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2015.09.28

■感想 樋口真嗣監督, 尾上克郎特撮監督『進撃の巨人 END OF THE WORLD』

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 後篇、観てきました。今回は都合が合わず、IMAXではなく、通常版。4DXもトライしてみたかったけれど、これも時間が合わずに残念ながら断念。

 今回、もっとも素晴らしかったのは後半にある巨人の肉弾戦。
 格闘家の俳優が演じたという、着ぐるみを着て戦う人間による本格的な戦闘と、それに合成される蒸気と高熱を帯びた巨人の体の光によるエフェクトの合成。
 異質な壁に囲まれた世界での、気味の悪い巨人の、血肉が飛び散る戦闘による鬼気迫る異様な迫力が、原作と特撮映画の融合とした、みごとな奇想映像を創り出していました。

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 NHK BSプレミアムで放映された「日本特撮ルネサンス ~映画「進撃の巨人」の舞台裏~」で紹介された巨人映像のメイキング画像が右。
 こちらは着ぐるみでなく操演で数人の人によって操られた超大型巨人の例であるが、精緻に作られた巨人の造形に、(たぶんCGの)蒸気や光が合成されていく様がよくわかる。
 これを肉弾戦のダイナミックな動画で、1コマ1コマ作り出されたのが、今回のクライマックスシーン。

 いずれBlu-rayが発売されたらコマ送りで、精密に組み立てられた特撮映像をつぶさに眺めてみてみたいが、高速で動きぶつかる巨人の姿に、ワクワクしない奇想映像ファン、特撮ファン、SFXファンはいないはず。

★★★★★★以下、ネタバレ注意★★★★★★★




◆物語について

 僕は冒頭に書いたシーンとラストに至る盛り上がりで満足して映画館を出たのだけれど、途中いろいろと物語/演出的には、もう少し工夫されていたら、上記の特撮シーンが最大限映画としてのカタルシスにつながったんじゃないかな、と思った部分が幾つか書いてみます。

 まず前半白い部屋で何故か唐突にすぐに謎解きが二人の会話でなされるところ。
 ここはあっけなく冒頭で消えてしまう“『闇』を統べる者”クバルを絡めて、もっと作劇の中で、徐々に説明していく形は取り得たのではないだろうか。

 ズバリと語られてしまうより、徐々に真相の断片がキャラクターの動きに合わせてみえてくる様な描写の方が良かったんじゃないかな〜。
 特に町山脚本が実にシンプルな謎解き(SFとしてはその分、物足りなさは否めなかったが、、、)を提示しているので、明確に述べなくても、今のSF映画の観客は断片を提示するだけで十分にこの真相を理解したのではないだろうか。

 あの歌も、自然を背景に、鳥と波を映すシーンで流すべきではなかったか。
 本作のテーマが、原作が見事に描いている世界に対する若者の違和感であるのだとしたら、壁の向こうとそれを見た主人公たちが示す感情がもっとも重要なポイントになるはずなので、白い部屋で唐突にあの歌を流すより、ラストこそふさわしくなかったか、と思うのだ。

 以上の二点と最後に述べる俳優のオーバーアクトがなんとかなっていたら、傑作になっていたんじゃないかと、残念でならない。

 最後に一番苦言を呈したいのは、その、シキシマ役の長谷川の演技。
 前編のリンゴシーンをなかなかいいかな、と思った僕でも今回の悪ノリしすぎの演技はいただけなかった。謎解きとかのシーン含めて、あまりに作りすぎた演技で、思わず画面から眼を背けたいくらい。
 
 『シン・ゴジラ』でも主役の一人だそうだけれど、頼むから自然体の演技を見せて欲しい。本来、空想科学映画は想像力に富んだ映像を見せるのだから、観客の視点を一部代弁し、現実世界とのつなぎの役割を担う俳優たちは、どちらかというとオーバーアクトよりも抑えた演技で日常を表現し、眼に飛び込んでくる非日常を、観客の視点にある部分冷静に見つめる役割は必要なのではないかと思うのだけれど、、、。映画とのインターフェースである俳優が大げさな演技で騒ぎすぎると、物語に入っていこうとする観客に白々しい気持ちを呼び起こして、入り込みにくくするデメリットが大きいと思う。

 『シン・ゴジラ』は庵野総監督が現実の日本を反映させると言っているので、きっと重い思弁を含んだ作品になるだろう。その時、俳優がどのように画面の中で動くのか。『進撃の巨人』でのいろんなところで語られているマイナス面の評価を、次の作品で十分にフィードバックしてほしいものです。

◆関連リンク
「進撃の巨人」メイキング映像も、樋口真嗣らが特撮語るドキュメンタリー今夜放送 - 映画ナタリー

町山智浩、『進撃の巨人 END OF THE WORLD』の副題は『◯◯◯』を意識

 このリンク先はネタバレありますので、要注意。

"2015年9月15日放送のTBSラジオ系のラジオ番組『たまむすび』(毎週月-金 13:00-15:30)にて、映画評論家・町山智浩が出演し、脚本を担当した映画『進撃の巨人 END OF THE WORLD』の副題は、小説『■■■』を意識したのだと仄めかしていた。
町山智浩:そっちじゃないんですよ。『世界の果てまで』なんですよ、実は。こっちの歌がまずあって。後編は、ほとんど僕が作った話になってるんですよ(笑)
町山智浩
:それで、1人で考えられないんで、原作者の諫山先生と話ながら、「こんな感じでまとめていこう」みたいな感じで、今回は謎解き編です。"

・町山智浩、映画『進撃の巨人』後編の見どころについて言及「僕たちが住む現実の日本と、どういう風に繋がるか」 | 世界は数字で出来てい

"町山智浩:そういう感じになってますけど。現実、僕たちが住んでるこの現実の日本と、どういう風に繋がるかってところを観てもらいたいですね。
赤江珠緒:ええ?!現実の日本と?
町山智浩:今、我々が暮らしてる日本と、どうやって話が繋がるのかな、と。

町山智浩:だから、どうなってるか分からないんで、実際、試写観たらびっくりしましたよ(笑)色々とびっくりしましたよ(笑)「なんでこうなってんの?」って(笑)
山里亮太:はっはっはっ(笑)
町山智浩:「これは何?」って。長谷川さんのところもそうでしたよ。
山里亮太:へぇ。
町山智浩:「ここ、こうしちゃうんだ」みたいな。"

 このあと、映画は監督のもの、現場で作られる、と語る町山氏は、直接語らずこの映画への批判を口にしていると感じられた。

・Below the drop.: Skeeter DavisのThe End Of The Worldの和訳.

なぜ鳥達はさえずり続けるのだろう? なぜ星々は空で輝き続けるのだろう? みんな世界が終わってしまったことを知らないのだろうか? 私が貴方の愛を失ってしまった時に世界は終わったというのに

 

【前編】宇多丸 実写映画「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN 樋口真嗣監督」感想語る シネマハスラー - YouTube
【後編】宇多丸「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド」の感想 - YouTube
 ライムスター宇多丸氏のレビュー。
 興味深いのは、撮影前に町山智浩氏から宇多丸氏が脚本の相談を受けていたという部分と、その脚本と映画の相違点の説明。ファン必聴です。

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