■感想 押井守監督『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』
▶ 映画『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』予告編 - YouTube
押井守監督『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』、初日に観てきた。
残念ながら岐阜の劇場では映画の日だというのに、20:30からの回はわずか客が7人。しかもoldパトレーバーファンらしき中年男性wばかりで一般客らしき人がいない。この地方劇場、夜の上映だけで判断はできないが、ここからヒットは危ぶまれ、『ガルム・ウォーズ』を観たい押井ファンの不安をかきたてる。
今回 THE NEXT GENERATION 映画版は、予告篇でも明らかだが、アニメ『機動警察パトレイバー 2 the Movie』をまさに実写映画としてなぞって描写していく。
映像と音の迫力はなかなかで、アニメ版(充分迫力があったと思うが)で、東京の街のリアリティを出し切れていなかった部分を実写化で思う存分、実景を舞台に描き出している。
いくつか印象的なシーンはあるが、僕が一番ゾクゾクしたのは熱光学迷彩ヘリが、透明化して横断歩道の下を潜っていくシーン。まさに東京の街に現れた異質。
東京の街、湾岸、そして入り組んだ水路の実在感、そんな我々の日常の情景に現れる異質なヘリ、戦闘機、そしてレイバーのリアル。映像と音響の迫力と、それに対して『機動警察パトレイバー 2 the Movie』をなぞりつつ、その残滓のみの中身で描かれる空虚な「正義の戦争」。
鑑賞後のファーストインプレッションは、「仏作って魂入れず」という感想。
せっかくリアルに実現した戦争ロボットアクションという仏像は、何とその中身は『機動警察パトレイバー 2 the Movie』の各シーンと人物たちの残滓のみ。
いったい今回のテロリストが何をやりたいのか、そして特車2課面々が何を守りたいのか、警察機構の中で後藤田が怒っている対象は何か、いずれもほとんど描かれず、物語は魂を持たず、空虚に空回りする画面と音の豪華な出来。(試写を観た人の感想等をネットで読むと実写映像の迫力でかなりのファンが満足している風に読めるが、、、。)
もともとタイトル「TNG」とキャラクターたちの前作パロディ的な名前は、前作をなぞりますよ、という出がらしにならざる得ないテーマに対して、押井守の制作のモチベーションが上がっていないことの現れだったのかもしれない。
前作は自衛隊のPKO出動に対して明らかに政治的なメッセージが詰まっていたと思う。そして現在、有事法制について、時代はむしろ柘植の考えていた方向に進もうとしているかにみえる。
これに対して、今回、押井守がどういうスタンスを取るのかが、ファンの一つの注目点だったと思うけれど、前半水路のシーンで少し思想らしきが語られるが、ほとんどそこには触れていない、というのが僕の印象。
そうした意味でも「魂」は入っていない。いったい押井守はどうしてしまったんだろう、というのが第一印象である(それとも前作での伊藤和典の功績は随分と大きかったということなのだろうか?)。
押井守は、この空虚こそが現在をあぶり出すと考えているのだろうか、、、。作中でも後藤田に先代の伝統をなぞるしかない、と言わせているので、まさに描きたいのは2代目の空虚だったのかもしれない。
そしてそこからあぶりだされるのは、平和さえ空虚になった現代なのだろうか。シリーズ第7章「大いなる遺産」で描かれた「守るべきもの」が、今回薄いことからもそんな寂しいテーマ設定を伺えないこともないのだが、、、。
以下、ある方に教えていただいたTNGの関係者の方のブログでは、本作(と思われる)は「内輪のゴタゴタ」で「送り手の誠意」がない状態で公開され、「押井監督ファン納得の作品」である「秋には20分長い全長版/長尺版が公開される」という記述がされている。
今回は本作の初回公開時の感想で、「全長版」なるものがあるとすれば、そちらでしかと押井映画として再鑑賞したいと思う。
"(略) 今日はパト劇場、長尺版の試写会でした。(前ブログの映画とは違うよん) 5月に公開されるのは、これより20分短縮したものらしい…… (略)"
"(略) 秋には全長版が公開されると聞きました。 押井監督ファン納得の作品だと思います。 ようやく映画になったなと……。 (略)"
◆関連リンク
・押井 守, 山邑 圭『TOKYO WAR2 灰色の幽霊 THE NEXT GENERATION パトレイバー』
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