダ側プロデューサー ケン・ナカムラ氏とのせめぎ合い。
・撮影IN。俳優たちへの世界観説明という、興味深いシーン。予算面で暗礁に乗り上がりそうだったところでの、石川光久プロデューサーによるI.Gからの予算捻出(予定の5倍だったとか)。

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・制作,資金のトラブルからの、カナダ側プロデューサー更迭。スタジオ撮影と、ロケ地の情景。『天使のたまご』にも登場したあの押井戦車の実景撮影。森のシーンの戦闘シーンが美しい情景になっていた。
Img_1262  特に荒野のシーン、カナダの情景をかつて行ったアイルランドの岩場に見立てていることは確実で、その情景でしか描き得ない、ケルトの血脈が映画にどう表現されているか、とても気になる。

・映画の公開をどうするかの、制作委員会の会議シーン。作家性の強い作品になったので公開は限られたファン層に向けたものになるのではないかという意見に対して、押井「最後まで作りきってくれって要請があったから、現実的にどこを落とそうかと枝葉を切っていったら、いつもの私のスタイルの映画だったってだけの話なんだよ! これを怒らずして何を怒るんだって。それでさ、作家性がどうたら言われてさ。やりながら向こうと交渉しながら後手に回らざるを得ない。僕らにとっても石川にとってもこれに関わった人間にとって大きな反省材料」。どうやらカナダ側プロデューサー更迭に絡んでの発言のようであるが、更迭の詳細は描かれていなかったので、残念ながら深くはこのドキュメントだけではよくわからなかった。

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・本来15年前にやりたかったこと、それはその後『アバター』をピークに先にやられた。その丘に登ってみないと見えないことがあるはずで、今回それが見えた。今後、どう影響していくか、という感慨を含めたコメント。
・最後に今回の経験から、いい役者との出会いが今後の実写映画において重要だと感じている、と語る押井。また、次回作はヴァンパイア映画を撮りたいとも。文化的背景から、日本の風景には馴染まないそれをまた海外(どことは語らなかったが当然トランスヴァニアでしょうw)で撮りたいとコメント。

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 『ガルム・ウォーズ ザ・ラスト・ドルイド』の撮影の修羅場と、海外との共同の現場の充実が見事に映像として記録されていて、まさに押井ファン必見でしょう。痛々しかったのは今回の撮影の苦労が、押井監督の頭髪を奪ったという事実。映像での変化がその労苦を克明に語っている。

 それにしても、本篇の公開はいつなのだろうか。
 番組では今回もそれについては、何も語られなかった。
 以下の動画で、公開に苦戦している状況が伝えられている。

2月15日(日)@イオンシネマ高松東 『GARM WARS The Last Druid』 ゲスト/押井守監督、石川光久 ‐ ニコニコ動画:GINZA.

"さぬき映画祭 2015 2月15日(日)@イオンシネマ高松東
『GARM WARS The Last Druid』
ゲスト/押井守監督、石川光久"

 さぬき映画祭上映前トークショー動画。今だ正式公開が決まらない状況。
 石川Pの発言「I.Gでは押井実写には手を出さないはずだった。これだけのつもり」というのが切実に響きますね。是非、世界公開成功して欲しい。

◆関連リンク
押井守最新作『GARM WARS』ワールドプレミア感想まとめ! - Togetterまとめ
 twitterの友人Uotukiさんによる感想のまとめ。
押井 守『GARM WARS 白銀の審問艦』
 『ガルムウォーズ』の小説が、新刊として予定されているとのこと。映画公開より先行する4月刊予定。

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