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2015年8月

2015.08.31

■感想 コリン・トレボロウ監督『ジュラシックワールド』Jurassic World


JURASSIC WORLD: Building the Apatosaurus - Legacy Effects - YouTube
 コリン・トレボロウ監督『ジュラシックワールド』RealD 3D吹替にて観てきた。
 名古屋地区のIMAXは残念ながら字幕のみの上映。3Dで立体視を邪魔する字幕はありえない派の僕はしかたなく、RealD 3D吹替に流れるわけです。

 それにしても今回のRealD 3Dの小牧コロナの映像品質はひどかった。まるでスクリーンに霞がかかったようなボンヤリとした映像。
 先日記事にした、うちの三菱の3Dプロジェクタで観た『ヒックとドラゴン2』と比べると、その画面のクリアさは圧倒的に違う。これだったら、もう劇場で観る価値は音響と雰囲気だけということになる。
 今回の小牧コロナの映像品質では、きっとBlu-rayが発売されたら、DLP 3Dプロジェクタで観る方が映像は綺麗だろうと、思わざるを得ない。

 と地方映画館の愚痴になってしまったけれど、映画はいろいろと文句をつけたい部分はあったけれど、久々になかなかのジュラシック世界を体感させてもらった。


☆☆☆☆☆☆☆☆ネタバレ注意☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




 前半、特にインドミナス・レックスが暴走してパーク内で暴れ始める辺りの緊迫感はなかなか。
 本来、自然の作り出したカオスな存在である恐竜を、主人公の「調教」とかで、ある枠内に入れてしまうような描写を排除していればもっと面白くなっただろうにと残念。
 それとドラマ的にはパークの責任者であるはずの女性主人公の行動が残念すぎる。パーク内で人死にが出ているのに自分の甥と姪だけのために動き、責任者としての行動は微塵もとらない。ここのいいかげんさで、本来生まれていたはずのドラマの緊迫感が大幅に削がれている。
 この監督、スターウォーズシリーズの監督に抜擢とのことだけれど、少し心配になるのであるw。

 映像的にも、Stereo D社による2D-3D変換は、ところどころ凄い3Dシーンがあったけれど、全般的には3D映画としての興奮には欠け、ここも残念なところ。例えば、ブロントザウルスの体表をクローズアップで舐めるように立体視させるとか、ステゴザウルスの背びれを効果的に立体視で見せるとか、いろいろと手はあるはずなのに、恐竜世界に入り込んだという興奮がいまひとつだった。

 もともとは全篇3D撮影という話もあったようだけれど、スピルバーグには本格的な3D映画を期待したい。

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2015.08.26

■感想 ヤノベケンジ×増田セバスチャン×髙橋匡太 「PANTHEON-神々の饗宴-」 "三神夜覧"~夏のライトアップ~

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YANOBE KENJI ART WORKS.

「PANTHEON-神々の饗宴-」 "三神夜覧"~夏のライトアップ~

"京都府立植物園では、風神(風神の塔)、雷神(雷神-黒い太陽)、フローラの三体の神々が降臨したことを記念し、特別夜間開園を行い、下記のとおり夜間展覧、 "三神夜覧"を開催します。なんと入園無料です!
◆以下の8日間 特別夜間開園 18:00~20:00
8月14日(金)、15日(土)
8月21日(金)、22日(土)、23日(日)
8月28日(金)、29日(土)、30日(日)
◆会場:京都府立植物園「鏡池」エリアのみ
(入門は、正門と北山門のみとなります) "

◆琳派400年記念祭
ヤノベケンジ×増田セバスチャン×髙橋匡太
「PANTHEON-神々の饗宴-」

"会場:京都府立植物園 観覧温室前「鏡池」
会期:2015年7月25日[土]〜10月25日[日]

◆序章「雷神ー黒い太陽」2015年5月26日[水]より
◆1章「フローラ降臨」7月25日[土]より
◆2章「風神の塔」8月14日[金]より
◆最終章
「New Generation Plant」
(増田セバスチャン) 9月中旬より
※髙橋匡太によるライトアップ
仲秋9月27日[日]~10月11日[日]夕刻"

 ヤノベケンジ「PANTHEON(パンテオン)-神々の饗宴-」 "三神夜覧"~夏のライトアップ~ 観てきた。3D映像も撮ってきましたが、まずは写真です。

 「琳派400年記念祭」と銘打たれているように、今回、尾形光琳の『風神雷神図』屏風をモチーフに、ヤノベの立体造形は、雷神と風神を描き出している。両側にそれら神を置き、そして新たな創意として、中央にヤノベの近作「サン・チャイルド」「サン・シスター」につながる「フローラ降臨」が置かれている。

 特に当Blog的には、冒頭写真中断の「風神の塔」がまるで怪獣映画で圧巻です。体長約4mの使徒、京都襲来って感じですねw。

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 まるで蓮池に舞い降りた仏のような造形。
 両側の荒ぶる2神に守られ、穏やかな顔をしたまさに女神。というより姿は女児なので、癒しの少女神と書いた方がしっくり来るビジュアルです。
 植物園の中のハスの池、という舞台設定が最も活かされているのが、このフローラの手を上に向けた穏やかな像でしょう。

 手に持つ花、というかキャンディ?を慈悲深く人々に差し出す恵みの像。「サン・チャイルド」「サン・シスター」につながる放射能に汚染された地を浄化しようとする子供の像がテーマなのでしょう。

 「サン・シスター」はまだ実物を未見ですが、この荒ぶる神と並び降臨した姿が、特に慈悲の象徴として映えるのではないでしょうか。単独の展示だとイメージが「甘く(スゥイート)」過ぎる印象で、世間の汚れの中で日々生活するおじさんの眼には眩しすぎたのですが(^^;)、邪悪な何者かも感じさせる2神とのバランスで、逆に光が浮き出て、とてもいいのじゃないかなと。

 よく眼を凝らすと、ハスの一部は花を咲かせていました。
 この季節、蓮の花と3体の像と光のイメージは、浄化される何ものかを観客に与えていたような気がします。

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 今回、風神は頭上の3個の風車で発電し、そのエネルギで約3分に一回、蓮池の水をその口から放水する仕掛けがあって、集まった大人と子供たちを喜ばしていたけれど、雷神の仕掛けは何もなかった。
 「黒い太陽」が本来セットで持つテスラコイルの放電はなかったわけだが、秋のライトアップで登場するらしい。その時に本来作家が込めたイメージが植物園に現出するのだろう。秋は行けるだろうか。

◆関連リンク

「PANTHEON-神々の饗宴-」公式PV - YouTube
 クレーンによる上空からの俯瞰ショットが素晴らしいので、是非、ご覧ください。

琳派400年記念祭.

"「琳派」とは、宗達から100年ほど後に絵師となった尾 形光琳(1658~1716)の「琳」をとって名付けられた名称です。尾形家は俵屋宗達や本阿弥家と姻戚関係にあり、光琳は宗達の作品をよく学んでいま す。『風神雷神図』屏風を手本に、光琳は同じ図柄の屏風絵を遺しており、「琳派」は、宗達や光悦から生まれたといってよいのです。"

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風神雷神図 - Wikipedia 引用画は、上が俵屋宗達、下が尾形光琳。

"作者 俵屋宗達 制作年 寛永年間頃 素材 紙本金地着色 寸法 154.5 cm × 169.8 cm (60.8 in × 66.9 in) 所蔵 建仁寺(京都府京都市)

尾形光琳の屏風画
2曲1双・紙本金地着色、東京国立博物館蔵。
光琳は、体躯や衣文線などの輪郭線を驚くべき忠実さでトレースしており、単に屏風を瞥見した程度ではなく、時間と手間を惜しまず正確に写し取った事が伺える。その反面、光琳はいくつかの改変を加えている。

・風神・雷神の姿が画面ぎりぎりではなく、全体像が画面に入るように配置されている。
・宗達が屏風の外に広がる空間を意識したのに対し、光琳は枠を意識しそこに綺麗に収まるよう計算しており、片隻だけ見ると光琳の方が構図がまとまっている。
・宗達の画では、両神の視線が下界に向けられているのに対し、光琳の画では両神がお互いを見るように視線が交差している。
・両神の顔が、やや柔和な印象を受け、卑俗な擬人化がより進んでいる。
・屏風全体の寸法が若干大きい(宗達画は各154.5x169.8cm、光琳画は各166.0x183.0cm)。二神の大きさは変わらないため、絵の中では光琳の風神雷神の方が相対的に小さく見える。
・細部の描写や彩色を変更、特に輪郭線や雲の墨が濃くなり、二神の動きを抑える働きをしている。

 光琳の模写も傑作の部類に属するが、上記の相違点により、「宗達の画のほうが迫力がある」という者も多い。"

 元祖の俵屋宗達と、それを自らの解釈で描きなおした尾形光琳の『風神雷神図』と「PANTHEON-神々の饗宴-」を並べてみた。ヤノベケンジの「フローラ降臨」がやはりその光で異彩を放っている。
 会場に多数訪れていた子供たちが「フローラ」をまるで友達のように親しげに名前を呼んで語る言葉が幾つも聴こえてきたけれど、まさにそうした異彩がどういう形でか、人々の心に共鳴しているようだ。

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2015.08.24

■情報 舞台『攻殻機動隊ARISE:GHOST is ALIVE』日本演劇で初めてS3D映像 プロジェクションマッピング

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舞台版「攻殻機動隊」、日本演劇で初めて3D映像を使用!鑑賞時3Dメガネが必須に! - シネマトゥデイ

" 今回、「攻殻機動隊」の独特の世界観を舞台上で再現するために、明治大学総合数理学部福地研究室と舞台を製作している株式会社NEGAが共同で新たな映像技術を開発。舞台作品に初めて投入される3D映像と生身の役者による演技がステージで絡み合う。劇場では、当日貸し出される3Dメガネを掛けて観劇する形になるという。

 本舞台は『攻殻機動隊 新劇場版』などの冲方丁が監修し、脚本を「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」などの藤咲淳一が執筆。演出は舞台演出家で映画監督でもある奥秀太郎が務めている。"

 プロジェクションマッピングと3D映像の融合、これは興味深いです。
 寡聞にしてそうした事例を知らなかったため、先行事例を今回調べてみると、世界でも数例しかないようです。
 そして初めて知ったのですが、2013年の日本SF大会で初めて実演されていたのですね。

 以下のは、赤青のアナグリフ方式のメガネのようですが、見てみたかった(ダイジェスト映像がYoutubeにあったので、以下引用しています)

U&C 3Dコンテンツニュース

"「プロジェクションマッピングで3Dメガネをかけて見る」という経験をされた方はまずいないのではないでしょうか?実は公開されているプロジェクションマッピングで立体映像に対応したものは世界的に見ても数例しかないと言われています。

 これを実現するきっかけとなったのが7月に広島で行われた「第52回日本SF大会」でのプロジェクトです。これは広島の制作者団体であるAAIひろしま Planが計画したもので、筆者がそのプロジェクトのスーパーバイザーを努めていました。当初は立体視対応ではない通常のプロジェクションマッピングで計 画していましたが、日本で最大規模のSF大会であり、3Dメガネをかけた未来感を表現するのも面白いと考え、これを機に日本で始めてのS3Dプロジェク ションマッピングの制作チームを結成し、アンビエントメディアS3Dプロジェクションマッピングチームと名づけて、このプロジェクトに臨みました。 写真 にあるように会場となったアステールプラザの階段(幅約7.7m、奥行き約11m、高さ4.8m)がその投影対象です。"

S3Dプロジェクションマッピング “ 時空の階段”|第52回日本SF大会 こいこん 2013.7.20-21.

イベントタイトル: S3Dプロジェクションマッピング “ 時空の階段 “
・主催:第52回日本SF大会実行委員会
・プロジェクションマッピング企画実施:AAIひろしまPlan
・場所:アステールプラザ 〒730-0812 広島市中区加古町4-17
・日時 2013年7月20日(土)20:00~
※開場時間の詳細は当日ご確認ください。
・立体視方式
※アナグリフ方式(赤青メガネ使用)

神聖な場所やイベント会場へ、階段は異世界への移行を司る場。 光で空間を書き換え、幻視への挑戦をいたします。 プロジェクションマッピングは動くだまし絵。今回は錯視が起こる範囲が上下で限定され、プロジェクションマッピングが苦手とする奥行のある構造“階段”を投影対象とした上に、立体視に挑戦する、いわば究極の幻視体験をしていただくイベントです。"


時空の階段 (JIKU NO KAIDAN) ダイジェスト - YouTube

"前半の4本がS3Dで制作されていますが、横幅8mのスクリーンの状態で視差を適正にしています。飛び出し感、奥行が実際の階段より小さい画面でみると少なく感じられま­す。

参加メンバー
・プロデューサー/クリエーター 泉尾祥子 AAIひろしまPlan
・イベントディレクター 石橋健太 マグマワークス
・プロジェクションマッピングスーパーバイザー 町田聡 アンビエントメディア
・プロジェクションマッピングコンテンツテクニカルディレクター/クリエーター 吉川マッハスペシャル
・プロジェクションマッピングシステムテクニカルディレクター 浦島啓(株)コローレ
・S3Dスーパーバイザー/クリエーター  阿部信明  (株)QXD
・S3Dディレクター/クリエーター   千葉祐吾 (株)Flapper3"

 ダイジェストということですが、22分もあります。
 階段の立体スクリーンと、3Dの映像の融合でどのような映像効果が得られていたか、、、、。立体映像好きとして、こうした映像を観る機会が待ち遠しいです。

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2015.08.19

■動画 予告篇『ブラザーズ・クエイ イン 35mm : The Quay Brothers in 35mm』クリストファー・ノーラン監督 新作短篇ドキュメンタリー「クエイ」


▶ The Quay Brothers in 35mm - official trailer - YouTube

 クリストファー・ノーランの新作は、何とあのブラザーズ・クエイをとらえた短篇ドキュメンタリー「クエイ」。
 予告篇はこの短篇の公開を含めて、ノーランによるキュレーションで開催されるブラザーズ・クエイ作品の35mmフィルムによる上映イベント『ブラザーズ・クエイ イン 35mm : The Quay Brothers in 35mm』の予告篇で、ノーランの映像というよりは、ほとんどクエイ兄弟の過去作の紹介。

クリストファー・ノーラン監督の新作は短編ドキュメンタリー : 映画ニュース - 映画.com

"新作は、ブラザーズ・クエイとして知られる一卵性双生児の映像作家を題材にした短編ドキュメンタリー映画で、その名も「クエイ(原題)」。ブラザーズ・クエイはストップモーション・アニメの世界でカルト的人気を誇る映像作家で、今年8月には米ニューヨークのミニシアター、フィルムフォーラムにおいて特集が予定されている。同劇場のブラザーズ・クエイ特集においてノーラン監督の新作「クエイ」がプレミア上映される予定で、8月19日にはノーラン監督がブラザーズ・クエイとともに講演を行う予定だ。"

 国内で流れたニュースは、クエイ兄弟よりもクリストファー・ノーラン監督の新作にクローズアップされた内容。ノーラン作品にも言われてみれば、ブラザーズ・クエイの幻想的な映像の影響はみられるが、このドキュメンタリーにより、クエイに注目が集まり、彼らの新作が公開されることを期待したい。

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 『ブラザーズ・クエイ イン 35mm : The Quay Brothers in 35mm』の公式ページによると、この上映イベントは北米大陸では各所で開催されるようであるが(以下リンクと引用を参照)、残念ながら日本では企画されていない。

 ノーランのネームバリューから日本国内での巡回公開が実施されることも期待したいが、さすがにノーランの短篇一本ではそれだけのモチベーションにはならないような気がするので、残念ながら無理かもしれない。

The Quay Brothers in 35mm :: Zeitgeist Films

"PLAYDATES view all
Film Forum New York City NY August 19-25, 2015
Alamo Drafthouse Richardson Richardson TX September 3 -7, 2015
Cinefamily Los Angeles CA September 4-10, 2015
Museum of Fine Arts, Houston Houston TX September 12-13, 2015
Alamo Drafthouse Ritz Austin TX September 17, 2015
Cleveland Cinematheque Cleveland OH September 24 - 27, 2015
Brattle Theatre Cambridge MA September 25 - October 1, 2015
Detroit Institute of Art Detroit MI October 9 - 11, 2015
SIFF Film Center Seattle WA October 9 - 15, 2015
The Music Box Theatre Chicago IL October 16 - 22, 2015
TIFF Bell Lightbox Toronto October 27, 2015"

Film Forum · THE QUAY BROTHERS – ON 35MM.

" "QUAY" (2015), Nolan’s new short film revealing the inner workings of the Brothers’ studio. Approx. 70 mins. All four films in 35mm."

 35mm上映されるのは、ブラザーズ・クエイの"IN ABSENTIA"(イン・アブセンティア(2000年))、 "THE COMB"(「櫛-夢博物館から(1990年 )」) "STREET OF CROCODILES"(ストリート・オブ・クロコダイル(1986年)) 3本とノーランの"QUAY"で、トータル約70分の上映時間。

Quay (2015) - IMDb
 ノーラン監督によるドキュメンタリー「クエイ」は、12分のフィルムのようです。スタジオの取材映像等、どうノーランがクエイ兄弟を切り取るのか、観てみたいものです。

◆関連リンク
ブラザーズ・クエイ - Wikipedia
ブラザーズ・クエイ 当Blog関連記事 Google 検索

続きを読む "■動画 予告篇『ブラザーズ・クエイ イン 35mm : The Quay Brothers in 35mm』クリストファー・ノーラン監督 新作短篇ドキュメンタリー「クエイ」"

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2015.08.17

■感想 ディーン・デュボア監督『ヒックとドラゴン2 : How to Train Your Dragon 2』


ヒックとドラゴン 2 予告編 [How to Train Your Dragon 2 Teaser] - YouTube
 ディーン・デュボア監督『ヒックとドラゴン2』3D Blu-rayで初見。
 まさに飛行3D映画であり、巨龍の映画。
 最近の3Dのエポックメイキングは『アバター』で、その3D映像の威力を最大限発揮していたのはドラゴンの飛行シーンであったことは間違いないのだけれど、本作は物量でそれを超える空撮シーンを描き、そして漫画映画的/怪獣映画的な映像で『アバター』とは違った立体視映像の可能性を示した。

 とにかく航空映画、怪獣映画、そして立体視映像好きは必見である。

☆☆☆☆☆☆☆ネタバレ有☆☆☆☆☆☆☆



 冒頭のバーク島での飛行シーンと、ワイルダービースト(原語では"Bewilderbeast ")を背景にして、ヴァルカとドラゴが対峙するシーン。後者の遠景の巨大なワイルダービーストと手前の人物の遠近感の表現は、まさに3D映画でしか描き得ない怪獣映画的なスリリングさ。

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 こんなシーンですが、この静的な写真では決して再現できない、ダイナミックに後ろのワイルダービーストが下からせり上がり、そして手前のヴァルカが勇壮にポーズを決める。こうして描かれたダイナミックな映像は、まさに3D映画でないと表現できない新しいイメージであると思う。

 3Dでの視聴を是非お薦めします。
 これ、IMAX 3Dでやはり劇場公開を望みたいものです。あの巨龍の迫力はIMAXで体感したい。

◆関連リンク
『ヒックとドラゴン2 3枚組3D・2Dブルーレイ&DVD(初回生産限定) 』

『The Art of How to Train Your Dragon 2 (Pictorial Moviebook) 』

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2015.08.03

■感想 樋口真嗣監督『進撃の巨人 Attack On Titan』


映画『進撃の巨人』公式サイト
 IMAX上映@名古屋(6日間限定)の初日に行ってきた。21:40〜の上映は約半分の客の入り。観客は圧倒的に若い人が多い。

 IMAXの迫力はさすが。上の予告篇映像にも出てくる超大型巨人のディテールと壮大な音響、名古屋はIMAXといってもスクリーンが小ぶりなので、D〜G列という前方のシートで観ることをお薦めする。
 特撮とCGの粋を結集したあの姿、艶かしい超大型巨人の眼に睨まれる迫力はまさにIMAXの成果。

◆ふたつの見方と総論
 この映画はふた通りの感想の書き方が出来ると思う。
 ひとつは原作漫画を知っている視点。そしてもうひとつは原作もアニメも知らない映画で初見という、最も幸福な観客の視点。
 もし、後者のような、幸運な観客に該当する方がいたとしたら、この駄文を読んでいる暇はない(^^)、全ての情報をシャットアウトして今すぐ劇場へ。

 日本特撮による、おそらく未曾有の映像体験が貴方を襲うでしょう。

★★★★以下、ネタバレ注意★★★★★


◆原作を知っている視点。

 長大な原作を、2時間弱の映画一本目としてまとめてるのは元々随分無理があると思うが、しかしこのまとめ方はなかなか理想的ではないだろうか。
 原作者+脚本陣のオリジナリティ含め見事。あの原作の持つ時制の混乱を含めた不気味さは失われていて残念だけれど、一本の映画としての構造がカッチリしていて充実している。

 映画としてのシンプルな骨格(壁の修復をゴールとして爆薬の確保がマイルストーン)、エレンとミカサとシキシマの関係の官能性。で、あのクライマックスで終わるカタルシスのある構造になっていて、『進撃の巨人』をスタートする、一本の映画としての満足度は高いと思う。

 のどかな映像と超巨大巨人の出現という対比、生身の日本人で描いた巨人の人喰いシーン、と畳み掛けてくる冒頭の不気味さは格別。
 特に巨人の人喰いを、そのままの日本人の顔と体型、そして特殊メイクと映像のデジタル加工による奇怪な表情がまさにおぞましい。

 おぞましさは、漫画が独特のタッチで描いた、あの日本人そのものの様な不気味さ、得体のしれなさの表現を、映画は見事に再生していると思う。

 諫山創が意識的にか無意識にか込めている、日本のある種の閉塞状態、対人恐怖の具現化としての無表情な巨人達。CGでそのプロポーションを作るのではなく、生身の日本人を撮り、そして映像合成で巨人として描いた手法が最大限活きている。
 ここはまさにCGだとまだ不自然になる人体の表現を避けて、実際の人間を巨大に見せて撮ることで、原作が内包している対人恐怖的な映像として昇華していると思う。

 映画を観終わった後、街に出てすれ違う巨人に似た日本人たち。
 そこから照射される現代の空気感の再現は、まさに原作者の感じているフィーリングなのではないだろうか。

 欧州の宗教的街並みに現れる日本人の巨人というミスマッチが醸し出す雰囲気は残念ながら、舞台設定の段階で切り捨てられているが、これは制作費等考えた時に懸命な選択だったのだろう。

◆映画で初めて『進撃の巨人』を観る視点
 もう一つの視点は、原作の漫画もアニメも何も知らず、まっさらでこの映画を観た奇想映画ファンを仮定した視点。もちろん僕は全部観てしまっているので、その視点からは程遠く、残念ながらそんな純粋な観客にはなりようもないのだけれど想像してみた。

 冒頭の巨人の、筋肉と煙を描いたビジュアルの斬新さに驚いてる間に、今度は生身の人間の人肉食いシーンが衝撃的に始めてみる観客を襲う。
 栄養を摂るのでなく、ただ喰い殺すことのみを淡々と、のそりと進める巨人のビジュアルは、食の不気味さに神経症的にこだわるチェコシュルレアリスムの巨人シュヴァンクマイエルも吃驚する、面妖な巨人による人体捕食映像になっている。

 世紀末ではないがこの世紀末感は奇想映画としても特筆に値すると思う。少なくともこれはテレビでそのまま放映するわけにはいかないだろう映画館だけの映像体験になるだろう。

 オールド特撮ファンが『進撃の巨人』を全く知らないで、樋口真嗣監督と尾上克郎特技監督の新しい怪獣映画として観にきてたら、ショックでしばらく画面で何が起こっているか理解できず唖然自失するのでないか。特撮ファンとしてそんな体験ができたらと思うとゾクゾクして来る(^^)。でもさすがに『進撃の巨人』の人喰いシーンを知らない特撮ファンは、現代日本ではたぶん皆無に近いだろうから、そんな体験は脳内で仮想するしかないw。

 そしてあのクライマックスの奇想。
 僕がもしそんな初見の観客の見方が出来ていたら、しばらく終映後、席を立てなかったと思う(^^)!海外の映画ファンで全く『進撃』を知らない方が観たら、もしかしてそれに近い体験ができるかもしれなくて、そんな観客の感想がこれからの世界公開で聴こえてきたら、凄いでしょうね。

 これが、冒頭で述べた「日本特撮による、おそらく未曾有の映像体験」である。そんな見方ができる仮想の観客がうらやましくてしかたがない。

◆関連リンク
▶ 【必見】町山智浩 実写版「進撃の巨人 Attack On Titan」たまむすび - YouTube
 原作者 諫山創がTBSラジオのファンで、樋口監督から直接町山氏に電話でオファーが入ったくだりが興味深い。「ホビットで龍との戦いに突然、声をかけられたビルボの気持ち」ってww。
 諫山創(と編集者 川窪慎太郎)による、映画でのエレンの性格についての新しい考え方「漫画の主人公の性格は自分は感情移入できない。巨人を見たら身動きできなくなるような若者に設定してほしい」という部分、これがエレンとミカサの関係にも影響し全体の構造を決めている話、撮影直前まで日本人のネーミングにするか原作通りドイツ語的にするか悩んでいたとか、まさに裏話満載でファンは必聴です。
 最後に、勝つ確率ゼロと言われた映画化に挑む、町山氏の戦いへの熱いメッセージ「巨人とか壁に挑む奴を笑うな」はいい。
▶ 小林悠のトーク&バラエティー"たまむすび" 金曜日「東京トキメキスポット」 ゲスト:樋口真嗣監督 【2015.07.31】 - YouTube

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■感想  ジョス・ウェドン監督『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン : Avengers: Age of Ultron』ハルク対ハルクバスター戦


Marvel's "Avengers: Age of Ultron" - Hulkbuster
 『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』3D(RealD)吹替で観てきた。
 前作は出張の飛行機の中、小さなモニターの2Dで観るというとっても勿体ない初見だったが、そんな環境でも素晴らしい監督の手腕に酔い、マーベルシネマティックユニバースの独特のヒーロー世界に浸ることができた。

 今回、圧倒的に環境は良いはずなのだけれど、感想としては、前作を下回る出来。
 欠点はいろいろ言われているが、敵の出自とその設定、クライマックスの舞台装置の絵面があまり盛り上がらない、等が僕は気になった。

 という欠点は差し引くとして、やはり今回圧倒的に良かったのは、ブルース・バナー/ハルクとナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウのシーケンス。
 前作でもハルクに一番魅かれたのだけれど、今回も苦悩を背負った姿と、それをものともしない暴走ぶりが素晴らしい。
 さらにブラック・ウィドウとの苦悩の共鳴の描写がとてもいい。ここだけ取り出して一本の映画に纏め上げてもらったほうが僕は良かったかな、と。それだと『アベンジャーズ』にならないけれど、、、(^^;)。

 そしてアクションでは、もちろんそのハルクの対「ハルクバスター」戦。
 宇宙空間に待機する人工衛星「ヴェロニカ」の起動と強化アーマーMk.44「ハルク・バスター」の投下。その後に続くメカテクノロジーとバイオテクノロジーの凄絶な戦いは、マーベルシネマティックユニバース中でも屈指の出来ではないだろうか。
 
 トニー・スタークとブルース・バナーのマッドサイエンティストとしての暴走、ハルクとロマノフの共鳴、そして「ハルク・バスター」戦。この構成だけで、『アベンジャーズ』の看板を外して『アイアンマンvsハルク』という一本にまとめてくれていたら、きっと傑作になったんじゃないかと、脳内再構成して、鑑賞後も楽しみました(^^)。

◆関連リンク
『ムービー・マスターピース アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン ハルクバスター 1/6スケール プラスチック製 塗装済み可動フィギュア』
『ムービー・マスターピース アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン ハルク(DX版) 1/6スケール プラスチック製 塗装済み可動フィギュア』
 前者が132,800円、後者が48,000円、戦わせて遊ぼうと思うとw、180,800円なり〜!

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