■感想 J・J・エイブラムス監督『スター・ウォーズ エピソード7 フォースの覚醒』
Star Wars: Episode VII - The Force Awakens ALL Trailer & Clips (2015) - YouTube
ついに公開された『フォースの覚醒』を公開二日目の土曜日に、3D IMAX 字幕版で観てきました。感想は前半3Dと全体の印象について、後半ネタバレを少し含んだ順に書いてみます。
まず今回観たのは、109シネマズ名古屋 IMAX 3D F席(前から2列目)中央(F19)。この位置はこの劇場でのお気に入り、少し下から見上げる位置になるけれど、画面に取り囲まれ臨場感は最高である。
今回、1983年のep.6の続きが遂に32年ぶりに語られるということに加えて、3Dとして作られた最初の『スターウォーズ』(ep.1の3D版公開はありましたが、、、) というのも立体映画好きには堪らないポイント。
冒頭ルーカスフィルムのクレジットの後、"STAR WARS THE FORCE AWAKENS"の文字がスクリーンに現れ、ずっと画面の奥へと遠ざかっていく。そして文字による物語の紹介。この初の3Dスターウォーズ体験に気分は盛り上がる。
立体映像としてStereo D社の3D変換が絶好調で、砂漠のドックファイトではタイファイターの風圧を顔に感じる様な臨場感。(スピーカーからの音圧だったのかもしれないけれど…(^^;))。
また宇宙空間の戦艦を描くシーンや、敵秘密基地の空間感覚等も立体感のあるとてもいい絵になっていて、センス・オブ・ワンダーを感じさせてくれました。
3Dは吹替派なのだけど、その字幕も表示位置がキャラクターの前に寄せてあり、しかも内側を遠方にして若干奥行きもつけてあり、ステレオ視としては違和感が少なくなっていたのも幸いしたかも。
特に3Dとして最高のシーンは、予告篇にもある、砂漠のスターデストロイヤーの廃墟を、レイが操縦するミレニアムファルコンでドッグファイトするところ。今までのシリーズ作品をリスペクトした上で、スターウォーズサーガの映像がアップデートした瞬間に目頭が熱くなりました。
映画全体の感想は、スターウォーズというフォーマットの映画としては最上の完成度だと思った。過去作からのキャラクターやエピソード、戦闘で破壊された遺品の扱いと引用も素晴らしい。そしてそれにも増して魅力的だったのが、そのフォーマットに則りながらも新しく描かれた新キャラクターの新鮮さ。
物語も、ルーカスがフォースのテーマに込めたものが上手く吸い上げられ今後の端緒が描かれルーカスリスペクトに満ちていたと思う。まさに次回作が楽しみ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆以下、ネタバレ注意◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
.
.
僕は『スターウォーズ』ファンとしてはかなり浅い方だと思う。1997年の初公開時点で、北米での公開により異様に盛り上がっていた日本SF作家たちからの評判をSFマガジン等で読んで、1年くらい楽しみに待ち続けた。
当時学生の僕は、あまりの評判に期待と想像が膨れ上がり、実際のep.4を観た時は冒頭の素晴らしいスターデストロイヤーによる同盟軍追撃シーンに感銘を受けたものの、残念ながらSFとしてストーリーが薄味でハン・ソロ以外は子供っぽくて結果、全体としては面白いと思うもののとても傑作とは感じずに、そこからある程度、ずっと冷めたファンだったような気がする。
しかし今回、スターウォーズ祭りをどっぷり楽しみたいとw、直前2週間で6作品を観直した上で望んだ本作は、特に前半、過去作へのリスペクトに溢れ、そして加えて新しい映像インパクトを持った前半、特に前述した砂漠のミレニアム・ファルコンのチェイスシーンから、レイとフィンの、ハン・ソロ&チューイとの出会いまでのシーンに目頭を熱くしてしまったのだった。
ストームトルーパーの一人が破壊と殺戮に人間として疑問を提し、そしてそんな環境から覚醒しレイと出会う、この一連のシーケンスの後のファルコンの戦闘の描写は、本作の圧巻部分である。
誰もが魅力を感じたと評判の、女性スカベンジャー、主人公レイがとても良い。廃墟のデストロイヤー近くで夕日に佇むシーンはルーク・スカイウォーカーの再来のようであり、さらにその後の食事をもりもりと一所懸命に食べて、滅法メカに強く凄腕のパイロットでもある、という人物描写。新人 デイジー・リドリーの素晴らしい演技とキャラ造形が相まって、魅力的な主人公を形作っている。
しかし、そうしたみずみずしい部分に対して、物語の基本骨格はEP.4の再話と捉えても大きくは違わないのではないだろうか。砂漠へ落ちたロボットが持つ情報と同盟軍基地への道行きの冒険、そして敵巨大兵器の破壊を目指すクライマックスに絡むダークサイドのフォースとの戦いという骨格の相似。
但し、今回、ラストの大団円 勝利の祝賀シーンがないのが劇場の盛り上がりを今ひとつにしてたような気がする。
前述した前半のスターデストロイヤーの廃墟から、ミレニアムファルコンのチェイスとハン・ソロとの出会いまでのep.4-6リスペクトに溢れ新しい世代の瑞々しさを表現した魅力的な映像が、カイロ・レンとの戦いのクライマックスで衝撃的な悲劇シーンを描いたために勝利にも関わらず祝賀シーンを省いてしまった。というか省かざるを得なかった。
これにより、『スターウォーズ』らしい陽性なラストの高揚感が貧しく、残念ながら劇場の盛り上がりは最高潮とは言い難かったかと思う。
その苦いクライマックスと超兵器のワンパターンが、本作を素晴らしい『スターウォーズ』新作と位置付けつつも、傑作と呼び難いところなのではないかと思う。劇場での熱狂とファンたちの手放しの絶賛を誘発するのにブレーキをかけてしまったところだと思う。まだ新しい三部作が始まったところなので、これからの展開のためには、このラストはありかもしれないけれど、単品としてみた時の『スターウォーズ』らしさを減殺しているのが残念でならない。
超兵器については、デススターをどうしても思い出してしまうパターンから逃れるために、そろそろSF作家をブレインにしてすんごい別の超兵器を考えてみたはどうだろう。フォースだけではSF味も薄く、ここで一石二鳥でそうした新しい超兵器を次回作では登場させ我々の度肝を抜いてほしいものである。
◆関連リンク
・
タマフル 151219 『世界最強・番組丸ごとスターウォーズ祭り』 - ニコニコ動画:GINZA
ライムスター宇多丸、町山智浩、高橋ヨシキというマニアによる2時間弱のスターウォーズ祭りがニコニコ動画で聴けます。ネタバレも少しあるので、未見の方は御注意ください。
ep.7の評価はいずれも高いものなのだけれど、祭り度は何故か『マッドマックス フューリーロード』に比べるとテンションは高くない。
プリクエルep.1-3でのトラウマの再現になることを避けるように期待をセーブされていたのと、出来が良くて安心したのとの狭間で、祭りの空気が微妙になっているのも、貴重なep.7のリアルレポートになっていますw。
・『美術手帖 2015年 12月号』特集 ART OF STAR WARS スター・ウォーズの芸術学
・『リモートコントロール BB-8』
・『ミレニアム・ファルコン (フォースの覚醒) 1/144スケール プラモデル』
| 固定リンク
コメント